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雪の日に-1 [権じいの村-4]

「金沢、また少し積もったみたいだな。」
「ひゃっほ~! 槇村、新雪って良いよな~。」
「おいおい、がきじゃあるまいし…、はしゃぐなよ。」
「これでもくらえ~!」
「やったな、倍にして返してやる~!
う~ん、倍返しか…、数を倍にするか、大きさを倍にするか…。」

「すきあり~!」
「おいおい、ちょっと待てよ金沢、雪合戦における倍返しについて考察してるところだからさ。」
「なに? つまんない奴だな、槇村…、考えてばかりじゃ彼女できないぞ。」
「余計なお世話だ、俺はお前と違って体力馬鹿じゃないからな。」
「何を~、これでもくらえ~!」
「あ~、何するんだ~、あ~、バケツを使って雪をまとめてかけるなんて、雪合戦の域を越えすぎだろ。」
「はは、雪合戦の定義はなんだ?」
「そりゃ、雪を丸めて相手に向けて…。」
「誰が決めたんだ?」
「う~ん! 負けたよ…。」
「はは、分かればよろしい、で、さっき何を考察してるって?」

「倍返しの理論だ。
雪球を一発食らったから、二発食らわせれば倍返しだが、相手に対する物理的ダメージが単純に倍になる訳でもない。」
「はは、槇村から二発も食らったら精神的ダメージがの方が大きすぎるぜ、この運動音痴野郎が。」
「言ったな、これでも食らえ~!」
「あ~、何時の間に雪玉を…。」
「考え事しながらでも雪球くらい作れるさ。」
「至近距離からの一発はこたえるぜ。」
「はは、雪合戦における、物理的倍返しは数や大きさだけじゃなく距離も関係するのさ。」
「槇村、面白いな。」
「だろ。」
「もう少し整理してみるか?」
「もちろんだ。」



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雪の日に-2 [権じいの村-4]

「除雪作業って結構重労働だな、省吾。」
「おお、良いトレーニングになったぜ。」
「お年寄りには大変だろうな。」
「ああ、でもここは豪雪地帯って訳でもないから、大したことないんだってさ。」
「へ~、豪雪地帯には住みたくないよな。」
「はは、そうだ、除雪、融雪の案、考えたか?」
「専門外の俺たちからの意見でも、良いのがあったら試してみるってことだよな。」
「実際に使われてるかもしれないなんて考えなくていいから、とにかく出してみてって話しだろ。」
「うん…、なあ、間伐材使えないかな。」
「雪を溶かす、雪をどかす…。」
「炭の粉にして雪の上に撒くってどうかな、降り続いている時はだめだけどさ。」
「黒いから光を吸収しやすいってことか。」
「環境への悪影響は少ないんじゃないか?」
「そうだな…、燃やすってどうだろう。」
「燃やして?」
「ちょっと待てよ…、単純に雪をお湯にしてって思ったけどさ、発電ってどうだ?」
「薪で発電か…、地球温暖化の方はどうなんだ?」
「原油を中東からタンカー使って日本まで持って来て、精製して、タンクローリー使って運んでってことと比べたら、大したことないだろ。
それに植林地を再生させると温室効果ガスの減少につながるんじゃなかったか。」
「そうか、でも発電って?」
「燃やす時に空気を送り込んだ方が効率が良いと思ったんだ。」
「うん。」
「そのためのファンを回す電力を得ることが発電の一つの目的さ。
まず薪を燃やす、その熱で雪を溶かして、水蒸気にしてタービンを回し発電。
タービンを回した後、水蒸気はお湯になるから、それを水路に流したりして雪を溶かすのに使う。
発電した電気の使い道は色々あるんじゃないか。」
「面白いかもしれない、多少効率が悪くても…、そうだ排気だって技術が進んでいるから結構きれいにできるかも知れない…、お湯か…、なあ間伐材を利用した風呂も作れるんじゃないか、ここは温泉とかないからさ。」
「そうだな、昔は薪でお風呂を沸かしてたわけだし。」

「発電システム、始めのうちの電気はどうする?」
「最初だけは家庭用電源を利用するか。」
「太陽光とか風力、蓄電池そんなのを利用した方が面白くないか?」
「よし昼飯の時にでもみんなの意見を聞かさせてもらおうぜ。」
「おお。」




