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近衛予備隊-311 [高校生バトル-74]

 美紀はフルートの奏でるメロディを小鳥の鳴き声に見立て、合唱とフルートが掛け合う曲を作ってくれた。
 今まで楽器と合わせる合唱曲では、楽器抜きでも成立する様に作曲してくれていたが、この曲はフルート抜きでは成立しない。
 鳥の女神である詩織さまに対する想いが込められている曲で、そのお披露目にフルートを演奏するのは近衛予備隊マーチングバンド所属のケイト。

「王子さま、ホントに私で良いのでしょうか、指導して下さってる斎藤さんにお願いした方が良いと思うのですが。」
「いや、彼では上手過ぎる、国境なき合唱団は素人でも気軽に参加出来る合唱団だろ。
 かと言って下手過ぎるのも何だから、もうすぐ十五歳のケイトが適任なんだよ。
 上手に演奏しようと思わず、小鳥になった気分で詩織さまと楽しく戯れることを想像して演奏してくれたら楽譜通りで無くたって良いんだ。」
「はい…、似た様なことは美紀先生にも言われましたが…。」
「わざと下手に演奏する必要は無いが特別上手に演奏しようだなんて、生意気なことは考えるなよ。」
「楽しい曲ですから…、小鳥になれば良いのですね。」

 宮殿前広場での新曲発表会は店でも人気者のケイトが登場するとあって何時も以上に盛況、合唱団が新曲発表に合わせ人選して臨んだことも有り普段の演奏よりレベルが高く楽しい演奏になった。

「ケイト、お疲れ様。」
「王子さま、沢山間違えちゃいました。」
「その割には満足そうだな。」
「とても楽しかったです、う~ん…、軍楽隊の方に教えて頂いてた頃は楽譜通りに演奏するのが、下手過ぎて大変だったのですが、今日は合唱との絡みを崩さなければ細かいことは気にするなと言われてましたので、違った意味で楽譜通りには出来なかったです。」
「そう言われて、ホントに気にしないで演奏出来るのがケイトの強みね。」
「あっ、美紀先生。」
「美紀、ケイトの演奏は練習の時とは、色々な意味で随分違ってたと思うのですが。」
「ねえケイト、今日と同じ演奏、明日も出来る?」
「絶対無理です、途中から楽しくなってしまい楽譜を見るより合唱団の歌声に意識を集中していましたので。」
「ジョン、これが本番の力なのよ。
 でも斎藤君だったら楽譜ばかり気にして、あそこまで楽しい演奏が出来たかどうか、その辺りが彼の限界なのよ、ケイトの演奏を聴いて考えこんでるけどね。
 ケイトより技術的に上手な人は五万といるけど、聴衆の心に残る演奏が出来る人は少ないのよ。」
「ケイトが今の心を持ったまま技術面を伸ばしたら素晴らしい演奏家になると考えれば良いのでしょうか?」
「もう、素晴らしい演奏家だけど、より人を魅了する演奏が出来るでしょう。
 ケイトはフルートを続けてくれる?」
「もちろんです。」
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近衛予備隊-312 [高校生バトル-74]

 アビュニス王国記念公園に新設される国境なき合唱団の拠点、そのオープニングセレモニーに是非近衛予備隊マーチングバンドのエリートメンバーもと招待されたのは、ケイトがお目当てだと思う。
 小鳥との戯れと名付けられたフルートと合唱の為の曲は、その映像が流されるとあっと言う間に人気曲となり、ケイトと共に歌いたいとの問い合わせが多数寄せられている。
 ケイトは一曲演奏するだけなら毎日でも大丈夫だと話したそうで、店での実習終わりやマーチングバンド、エリートチームの演奏に合わせてとスケジュールを組んでいるところ。
 そんなタイミングで注目を集めたいとアビュニス王国のシェリルは考えたのだろう。

