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夏休み-81 [花鈴-09]

 婚活パーティーの翌日に参加者の一部が集まり楽しんでいたと言う話が伝わって来た。

「山根さんもパーティー翌日の集まりには参加したの?」
「いえ、美咲さんと後片付けをし、今後どんなイベントを開いて行くかの相談とかしてまして。」
「あら、もうお相手を決めてしまったのかしら?
 孫を嫁にと話してた方々が、がっかりなさるかもね。」
「いえいえ、そこまで話が進んでいる訳では有りません。
 ただ、普段の支所に若者は僅かですので彼女は嬉しかったそうです、姫に感謝してましたよ。」
「確かにそうね、若者の定義をかなり甘くしても支所で若い職員に出会うことは難しいもの。
 既婚者でも構わないから、ここの平均年齢を下げたいわ。」
「我々の移住で随分変わったと言われてますが、更にと言うことですね。
 ただ都会の住宅地でも高齢化が進んでいるのです。」
「みたいですね、お父さんの話では少子化の責任は企業に有るそうだけど。」
「それを訴えてるのは纐纈社長ぐらいですよ。
 実際、若者が結婚し子どもを産み育てることを意識することなく、ただ人件費を抑えることしか考えなかった企業が少子化を押し進めて来たのです。
 人件費を抑えて来たから経済が停滞、色々優遇されてるお年寄り達はお金を溜め込んで墓場まで持って行こうとしてますので。」
「皆さん倹約家なのね。
 ここの人達も?」
 はい、ただ会社を再編することを伝えた時に我が社の方針も話したのですが、安定して会社が継続されるのであれば金銭的な負担増は仕方ないと言って下さる方が多かったです。
 前のオーナーは少し遠慮し過ぎていたのかも知れません。
「移動販売は売り上げが限られてしまうと皆さん理解して下さっているのね。
 ただ、生活に余裕の無い方はどう?」
「それが微妙に分からないのですよ、お金が有っても家は老朽化が進んでると言うお宅が有ったり、その逆も無いとは言えなくて。」
「それぞれの事情が有るのでしょう。
 生活費の足しになるのかどうか分からないけど、暇つぶし程度に店で売る物を作って貰う話の方はどう?」
「趣味や暇つぶしで色々作ってる人は何人か見つけましたので話はしています。
 デイケアセンターの人達が機能訓練を兼ねて作ってる物よりは高値で売れると思いますし、まともな値段を付けても売れそうな作品を作ってらっしゃる方も。
 売るつもりは無くても置き場に困ってると言う方もみえましたので店の完成が待ち遠しいですね。」
「そっか、では秋の行楽シーズンを狙って、本社ホールで展示即売会とか開いてみる?
 木造の本社を見学に来る観光客が少なからずいるのだから、中を見られるチャンスと思ってくれる人がいるかもでしょ。
 何が幾らぐらいでどれぐらい売れるのか見極めたくも有るの。」
「そうですね、それなら期間を二週間以上にし、婚活イベントの日程も重ねます。
 秋にはホールを使わずバーベキューをすることを考えていましたので。」
「ついでに婚活イベントに参加なのか、婚活イベントのついでに展示会を見学なのかは微妙でも、ついでには私達のキーワードだものね。」

 こんな感じで株式会社花鈴のイベント部門は進んでいる。
 一方学生達との交流は…。
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夏休み-82 [花鈴-09]

 八月になった頃。

「花鈴姫、ようやく大学の試験が終わって皆のんびり出来そうです。」
「えっ、徳沢さん達には竹林再生と言うミッションを差し上げたので、のんびりされても…。」
「いえいえ、ちゃんと取り組みますよ。
 作業は朝の涼しい時間帯に一時間程度と話して下さったのは姫では有りませんか。
 竹林再生に向けての準備はして来ましたので効率良く計画的にと考えています。
 まずは道路側から竹を間引き人が竹林内へ入れる様にする所から。
 慣れない人が多いので安全の為、足元の整備を優先して作業に取り組みますので時間は掛かるでしょうが、チェーンソーを使ってみたいと思ってる人達は、その使い方講習と安全研修をすぐに始めます。」
「そうね、怪我をしたら許さないから。」
「はい、消防団の知り合いに指導をお願いしましたが、第一に安全だと言われました。」
「そっか、徳沢さんの仲間も地元の人と交流するのね。」
「勿論です、サークルのメンバーにとっては田舎を知ることが目的の一つ、都会育ちの我々は過疎の問題を言葉でしか知らないからと呼びかけて集まった連中ですから、合宿生活を送りながら色々体験したいと考えています。」
「体験内容は具体的に決まったの?」
「消防団の人達からアドバイスを受けて幾つか、後は田中社長と相談中です。」
「我が社の活動を手伝ってくれるのかしら?」
「ええ、そのつもりですが、何かしらの見返りは有りますよね?」
「そうね、新たなミッションを差し上げましょうか?」
「新たなミッションって、労働を頂いても見返りにならないのですが。」
「ここでお金儲け出来る案を出してくれたら、それを会社が実行、利益が出たら合宿所の運営費を補助出来ると思うのだけど。」
「それなら皆と相談しますが、体験とは言え労働に対して分かり易い見返りは頂けないのですか?」
「私は徳沢さんに対して分かり易い見返りを求めたから、徳沢さんは動き易かったのだと思いません?
 見返りを求めないのが美徳だと考える人もいるでしょうが、良い形でギブアンドテイクを成立させるには互いの要求を明確に示した方が早いのですよ。
 何かしらの見返りと言われたら、私は徳沢さんの為に考えることが多くなってしまうのです。
 曖昧な要求では無く、具体的に要求することは大人として大切なことなの。」
「は、はい、自分が考え足らずでした、それも皆と相談してからお願いにあがります。」
「田中社長に話してくれて良いのよ、私から伝えておくから。」
「お願いします。」
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夏休み-83 [花鈴-09]