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雪の日に-3 [権じいの村-4]

「森岡、それ絶対いいよ、広めの風呂ができたらお年寄りたちも喜んでくれるんじゃないか。」
「うん、燃料が間伐材なら…、維持の問題としては手間かな…。」
「それは何とかするよ。」
「あっ、慶次さんも乗り気ですね。」
「ああ、森岡くんたちは植林地の調査だったね。」
「はい。」
「じゃあ間伐材の関係は少し考えてくれるかな?」
「はい、もちろんです、落ちてる枝とかも燃料にできると考えています。」
「慶次さん、廃屋の木材で再利用できそうにないのも燃やしちゃっていいんじゃないですか。」
「そうだな。」
「権じいの湯ってとこね。」
「よし、権じいの湯プロジェクト、スタートだ。
誰か概略をまとめてくれないかな。」
「私、今、余裕があるのでやりましょうか。」
「うん、頼む。
それを全部の参加研究室と、そうだな、機械科、電気科あたりは参加が少ないから各大学の工学部にも送って、新たに参加してくれそうな研究室がないか打診してみるか…。」
「そちらは私に担当させて下さい。」
「有難う助かるよ。」
「はい、権じいの湯プロジェクトを自分の研究テーマにしようかとも思いまして、面白そうですから。」
「はは、下心付きだったか。」
「良かったら参加希望のとりまとめとかもやりますが。」
「じゃあお願いしようかな、日程を調整して第一回の会議はうちの大学でやろうか。」
「はい。」
「土地の選定は、今いる土木科と建築科で候補を挙げておきましょうか。」
「おお、今からやろうぜ、地図を持って来るよ。」

「慶次さん、小さ目のをまず作り始めて、それと平行して大き目のも作っていくってどうですか?」
「そうだな、大きいのは時間がかかるだろうから、まずは入れるのを一つ完成させるというのもいいかもな。」
「そうだ、実験的にドラム缶の風呂とかも作ってみませんか。」
「いいね、男の子たちがそんな風呂を作って使ってくれたら、女の子たちも少しはのんびりとお風呂でくつろげるだろうし…。
権じいの湯が完成したら、風呂の為だけで下へ下りるということも無くせるからな。」

「あ~、私も入ってみたいな~、ドラム缶のお風呂。」
「えっ? えっと~。」
「何か問題でも?」
「和美さん、健康な男子学生たちが…。」
「そっか、うふふ。」
「こら~! 和美、うふふじゃない~!」
「あらっ、洋子も一緒に入る?」
「二人一緒は無理だろうな…。」
「いや、そういう問題じゃないかと…。」




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雪の日に-4 [権じいの村-4]

「おそねばあちゃん、お風呂有難うございました。」
「なんのなんの、何時でも遊びにおいで。」
「はい有難うございます。」
「足元悪いからきいつけてな。」
「はい、失礼します。」

「また雪が降ってきたわね。」
「うん、きれいね、ちょっと寂しげだけど…。」
「ねえ、お風呂の話し聞いた。」
「ええ、でも完成までは時間がかかるんじゃないかな。」
「そうよね、しばらくは不便が続くのね。」
「ふふ、私たちはおそねばあちゃんと仲良くなったから、ゆっくりできるけど。」
「麓の温泉も広くていいらしいけど、遠いから。」
「本部の風呂は狭いしね…。」
「女の子は下の宿泊施設から通うことを想定してたそうだけど、結局、みんな当たり前のように校舎住まい…。」
「こんな経験、学生である今しかできないわよね。」
「そうね、でも人が増えたら下からの通いになっちゃうのかな。」

「そうそう、おそねばあちゃんさ、初めて会った時より若返ったみたいなの。」
「そうなの? 良美は一次調査の頃から来てるから感じるのね…。」
「食べる量も増えてるし、作るメニューにも変化があってね。」
「うん。」
「私、ここに来た時は必ず一回は三食を、おそねばあちゃんと食べてるからさ。」
「継続調査ということね。」
「ええ、時々電話でも聞いてるし。」
「そういったことが、おそねばあちゃんにとっては嬉しいことなのね。」
「うん、だといいな。」




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雪の日に-5 [権じいの村-4]

