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正月-291 [花鈴-30]

「この地に魅力を感じてくれてるのなら…。
 でも、売れるデザインを作り出せるかは別問題よね。」
「彼女を通して学生達に呼び掛ければ姫に納得して貰える作品が出て来ると思います。
 当然プロよりは安く契約出来ますし、彼らにチャンスを与える事にもなります。」
「全部却下しても怒らない?」
「そうはさせません、姫の好みはある程度把握していますので、それを彼らに伝えれば…。
 自分の彼女は結構器用で、絵画から漫画ちっくな物まで描けるのです。
 姫の肖像画や姫をアニメチックに描いたものまで用意し、今度連れて来ますので楽しみにしていて下さい。」
「自信が有るんだ。」
「自分は全く絵が描けないのですが、彼女の描く絵に感動しまして。
 絵で人の感情を動かせるって凄く無いですか?
 著名な画家で無くとも一般庶民の心に届く絵を描けるのですよ。」
「それは楽しみね、モデルとしてはじっとしていなくては行けないのかしら?」
「いえ、写真や映像を見て描いて貰いますから姫に負担は掛けません。
 姫本人を実際に見て描いた方がより良いものになるのかも知れませんが。」
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正月-292 [花鈴-30]

「正月らしく楽しい話ばかりですが上手く行くのでしょうか、姫にとって不安材料は無いのです?」
「勿論全ての事業を成功させられるとは思っていないけど、今取り組んでる、若しくは取り組もうとしてる事業は、相乗効果を生み出せるし協力体制を作れると思うの。
 毎日同じ仕事で良い人がいれば、それでは飽きてしまう人もいるでしょ。
 大切なのは働いて下さる方々が仕事に対して前向きに取り組める環境を作り出すこと。
 既に月水金はお年寄りのお世話、火曜は経理事務、木曜は畑仕事って人もいるのよ。
 以前はお年寄りのお世話だけしていた人なのだけど、違う仕事もする様になりお年寄りとの話題が増えたとか。」
「そっか、お年寄りの中には畑仕事をしてた人もいるだろうし、事務の現場では違った情報が入って来るのだろうな、噂話とか。」
「デイサービスだけで働いていたのでは接する人が限られるものね。
 人脈が広がるのは楽しいかも。」
「従業員が仕事に満足して働いているのなら問題は起きにくいのかな?」
「うん、株式会社花鈴の人達を見てると皆さん明るくて。
 姫に残念な思いをさせたくないと仕事に前向きな人ばかりですよね。」
「他社を出し抜いてまで金儲けを考える必要は無く、社員に充分な給料を払った上で黒字ならそれで良い、株式に対する配当は気にしなくて良いと言うのが大株主の意向だからな。
 上場している大企業では通らない理屈だろうが、株主は全員姫の家族。
 それを知り自分は一気に大企業志向が失せた、社畜には成りたくないよ。」
「大社長は社内起業の可能性を熱く語ってたよな。
 ご自身は先代の事業を引き継ぐ形で社長となられたが、意欲と力の有る若者にはチャンスをと。」
「姫はお父さまのそんな発言をどう捉えているのです?」
「あら、私も意欲有る若者の一人よ。」
「若過ぎるけど…、そうだよな…。」
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正月-293 [花鈴-30]

「姫は能力が高いですから周りの同級生を幼く感じることが有るのでは?」
「そうね、無いと言えば嘘になるけど、私も普通に子ども、してるからね。」
「普通にですか…、シミュレーションゲームの感覚で過疎地の再生を考えていたりとか?」
「う~ん、ゲームと違いリアルに人の人生を動かす事も有る訳で…。
 でも、起業してとか、社の業績を上げようと努力してる人達にはゲーム感覚が有るのかもね。
 自分の考えた事が形になり収益を生み出す。
 成功してる人にとっては、仕事とは言えゲームと同じ感覚かも。」
「他人にプログラムされ、その手のひらの上で遊ぶゲームでは無く、自分でプログラムを考え進めて行く、起業する人達はそこが面白くて賭けに出るのでしょう。
 そんなのに憧れるのだけど私にはネタがなくて、せめて誰かの起業に乗っかって新たな事業展開を楽しみたいのだけど…。」
「だから、この場にいるのかな?」
「かもね、出来上がった企業に就職しても面白くないと考えていたし、ここでの合宿に参加してみたら田舎暮らしも悪くないと思えて。」
「ブルーベリーの観光農園立ち上げに参加してみます?」
「姫、それって株式会社花鈴へのお誘いと考えて良いのですか?」
「ええ、大変な作業は男性にお任せして。」
「いえいえ、力仕事だってやりますよ、体を動かす事は好きですから。」
「おいおい、里中を狙ってるのではないだろうな?」
「彼女のいる里中さんなんて狙いませんよ。
 それより姫ともっとお近づきに成れたら嬉しいかな。」
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正月-294 [花鈴-30]