「シェリル、ホントはケイトだけで良かったのでは?」
「あら、大統領閣下はその直属とも言える近衛予備隊マーチングバンドを過小評価してません?」
「確かに特別実習生の指導が有り、特にエリートチームは観客の前で演奏する機会を多くしてるからか演奏が良くなってるのは感じてるよ。
 それでも、観客にとっては普通の演奏みたいで、反応は大して良くないんだ。」
「でも、ネット上には彼らの成長ぶりを熱く語り合う人達がいるのよ。
 彼らの成長記録映像はずっと公開して来たでしょ、世の中には暇な人がいて、そこから成長が早いとかどうとか、でも彼らにとって一番の見どころは特別実習生の指導によってマーチングバンドメンバーがどう成長したか。
 そこにはブラスバンドの指導者達も注目してるのよ。」
「厳しい評価も有るのかな?」
「始めの内は有ったのだけど大人しくなったわ。
 あら捜ししていた人達の頭にはコンクールと言う存在が有ったのだけど、近衛予備隊マーチングバンドはコンクールを意識していないと指摘されてね。
 そもそも気軽に参加出来るコンクールそのものがないのだから。
 批判したい人達は自分の狭い価値観に囚われていると、止めを刺す意見が出てからは、皆で彼らの成長を見守りながら、音楽教育に関する情報交換の場になってるの。」
「それは知らなかったな、でも、それだけではエリートチームをセレモニーに呼ぶ理由にはならないだろ?」
「ここの高校でブラスバンドをやってる子達も興味を持ってね、交流したいし自分達も特別実習生の指導を受けてみたいと。」
「なるほど、高校生の合唱団はそのまま国境なき合唱に参加出来、活動の幅が広がるだろうがブラスバンドはな。
 う~ん…、スタート時は意識してなかったが、国境なき音楽家集団と言った流れも考えるべきなのかな?」
「合唱は旅先でも気軽に参加出来るけど、楽器となるとね、普通の人はコントラバスやチューバを持って旅行に出かけないでしょ。
 でも、国境なき合唱団の活動に花を添えることは自分達なら出来るかもと、高校生達が言い始めてね。」
「そうだな、自由度の高い活動だから、ブラスバンドの演奏が有るのも悪くない、美紀とも相談してみるよ。」
「高校のブラスバンド部が近衛予備隊のマーチングバンドと協力し合いながら競い合うことを意識してるのだけどどうかしら?」
「それは良いね、観光船での移動なら費用も嵩まない、担当者に指示しておくよ。
 エリートチームに入れなかった連中にとっても良い刺激になるだろう。」
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近衛予備隊-313 [高校生バトル-74]

 国境なき合唱団、アビュニス王国の拠点は宮殿前広場と同じ運用になる。
 歌いたい人が事前に予約を入れる合唱団ミニコンサートは各パートの人数調整をしある程度バランスを取っての演奏会。
 事前審査が有るので下手過ぎる人は舞台に立てないが、そんな人を含めたフリー合唱タイムではパート人数の偏りも気にせず、美紀が作曲してくれた曲を皆で歌う。
 そして、合唱に拘らず、ピアノを囲んで歌遊びを始めとした音楽を皆で楽しむ時間となる。
 オープニング式典の後もこの三つのパートでスケジュールが組まれ、自分も適度に参加した。

「シェリル、思ってたより人が集まらなかったな。」
「公園への入場制限をしたのですよ、ジョン王子がいらっしゃるとあって、制限しなかったらとんでもないことに成りそうでしたので。」
「記念公園に大勢入場してくれた方が良かったのではないのか?」
「入園料からの収入より、映像からの収入の方が遥かに多いですし、賑わってるイメージより、混乱なく楽しめてるイメージを持って貰うことを優先しました。
 警備上の問題も有りますからね。」
「国境なき合唱団がアビュニス王国でも盛り上がるのか掴めていないのだが…。」
「ご心配なく、オープニング式典からの映像は公開直後から視聴回数が跳ね上がっています。
 ジョン王子自ら一般客を巻き込んで輪唱や二部合唱の指導…。
 選挙対策では無いですよね?」
「はは、対策も何も、次の知事選は共和国を王国に乗っ取られてはならないと主張する人が頑張り注目を集めてはいるが、そもそもそんな計画はないからな。
 確かに王国を名乗るエリアは拡大してるのだけど、共和国全体を考えたら微々たるものなんだ。」
「でも大統領が王国の中心的人物で…、国民はどう考えているのです?」
「貧困層の生活は随分改善されたし、マーケットを中心に街は綺麗になりつつある。
 それが詩織さまのお蔭だと言うことは皆理解してるし、詩織さまの写真を大切にしている人はとても多いと聞いている。
 共和国から王国に移行しても国民の多くは反対しないだろう。」
「では、王国に?」
「焦る必要は無い、共和国が王国に飲み込まれた所で今と変わらないからな。
 まあ、王国と言う政治形態を良しとしない政治信条の持ち主たちが頑張ってくれたら、それに反発する勢力とやり合うことになって盛り上がる、その結果どうなるかだな。
 大統領はのんきに歌ってるぐらいが調度良いのだよ。」
「随分のんきだけど、知事選に負けることはないと?」
「心配してくれてたのなら申し訳ないが、私が信頼している部下たちは優秀なんだ。」
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近衛予備隊-314 [高校生バトル-74]