「ねえ、白川先生の講義どうするの?」
「もち、出席、こんなチャンスめったにないわよ。」
「やっぱ、そうよね、若くても沢山の大学関係者を動かした偉い人なんでしょ?」
「うん…、あなたは、ここに来たばかりだから、慶次さんの本当のすごさ、まだ解ってないみたいだけど…。
今日の講義は学生のリクエストに応えて下さったものなのよ。」
「へ~。」
「昨日の夜、ちょっと雑談してる時にね、雪の夜に先生の講義を聞けたらな、なんて一人が言い出だしたの。
そしたら慶次さんの卒論はどんなだったんですか、とか色々な声が出てね。
で、明日は時間があるから自由参加の講義をしようかなって、言って下さって。
私、慶次さんの講義、初めてだから、わくわくしてるのよ。」
「わくわく? そんな気持ちで講義を聞くなんて…、う~ん、入学した頃はあったかなぁ~。」
「はは、そうなんだ。」
「卒業に向けて真面目にはやってるけど、ちょっと惰性って感じもあるのよ。」
「そっか、分かる気もするけど、私は早く専門分野をやりたかったから、ちょっと違うかな…。
う~ん、ここに来るようになって、気持ちがずいぶん変わった気がするしね。」
「変わった?」
「ええ、大学だとさ、やる気のないような学生もいるじゃない。」
「そうよね。」
「ここではね馬鹿やってる様な男の子でも、調査、研究になるとみんな真剣に取り組んでいるの。」
「こんなとこまで来る人たちだから真面目な人が多いみたい。」
でさ、周りが一生懸命やってるから、私もっ、て気になってね。」
「へ~。」
「大学を越えて学部を越えての議論もするようになったから視野が広がった気もするし。」
「そっか…、それでゼミの先生が参加を勧めてくれたのかな…。」




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雪の日に-6 [権じいの村-4]

「白川先生、今日は貴重なお時間をさいて下さいまして、有難うございます。」
「はは、そんな堅苦しい話しじゃないし、俺の卒論なんて当たり前のことをまとめただけのものだったから、あまり期待しないでくれな。」
「わくわくしてま~す。」
「ははは。」

「まずはちょっと手伝ってもらおうかな、え~っと秋山くん…、それから…黒澤くん、ちょっと立ってくれるかな。」
「はい。」
「二人、面識は、話したことは?」
「ぼくはここに来て間がないので、話したことありません。」
「大学も専攻も違うからな。
この二人は全くの他人な訳だ、ところが二人には共通点がある。
二人とも広島県出身なんだ。」
「あっ、そうなの?」
「君も?」

「今の瞬間、全く知らなかった相手が、少し身近になった、違うかな?」
「その通りです、うちの大学、広島出身って少ないんです。」
「俺のところもですから。」
「ちなみに二人とも呉市出身だったりする。」
「えっ、ほんと、どこ?」
「俺は和庄登町、和庄中の近く。」
「隣の中学校か。」

「この瞬間二人の親近感がさらに増したということは説明するまでもないよな。
秋山くん、黒澤くん有難う。」
「はい。」

「さて今度は自慢話の話しをしよう。
自慢となると、まず自分の能力や持ち物の自慢となるけど、そうだな隣の家の子と話していてさ、その子が色々自慢話しをするのに、自慢できることが浮かばなかったらどうするかな? どう?」
「家族の自慢ですか?」
「そうだよな、うちの父ちゃんは…、とか兄ちゃんは…、とかね。
さて、今度は隣の町に住む子に対しての自慢話としよう。
もちろん、自分や自分の家族の自慢が出てくるけど、さっき話した隣の家の子も自慢の対象になったりしないかな。
うちの隣の子は野球部のエースで大会の優勝投手なんだぞ、なんてね。
さらに、隣の市に住む子に対してなら隣町の子も自慢の対象にできたりする。
隣町にスケートの大会で優勝した子がいるんだぜ、とかさ。

実際に話したことのない子のことでも、近くに住んでいるということや、学校が同じといったことで自慢の種になったりするよな。

さて、家族の自慢は血縁に由来し、近くに住んでいるということは地縁に由来する訳で、まぁ民族紛争の原因の一つだったりするわけだ。」
「えっ? 民族紛争ですか?」
「ああ、で、今からみんなにグループデスカッションをしてもらおうかな。
答えを出す必要はないけど、今、挙げたことを掘り下げてみて欲しい。
広げてくれても構わないけど…。

