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架空サークル-01 [動植物園再生-01]

梅の花が、まだ冷たさを残す風に揺さぶられる。
まだ寒いが、確実に春へ向かっている事は間違いない。

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梅林では学生とおぼしきカップルが…。

「う~ん、動物園は子どもの頃から何度も来ていたけど、ここの梅は初めてだよ。」
「健くんは地元だから、やっぱ遠足とかで来てたの?」
「ああ、結構近いから遠足じゃなく来たこともあるし、ちっちゃい頃も親に連れて来てもらってた、はは覚えてないけど写真が残ってるからね…、さよりは来たことあった?」
「おじいちゃん家がこっちの方だから、夏休みに遊びに来た時とかに連れてきてもらったな~、楽しかった。」
「そっか、だからボランティアに誘ってくれたの?」
「うん…、でも募集案内見てて思ったの、施設の老朽化って…、私が子どもの頃でも充分古かったなぁ~って。」
「確かにそうだ。」
「トイレとか随分綺麗になったけど…、工事もしてたわね。」
「ああいう本格的な工事はボランティアの役割じゃないよな。」
「ええ、でも色々やることがあるみたい…、動植物園が求めていること、それに対して自分が出来ることに自分で気付き、実行できる人になって欲しいって…、ふふ、そうね単に大変だからボランティアで手伝って下さいって感じじゃなくて、私たちにとっての成長の場として欲しいって言葉は、なんか新鮮だったわ。」
「たしかにそうだ、俺は社会学部じゃん。」
「ふふ、めっちゃ範囲が広くて、何でもありな学部なんでしょ。」
「まあ、そうなんだけど一年近くやって来てさ、社会学って何だろうって考えることもあって。」
「うん。」
「まあ、単純に人が集団となって社会を形成した時、その社会を構成する面々には色々な…、え~っと力関係だったり…、利害関係もあるけど…、それだけじゃない、え~っと心のことがあったり。」
「ふふ、確かに範囲広いわね。」
「まだ、自分も経験不足で何にも分からないけど…、ただ新たな組織のスタートから参加して色々考えることってすごく面白そうに思えた。」
「そうよね、大変なこともあるかもしれないけど…。」


チョコ屋
canrich キャンリッチ

架空サークル-02 [動植物園再生-01]

早春の散歩道。
枯れ木色の風景だったところが、少し暖かくなってなって来た頃。

散歩中と思しき二人連れ。
彼らがふと目に止めたのは…。

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「あっ、綺麗~。」
「ええ、そうですね。」
「え~っと、これは…、ピンクネコヤナギだって、はは、なんかまんまじゃん。」
「はい、確かにピンクだ…、で、ネコヤナギですか…。」
「う~ん、ネーミングとしては…、手を抜いたって感じよね。」
「えっ、植物の名前ってこんなものじゃ…。」
「ひねりがな~い、あのね光一くん、名前を付ける時に一番大切なことは、インパクトなの、それにはひねりが必要不可欠なの。」
「そ、そうかな…、でも分かり易くていいと思うのですが。」
「確かに分かり易さは大切ね…、あっ、そうだ!」
「ど、どうしたんです? 千田さん。」
「のんのん、光一くん、私のことは夏子、もしくはなっちゃんって呼んでって、お願いしたでしょ、光一くんだって佐々木光一さんなんて呼ばれたら堅苦しいでしょ。」
「は、はい…、で、な、なにか思いついたのですか…、な、夏子さんは…。」
「ええ、子どもの頃ね自然観察の会に参加したことがあったの。」
「はい。」
「その時にね、お花に名前を付けようって企画があってね。」
「えっ、大抵の花には、すでに名前が付いていませんか?」
「そう、だから自分なりにニックネームを付けてみようってことだったの。」
「それが自然観察ですか?」
「そうよ、ニックネームを付けようと思ったら、じっくり見るでしょ。」
「あっ、そうですね。」
「それとね…、え~っと、例えばオオイヌノフグリなんて誰が付けたか分かんない名前を教えられても、ぴんとこないでしょ、私はブルースターって名を付けたんだけど…、う~ん、今にして思えば安易なネーミングね、ま、私も幼かったから、でもね今でもオオイヌノフグリを見付けると、あ~ブルースターだって、親しみがわくの、自分なりの名前を付けたことでね、ちゃんと本名も覚えたし、だからさ、ボランテア企画の中に入れたらどうかと思ったの、そうね…、お花に名前を付けようコンテストみたいな感じでね。」
「あっ、良いかもしれません、動物園と比べて植物園は子ども達にとって親しみに欠ける部分がありますから。」
「そうだな~、ちゃんと本名も調べて園内で撮影した写真と一緒に応募、あ~オオイヌノフグリなんてちっちゃいし特別な花じゃないから、誰も応募してくれないかも…。」
「本名が分からなかった植物についてはスタッフサイドで調べてあげても良いのではないですか。」
「そうね…。」
「サンプル的にオオイヌフグリの写真とかも用意すれば、小さな花への関心が高まるかもしれません。」
「そっか。」
「応募はウエブからでもOKにすれば応募し易くなります。」
「さっすが先輩は違うな。」
「い、いや、その…。」
「みんなに提案してみようかな。」
「そ、そうですね…、良いと思います、あっ、そろそろ行きますか?」
「あ~、もうこんな時間か。」