「そんなことより、交換留学生の話はどうなってる?」
「一か月程度の短期は問題ないのだけど、長期は卒業資格とかが関係して難しいみたい、短期を中心にする代わりに人数を多めにってどう?
 当初は学業優秀者をと考えてたのだけど、音楽関係の子も対象に加えるとか。」
「多くの子に他国の文化を経験して貰うのは悪くないと思う、近衛予備隊が王立高等学校に名称変更するとは言え、学校の制度が全く違うのだから留学を通して色々考えて欲しいと思っているよ。
 だが、音楽関係の子にとってメリットは有るのだろうか?」
「あまり固く考えないで仲間を作るぐらいで良いと思うの、私としては高校生全員に女王陛下の暮らす街を経験させてあげたいのだけどね。」
「交換留学生を意識して寮を建ててはいるが…、う~ん、一か月交代ならそれなりの人数を受け入れられるし、文字通り交換なら、アビュニス王国へ行く子の部屋も使えるかな。」
「そっか、送り出したい人数分の部屋をこちらでも用意すれば良いのね。」
「取り敢えず留学期間は一か月程度とし少人数で始めてみてから調整して行こうか?」
「そうね、でも、うちの高校生全員に留学の機会を与える話は検討して貰うわよ。」
「ああ、問題ない。」
「で、王立高等学校って人数は何人ぐらいになるの?」
「少しハードルを下げたから、五千人ぐらいに増えるかな、ただ、卒業と言う制度がないからね。
 自分と同期で会社の部長をやってる奴は自分の肩書から詩織近衛予備隊を外す気が無いんだ。」
「予備隊であっても詩織さまの名を冠する部隊の一員で有ることに誇りを持ってるとか?」
「そんなとこだろう、結構部下の多い部長なのだが、大災害が起きたら近衛予備隊の一員として支援活動を優先させると話しているし、その為の訓練も行っているよ。」
「会社としてはどうなの?」
「部長が不在でも問題なく回る体制を目指すことで、年齢に関係なく彼の部下達は成長しているそうだよ。」
「次のリーダーを育ててもいる、そう考えて良いのですか?」
「その通り、彼は部下が成長したら他部署への転属もイメージしていてね。」
「そんな人が近衛予備隊のままなのですか?」
「いや、部の改革に成功したら王国騎士団を名乗って貰う、ホントはもう王国騎士団メンバーの資格は有るのだが彼なりの拘りなんだ。」
「部長になるまでだって多くの努力と苦労を重ねられたでしょうに…。」
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近衛予備隊-315 [高校生バトル-74]

 近衛予備隊を王立高等学校へと名称変更するのは対外的な意味合いが強い。
 公立の高校が無いのは、これから発展させて行く国としてどうなのかと言う意見が有り、名称を変更するだけで良いのならと言う流れで決まったのだ。
 ただ、詩織近衛予備隊は真面目な子ども達にとって憧れの的目標でも有ったのでその名称は残る。
 王立高等学校マーチングバンドと正式名称が変更されても、詩織近衛予備隊マーチングバンドと呼ばれることをやめさせたりは出来ない。
 また、名称変更を機に大学に関する議論も始まっている。

