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近衛予備隊-11 [高校生バトル-44]

 隣村の施設が有る程度出来上がり、俺達は完成前だが見学させて貰えることになった。
 三つのグループに分かれ、日を変えての訪問。
 これから隣村での実習が増えることになっているが、隣村へはお客さんを運ぶバスに乗せて貰えることになっていて、今回はそのバス乗車を体験する機会でも有る。
 隣村の中心地までは歩いて一時間も掛からないので、ルーシーは兎も角自分には必要ないと思っていたが、実際に乗ってみると快適で、バスの窓から見る風景と言うのも悪くない。
 隣村に入った所で大きな建物が見えて来た。
 
「うおっ、あれは何だ?」
「でかい建物だろ、あれが店なんだよ。」
「町にもあんなの無いよな、中はどうなってる?」
「俺達も農作業実習に行く度に近くまで行くのだけど中は見せて貰えてないんだ、でも今日は見せて貰えるらしいぞ。」
「私達の接客実習はあそこでするのね。」
「建物の中には従業員の為の施設も有って、俺達も使わせて貰えるそうだよ。」
「私達も研修中とは言え従業員なのだから当然、あなたも従業員としての自覚を持ちなさいよ、給料を貰ってるでしょ。」
「うん、農業実習の時にも言われてる。」
「農作業実習の日はバスで通ってるの?」
「いや、今日が始めてなんだ、バスの運行は始まったばかりでね。
 店が始まったら、お客さんの多い時間帯は乗っちゃだめだからな。」
「当たり前でしょ、お客さんの為のバスだから、私達は乗車料金を払わなくても良いけど、お客さんは運賃を払って利用するのだからね。」
「そうなのよね、私は特に気をつけなきゃ、乗る時は皆を待たせてしまって御免ね。」
「ルーシー、気にするなよ、俺達が手伝うし慣れれば簡単だと思う、でもバスに車椅子用のスペースが有るとは思わなかったな。」

 バスは中古だから、車椅子スペースの使い方もバスによって微妙な違いが有るそうだ。
 今日は始めててで少し戸惑ったが、直ぐに慣れると思う。
 バスを降りたのは店の隣に位置する広場、まだ工事中の所が多く完成したらどうなるのか分からない。
 教官の指示で、整列の号令を掛けたのは一階建ての綺麗な建物の前。
 整列して点呼、その報告は俺が受ける、そう、俺は隊長に任命されたのだ。
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近衛予備隊-12 [高校生バトル-44]

 点呼を終えると担当教官が目の前の建物について説明を始めた。
 なんと、その綺麗な建物はトイレだと言う。
 そして男女に分かれて使い方の説明を受けた。
 個室には絵を交えた説明書きが張って有るが、ボタンを押すだけでお尻を洗ってくれるトイレなんて始めてで、教えられなかったらボタンを押すのをためらったと思う。