う~んと、そうだな、もう一つ付け加えておこう、そこの米山理恵さんの趣味はバドミントンだったりする。
だよね、理恵さん。」
「はい。」
「この瞬間、彼女を身近に感じた男子は少なくとも5人はいる筈だ。
そうでしょ、楠元くん。」
「はい、自分もその一人です、バドミントンやってますから。」

「このことも討論の中に加えてもいいよ、じゃあ適当にグループを作って話し始めて。
時間の方は適当に切るからな。」




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雪の日に-7 [権じいの村-4]

「じゃあ討論を終わりにしてくれるかな。」

「少しずつ聞かせてもらったけど、なかなか核心を突く意見も出ていて面白かったよ。
そこのグループで出ていた、集団への帰属意識ということは人間の本能だ、という意見はその通りだと思う。
そしてそのことが時として排他性となってしまうよね。
地球というレベルで考えたら、生き物すべてが仲間なんだけど、より近い存在を仲間とし、遠い存在を時に敵とする、これは単なる物理的距離だけでなく精神的な距離も関係する訳だ。
米山理恵さんは岩手の出身だけど楠元くんは兵庫の出身、出身地は違っていても趣味は同じだ。
そこの長沢くんも兵庫出身だから、楠元くんとは同郷、だけど楠元くんに対して敵意を抱いてるかもしれない。
理恵さんは人気者だからね。」
「ははは。」

「何にしても人間関係というのは難しいよな、色々な人がいるからね。
さっきの討論は、あえて事前にグループ分けをしないでいきなり始めたらから、どうなるかなと思ってはいたけど。
さすがに優秀なメンバーばかりだから、自然とリーダーが現れてグループを作っていったな。
でもそれぞれ考え方が違っていたね。
ここに慣れていない人を積極的に集めたリーダーは所属の同じ人を複数入れることで、慣れていない人に安心感をと考えた。
別のリーダーは極力所属が同じ人を避ける形で、色々な意見が聞けるようにと。
なぜか女の子ばかりを集めようとしてたリーダーもいたな。
誰とは言わないけど。」
「みごと失敗しました~。」
「ははは。」
「逆に男の子たちが勝手に集まったグループも。」
「いや~、彼女の専門分野だからと思いまして…、俺たち工学部ですから…。」
「素直じゃないな~。」
「ははは。」

「とにかく色々な考え方が存在するわけだ。」

「さてここで話しを変えて、この村における…。」




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雪の日に-8 [権じいの村-4]

「じゃあ今日の講義はこれぐらいにするか。」
「慶次さん今日は有難うございました。」
「有難うございました。」
「いやいや、こちらこそ、みんなの質問は参考になったよ。
聡くん雪はどう?」
「まだ、少し降っています。」

「そうか春はまだ遠いのかな…。
そうそう、春になったらお祭りをしたいんだけどさ。」
「お祭りですか…、この村に伝わるお祭りとかがあるのですか?」
「昔は毎年やってたのが、ずいぶん前に途絶えてしまったそうだ。
その一部だけ復活させて、後は新しい祭りをと考えている。
山村の文化を研究してる先生にも協力してもらってね。」
「私たちも参加できるのですか?」
「ああ、そのつもりだよ。」
「でも、お祭りに参加したい人が全員来たら…、ここでは無理がありませんか?」
「その通りなんだ、このプロジェクトに関わっている人はずいぶんな人数になってるからね。」
「今で、どれぐらいなんです?」
実数は全く分からないけど、数え方によっては数百か千人を越えてるかもな。
権じいの湯プロジェクトによっては、もっと増えるぞ。」
「一度も来たことのない人も大勢いるんですよね。」
「うん、バックアップ専門の人からは一度村へ行ってみたいという声も結構届いている。
ただ、もう少し環境を整えないとな。」
「じゃあ、お祭りは?」
「二元的に開催しようと思っているんだ。
ここには各大学から、一部の代表だけに来てもらって村の人たちとお祭り。
そして、もう一箇所、うちの大学かどこかでイベントを開く。
そこでは、このプロジェクトに参加してくれている人たちに集まってもらって交流してもらおうかと。
春休み中なら、受験と調整できさえすれば何とかなるみたいなんだ。」
「でも権じいとかと繋がれないなんて何か寂しいですよね。」
「まあな、ただその頃には光ケーブルの工事が終わっていそうなんだよ。
思ってたよりは雪も深くないそうで、まぁ色々無理はしてもらってるみたいだけどね。」
「ということは,こことネットで繋げるということですか?」
「こちらの様子を向こうの会場で見てもらったり、テレビ電話で村の人と対話してもらったりとかね。
まあ、そんな感じのお祭りだけど、案とか思いついたら教えて欲しいんだ。」

