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近衛予備隊-361 [高校生バトル-79]

「貧困対策を進めているとはいえ、格差に対して不満は出て無いの?」
「多少は有るみたいですが、畑仕事しかして来なかった人に観光客相手の仕事は難しいです。
 でも、こちらからの農地改革や利益率の高い作物栽培の提案に乗ってくれた人達は、我々の農場と同等の収益を上げています。
 そんな提案に乗らなかった多くの人達は、与えられたチャンスを自ら逃したので文句は言えないのですよ。」
「様子見を決め込んだ人達が損をしたとか?」
「ええ、経済的にかなり優遇する形で募集をしたのですが、それを理解出来なかった人達です。
 子どもと共に農業を学び、少しずつ収入を伸ばしている人もいますが。
 学校ではどんな作物が高値で売れるのか、つまりはマーケットが買い取る価格なども教えていますので。」
「学ばない農家はどうなの?」
「観光客が増えたことにより消費量が増え、仕入れ価格を少し上げていますので、収入は多少増えていると思います、ただ物価を上げていますので実質的には変わらないでしょう。」
「農業では、人手が足りなくなってるとかないの?」
「安くこき使えていた若年労働者が観光業に流れていますので農業も変わらざるを得ません、我々の指導下にある農場では機械化を進め始めています。
 直営農場では雇用を考え機械化を遅らせて来ましたが、今後は順次導入して行きます。」
「機械化は計算が出来ないとマイナスに成り兼ねないと聞いたのだけど。」
「ええ、悪徳業者に高価な農機を買わされ、生産性が向上しても利益は農機の代金に消えたとか、長い目で見ればプラスになるのでしょうが、その前に破綻してしまっては。」
「対策は?」
「リースで効率良くと考えていますが、リース契約の条件として丼勘定だった経理の見直しをお願いしています。
 リース契約を始める農家には、高校生達が経理実習として入っています。
 勿論その経費もリース料に含まれています。」
「自分達で経理をやれてた農家も?」
「そんな農家は有りません。
 我々の指導下で農場経営をして来た所でも、凄く儲かってると勘違いして無駄遣いしてしまう人が居たりとか、経営を理解し切れていない人が多く、その辺りから教育して行く必要が有るのです。」
「高校生に成れない中学生でも、せめて経理の基本的なことは理解して欲しいわね。」
「ええ、将来農家を引き継いで行く子達には、今後設立して行く中学校に入って貰い学習して欲しいです。
 先のことを考えてない農家が多いですから。」
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近衛予備隊-362 [高校生バトル-79]

 王宮中等学校の教員には日本からの留学生も採用した。
 教員採用試験で特に算数、数学の成績が良かった人だ。

「中川さん、小学校と中学校で教え始めて如何ですか?」
「子ども達が素直でのびのびとしてるのが印象的です。
 義務教育の内容が簡単で躓く子が少ないからでしょうか。
 選択教科では一つの単元に時間の掛かる子がいるかと思えば、あっと言う間に終了して先へ進む子も。
 教育実習で初めてここのシステムに接した時は、子ども達の学習進度がバラバラでどうなるのかと思いましたが、単元の終了テストで合格点を取れれば良くて、義務教育内容ではほとんどの子が一回で合格。
 選択科目は一回で合格出来なくても何度でも挑戦出来るし、諦める自由も有る。
 学ぶのは彼らで有って、我々と先輩はその手助けをするだけ。
 それでも、自分の授業や自習時の助言が分かり易いと喜んで貰えまして嬉しかったです。」
「それで、帰国せずにここで働こうと?」
「ええ、ここの学校システムをもっと研究しながら日本の学校について考えてみたいと思いました。」
「日本の学校のことは色々聞いています。」
「バカバカしいと思いませんでしたか?
 義務教育だからと、ほとんど理解出来ない授業を受けさせられてる子がいたり、簡単過ぎて退屈な授業を受けてる子がいたり。」
「全体としての効率は良いのでしょうね。」
「ですが授業を受けてる子達にとって、授業の効率なんて関係ないです。
 ここの学習システムは第一に子ども達のことを考えています。
 分からないことは教師だけでなく先輩にも教えて貰える環境なんて、日本では考えられません。
 教える側にもプラスになりますし、そこに良好な人間関係が出来ています。
 後輩から慕われている子は教科『教える』に対して真剣に取り組んでいました。
 そんなことが年齢に関係なく。
 始めは、年少者に抜かれて嫌な思いをする子を思い浮かべたのですが、気にしてる子は僅かな様です。」
「日本人は長幼の序を重んじるそうですが、ここではあまり気にしません。
 でなければ自分が大統領になることは無かったでしょう。」
「それは大統領のお力だと思います、老人が牛耳ってる組織では様々な弊害が出て来ます。
 論理的に正しいことでも、伝統に反すると言われて押さえつけられたりし国の活性化を阻害しているのです。
 ここに素晴らしい教育システムが有ると知っても、全く気にも留めずに今までの教育を続けて行くことでしょう。」
「まだ試行錯誤していますが、ここの教育システムは良いと思いますか?」
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近衛予備隊-363 [高校生バトル-79]