花ワールド-hirata
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タグ:自然観察

架空サークル-03 [動植物園再生-01]

昨年募集が始まった動植物園支援のボランテアサークル。
すでに動き始めてはいるがまだ準備段階。
今日はその会議が植物会館で開かれる。
会議までまだ少し時間があるということで一部のメンバーは近くの温室に来ていた。

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「佐々木先輩、なんか疲れてませんか?」
「ああ、西山…、ちょっとな。」
「どうしたんです?」
「会議時間までの園内散策、西山は彼女とだったから楽しかったろうけど。」
「ええ、でもちゃんと色々考えましたよ、さよりと。」
「いや、責めてる訳じゃない。」
「そういえば先輩は千田夏子とでしたね、さよりの友達の。」
「ああ。」
「何か問題でも?」
「ずっと敬語で話してた気がする。」
「えっ、お夏は敬語苦手なタイプだと思ってたけど。」
「いや、俺がだ。」
「はは先輩、あのタイプは苦手なんですか?」
「苦手というかなんというか…。」
「?…。」
「どう接していいか全然分からなかった。」
「確かにあのタイプは先輩の周りにはいなさそうですね。」
「ああ、そういうことだな。」
「でも先輩、お夏は性格もさっぱりしてて良い奴ですよ。」
「そ、そうなのか…。」
「ルックスも悪くはないでしょ、さよりには負けるけど。」
「そうだな…、あの子デートとか言ってたけど、デートってこんなに疲れるものなのか?」
「はは、お夏なんてただのおバカですから、適当にあしらっとけば良いんですよ。」
「いや、ちゃんとまともな提案もしてくれたぞ。」
「あっ、そう言えば園内散策でグループを決める時、お夏の方が先輩とが良いって言ってましたよね。」
「そ、そうだったかな…。」
「ま、これからのサークル活動で、お夏の良いとこも悪いとこも見えてきますよ、でも先輩なんだから堂々としてて下さいね。」
「はは、そうだな。」


チョコ屋
canrich キャンリッチ

架空サークル-04 [動植物園再生-01]

「では始めます。」
進行役の一言で会場は静かになる、会議の始まり。
進行は学生の代表だ。
「まずは、大きな動きのあったプロジェクトからの報告からです、中山さんから、お願いします。」
中山も学生。
「はい、我々空き店舗再生プロジェクトでは、バラ園近くの空き店舗に関して、再生に向けての許可をいただきました。
取り壊すことなく改装という形で予算を低く抑える方向です。
まずは、きちんとした見積もり、設計等を関係部署に提出、承認後に作業、終了後に関係部署の確認という流れになります。
こういったことはこれから立ち上がるプロジェクトでも同じです。
費用の掛からない簡単なことでも、勝手には出来ないということを理解しておいて下さい、公の施設ですから。
まず書類を出して許可を頂いてから、きちんとした計画書を提出、承認を得て実行、完了確認をいただくという流れです。
小規模案件なら、計画書を完成させてからの許可申請でも構いません。
書類作成に関しては、他のプロジェクトとも相談してフォーマットを作りましたので、利用して下さい。
必要な方にはメール等でデータを送りますので、総務部の佐々木さんに声をかけて下さい。
もちろんウエブサイトがスタートしたらダウンロード出来る様にします。