「そうだな、姫は特別な存在、自分が小学五年生だった時とは全く違った事を考え人々を動かしている。
 単に血筋だけの姫に仕えるなんて考えられないけど、花鈴姫になら仕えたいかも。」
「株式会社花鈴への就職希望か?」
「そうだな、この合宿所での生活を経験してから自分の価値感が変わって来たんだ。
 満員電車で通勤する都会暮らし、一流企業での仕事では得られないものがここには有るだろ?」
「この新年会に参加してる俺達は姫によって洗脳されてるのかもな。」
「洗脳だなんて…。」
「人としての幸福を金に求めるのか、豊かな自然に囲まれた暮らしに求めるのか考えさせられた。
 ブラック企業で働くなんて考えられないが、優良企業で有ったとしても上司の顔色を伺ってとか。」
「株式会社花鈴の人達は心に余裕が有るからか皆さん笑顔なのよね。」
「一流企業の競争社会で勝負をと思ったことも有るが、今は田舎の再生事業に心が動いてましてね。
 姫、自分を雇ってくれる余裕は有りますか?」
「余裕と言いますか…、ご自身で自分の給料を稼いでみせるぐらいの気持ちが有る方なら歓迎します。」
「そっか、安定した大企業に就職出来たら色々安泰なのだろうけど、大企業の子会社とは言え小さな会社では不確定要素も…。」
「だから面白いんだよ、俺達レベルで過疎地の再生を考える人は少ないだろ。
 俺は、チャレンジしたいと思って株式会社花鈴への就職を決めたんだ。」
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正月-295 [花鈴-30]

「三年生の一月にか?」
「株式会社花鈴の社員募集では学歴不問と有ったからな。
 一応大学は卒業するつもりだが、四年生の間に必要な知識を得、資格を取りつつ、学生社員として出来ることをする、そんな雇用契約を結んで貰ったんだ。」
「そんな人が既に何人か居るとは聞いていたけど。」
「就職してからあまり役に立たない知識を得る為漠然と大学に通うより、社員として補助的な作業をしつつ必要な知識を得、資格を取った方が効率的だろ。
 大学を優秀な成績で卒業した所で、就職後に役立つことを何も学んで無かったとか有り得ると思わないか?」
「就職してみないと分からない所が学生の内に就職して置けば分かると言うことなのね。」
「自分の場合、特にどんな企業に就職したいとか無く学生生活を送っていたからな。
 就職活動を意識し始めた時には合宿所で夏休みを過ごしていたんだ。
 姫にお仕えしたいと言う感覚は理解して貰えないかもだけど、姫の会社がブラック企業でないことは皆も理解してるだろ。」
「そうね、私は大企業に就職して安定した生活をと考えていたのだけど…。」
「大企業の子会社を成長させ安定した状態に自分の力で引き上げる、完成した職場に新入社員として配属されるよりワクワクするし、姫の下でならリスクは少ない。
 自分は田舎暮らしに抵抗は無いからな。」
「里中みたいに養子になるとか?」
「そんな事は考えてないけど、ここにずっと住んでいたいとは思っているんだ。」
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正月-296 [花鈴-30]