「子ども達が学習に対して自分から取り組む環境を作り出すことに成功していますので悪い訳が有りません。
 学校が出来た当初からのことを教えて貰いましたが、親の事情により子ども達が寄せ集められたとは思えない程、仲良くのびのびと学習に取り組んでいると感じています。」
「ここへ来るまでに低賃金でこき使われていた子がそれなりにいましたからね。
 彼らは、親がここで働き始め生活が安定したことで労働から解放されたのですが、その時に近衛予備隊の子ども達が生き生きと学び、実習に取り組む姿を目にしたのです。
 学校で学ばなかったら将来は低賃金労働、学べば様々な可能性が広がると教えられ学習に取り組み始め、自分が何をすべきなのか直ぐに理解したのだと思います。
 当初は教育システムが充分出来てませんでしたが、今の形を目指して教師が試行錯誤を繰り返えす姿も彼らにとっては良い刺激になったのかも知れません。」
「その過程で年長者が教えると言うことが当たり前になったのですか?」
「近衛予備隊では当たり前のこと、学校のスタート時は予備隊の子達も学習を手伝っていましたので自然とそんな形が定着して行ったのです。」
「しかし、ここで一番驚いたのは、学習に対する自由度の高さです。
 自由に学習する、学ばない自由が有ると言うのは自分の経験では考えられないことでした。」
「学校のスタートに当たって詩織さまから言われたのは、押し付ける教育では伸びない、自分から取り組んでこそ生きた学習になるということで、安全衛生に関することなど絶対不可欠なことも含め緩やかに始めたのです。
 でも直ぐに、学ばない自由を行使することは自分の将来にとって不利益になると年長の子ども達が気付き始め、年少者にも教えてくれました。
 その段階で個々の能力に違いが有ることを教師が説明しまして。」
「能力には個人差が有り、その活かし方によって将来の収入に差が生じるが、能力によって差別されてはならない、学校が理想としてる社会ですね。」
「はい、詩織さまの教えに沿って、協力し教え合いながら競うことなど、素直な子達ですから直ぐに実行してくれたのです、生活環境が良くなり気持ちが高ぶっているタイミングでも有りましたので。」
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近衛予備隊-364 [高校生バトル-79]