「詩織は大学の設立に対してどう考えているのです?」
「そうね、遠江大学のメンバーに指導して貰う通信教育的なのから始めるけど、理工学部を充実させて行きたいかな、その為には研究環境を様々な意味で整える必要が有るのだけど、予算はどう?」
「将来を見据えたら必要なのですが、まともな理工学部は重荷にしかならないです。」
「会社の研究所を活用して小さく始めるしか無いのかな、大学の理工学部へ進めそうな子はどう?」
「理数系に関する教育体制が充分には整っていませんので多くは無いです、自力で学ぶ理数系の得意な子は会社が欲しい人材ですので、会社の研究所に入って貰うのは賛成です。」
「王立高等学校になるタイミングで理数系教育の強化を考えたいわね。
 王立高等学校で一定のレベルをクリア出来たら、王立大学へ転籍もしくは掛け持ちと言うのはどう?
 会社の研究所は王立大学付属研究所に名称変更して予算を増やすから。」
「王立大学を子ども達の目標に出来れば良いのですが。」
「う~ん…、華々しい実績は期待出来ないけど、子ども達の目に見える研究を考えたいわね。」
「詩織が学長になって学生と交流をするのは負担が大きいですか?」
「それぐらいなら大丈夫だけど…、スタート時から様々な研究テーマと言うのは無理でしょ。
 小規模発電技術など、会社が必要としてる研究テーマが中心になるのかな…。」
「何か入れたい研究テーマが有るのですか?
「日本の大学では、直接市民生活に関係しない研究もされていてね。
 私としては野鳥の研究を進めて行きたいのだけど。」
「それなら…、鳥類を研究し…、今までは娯楽施設を充実させて来ましたが、鳥類に関する博物館や鳥類を中心とした動物園を併設する鳥類研究所を大学の付属施設として立ち上げるのはどうです?
 鳥は詩織のシンボルですから、市民生活に関係しなくても経済効果を期待出来ると思います。」
「そうね、悪くはないのだけど、動物園で自由を奪われてる動物は哀れでね…。」
「そうですか…、でしたら、巨大な檻にして、人間も檻の中に入って観察しますか?」
「う~ん、ちょっと考えてみるわ。」
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近衛予備隊-316 [高校生バトル-74]

 我が国にも大学と呼べるものをと言う声が出て大学設立の検討が始まったが、王立高等学校が充実した教育活動を続けられれば必要性は高くない。
 だが、国が発展しつつ有ると国民に感じて貰うには大学が有っても良い。
 今は研究者より技術者を必要としていて、会社の研究施設も主に工場や農場の改善に取り組んでいるのだが、それらを含め調整し大学にして行く。
 詩織さまと共に皆で話し合い王立大学の概要が出来始めた。

「ジョン、大学の経済学部や教育学部は近衛予備隊改め王立高等学校の優秀な生徒や王国騎士団メンバーに在籍して貰うと聞いたけど大学ってそんな感じで良いの?」
「問題ないさ日本の大学でも推薦入試とか、アドミッションズ オフィス入試とかが有るそうでね。
 シャルロット、新設される王立大学は、近衛予備隊関係と留学生のみで構成するつもりなんだ。」
「私立学校からの入学は認めないの?」
「それは王立高等学校に入学してからでも遅くは無いだろ。
 卒業のない学校だから入学資格の上限を十八歳までに引き上げることにしたんだ。
 私立学校では教えていない我々の理念を学び、王立大学で研究するに足る者だと認められたら、王立大学にも籍を置いて貰う。」
「転籍ではなく?」
「先々は分からないが、取り敢えず王立高等学校にも籍が有った方が何かと便利だと思ってね。」
「えっと…、留学生以外は全員大統領の直属と言うことになるのかしら?」
「そうなるが無理強いはしない、大災害発生時に向けての支援訓練は自由参加だろ。」
「ええ、大災害を経験してる日本からのスタッフが驚いていたわね、自分達が高校生の頃にそんな訓練は全くしていなかったと、自由参加なのに大勢が参加し、ネット上でも就職した近衛予備隊メンバーを含め様々なシミュレーションがなされていることにも。」
「日本だと自衛隊が動くからだろうな、勿論我が国でも国軍が動く、ただ、日本の彼らは自国を守ることに対して他人事みたいな感覚が有ると感じたことはないか?」
「それはうちの一般国民でも同じでしょ。」
「そうなのか?」
「ジョンは大統領になり、警備の関係も有って一般人と話す機会が無くなっているから感覚が変わって来てるのよ。」
「う~ん、そう言われるてみると…。」
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近衛予備隊-317 [高校生バトル-74]