えー、話を戻しまして、空き店舗再生、建物に関しては幾つかの建築、デザイン系の学部の方に話を持ちかけています。
今の所、参加希望が少なければ希望者で調整していただいて設計見積もり等に入っていただく、多ければコンペとかを予定しています。
ただ、この案件は比較的小規模の物ですし、早く進めたいという思いも有りますので、コンペ形式は他の施設改修でやれたらとも考え、調整中です。
実際の工事は我々の手で行いますが、工務店の方、プロの方の指導を仰ぐという形になります。
それと、完成した店舗の運営等が学生の実習的な取り組みになる、ということも許可を頂きました。
実習で出た利益は、まず改修にかかった分をお返し、その後は我々の活動費にと考えています。
その他、今まで出てきた案は事前にメールでお知らせした通りです。
皆さんのご意見をお聞かせ願えたらと思っています。」

サークル結成後の早い段階で会議のルールが決められた。
決める必要があったからだ。
スタート時点ではまさしく烏合の衆、学生ばかりの会議では仕方のないことかもしれない。
この時、助言を与えたのがオブザーバー役の亀田吉之助だ。
学生たちは彼のことをよく知らない、謎に包まれた存在だ。
だがそのアドバイスは学生達を納得させるものだった。
効率の良い会の運営、会議の進め方云々。
こういったことを学ぶ、それもこのサークルの目的の一部と話す亀田の助言に学生達はしっかり応えた。
あくまでも学生主体で、と口癖の様に語る亀田の助言は徐々に減って来ている。
学生たちは重要な案件に関しては亀田への報告を怠らない。
それに対して彼の応えは「思うようにやってみなさい」の一言。
学生たちはこの言葉に背中を推され仕事に取り組む。
すでに目に見えない信頼関係が出来てきているようだ。

さて、会議の方は幾つかの報告を受け全体での場を終える。
ここからは個別の話し合いとなる。
プロジェクトを持ってる者はそれぞれのグループに分かれ、他は新規の企画を話し合うグループ、サークル全体の進行を調整しているスタッフチームなどに分かれての話し合いとなる。
それぞれのテーマは事前にメール等のやりとりで進んでいる。
この場は確認作業、メールだけでは伝わりにくいこともあるので顔を合わせて意思統一を図るという目的で行われている。
この会場での時間はきっちり決められていて延長はない。
グループによっては個別の会議を行う所もあるが、だらだらと時間を使わない工夫を求められている。

この日も定刻で会議の終了となった。

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架空サークル-05 [動植物園再生-01]

会議終了後は自然と幾つかのグループに分かれて、雑談が始まる。

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「佐々木先輩。」
「あっ、君は、え~と国井さよりさんだったかな。」
「はい、覚えていて下さってたんですね。」
「まあ、一応全員の名前は覚えたつもりだし、西山の彼女でしょ。」
「ふふ、そこまでご存知でしたか。」
「で、なにか?」
「あの、私も計画書とかのフォーマットいただきたくて。」
「ああ、了解、PCメールの方へ送れば良いかな。」
「お願いします。」
「どんな企画なの?」
「お店のプランです、既存店と内容が重ならず魅力あるお店作り、学園祭みたいなのどうかと思いまして。」
「なるほど…、学園祭なら何でも有りだしおもしろいかもな。」
「期待してて下さい、で…。」
「で?」
「今日お夏、千田夏子とご一緒だったじゃないですか。」
「あ、ああ。」
「あの子失礼なこと言ったりしませんでした?」
「そんなことはなかったけど。」
「お気づきでしょうが、ちょっとおバカなんです、悪い子じゃないんですよ、でもちょっと子どものままというか…、夏子と私は学校も同じなんです。」
「そうなんだ、はは、なんか西山も同じ様なこと言ってたな。」
「先輩はああいうタイプはどうです?」
「えっ、あ、そうだな、今まで自分の周りに居なかったから…、ちょっと…、否、かなり戸惑ったよ。」
「ですよね~、でも、長い目で見てあげて下さいね。」
「はあ。」
「おっと、じゃあ計画書のフォーマットお願いしますね。」
「ああ、了解。」