「詩織さまの存在は大きいですね。
 日本には天皇がいますが、自分達が意識することは普段全く有りません。
 でもここの子達はこと有るごとに詩織さまに対して恥ずかしい行いはダメだとか口にします。」
「特別な教育をした訳では無いのですが、この国の改革が詩織さまによって始められたことによって、自分達の生活が良くなってることは誰しもが理解していますし、女神さまでも有りますから。」
「小鳥との映像を見させて頂きましたが、餌付けはしてないのですよね?」
「そうですね、映像を公開してる鳥に餌は与えていません。
 餌になる実を付ける木を、詩織さまの庭園から離れた所に増やしているぐらいで。
 最近、詩織さまがお遊びで芸を仕込み始めた鳥たちは餌を貰っていますが。」
「芸ですか?」
「まだ練習を始めたばかりで、どうなるか分からないそうですが、子ども達を楽しませられるレベルにしたいと話しておられました。」
「企業のトップでも有るのですからお忙しくは無いのでしょうか?」
「小鳥と触れ合う時間は彼女にとって、くつろぎの時間だそうです。
 会社組織は彼女が忙し過ぎることのないよう直属の部下に多くの判断を任せています、それでも日本にいたら断りにくい来客が多過ぎて面倒だからと、この王宮で暮らしていらっしゃるのです。」
「成程、女神さまが忙しくされていては周囲の人達が困りますものね。
 詩織さまの教えは広まっている様ですが、宗教的活動はされてないのですね。
 子ども達は詩織さまの教えを守っているからかトラブルが少ないと感じるのですが。」
「子ども達の中には僅かな収入からも寄付を強要する宗教団体を経験した子もいます、それに対して詩織さまは何も求めず救いの手を差し伸べましたので、自然と広がっているのです。
 日本の学校ではトラブルが多いのですか?」
「自分の子ども時代はそれなりに有りましたが、ここでトラブルが少ない要因としては、同じ年齢の子だけでグループを形成していないことも有ると思っています。」
「子どもの集団は兄弟から始まりますので、同じ年齢だけのグループは不自然です。」
「確かにそうですね、日本では年齢で区切った学年で子どもの社会が形成されていまして。
 勿論それだけでは無いのですが、学習に取り組むメンバーは年齢で固定されているのです。
 固定されたクラスの中で、力関係上下関係が出来て行くので歪んでいるのかも知れません。
 ここでは年齢に関係なく学習に取り組んではいますが、おっきい子が小さい子の面倒を見、時にはしかることも普通、それが本来の子ども社会の有るべき姿かと、自分が気付いていないだけかも知れませんが、人をいじめることも無いようで。」
「無い訳ではないのですが、周りが気付いて対応しています。
 どんな子でも人として尊重されるべき、詩織さまの教えですが、それには子ども達も理解出来る説明が付けられていますので。」
「ですね、何故学ぶのか何故そのルールが有るのかを子ども達が納得してるから、ここの子ども達は生き生きと学習に取り組んでいるのだと思います。」
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近衛予備隊-365 [高校生バトル-79]

「中川さん、日本の学校は授業形式ばかりだと聞きましたが、どうなのです?」
「ええ、日本の学校は自分にとって授業を受ける場所でした。
 その授業は教師次第、早く終わって欲しいと思うことも良く有りまして、退屈で眠くなる授業を苦痛に感じていたのは自分だけではないと思います。
 自分は中学生時代にしばらく入院していたことが有るのですが、退屈な授業を受けなくて良いのが嬉しいのと暇つぶしで自習に励んだ結果、テスト範囲の授業を全く受けなかったにも関わらず、退院後の期末テストで学年順位を大きく上げることに成功、クラスメイトから称賛を浴びました。
 自習能力が有り教材が整っていれば、つまらない授業は必要ないと実感したのです。
 ここの授業は眠く成ったら寝てて構わないのですが、授業時間が短いからか寝る子は居ないです、そもそも自分の意思で授業を受けに来ていますので私の中学生時代とは全く異なります。」
「中川さんの授業は人気だと聞きましたが。」
「おかげさまで盛況です、数学の単元授業、ポイントだけ楽しく説明するのに二十分も有れば充分。
 子ども達は自分達の作ったルールに従って数学バトルプリントに取り組みますが、彼らなりに勝敗を決めた後はそれぞれ教え合っています。
 数学を学習する一つの目的、脳のトレーニングに嵌ってる子達が難しいバトルプリントを要求して来るのは嬉しいですね。
 日本の公立中学では学習に対して受け身の子が多く、受け身だから楽しくないのです。
 自分は入院後の期末テストを切っ掛けに変わりましたが。」
「我が国では理数系の教育が特に遅れていた関係で、有能な技術者が少なく日本を中心とした海外の技術者に頼らざるを得ないのですが、今の教育システムで育てられると思いますか?」
「そうですね…、エミリアとも相談して…、簡易発電所を皆で構築してみるとか、なんなら複数のチームで競い合うというのは如何でしょう。
 そんな体験を通して技術者の道を志す子は普通にいると思います。」
「発電所の業務実習を体験する子は居ましたが、自分達で電力を起こすことには取り組んで来ませんでした。」
「電灯を一つ灯す程度の簡易発電なら子どもでも取り組めます。
 建設中の学校は夜間も開ける予定ですので、通学路を照らす照明を、風力発電や簡易水力発電を利用し、子ども達と共に設置と言うのは如何です?」
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近衛予備隊-366 [高校生バトル-79]