「ここはお客さん向けなのだが、皆には積極的に使って貰いたい。
 ただ、店の従業員にもお願いしているのだが、出来れば個室は用が無くても汚れてないか確認して欲しい、汚れていたら直ぐに掃除したいからだ。」
「汚れていた時の掃除道具は?」
「この扉を開ければ有るが、自分で掃除しなくても担当者に連絡してくれれば良い、この受話器を取れば担当部署に繋がるので、近衛予備隊の誰々と名乗り男子用の何番が汚れていると伝えてくれ。」
「こんなに綺麗ですから汚したくないですね、お客さんにも使い方の説明をするのですか?」
「オープンまでに絵を使った使い方説明は改良版に張り直すし、トイレ前にモニターを設置して使い方を説明する映像を流す予定だ、ここでは慣れない人ばかりだからな。」
「ですよね、でも流したものは川を汚しませんか?」
「いや、下水処理施設が有るし、トイレに関しては堆肥にするシステムになっているんだ。
 このシステムそのものも販売対象で詳しく説明されているサイトが有るから、ジョンが確認して興味の有る連中に見せてやってくれないか、SHIORI、トイレで検索すれば出て来る筈だ。」
「分かりました、会社のサイトなのですね。」
「ああ、君達も家にシャワートイレを設置することを一つの目標に頑張って欲しいかな。」
「高額ですよね?」
「今の君達にとってはね。
 でも一回設置してしまえばそんなに故障する物ではないんだ、ジョンの可愛い彼女にも喜んで貰えると思うぞ。」
「ですよね。」
「次はシャワールームへ行くぞ。」
「シャワーも使わせて貰えるのですか?」
「汗臭かったら彼女に嫌われるだろ?」
「教官、シャルロットはそれぐらいのことでジョンを嫌ったりしませんよ、教官の彼女はそんなことで怒ったりするのですか?」
「い、いや、それは無いと思うが日頃から身だしなみに気を付けることは大切なんだ、それによって詩織近衛予備隊のイメージが変わることになるからな。
 接客をしない部署でも詩織近衛予備隊の一員として自覚を持ち、身だしなみに気を付けて欲しい、予備隊のイメージを良くするも悪くするもお前たち次第、私達は隊のイメージを損なうメンバーを必要としていないと言うことだけは忘れないでくれ。」
「分かりました、接客をする部署での実習となったら必須と言う事ですね。
 トイレがこんなに綺麗なのに自分達が清潔で無かったら恥ずかしいです。」
「だろ、綺麗なトイレと言うことには色々な意味が有るんだ、会社のサイトで説明してるから見といてな。」
「分かりました、ジョン、頼むね。」
「ああ、しかしトイレについて学ぶことになるとは思ってなかったな。」
「確かに。」
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近衛予備隊-13 [高校生バトル-44]

 シャワールームは大きな建物の中に有った。
 従業員用の出入り口から入ると直ぐに従業員用の食堂が有りその奥になる。
 使い方と使用上の注意事項を聞かされた後、実際に使わせて貰った。
 俺達の村にまともなシャワーは無く、川か井戸水を利用しての水浴びが一般的、個室のシャワーは始めての経験だった。

「ルーシーもシャワーを浴びさせて貰ったの?」
「ええ、私の様なハンディが有っても使い易い様に作られたシャワールームが有ってね、ジョンの助けが要らないのは少し残念だったけど。」
「はは、小っちゃい頃なら兎も角、さすがにな。」
「この後は店の中を見せて貰えるのよね。」
「ああ、但し、まだ工事をしてる所も有るから勝手に動き回るなよ。」
「気を付けるわ、でも新しい車椅子が快適でつい…。」
「分かった、勝手しない様に俺が押してやるよ。」
「ねえ、ジョン、正妻はシャルロットで良いから私を第二夫人にしてくれない?
 シャルロットとは仲良しだからさ。」
「はは。」
「ダメ?」
「考えて置くが、みんな揃ったみたいだから行くぞ。」

 ルーシーは明らかに舞い上がっている、第二夫人を持てるのは一部のお金持ちだけで俺達には考えられないこと、しかもそれは正式な制度ではなくトラブルが起きていると聞いていて、そのことは彼女も分かっている筈。
 まあ、彼女が普通に結婚して子育てしたいと考えていることには気付いていた。
 シャルロットが居なかったら、付き合いを考えても良いぐらいに仲は良くて…。
 改めて、彼女の身体的なハンディについて考えてしまい、考えて置くと答えてしまったのは、彼女の今までの苦労を思い出していたからだ。
 シャワーだけでなくトイレも使い易かったと話していた…、そんなことでも今まで俺には分からない苦労が有ったのだと思う。
 そんなことを考えながら、ルーシーの車椅子を押し教官の後に続いて入った店内は明るかった。
 まだ棚の設置を進めている段階で商品は並んでなかったが、以前、親に連れられて行った町の店とは綺麗さが全く違う。