すぐにメモを取る佐々木光一。

「光一くん。」
「あっ、な、夏子さん…。」
「う~ん、なんでかなぁ、先輩なんだから、夏子とか、なっちゃんって呼んで下さいよ。」
「はは、そう言えば西山たちはお夏って呼んでたね。」
「はい、お夏でも良いですよ。」
「う~ん、考えとくよ。」
「え~、考えとくよ、は考えないよを意味する社交辞令って聞いたことある~。」
「じ、じゃあ…、な、夏子…。」
「うわ~光一くん、顔真っ赤、かわいい~、うぶなのね。」
「で、何か用?」
「あっ、怒った顔もす・て・き。」
「こらこら、大人をからかうんじゃない。」
「光一くん、彼女さんいるんですか?」
「い、いや…、あっ、お~い西山~!」
「先輩どうしたんですか?」
「この子、何とかしてくれ…。」
「お夏、お前…、先輩は真面目な方だって言ったろ。」
「だって~。」
「用もないのに纏わりつくな。」
「用事あったもん。」
「どんな用事なんだ?」
「計画書のフォーなんとか。」
「? 計画書のフォーマットを送ってもらうお願いするだけで、先輩が困るというのはどういうことなんだ?」
「だって…。」
「赤くなってもじもじしてもだめだぞ。」
「ああ、分かったよ、計画書のフォーマットを送ればいいんだな、PCメールでいいね。」
「はい、先輩、お願いします。」
「さ、用が済んだのならさよりの所へ行くぞ。」
「うん、さより、どこ?」
「バラ園近くの空き店舗を見に行ってる。」
「あっ、俺も行かなくちゃ。」
「じゃあ、皆で行きますか。」
「うん、行こう行こう。」
「お夏、お前はガキか?」


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架空サークル-06 [動植物園再生-01]

バラ園近くの空き店舗にはサークルのメンバーが集まっていた。

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「ここじゃ商売としては不利だろうな。」
「どうして?」
「植物園まで足を運ぶ人の少なさだよ。」
「確かにそうよね、梅とか咲いていても、動物園の賑わいと比べたら寂しいものだったわ。」
「桜とか咲き始めたらずいぶん違うんじゃないか?」
「それも短期間じゃないかしら。」
「植物園内に売店ないもんな。」
「逆に植物園を訪れる人をターゲットにする手はないか?」
「年齢層高くない?」
「だろうな。」
「利益率高目の高級感あふれるもので勝負できるかも。」
「でもやっぱり目の前に遊具があると…。」

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「これって、どうしてここにあるか分からなくないか。」
「まあ色々大人の事情があったんじゃないの。」
「無くしたいとは思うな。」
「ここの動物園と植物園の境目感って微妙よね。」
「でも、この屋根付きの休憩場は強みじゃないか?」

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「そうね、この休憩場も売店と一体と捉えて良いかも。」
「そこにバラ園があるということを考えても、季節ごとの取り組みがあっていいんじゃね。」

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「ローズティーとか…、今なら梅こぶ茶とか。」
「でもやっぱり子ども対象のも置かないと、売上は伸びないんじゃない。」
「だな。」
「曜日とか、平日休日とかで色々変える手も有りでは?」
「そうか、ここは俺等の実習の意味合いもあるから、毎日同じである必要はないかもしれないな。」
「お客さんの状況で変化させれたら面白くない?」
「暑い日もあれば寒い日もある、雨の日だって。」
「雨の日なんてお客さん少なそ~。」
「でも逆にそんな日に来て下さる方を、きちんとおもてなし出来たらリピーターになって下さるかも。」
「俺たちがさ、お揃いのトレーナーとか着て園内の巡回するって企画もあるだろ。」
「うん。」
「それで、このサークルのことが認知してもらえたら、ここの店まで足を運んでくれる人増えるんじゃないか。」
「サークルの参加者が増えると良いのにね。」
「目立つレベルでね。」
「ちょっと先だと思うけど、私は、ここがうまく行ったら、活動を広げていけないかと思っているの。」
「おお~、夢は大きくってことかな。」
「賛成だ、名古屋ってさ街の規模の割に文化的なこととか、いまいちな所があるじゃん。」
「だな、でもまずはここからだ。」
「ああ、がんばろうぜ。」


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架空サークル-07 [動植物園再生-01]

「あっ、さより。」
「健くん、そっちの話は終わったの?」
「ああ、安永先輩にお願いしてきたよ。」
「さよりの企画はどう?」
「ええ、皆の話し聞いてたらまとまってきたわ。」
「なんか、皆熱いね。」
「今の気持ちが続いてくれたら良いんだけど。」
「そのためには、このサークルがメンバーにとっても魅力あるものにする必要があるだろうな。」
「そうよね…、あれ? お夏どうしたの?」
「健くんに怒られた。」
「なにしたの?」
「先輩と仲良くなろうと思ってさ…。」
「先輩困ってたんだよ、さより。」
「う~ん、やっちゃったか…、佐々木先輩は真面目な方だからって忠告したのに。」
「もうだめかな。」
「そんなことはないと思うけど、お夏はもう少し相手のこと考えた方がいいんじゃない。」
「うん…。」