 簡易発電実習に関する中川さんの提案は、すぐに検討され実行することに。
 子ども達には簡単な設計図や必要な物を揃える為の予算書の提出から始めて貰う。
 建設中の中学校へ上がる斜面はホテルからも見えるので、それを意識した照明と言うのが一つの課題。
 高校生たちはサンプル的に簡易水力発電機と簡易風力発電機の制作に取り組み始め、エミリアを中心とした教師グループが助言のポイントを検討。

「中学生たちは何処にどんな照明を付けるのかを考えることから始めたのね。」
「ああ、単に道を照らす照明ではなく、先々は斜面を使った光のアートにしたいと考えている。
 発電装置は試作機で運用を始めつつ改良して行く方針だ。
 まずは試作一号機を目指して七つのグループが動き始めたよ。
 すでに夢中になって発電について学んでいる子達は、エミリアが用意した部品を使って紙製の風力発電機を作り豆電球の点灯に成功したそうでね。」
「ええ、ジェシカが手伝わさせて貰えたと喜んでたわ、邪魔にならないか心配していたのだけど。」
「エミリアとドイツ語で会話する唯一の存在として一目置かれ、小さいながらも電気の基礎を分かっているから、チームでは可愛がられているそうだよ。」
「ジェシカにとって良い刺激になってるのかしら?」
「それは間違いないだろう、中学校が王宮でスタートしてから、お兄さんやお姉さんに構って貰えるのが嬉しいみたいだからな。
 エミリアから教えられた基礎を伸ばせるかどうかは先輩次第かも。」
「おっきい子達にとって小さい子に教えるのは面倒では無いのかしら?」
「彼らはエミリアから、子どものレベルを考えながら何をどこまで教えて行くのが適切なのか研究して行こうと言われていてね、ジェシカは大切な研究対象なんだよ。」
「難し過ぎても簡単過ぎてもダメだとは理解してるけど。」
「その辺りは個々の性格にもよるからな、ジェシカは背伸びしたくて沢山考える、考え過ぎて頭が痛くなるとか言ってるだろ。」
「大丈夫かしら?」
「本人が嫌がっていないのだから大丈夫、幼い頃に頭が痛くなるほど考えると頭が鍛えられるそうだ、多くを記憶するだけでは得られない効果があるのではないかな。
 もっとも、小さい頃にそこまで考える子は多くないからデータ的な根拠は弱いのだけどね。」
「チェスで勝てなくなったシッターがジェシカに日本の将棋を教え始めたのだけど。」
「ジェシカはどうなんだ?」
「今はルールを覚えるのを楽しんでるみたいだけど、負けず嫌いだから…。」
「シッターに内緒で先生を付けるか?」
「先生っているの?」
「店のフロアマネージャーからエリア統括マネージャーになった俺の師匠と相談してみるよ。」
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近衛予備隊-367 [高校生バトル-79]

「ジョン、私の歳になって何が楽しいのかってあまり考えてなかったが、子ども成長に触れるのは最高かもな。」
「自分の指導をして下さっていた時もそんな感覚だったのですか?」
「かも知れない、これくらい出来て当たり前だろうと思う事が出来ない部下を教えるより、少しのヒントで理解してくれる子どもに教えることは気持ちが良かった、ジョンとの時間は自分にとってストレス発散の場になってたと思うよ。」
「お役に立てていたのなら嬉しいですが、娘は如何です?」
「チェスでジェシカに勝てなくなったシッターになら、もう将棋でも負けないだろう。
 語学学習や電気を中心とした学習で鍛えられた脳は中々のものだと感じたよ。」
「小さい頃から多くの学習とは考えてなかったのですが、好奇心旺盛な子ですので。」
「少し極論になるが、まだ幼いから今記憶してることを全部忘れてしまったとても、考える力が身に付いていて将来伸びると思うんだ、暗記力だけの人は面白みに欠けてね。
 ジョンの考える力はどこで養われたと思ってる?」
「あまり大きな声では言えないのですけど、切っ掛けは幼児期だと思います。」
「幼児期のことなら隠す必要はないだろ?」
「純真な子どもでは無かったのですよ。
 部落の人間関係の中で、より怒られず可愛がって貰えることを目指し、大人や子ども達を観察していたと自覚しています。」
「観察結果を生活に反映させていたと?」
「元々可愛がられてはいましたが、怒られるのが嫌で沢山考えていました。
 その結果一緒に悪さしてた兄弟が怒られても自分だけは怒られないだけでなく、それを兄弟が不思議に思わない所まで。」
「なるほど、人間関係は難しいから余程考えたのだろうな。」
「ええ、頭が痛くなるぐらいに。」
「言われてみれば私も幼い頃に将棋を教えられて沢山考えたと思う、それが今の地位とどれだけ結びついているのかは分からないがね。
 建設中の中学校では、通学路を使って簡易発電の実習に取り組んでいるのだろ、こども達はそこで考えてるのかな?」
「ええ、高校生と中学生でチームを組んでいるのですが、高校生の測量実習に参加している中学生は三角関数に取り組んでいます。
 数学として取り組んでいたら今ほど真剣では無かったかも知れません。」
「測量を理解する為に必要な知識ということか。」
「生活に直結する算数とは少し違う数学に触れ始めて来た子にとって、測量と言う作業現場で実際に使われている数学は良い刺激となった様です。」
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近衛予備隊-368 [高校生バトル-79]