「田舎への移住か…、不安要素は無いのか?」
「結婚相手を見つけられるかどうかが最大の問題点かな、普通に結婚したいとは思っているから。」
「ここにはこの先も大学生が研究や実習で来ることになっているのだから、出会いの場はそれなりに有ると思うわよ。」
「だと良いが。」
「ここに来る学生は田舎暮らしが嫌と言う人では無く、むしろ田舎暮らしに憧れて来るのだから大丈夫。
 私も合宿所の周りに花を植えたりして、都会のマンション暮らしでは味わえない楽しさを感じたのよ。
 住民の方々とは良好な人間関係を築けているしね。」
「そりゃあ、お年寄りでも若くて綺麗な女子大生と仲良くなりたいだろうからな。
 大社長がここへの本社移転を考えなかったら年寄りばかりだった訳で、住民の意識調査を行ったチームによると、花鈴姫達のことを自分の孫の様に思ってる人ばかりだとか。
 まあ、あちこちの施設で姫関連の動画を流してることも有るのだろうけど。」
「姫の動画は自分の住む土地で撮影されたものだから親しみも湧くのだろうな。
 デイサービスでは勿論のことだけど、クリニックでの待ち時間に見たとか聞いたよ。」
「そっか、お医者さん達も協力して下さっているのね。」
「昨日行った店でも姫の動画が流されてた、まあ、この地の姫なのだから当たり前のことか。」
「自分は姫にお仕えするつもりだけど、ここの皆さんが姫に対してどの様な感情を抱いているのかは知っておきたいかな。」
「姫にお仕えするなんて、お主、何時の時代を生きているんだ?」
「令和の時代だからこそ面白いのだよ、ブラック企業の上司にこき使われるより一億倍は良いからな。」
「そうね、価値観は人それぞれだわ。
 姫、私も学生社員から始めてみるって有りかな?」
「本間さんなら問題無いです。
 転職したくなったら、それも応援しますからね。
 本気なら相談に乗りますよ。」
「小学五年生が大学生の就職相談か…、どう表現すれば良いのか分からない状況だな…。」
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正月-297 [花鈴-30]

「小学生だろうが能力が高ければ尊敬出来る、だから皆、姫と呼んでるのだろ。」
「だな、俺は姫にお仕えする事に何の抵抗も感じていない。
 前は主君に仕える家臣の気持が分からなくも有ったが、姫には随分教えられたからな。」
「えっ、特に何かを教えた記憶は無いのだけど。」
「直接何かを教えて貰った訳では無く、姫の活動が自分の価値感を変えたのです。
 社長令嬢なのだから遊んで暮らしていても良い、むしろ小学生なのだからそれが当たり前の所を、この地を活性化する為に多くを学び、人々にアピール。
 そんな姫を支える一人と成れることを誇りに思っているのですよ。」
「私も、ここでの活動はドキドキワクワクが止まらないのよね、だからこの新年会に来てるのだけど。
 この先どうなって行くのかは分からないけど、私も姫と共に歩んで行きたい。
 姫、私にもチャンスを下さい。」
「近藤さんなら普通に大企業に就職出来、そのまま出世出来そうだけど。」
「そこに面白さが存在しない可能性を意識し始めているのです。
 株式会社花鈴は未完成だからこその魅力が有ります。」
「完成された企業では上司に言われた通りに働くだけに成り兼ねないものな。
 株式会社花鈴の社員達は積極的に事業展開の提案をしていて…。」
「だな、介護の現場で働いてる人は、事業主が株式会社花鈴に変わってから自分の提案が通り易くなったと喜んで見えたよ。」
「その辺りも姫の影響なのですよね?」
「いえいえ、そこは社長の人柄です、田中社長は懐の深いお方ですので。」
「姫は小学五年生ながら周りの事が見えていると感じます。」
「ちょっと待った~、何か企んでいるの?」
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正月-298 [花鈴-30]

「企んでいますよ。
 我々の仲間は株式会社花鈴の社員になる者だけで無く都会での就職を考えてる人もいます。
 でも、都会で就職してもこの地を故郷の様に想いたいそうでして。
 この地のシンボルは花鈴姫ですから、姫を中心とした組織を作りたいと考えています。」
「組織?」
「緩やかに関わりたい人と株式会社花鈴の社員としてがっつり関わる人が居る訳ですが、姫をお守りして行きたいと思ってる人の集まりです。
 名称は未定なのですけどね。」
「そんな動きが…。」
「姫に負担は掛けませんが、我らが姫として君臨して下さればと。」
「そんな大げさな…。」
「この合宿所で過ごした経験を忘れたく無いと言う気持ちも有ります。
 姫のおかげで掛け替えの無い経験をここで出来ました、様々な出会いが有り結婚を意識しているカップルもいます。」
「深く考えずお遊びの延長で姫の家来たちが組織を作ると考えて下されば良いのですよ。
 勿論、自分達のお遊びだけで無くこの地の発展を考えて行きます。」
「そっか…、そう言うのも有なのかな。」
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正月-299 [花鈴-30]