そこへ佐々木光一が…。

「あっ、先輩。」
「さよりさん、夏子はPCメールの登録してないみたいでね。」
「えっ? お夏…。」
「は、はい、光一くんごめんなさい。」
「おっと、お夏、先輩のことそんな呼び方してたの。」
「うん。」
「せめて、光一先輩になさい。」
「うん。」
「光一先輩、私あんましパソコンのメールとか使わないから…。」
「そうか、じゃあどうしよう。」
「先輩、計画書のフォーマットなら自分もさよりも送っていただくので、こちらで何とかします。」
「ああ、じゃあ頼むよ、夏子それでいいかな。」
「は、はい。」
「じゃあ俺は先に失礼する、みんなまたな。」
「はい、お疲れ様でした。」

「あ~、行っちゃった。」
「行っちゃったじゃないでしょ。」
「へへ。」
「でもどうして佐々木先輩なんだ? お夏に似合いそうなチャラい奴ならいくらでもいるだろうに。」
「健くん、女はね自分にない所を持っているお方に惚れるのよ。」
「それじゃあ、相手が迷惑だろうに。」
「でも夏子って呼んでくれた。」

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架空サークル-08 [動植物園再生-01]

西山健一と国井さより、地下鉄の車中、千田夏子は帰る方向が違う。

「お夏と先輩、どう思う?」
「そ~ね…、佐々木先輩には悪いけど、私的にはうまく行って欲しいと思ってる。」
「どうして?」
「お夏ってああ見えて真面目なところがあってね。」
「信じられない…。」
「チャラい連中と付き合う気は全くないみたいなの。」
「へ~。」
「先輩に対して魅力を感じてるのよ。」
「それは分かる。」
「でも、どう接していいのか本人も分かってないんじゃないのかな。」
「はは、先輩と同じか。」
「ずいぶん違う二人だからさ。」
「うん。」
「くっついたら面白くない?」
「はは、面白がってたのか…、確かに面白いかも。」
「ふふ。」
「じゃあ、影ながら応援してやるか…、先輩ごめんなさい。」
「ふふ…、でもさ夏子って呼んでたわよね。」
「あの辺りが先輩の優しさってことじゃないのかな、絶対お夏に言わされてると思うから。」
「でしょうね…。」

「で、企画の方は…。」

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架空サークル-09 [動植物園再生-01]

悲しげに殺風景だった冬景色…、それが、今はあちこちに色彩を振り撒き春の喜びを奏でる。

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そめいよしの開花はもうすぐ。
そんな昼下がり。
西山健と国井さよりはしゃくなげを見ていた。

「しゃくなげって、初夏のイメージがあったけど、もう咲いてるのね。」
「へ~、そうなんだ、花に疎いからよく分かんないけど。」
「ほら、しゃくなげ色にたそがれる♪ はるかな尾瀬♪ 遠い空♪ ってさ。」
「あっ、そんなのもあったな。」
「ふふ、でも、ボランティアに応募してなかったら、こんなに沢山のお花に出会うこともなかったかもね。」
「ああ、そうだな、気が付けば大学とかでも花は咲いてた、でも、この活動に参加してなかったら気にも止めてなかったと思う。」
「こんな事も、亀田さんはイメージしてみえたのかな。」
「たぶんな、この前も自然って素敵だろって、話しておられたから。」
「ふふ、それを今度は私たちが伝えて行くってことね。」
「ああ、まずは、そのきっかけとなる動植物園の魅力アップということなんだよな。」
「うん。」
「どう、さよりの方は、進んでる?」
「ええ、時間に余裕のある春休み中にある程度進めておきたいって思ってたからね。」
「どんな感じ?」
「もろ学園祭。」
「えっ?」
「運営スタッフがある程度の人数確保できそうな日を狙って、何月何日ミニ学園祭を開きますってとこかな。
で、時には実際の大学の名でやってみたり、架空の大学の学園祭としてやってみたり。
どこかの大学で何かのテーマを発表したい、その場が欲しいとなったら、その名でやればいいし、私たちは大学の混成軍な訳だから、うちらでやる時は架空の大学にするの。
単に模擬店を出すことを目的としないで、真面目な取り組みを中心に置いてね。
その辺りはバランスをとって、ということかな、ほら、亀田さんもバランス感覚は大切だって何時もおっしゃてるじゃない。」
「真面目な取り組みは、地味でも…、応援してくれる人を増やすことにつながるかもな。」
「健くんの方は進んでるの?」
「ああ、さっきもガイドボランティアの方とお話ししてきた。」
「反応はどう?」
「学生たちが真面目に取り組むなら協力は惜しまないって。」
「そっか、じゃあ学園祭にも。」
「えっ、結構平均年齢高いぞ。」
「年齢なんて関係ないわ、っていうより色々な年齢層の方々と交流は大切だって言われてなかった?」
「そうだった…、お互いにとってプラスになる取組ができるといいな。」
「ええ。」
「あっ、真面目な内容が植物関連なら、植物会館を利用させていただくという手もある。」
「いいの?」
「来週使わせて下さい、なんてことは無理だけど、きちんと準備して内容も良ければ、むしろ使わせていただくべきかもしれない。」
「そうか、お店にこだわる必要もないわね。」
「うん、だったら植物園内の休憩所でお茶会とか…、静かな音楽の演奏会とか…。」
「有りかも、雰囲気を壊さなければ良いのよね。」
「こじんまりとした企画でも…、ボランティアサークルだからこそ出来る企画があるかもな。」
「バイオリンやってて音大行ってる友達が居るけど、なかなかお客さんの前で演奏する機会がないって言ってたから。」
「う~ん、ガイドボランティアの方々に話してみるよ。
行けそうなら職員の方の意見も聞いて、問題が少なそうだったら、皆に提案しようか。」
「そうね、木々に囲まれた中で…、小鳥の声や、せせらぎの音に溶け込んだ生の音楽、聴いてみたいな。」
「そうなってくると人が足りてないか…。」
「ふふ、行けそうだったらバイオリニスト一人引きずり込むわ。」
「はは、さよりが動いたら一人で済む訳がない。」