「大がかりな工事になると聞いてるがどうなんだ?」
「残したい樹木や岩以外は全面的に造り変えます。
 高校生は斜面の崩落を防ぐ土木工学を学び、地質調査を行っています。
 プロジェクトを立ち上げた頃には考えもしなかったことなのですが重機の操作を学び始めてる子もいるのですよ。」
「彼らは全部自分達の手でと考えてるかな?」
「ええ、指導は受けていますが、安全に配慮し時間が掛かっても彼らに任せてみたいと大人達は考えています。」
「そこでも自由度の高い学校の良さが出そうだな、今は工事だけに集中していても良いのだろ?」
「はい、外国人スタッフから学業の遅れについて質問されることが有るのですが、全く無意味な質問なので、我が国の学校システムを学んでから質問して下さいと答えています。
 ただ、子ども達に任せきることの出来る生きた学習の場は、ここだけでは足りないとも感じていまして。」
「高校生が増えてるからか?」
「それも有ります、今までの実習とは意味合いが大きく異なり、技術者を育てるには良い環境だと思うのです、大人の手伝いをすることがメインの実習とは全く異なりますので。」
「彼らは大統領にそう思わせるだけのことをしてるのだな?」
「ええ、簡易水力発電の為に水路の構築を計画しているのですが、増水時のみに機能する、水を一気に下に流すための水路は中学生がその必要性にいち早く気付きました。
 紙で風力発電を試した子は色を塗って楽しんだのですが、実際に運用する風力発電装置には絵を描こうと、絵は風のない時しか見られませんが、それが回転した時に綺麗に見える様に検討しています。
 また、風車そのものに電球を取り付けたら夜間照明として面白いとか、様々な案が出て来ていまして、簡易発電によるイルミネーション構想が出ているぐらいです。」
「大人に任せるよりも楽しそうだな。」
「ええ、測量と並行して全体の設計にも取り組み始めているのですが、ビオトープや花壇なども計画しています。」
「大人でも散歩に行きたくなる通学路なのかな。」
「散歩出来るかは微妙です、道幅に余裕を持たせ様々な傾斜の道を用意することでトレーニングに使うことを考えてるそうで。
 自分達で作る自分達の通学路を最大限に活かしたいと話してるリーダーもいるそうですよ。」
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近衛予備隊-369 [高校生バトル-79]

 通学路工事は中高生にとってビッグイベントになっている。
 普段は遠く離れた町で学んでいる高校生も交代で作業に来ていて、その世話をするのも高校生。
 それらが、ほぼスケジュール通りに進んでいるそうだから心強い。
 簡易発電には高校生のチームが加わり二十三チームに。
 それぞれが違った形を試行錯誤中で、テスト用に作られた水路には沢山の簡易水力発電機が並び、横には風力発電機が。