「組織に関して姫から何かご希望、有りますか?」
「う~ん…、今までも皆さんには色々手伝って頂いてますので特には無いですが、社員の待遇や給料面を無理無く魅力的にすることを考えて貰いたいかしら。
 給料は多ければ多いほど良いのだろうけど、限りは有るでしょ。
 少なくとも安心して子育て出来る形にはしたいと思っているのだけど。」
「株式会社花鈴への就職を希望してる連中にとっては重要なことだな、社員からの不満は?」
「買収した事業所は待遇改善を進めて来ましたから今の所、問題は起きて無いけど、先々は…。
 老人福祉事業で得られる利益は限られるから裏技を使って収入を増やしていても限りが有るのよ。」
「赤字にはしたく有りませんものね。
 介護認定要支援の人達に働いて貰うと言うのは上手く行ってるのですか?」
「ええ、細やかだけど、職員の給料に充てたいと言う話を受け止めて下り、熱心に民芸品の作成に取り組んで下さってる方もおられます、暇つぶしに調度良いそうで。
 足が悪くて介護認定的には要支援になっていても、手は動くし頭も衰えて無いのです。」
「姫、仮設店舗でその民芸品を売っていますが、手作り感が人気で直ぐ売り切れなのですよ。
 お客さんには大量生産とは違うと感じて貰えている様で、製造販売の経緯は掲示して有るのですが、それに関係無く購入して頂いてます。
 素朴な物から凝った物まで、少し高めの価格設定にしたつもりでしたが高価な物の売れ行きが良くて。」
「お金に余裕の有る人達は、気に入れば少々高くても気にならないのでしょうね。
 安売りする必要の無い物までが販売競争の結果、薄利多売を進められた事により、経済的に余裕の無い社会になってしまったと聞きましたが…。」
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正月-300 [花鈴-30]

「自分は仮設店舗での販売実習で、兎に角安い物を求める人と、値段に関係なく質の良い物を求める人の存在を肌で感じる事が出来、良い経験となりました。
 どちらが、と言うことでは無いのですが…。
 安くても元が貰いものなら利益は大きいとか、質の良い物は高めに価格設定をした方がかえって売れると教えられまして。
 それから調べてみたのですが、物流の現場では他社より安くと競争した挙句、結局は自分達の首を絞める結果となり、労働者を守る法改正後にどうなるのとか…。
 ここは運送会社にとっても利益率の悪い土地だと思うのです。」
「そうなのよね、このエリアへの配達代行会社とかは意識していたのだけど、進めるべきなのかな?」
「姫はどんな形をイメージしておられたのです?」
「複数の宅配業者の下請けとなり、各業者の拠点で集荷してまとめて配達、業者毎に配達するより効率的でしょ、うちは移動販売もしてるから、そのついでにとかね。」
「株式会社花鈴で運送会社を立ち上げますか?
 大儲け出来る会社では無くても色々な意味で社会貢献は出来ると思うのです。」
「そうね、調べて貰ってはいたのだけど、全体で消費する燃料を削減出来、人も。
 大手運送会社にとっても過疎地は利益を出しにくいエリアなのは間違いないのだから。」
「では、我々が姫をお守りして行く組織構築と共に動いても構わないですよね?」
「ええ、会社員となるまでの実習感覚になるのかしら?」
「はい、大学生が主体となる組織ですので。
 株式会社花鈴の子会社として運送会社を設立する方向で進めて宜しいですか?」
「社長に話を通してからになりますが、物流に関する相談もしていましたので問題無いかと。」
「うわ~!」
「真理どうした?」
「小学五年生が本当に会社を動かしてる現場を間近で見ることが出来て感激してるの。
 普通の小学五年生は物流に関する相談なんてしないでしょ。」
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