 考えてみると自分の周りには王立高等学校の生徒を含め意識の高い人しかいない。
 生活環境も違うのでシャルロットの言う通り、一般の国民とは感覚にズレが生じていてもおかしくないと思う。
 自分の生まれ育った近くの部落へ行くのにも護衛が付くのだが、命がけで俺を守ると言ってくれる大統領親衛隊を危険な目に合わせたくないので、それすら控えめにせざるを得ない。
 前大統領時代の比ではないが反政府組織は今も存在しているのだ。
 そんな訳で詩織さま同様、王宮から気軽には出られない。
 国境なき合唱団の本拠地、王宮前広場には一般人も入れるが、厳しいチェックを必要とするエリアとなり実質王宮の敷地内。
 そこでは気軽に人と接することが出来るが、ほとんどが観光客。
 家族揃って王宮の一部で暮らしているが、徐々に広げられて来た王宮の敷地内には様々な施設が有るので問題を感じることは無い、ただ国民との交流は限られている…。

「詩織と一般人との交流はかなり限定的ですが、問題を感じることは有りませんでしたか?」
「一人の人間が付き合える人数には限りが有るし、中途半端に交流の機会を作っても彼らの真意は分からないでしょ。」
「ですよね、我々に対しては他所行きの話しか出て来ないでしょうから。」
「ジョンが高等学校の生徒との時間を多めに取っているのは彼らが本音で話してくれるからでしょ。
 それは私も同じなのよ、ジョンは民衆と自分とのギャップを気にしてるの?」
「はい、ふと気付いたら山猿だった頃の自分を忘れかけていまして。」
「社会全体から貧困層を減らしつつ有るのだから気にしなくて良いと思うわよ。
 貧困対策は進んでいるのでしょ?」
「進んでると言いますか…、貧困層の就職斡旋や生活改善を進めて来た結果、かつては貧困層を下に見て差別していた人達の収入を上回り、新たな問題が起き始めています。」
「国民全体が中流意識を持てる社会になるまで、時間が掛かるのは仕方ないわよ。
 今まで自分より貧乏な人がいることで満足していた人達は面白くないのでしょう。」
「そうだと思います、国民の心情を推し量りながら改革を進めて行くしかないのですが、大人を教育して行くことも考えないと難しいです。」
「国立学校には大人も通っているのでしょ?」
「はい、農業に関する知識を学ぶ人や英語を学ぶ観光業の人はそれなりの人数になっていますが、全体を考えたら極一部ですなのです。
 それでも、必要としてる知識を得る合間に、少しずつ社会に関する教育が出来ているそうです。
 学校で学んでいる大人達は、元々学校運営に協力的な人でしたので理解が早いのだとか。」
「自分の生活をより良くする為とは言え、学ぶ気持ちの有る人達は酒とギャンブルが趣味の人とは違うでしょうね。」
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近衛予備隊-318 [高校生バトル-74]