「あっ、階段が動いてるぞ。」
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近衛予備隊-14 [高校生バトル-44]

 エスカレーターやエレベーターの存在は第一部隊が彼らの店を案内する映像で見たので知ってはいたが実際に動いているのを見るのは初めて、そう言えば動く階段を見て驚いた農業チームには時間の関係でその映像を見せて無かったかも知れない。
 エスカレーターで二階へ上がる連中とは離れ、俺とルーシーはエレベーターに向かう。
 エレベーターの使い方は第一部隊の映像を見て理解していたが、始めて使う人を意識した分かり易い説明書きが有って問題なく乗れ、自分でボタンを押すことの出来たルーシーは満足そうだった。

「この建物の中なら、誰の手を借りなくても移動出来るみたいだわ。」
「嬉しいか?」
「勿論よ、何時もジョンが近くに居てくれる訳ではないもの。
 この店にも第一部隊が紹介してくれた店と同じ様に沢山の商品が並ぶのね、あの店と同じ様に多くの来客が有れば良いのだけど。」
「そうならないとやばいと聞いてるが、教官は大丈夫だと自信有り気だったな。」
「信じられないくらいのお金が掛かっているのよね、それを店の売り上げで返して行く、私達はその原動力になるのだと聞いても、まだピンと来ないわ。」
「店が始まってみないとな。」

 二階で皆と合流し教官の話を聞く。

「どうだ我々の店は?」
「凄く広いですがここに商品が並ぶのですか?」
「ああ、食品、日用品から衣服、家具と様々な物がね、その多くはこの国で売られていない輸入品が中心になる、お金に余裕の有る人達や周辺諸国の人達が遠くからでも買いに来てくれるだろう。
 中途半端な広さでは、わざわざ遠くから来る気には成らないだろうが、この広さなら店内を回るだけでも楽しいし、今後は娯楽施設も充実させて行く予定、プリンセス詩織の滞在中は近衛隊のパフォーマンスも見られるしな。」
「我々予備隊の行進もです。」
「ああ、第一、第二部隊は準備日程の関係でプリンセスと近衛隊を送り出す儀式でのデビューだが、第三部隊は、プリンセス達を歓迎する式典でデビューし、そのまま活躍して貰う、お客さんに喜んで貰えると期待してるぞ。」
「ここは何時頃完成するのですか?」
「建物は完成していて棚の搬入が完了したら商品の搬入が始まる、周辺の整備はまもなく終了だが客の動線を見ながら完成度を上げて行くことになっていて、暫くは客の流れを見ながら直して行くと言う感じだな。」
「プリンセス詩織がいらっしゃる一か月前に仮のオープンだから、時間はあまり有りませんよね。」
「その通り、これからの実習はより実践的なものになるから、このままここで働きたい者は特に気合を入れてくれな、仕事ぶりによっては昇給も有るぞ。」
「農業チームの俺には関係ないかな。」
「いやいや、全員に店内業務を体験して貰うから油断しないで身だしなみに気を付けてくれよ。」
「こいつ、算数ダメダメだけど大丈夫ですか?」
「ああ、掛け算はダメでも数は数えられるから問題ない、そう言うシステムだからな。」
「でも、お釣りとか間違えそうですよ。」
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近衛予備隊-15 [高校生バトル-44]

 実際の所、指摘された彼を始めお釣りを間違えそうなのは何人も居て、店内業務を問題なくこなせるかは大いに疑問、だが教官は大丈夫大丈夫と言っただけでその場を済ませ、店内を一通り案内の後、客用の正面玄関へ。

「では、今日の学習に入るから、ここからは心して聞いてくれ。
 まず、店内では現金では物が買えないシステムになっていることを理解して欲しい。
 店内で現金の代わりになるのがこのプリペイドカードだ、他にクレジットカードも使えるがお前たちにはどちらも馴染が無く違和感が有ると思う、でも使い方は簡単だから心配は要らない。
 プリペイドカードは、この機械で発行される。
 クレジットカードを持たない、もしくは使わないと言う初めての客は全員がここに並ぶことになるのだが、まずはプリペイドカード発行の…。」