「そうか…、テレビ電話か…。」
「どうしたの、良美ちゃん。」
「慶次さん、おそねばあちゃんと、毎日でもテレビ電話で顔を見ながら話せるようになるかもしれないんですよね。」
「うん、それも計画に入ってるよ。」
「電話の声だけでは健康状態まで十分に掴めないと思っていたのです。」




サプリメントは、アサヒのオンラインショップへ。
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雪の日に-9 [権じいの村-4]

「詩織、ずっと雪を見てるのね。」
「あ、うん、私さ、鹿児島の出身だから…、雪なんてね…。」
「あら、ずいぶん遠いのね。」
「親の反対押し切って…、無理もさせちゃった…。」
「そっか。」
「でさ、うちのじいちゃんのとこも過疎の村なんだ、ここと一緒でさ、若者なんていやしない。」
「はは、慶次さんの講義を聞いて色々考えてたのね。」
「まぁね、雪を見てると色々なことが浮かぶし…。」
「そうよね…。」
「最初、このプロジェクトの話を聞いた時は正直、半信半疑だったなぁ~。
じいちゃん達の住む村が思い浮かんでさ…。」
「ふ~ん。」
「今でも、少し…、でもさ、プロジェクトの次のステップ、その次のステップって進んでいったら…。」
「うん。」
「ほんとはね、来年、卒業したら東京へ行きたいと思っていたの。」
「そうなんだ、やっぱ東京にはあこがれる?」
「うん、でもね…、慶次さん、プロジェクトに関係してる人が千人を越してるかも、なんて言いながら、まだ小さな始まりなんだよって…。」
「確かに次のステップを考えたらそういうことになるんでしょうね…。」
「だよね…、私ね、ここでの今回の調査が終わったら、鹿児島のじいちゃんのとこへ行ってみようかなって考えてたの。」
「故郷が恋しくなったの…、あっ、だったら詩織のおじいちゃんたちに聞いて欲しいことがあるんだけど。」
「はは、麻衣は真面目だな、比較研究ってこと?」
「へへ、そんなとこ、頼めるかな。」
「ふふ、いいわよ。」
「サンキュ~、じゃ早速、調査項目整理しなきゃ。
詩織も体冷やさないようにね。」
「はいはい。」

「ふ~、麻衣は結構せっかちなのね…、あ~、就職どうしようかな…。」




パナソニックグループのショッピングサイト「パナセンス」
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雪の日に-10 [権じいの村-4]

「ねえ、みんなちょっと聴いてくれない。」
「静香、ギター持ってきてたのね。」
「うん、友達の音大生が、曲を作ってくれてね。
まだ完成じゃないって言ってたけど、私が見せた、ここの写真とかからイメージを膨らませたんだって。」
「へ~、聴いてみたいな。」
「有難う、そんなに上手じゃないけど…。」

静かな雪の夜には♪
窓ガラスが♪
涙の中に浮かべるの♪
あなたの面影を♪
…♪

「綾…。」
「私さ…、しばらく前にさ…、遠距離やってた彼と別れたの…。」
「うん…。」
「何か想いだしちゃってさ…。」
「うんうん…。」

「静香さん、歌、うまいじゃん、な…。」
「ああ、知らなかった…。」

「静香ちゃん、良かったよ~!」
「うん、有難う、こんな山奥の村でさ、素敵な仲間と出会ってさ…。」
「こんな素敵な雪の夜にね。」
「もっと聴きた~い。」

「有難う、みんな一緒に歌わない?」
「派手な曲は似合わないよな、こんな日には。」
「ふふ、静かに仲間たちと歌える曲も沢山あるのよ。」




アウター
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