「国立学校のスタート時は誤解も有り混乱しましたが王国騎士団の地道な活動が実り、今はどの学校も地域の大人によって守られています。」
「義務教育制度はどう?」
「義務で有る教科単位全てで合格点を取り義務教育終了証を手にする子どもが増えたことで学校に対する理解が深まっている様です。
 対象年齢を八歳から十五歳としていますが、スタート時に十五歳だった子の多くは十六歳になっても通い続けて義務教育終了証を手にする子が多かったと聞いています。
 早い子は十三歳で終了証を受け取れる内容にしたのが良かったと思っています。
 大人としての最低限の知識を確認して欲しいと王国騎士団が大人達に呼び掛けたことも有りまして。
 今後の会社運営を考え義務教育内容を知っておきたい人や、農業や英語を学ぶついでに学習して義務教育終了証を手にする人もいます。
 自習能力の有る人なら授業を受ける必要が有りませんので増えている様です。
 全てで合格点を取れないまま就職したり学校を離れる子もいますが、そんな子には義務教育実績証明書を発行、何年か先にでも残りの単位をクリアしてくれたらと思っています。」
「私立学校はどうなってるの?」
「カリキュラムに義務教育内容を組み込んで貰い、その学校の卒業証書とは別に義務教育終了証を発行しています、卒業はその学校が、義務教育終了証は国が認めたものになります。
 そんな学校へは国として僅かながらですが助成金を出しています。
 また、福祉団体が運営して来た学校は、その母体を残しつつ国軍が学校運営に協力し義務教育を推進しています。」
「国立とはしないで?」
「国立学校になった所もありますが、共同運営の形を取っている学校も有ります。
 反政府的な教育を行っていなければ、宗教教育を否定しないことにしました。」
「それぞれにお金の出どころが複雑になっていそうだけど。」
「その調整に時間が掛かりましたが、細かい所で揉める様なら大統領令で抑え込むからと王国騎士団に伝えて有ります。
 今の所大統領令は必用とされていませんが。」
「王国騎士団が頑張ってくれてるのね。
 そんな国立学校から、近衛予備隊、名前が変わって王立高等学校へ進む子は増えてるの?」
「はい、力の有る真面目な子にとって憧れで有ることは変わっていません。
 十二歳から十八歳までと受験資格に幅が有りますので、一度不合格になっても再度挑戦出来ます。」
「日本人の感覚だと年下の先輩に教えて貰うって違和感を覚えるのだけど。」
「新兵教育に年齢が関係ないのは国軍と同じです。
 他者を思いやる気持ちを持つことは合格の条件で有り、王立高等学校の校訓ともなりました。
 国立学校でも同じように教えていますし、ずっと年齢に関係なく学んで来た子達ですので当たり前のことになってると思います。
 国立学校では大人も学んでいますからね。」
「日本は学年で区切られた環境で学ぶのだけど、その利点と欠点は然程議論されてなくてね。」
「管理が楽で年長者が気分を害することがないシステムだと聞きましたが、大人になれば年齢に関係なく仕事が出来る人がリーダーとなるのです。
 義務教育では沢山のことを教え覚えさせようとしていません、国民として知っておいて欲しい最低レベルが義務教育、それでは足りないと感じたら選択教科を履修、更に上を目指す子は王立高等学校へ進学、その流れは理解されていると思います。」
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近衛予備隊-319 [高校生バトル-74]

「王立高等学校でも年齢に関係なく…、でも入学年齢が十二歳から十八歳ってトラブルにならないものなの?」
「年長者のことは学校での先輩後輩に関係なく、何故か日本語でお姉さんお兄さん、お姉さまお兄さまとか呼んでいまして、それを楽しんでいる様です。」
「その微妙な違いを分かって使っているのかしら?」
「日本語に興味を持った初期メンバーが解説付きで広めたそうで、姉ちゃん、姉貴、姉御、姉上様と使い分けてるのですよ、自分も参考になりましたが妹に対する表現は限られるのですね。」
「言われてみればそうかも、そこに上下関係が有るのよね…、姉御だけは実の姉には使わないかな。」
「はい、姉御と呼ばれているのは色々と頼もしい女の子だけです。
 まあ、そんな感じで年齢や先輩後輩に関係なく自然に教え合う雰囲気を今までの先輩達が創り上げてくれましたので、変なプライドを持ってる子以外は年齢を気にして無いのですよ。
 上手く人間関係を築けてない子がいればお兄さんお姉さんが気に掛ける、学力的に優秀な十四歳にとっても頼れるお姉さんやお兄さんがいることはプラスに作用していると感じます。」
「いじめとかはないの?」
「表に出て無いだけかも知れませんが報告は受けていません、派閥は有りますが学業やスポーツで競い合い喧嘩をしないのが校訓の一つです。」
「派閥?」
「高等学校内の行事で助け合うグループです。
 元々は新兵を受け入れるチームだったのですが近衛予備隊の拡大に伴い役目が広がりました。
 そのリーダー達が派閥内外のトラブルに気を配っていると思います。」
「グループは色々有るのよね?」
「はい、授業毎にメンバーが変わりますし実習も固定メンバーでは有りませんので。」
「色々な人と繋がれる環境が有れば、いじめは起こりにくいのかしら?」
「元々王立高等学校のメンバーは試験に合格した優秀な子達ですよ、人間関係に関する教育も行っています。」
「成績優秀だから人をいじめないと言う訳でもないのだけどね、国立学校には多くの大人が関わってるみたいだから子ども同士のトラブルは直ぐ発見されると思うのだけど、王立高等学校では寮暮らしの子が多いでしょ。」
「寮で共同生活してるからこそ生徒同士の繋がりが強くなってると聞いています。
 王立高等学校の子達も実習を通して大人と接していますし。
 ただ、自主性や主体性を求められていることも有り、大人に頼りたくないと言う意識が強く、それが頼もしい反面心配な一面なのも事実です。
 でも、詩織がそんなにいじめを気にしてるとは思っていませんでした。」
「いじめは他者より優位に立とうとする本能的な行いでも有り、日本の学校では良く問題なってたの。」
「喧嘩とは違いますよね?」
「対等な喧嘩とは違って一方的なのよ、差別意識に起因してとか程度の差こそ有れどの国でも起きてるみたいだけど。」
「差別意識のことは王国騎士団からの報告にも有りました。
 彼らは様々なトラブルを解決して来たと聞いているのですが、その流れで子ども同士のトラブルが起きにくい環境造りに尽力してくれた様です。
 高等学校の生徒にとって憧れの王国騎士団、その報告は過去のも含めて王立高等学校の生徒達は目にしてる筈です、英語学習にも役立つ読み物に仕上げられていますので。」
「王国騎士団に憧れてる子達はそれを読んでるから問題行動を起こしたりしにくいと?」
「それだけでは有りませんが多少の影響は受けていると思います。」
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近衛予備隊-320 [高校生バトル-74]