 俺達にとって買い物は現金でするのが当たり前で、プリペイドカードなるものが何なのか直ぐには理解出来なかった。
 それでも教官の説明でこのシステムのメリットを含め何となく理解出来た。
 現金はこのプリペイドカード発行時とカードへの入金を行う時に、この正面玄関エリアでしか使われることがないので警備がし易い、また、カード専用レジを使っての買い物のみになるので、店員がお釣りを間違える心配はない。
 プリペイドだが、帰る時に返却し精算することも可能、でもプリンセス詩織の姿がプリントされたカードを持っていたいと思う人は多いと思う。
 カードを持っていればまた来ようという気になるだろうし、残金が残ったまま使わなければ、精算時に返却されるカード代金と残金がそのまま店の利益となる。
 デメリットは、このプリペイドカードを使ったシステムの理解に時間の掛かる人がいることか…、一度理解し慣れてしまえば簡単だそうだが。

「では次にレジの作業…。」
 
 ここでの学習は目新しいことばかりだった。
 バーコードなるものをスキャンしての会計にも驚いたし、これから搬入される多くの商品全てにバーコードが付けられていることも。
 レジ作業は全員教えられたが、確かに確認の為、物の数が数えられれば、算数の苦手な連中でも簡単に出来ることだった。
 それでも、商品の扱いなど覚えることは多いと言われ今日の学習は終わった。
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近衛予備隊-16 [高校生バトル-44]

 解散後、ルーシーと俺は乗るバスを一本遅らせ教官と話をした。

「今日はどうだった?」
「店内の様子は第一部隊が撮影してくれた映像で何となく分かっていましたが、会計システムには驚きました、あの様なシステム、諸外国では当たり前なのですか?」
「カードの利用は一般的になってるが、店内の会計で全く現金を使えない店は多くないだろうな。」
「そんなシステムをここに導入するのは理由が有るのですよね?」
「勿論だ、馴染の無いシステムで最初は戸惑う人も多いだろう、ただ、第一部隊が活躍してる店でも現金の管理に手間が掛かっていてな、それでプリペイドカード完全導入を試してみたいとなったんだ。
 店自体がこの国では特別な存在なのだから、会計システムが特別でも違和感はないだろ。」
「はい、ここでしか買えない商品を多数扱うと聞いています。」
「ここは株式会社SHIORIが日本以外で展開する店の七店舗目になるのだが、これまでオープンした店はどこも盛況でな、初期投資の額は少なくないが借り入れ金は計画通り順調に返せている、ここもプリンセス詩織の滞在を起爆剤として売り上げを伸ばせるだろう。」
「俺達の知ってる店とは全く違うので、自分がきちんと働けるのか不安です。」
「心配しなくても大丈夫、大人の従業員だって似た様なものさ、社員研修もすぐに大人達を追い越せると思うよ。」
「広い店舗ですが、店の従業員は充分確保されているのですか?」
「そこが少し微妙でな、当初の計画通りに進んではいるのだが、各店舗への来客数の伸びが予想以上で、ここも増員しないと混乱し兼ねないとなってね。
 従業員寮の建設計画を前倒ししたが間に合わない、近隣のホテルも開業時に他国からの応援者を受け入れる関係で余裕は無いんだ。
 それで近隣に住む人を対象に追加で従業員募集をしているのだが、難しそうでね。」
「その気の有る人は既に従業員になっていますからね、残ってる人は雇わない方が良いかもですよ。
 それより、予備隊を増強すると言うのはどうです?
 二期生の募集は先の予定でしたが、後輩たちの中でも成績優秀者を中心に前倒しての入隊は悪くないと思います。」
「ああ、若い従業員は他の店でも評判が良い、シャルロット以外にもお勧めの子は居るのかい?」