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架空サークル-10 [動植物園再生-01]

さくらの蕾が膨らんだかと思ったら一日の内にも姿を変えていく、ほんとに油断できない速度で春が…。

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とある大学の構内、まだ講義が始まる頃ではないが無人という訳でもない。
佐々木光一と西山健は桜を眺めつつ…。

「西山、保育系が動き始めたぞ。」
「えっ? 保育系って?」
「保育園、幼稚園とかの遠足の補助、それを学生が実習として取り組むシステムの構築が具体化してきたんだ。
春山さんが早い段階から動いてた、その結果が出つつある。」
「どんな感じなんです?」
「まずは保育園にとっても、学生にとってもプラスになるようなシステムの構築。
そうだな…、保育園が動植物園への遠足を企画すると同時に学生の補助を依頼する。
それに対して時間の合った学生がいれば実習として参加。
もしくは実習希望の学生のいる日時に対して、保育園サイドから依頼。
但し、何にも分からない学生一人を送り込んだところで、保育士さん達にとっては足手纏いにしかならない。
だから、保育士さんのフォローをできる人とペアで送り込む。
ただ学生側としてはカリキュラム等の問題もある。
こういった所を試行的に…、まあやってみて試してみて問題点を探って色々練って一つの形にできたら、有意義な取り組みになるかも、と判断して下さった大学が名乗りを上げたということだ。」
「う~ん、遠足か…、園児の遠足見かけましたね…、確かに先生方大変そうだった…。」
「だろ、俺もこの案件のことが頭にあったから、幼児の遠足を気にしてたけど…、早く早くと急かされてたな…、子どもたち、それが集団行動の基礎となるのか…、素人だからよく分からないが気になった…、あっ、そうそう西山って何月生まれ?」
「えっ? 5月ですけど。」
「俺は3月なんだ。」
「はい?」
「幼児達を見てて思ったことがある、まあ、姪や甥を見てることもあるけど。」
「あっ、先輩、おじさんなんですね。」
「まあな、末っ子だからさ。」
「はは。」
「でね、ちっちゃい頃の一年ってのを思ったんだ。」
「えっ?」
「生まれたばかりの子と、一歳になったばかりの子との差。」
「そりゃあ違いますよね。」
「だろ、その差は大きくなればそんなに目立たなくなるとは思うが、ちっちゃい頃は大きいんだな、5月生まれは感じなかったかもしれないけど。」
「う~ん、そう言われてみると…。」
「もちろん個人差はあるからね、成長の…、でも3月の終わりに生まれたら4月生まれとのハンデって大きくないか?」
「言われてみれば…、今まで考えたことなかったです。」
「まあ今さら愚痴っても仕方ないことだが…。」


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