「王立高等学校の生徒は品行方正な子ばかりなのかしら?」
「そこまで真面目な子ばかりでは有りませんが、人を傷つける行為をしたら除隊…、今は退学にすると明言しています。
 近衛予備隊としての初期は入隊試験が緩かったことも有りトラブルがそれなりに有りましたが、今はその頃とは違い子ども達にとって憧れの存在になりました。
 それを誇りに感じ互いに注意し合っているのでトラブルは少ないのです。」
「少々羽目を外すぐらいの子の方が、大人になって活躍するとか聞いたことはない?」
「その辺りは近衛予備隊スタート時から近衛隊の人達が色々と企画してくれて、今でも彼らの好奇心を満たす為のキャンププログラムを行っています。
 暫く前に、軽い気持ちで終身刑の人達と共に働いてみたいと言い出した子がいましてね。」
「犯罪に関する教育の一環で刑務所の話を知ったのね。」
「ええ、そのまま山奥の刑務所暮らしを体験させてあげたのです。」
「それって…。」
「心身共に逞しく成長して帰って来たのだとか。
 囚人たちは十五歳の少年とどう接して良いのか随分戸惑っていたとか、その記録を読ませて貰ったのですが、面白かったので本にまとめる様に指示しました。」
「それは興味深いわね。」
「刑務所暮らしから帰って来た子は英雄扱いされたそうですが、本人は犯罪を犯させない環境造りを目指して動き始めたと聞いています。」
「う~ん…、日本の教育システムでは出来ない事だわ。
 授業を受けてる時間は日本と比べたらうんと少ないし、多くの知識を得ることは無いのだけど…。
 ジョン、人が学習することの意味を彼らと共に王国から発信して行きたいわね。」
「自分的には他国の教育環境に追いつけだったのですが。」
「理数系を考えたら追いつけそうに無いと聞いているけど…。
 ねえ、高等学校の新入生が学習で躓くことは何?」
「一番は英語です、英語のテストをクリアし英語での面接を経ての入学ですが、直ぐに生活の全てが英語になって行きます。
 そうなることは入学前から分かっていた筈なのですが、甘く考えてた子達は苦労するそうで。」
「みんな乗り越えられているの?」
「始めは戸惑い逃げ出したくなる子もいるのですが、周りの助けを借りて良いのだからと励ましながら、英語で考える癖を付けようとかの助言、何とか乗り越えている様です。
 面白い話が有りましてね、英語中心の生活していても、全然追いつけていなかった子が、突然普通に理解し話せる様になることが有るのですよ。」
「どういうこと?」
「良く分かっていないのですが、脳の言語が唐突切り替わるのだとか。
 そんな例も有るのだからと励まされるのですが、子どもだから慣れるのは早く苦しむ期間は然程長くないのですよ。」
「厳しそうだけど近道でも有るのね、他の教科はどう?」
「皆、基礎的なことは入学前に学習しているのですが、その再確認を終えてからは苦手教科から離れても良いので、ただ目標としてる仕事によっては苦手教科に取り組む必要が有りまして、化学を苦手にしてる子が多いでしょうか。」
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