 勿論だ、店の噂とともに俺が予備隊隊長になる話は正式決定より随分前から広がっていて、仕事を求めて町へ出ることを避けたい子、特に女子からは、入隊に関する相談を幾つも受けてもいた。
 それも有って提案したのだが、教官が直ぐに乗ってくれたのはシャルロットを紹介してあったからだと思う、シャルロットの能力は教官達の間でも話題になる程なのだ。
 他の子達も能力に差は有るものの、皆可愛くて良く分からない大人より余程信頼出来る子達で、今日教えられたレジのシステムならば全く問題無いと伝えておいた。
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近衛予備隊-17 [高校生バトル-44]

 村へ帰ってシャルロットに予備隊への前倒し入隊の話をした。
 彼女は大喜びで、翌日には入隊希望者を取りまとめ、直ぐに前倒し入隊の準備を始めた担当教官との調整を始めてくれたおかげで、俺は隣村の見学で増えた作業、そう、トイレに関することを調べたり、プリペイドカード関連のシステムを学習する時間を持つことが出来た。
 彼女が教官達との話をすべて英語でしていることも有り彼女の評判は上々、俺も鼻が高い。
 俺達の時とは違い、詩織近衛予備隊のことは村で認知されているので、新隊員の入隊手続きは簡単に進み、登録した女子全員はシャルロット副隊長の配下として店内業務を中心に学ぶことになった、ルーシーは先輩副隊長としてそれをサポートする。
 また、七名の男子はそれぞれの希望によってチームに振り分けられた。
 こういった作業が順調に進むのは教官と俺達の信頼関係がすでに出来ているからだと思う。
 教官は俺達を隊のスタート時から大人扱いし尊重してくれた。
 スタートから間もない頃はそれに応えられない奴もいたが、今は彼らなりに感じたり考えもし皆その意味をそれなりに理解した様だ。
 隊長として俺はそれを踏まえて新隊員たちに…。

「みんな入隊してくれて有難う。
 これから、今までの学校とは違った学習をして行くのだが、俺から話しておきたいことは、みんなはここで大人として扱われると言うこと、その意味を一人一人が考え理解し大人として行動して欲しい、でも、分からないことだらけだと思うから、教官に相談したり、教官には話しにくかったら、俺や副隊長、各チームのリーダーに相談してくれて構わない。
 俺達は仲間だからな。」

 新隊員に向けての言葉としては妥当な所だと思ったのだが、自分の間違いに気づくまで時間は掛からなかった。
 彼女らは大したことでなくても俺に相談…、いや相談とは言えないことも、俺は彼女達に見つからない様に慎重に行動しないと自分の作業に支障を来たすことになった。
 シャルロットと付き合ってることは皆が知ってる筈だが。
 ルーシーは…。

「ジョン、第二夫人どころか第十夫人ぐらいまではあっさり行きそうな雰囲気ね。」
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近衛予備隊-18 [高校生バトル-44]

 新隊員の女子たちは何かと理由を付け俺と話したがったが、それは俺が彼女達にとって兄的存在だからだとシャルロットは言う。
 格好良い隊長に憧れてのことだから適度に相手をしてあげれば良いとも。
 自分が憧れられていると言うのは妙な気分だが…。