「シャルロット、完成した水路の通水試験をジェシカと見に行って来たのだろ、どうだった?」
「漏水は有ったみたいだけど直ぐにふさいで、水路に問題は無いと案内してくれた子が話してたわ。
 歩道もほとんど出来上がっていて水路は一番なだらかな道に沿って流れるの、全て計画図面通りにね。
 一番上に調整池が有って二十四時間ほぼ一定の水量を維持、大雨の時は所々から越水させ一気に下へ流す水路へ、何の問題も無いのかと思ったら、落ち葉などが流れを止めてしまわない様に毎日の点検が必要だそうで、水路の点検と発電データのチェックは中学生の役目になるのだとか。」
「これから順次発電機を設置し夜間照明を始めるのだろ、どうなるのか楽しみだな。」
「ええ、でも子ども達の心は夜間照明に留まってなくてね、昼間の電力をどう活かして行くか考え始めてるのよ。」
「確かに発電しても無駄になる電力だが、簡易発電だから実用的ではないだろ。」
「彼らは玩具程度なら動かせると考えていてね、ここで試してみて上手く行ったら、風力発電装置とセットであちこちに動くモニュメントを設置出来ないかって。」
「観光客を意識してるのかな?」
「観光客が楽しめるネタはどれだけ有っても良いと話してたわよ。」
「確かにな、それでその予算はどうなんだ?」
「私が出して上げても良いのだけど、大統領からとした方が何かと効果的でしょ。
 村長時代から色々頑張って来たお陰で、お金に困って無いのだから。」
「そうだな、担当と連絡を取って上手くやってくれるか?」
「ええ、動く大統領人形なんてのを考えてたから、真っ先に作って貰うわね。」
「そ、それは…、微妙だな…。」
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近衛予備隊-370 [高校生バトル-79]

 水路の完成から、斜面に明かりが灯り始めるまで時間は掛からなかった。
 指導には王国騎士団メンバーや王立大学の先生も参加していたので不思議な話ではない。
 だが、そこからは自分が想定していなかった方向に話が進み…。

「詩織、子ども達が改良した簡易風力発電装置を商品化することになりました。」
「どんな形で?」
「メインはモニュメントですが、災害発生時に避難民を安心させる為の明かりとしてです、四角い風車には優しい絵が描かれます。
 風が無かったら人力で発電することになるのですが、明かりと共に通信機器の充電にも使えると目論んでいまして。」
「需要は見込めるの?」
「国内需要は微妙ですが、デザイン面を見直しながら輸出を考えています。
 普段は動くモニュメントとして人の目を楽しませ、災害時には照明とスマートフォンの充電に使えるのなら需要は有ると、遠江サイドも乗ってくれました。」
「確かに、あの気の抜けるレベルでゆっくり動くモニュメントと、風次第の風力発電装置は今の日本人になら受けるかもね。」
「以前の日本人には受けなかったのですか?」
「効率ばかりを追い求めている人の目にどう映るのか分からなないわ。
 日本なら安定感の有る簡易水力発電装置にも充分な需要が有るかもよ。」
「水路が必要なのですが。」
「丈夫で照明には充分な電力を得られているのだから商品化出来ると思うわ。
 まずはこの国の道路に街灯を増やすことを考えてみたらどう?
 風力では安定しないでしょ。」
「はい、ただ、水の取り入れ口にゴミが溜まると止まってしまいますので、子ども達がその対策を検討している所なのです。
 通学路の発電機は毎日点検していますし、流れて来る木の葉はぐらいは問題なく通過させられる装置も有るのですが、それでも商品化となるともう少し改良を加える余地が有るのだとか。」
「それで、まずは手動でも電気を起こせるタイプの風力発電装置にしたのね。」
「観光客からのリクエストなのですよ、水は貴重だが風はそれなり吹いてる国の市長が遊びに来ていましてね。」
「通学路の斜面がそのまま商品サンプルになったのかしらね。
 これからイルミネーションを始めて行くのでしょ、電力事情の悪い国中心に売り込んだら?」
「ええ、近衛隊メンバーが助言してくれたので子ども達もその気になっています。
 そんな訳で彼らに我々の子会社設立を許可したいのですがお許し願えますか?」
「高校生が新会社を設立したいと?」
「大人達に誘導して貰ってのことですが、彼らにはその力が有ります。
 大人の手助けをする実習ではなく、助言を受けながらも自分達で企業運営に取り組む実習から得られるものは大きいと思うのです。」
「そうね、まずは事業計画を出して貰おうかしら、会社組織は直ぐに出来そうなの?」
「高校生達は学習の一環として仮想の企業を立ち上げ仮想の取引をしています。
 でも、仮想より現実の方が面白いと思いませんか?」
「なるにしてほどね、彼らからの事業計画を楽しみにしていれば良いのかしら?」
「ええ、仮想世界の株式会社は既にそれなりの形になっているのですよ。」
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