「ジョン、隊長服が似合い過ぎて、また女子のファンが増えてしまいそうね。」
「そ、そうか、ルーシーの副隊長服姿も、大人びていて恰好良いよ。」
「好きになった?」
「はは、元から嫌いじゃない、ただ、ルーシーは車椅子でも何だって出来るのだから、シャルロットのいる俺ではない彼氏を見つけなよ。」
「何だって出来るか…、教官から、自分に出来ないことを思い悩むより自分に出来ることを見つけトレーニングしようと言われてから、やれないと思い込んでいたことが少し頑張れば出来ることに気付いて…、私、変わったよね。」
「ああ、明るくなったし頼もしくなった、教官が副隊長に任命したいと言った時、誰もが賛成しただろ。」
「うん、私、色々諦めていたのだけど…、ジョン、友達以上恋人未満ぐらいで良いから、これからも仲良くしてね、シャルロットは許してくれたのだけど。」
「親友と言うことだろ、それなら問題ないさ。」
「なら、この後の写真撮影、隊長の両隣はシャルロットと私だからね。」
「はいはい、だが、シャルロットの制服は間に合ったのかな?」
「特別に彼女の分だけ先に仕上げたそうよ。
 新人が行進の練習を始めるのはプリンセスがこの地を離れてからで随分先の予定だけど、教官は彼女を予備隊の写真に入れれば写真の売り上げが伸びると考えていて、隊長とのツーショットも考えてたわよ、第一部隊の写真はそれなりに売れてるそうだけど、売り上げで追い越すと息巻いていてね。
 第二部隊とは、ほぼ同時に発売開始となるから更に負けられないのよね。」
「隊の運営費に充てられるのだからな、今までの俺達は何の利益も出していないのに給料を貰い教育を受けさせて貰って来た、そう考えると沢山売れて欲しいけど、売れるのかな…。」
「売れるわよ、ジョンのファンは多くて、みんなシャルロットに遠慮して大人しくしてるけど、もし彼女が他の男と、何てことになったらどうなることか。」
「考えたくもないね。」
「教官はジョンとシャルロットがどんな感じで仲良くなり、私と仲良くなった過程を含め、さりげなく流すことで売り上げを伸ばすと、そこにストーリーが有ると写真の価値が飛躍的に高まると話してたわ。」
「知ることで親しみが倍になると言う、あの理論だな。
 しかし教官はそんな話を誰から聞いたのだ?」
「私が話さなくても、皆が知ってることだからね、隊員たちとの雑談で出て来る話はとても参考になってるそうよ。」
「そうか…、教官達は隊員のくだらない話にも付き合ってくれる、単に暇だからだと思っていたが大切なことなのかもな。」
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近衛予備隊-19 [高校生バトル-44]

 俺達は教官達から多くのことを学んだと実感している。
 それは学校の教師たちによる、大人になって役に立つのかどうか良く分からない、面白くもない授業内容では無く、直ぐに必要となりそうで興味深い知識が中心で有り、社会人として本当に必要なこと以外、興味のないことは学ばなくて良いと言う姿勢によるところだと思う。
 興味のない内容では学習意欲は高まらない、無理やり学習させられるぐらいなら農作業を学んで美味しいものを食べられた方が余程良い。
 実際、隣村で農業実習している連中は、豚や牛の世話を始めていて、俺達に美味しい肉を食わせてやると話している、実際の作業は大変だそうだが大人達から労働力として認められることが彼らの自信に繋がっている様だ。
 彼らを含め、入隊した頃は大人と子どもの狭間だった俺達は着実に大人となりつつ有り、俺は店の手伝いやパフォーマンスで彼らにお返ししたいと思う。
 なんてことを考えていたのは、詩織近衛予備隊の写真撮影の為に髪をセットして貰っていて暇だったからで、それが終わり…。

「わお、隊長カッコ良いです~。」
「はは、君も小隊長の制服が似合ってるよ、何時も以上に綺麗に見えるのは俺の気のせいかな?」
「ふふ、お祭りの時のメイクとは全く違うでしょ、プリセンス詩織の歓迎式典に出ても恥ずかしくないよね。」
「ああ、勿論だとも。」
「う~ん…、隊長が新人の女子隊員に人気なのもそんなセリフが普通に出て来るからか、こいつなんか何時もよりはマシとか言ってスルーされてたものな。」
「ジョンは小さい頃から紳士的だったけど、やはりフランス人の血とかが混じってるからなのかしら?」
「植民地時代を経てハーフやクオーターは少なくないのだから…、やはり親の教育が大きいのかな。
 ひい婆さんが僅かな期間しか一緒に居なかったと言うひい爺さんの話を伝え聞かされた母さんは、姿だけでなく心根が恰好良かったそうだと、俺が小さい頃から一枚だけ残るひい爺さんの白黒写真を見せながら、ひい爺さんの様になりなさいと良く口にしてて。」
「そうなのよね、私も写真を見せて貰ったけど、ジョンは兄弟の中で一番似ていて、ふふ、少し生意気だけどルックスは一番だって、ジョンのお母さんは話してたわ。」
「え~、そんなこと言ってたのは知らなかった。」
「子ども達の中の一人だけを特別扱いしてはダメだから、お母さんも恰好良い人を目指してるのだと感じたわよ。」
「みんなの前で親の話はやめてくれよルーシー。」
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近衛予備隊-20 [高校生バトル-44]

 撮影は新人研修の関係で遅れるシャルロット以外の副隊長と小隊長と呼ばれる様になった各チームのリーダーが揃った所で始まった。
 ただ、カメラマンはぎこちない笑顔を何とか自然なものにしようと俺達の緊張感をほぐそうとしてくれるのだが、全員が写真を写して貰うこと自体に慣れてないので難しい。
 それでも何とか一通り撮り終えた所へ、シャルロットが入って来た。
 彼女の副隊長服姿は初お披露目、髪型は何時もと違う。

「わ~お、素敵よシャルロット、私のお嫁さんにしてあげる!」
「おいおいおい、隊服が似合い過ぎだろ。」
「髪型も変えたのね、可愛いと言うより恰好良い、改めて美人なのだと思い知らされたと言うか…。」
「ほら、ジョンの隣に立ってみなよ。」
「腕を組んでみて、う~ん、ちょっと微笑んでみて。」

 みんなからはさっきまでの緊張感が消えたが、俺は普段以上に美しく輝いてるシャルロットと腕を組まされ別の緊張が…。
 ふと、気付くとカメラマンはシャッターを押しまくり、動画担当もカメラを構えていて、前もって自然な様子を撮影したいと言われていたことを思い出す。

「シャルロット、とても似合っていて綺麗だよ。」
「有難うジョン、ジョンも隊長服が似合ってて素敵よ。」
「おいおい、気持ちは分かるが俺の前でいちゃつくんじゃねえ。
 しかし、隊服を着るだけでも違って見えるのにきちんとセットして貰うとこんなにも変わるものだな。」
「あら、あなたもそれなりにして貰ったのに、それ程でもないわよ。」
「余計なお世話だ。」
「俺達、初めてだよな、こんな恰好良い制服を着させて貰うの。」
「よね、可愛いシャルロットだって普段着は姉や親戚のお下がりばかりでしょ。」
「お祭りの時もだよ、可愛いからあまり意識していなかったけど、着る物って…、服でイメージが随分変わり少し口紅を引いて髪型を変えて貰っただけでこんなにも大人びた感じになって…。
 スタッフの皆さん俺の彼女はどうです?」
「良いよ、うん、実に良い、入って来ただけで場を明るくするだけの華が有る、このまま撮影を続けるが、まずは隊長とのツーショットから行こうか。」

 シャルロットが撮影に加わってからは、全体の雰囲気が良くなり、シャルロットも皆に乗せられてか、緊張することなく撮影をこなしていた。
 予備隊の紹介動画を含めた撮影は予定より一時間程長引いたが無事に済んだ。
 撮影後に聞いたところでは、シャルロットが来るまでの写真は全部ボツだそうで、カメラマンが必死に頑張ってもどうにもならなかったのがシャルロットの登場によって変わったのを見て、彼女が皆に愛されていると感じたそうだ。
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