 徳沢さんは学力が高くて大学に合格出来たのだろうが物足りなさを感じさせられることが有る。
 つい中学生の兄と比較してしまうのだが、兄は父と難しい話をしてるからか視野が広いのだ。
 小学五年生の私に従順なのは私にとっては良くても本人にとってどうなのかと思うことも。

「徳沢さんはインターンシップに興味は?」
「ここでの調査が有りましたし公務員を考えていますので考えていませんでした。」
「父が来年を目途に本社でのインターンシップ実施を考えているのですが、折角大学生が来てくれているのだから少し話を聞かせて欲しいと話していまして、飲食などの見返りは用意しますが如何です?」
「本社を見学さえて頂けるのなら皆喜んで参加すると思います。
 名古屋での会社説明会に参加した人も来ていまして本社を見学したいと話していました。」
「それなら日程の調整だけで済むのかしら?」
「今夜にでも全員に話しますが、調整はどのように?」
「そうね、総務の担当と直接話せる様にするわ。
 学生側の窓口は徳沢さんで問題ないの?」
「大丈夫です、もし一回だけでなく継続されるのなら、入社を希望してる男に担当させます。」
「そんな人がいるのなら父も喜ぶと思います。
 う~ん、いっそのことインターンシップのプログラム作成に参加とかどうかしら?
 父に連絡しますので、その人に直ぐ連絡取れないか確認して貰えませんか?」
「えっ、今からですか?」
「善は急げって言葉を知らないの?」
「それにしても…。」
「その人が真剣に入社を考えているのであれば、今日中に会って話したいと思うのだけど。
 勿論、そこまで意思が固まっていないので有れば無理にとは言いません。」
「分かりました連絡してみます。」

 早ければ良いと言うものではないが、この件は早く動いて損は無いと感じた。
 会社説明会に参加しただけでなく本社の立つ地で過疎地の体験をしようと思う人なら父の考えを理解してるだろうし、私は彼が国立大学の学生だと言うことも判断材料にしている。
 少なくとも入学試験に合格出来なかった人より入試に対する能力は上回っているのだから。
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夏休み-84 [花鈴-09]

 徳沢さんが連絡してくれて急遽会うことになったのは中沢さんと藤田さん。

「中沢さんは父の会社が就職の第一志望なのですね。」
「ええ、社員を大切にする会社の経営方針に憧れが有り、ぶっちゃけ今回の滞在は就職に有利だろうと言う下心も有ります。
 こうして姫さまに本社を案内して頂いたことを、後々自慢する為にも就職したいです。」
「下心が有るのは嬉しいですが、本社勤務は如何です?」
「何の問題も有りません、ここからならスキー場も近いですし。」
「都会生活に拘りは無いのですね?」
「ええ、ここはそんなに不便でも無いです、バイクを走らせるにしても信号だらけの都会には無い良さが有ります。」
「成程、藤田さんは?」
「サークル活動への参加は、人には話していませんでしたが会社を意識してのことです。
 ぼんやりと田舎暮らしに対する憧れが有りまして。」
「父は来年からここでのインターンシップを始める方向で指示しているのですが、田舎に移転した本社でのインターンシップに大学生がどう反応するのかは未知数、もしお二人が父の会社への就職を本気で考えていて下さるのなら、本社業務に触れたり子会社で有る株式会社花鈴の仕事を手伝ったりして頂けたらと思ったのです。
 勿論給料は会社の規定通りに支払われます。」
「仮採用みたいなことになるのですか?」
「中小企業ではアルバイトから正社員になる人がいると聞いています。
 直ぐに正規雇用とは出来ませんが、ここでの働きによっては大学卒業を待つ必要はないと考えています。」
「それは…、学生の内から社員に成れる可能性が有ると言うことでしょうか?」
「その辺りの選択肢を広げて良いのではないかと父は考えています。
 早く仕事に慣れたいと考えるか、気楽な大学生活を最後までエンジョイしたいと考えるかは人それぞれですが。」
「私は学歴が大学中退の高卒になったとしても働きたいです、奨学金と言う名の借金を抱えたことに気付かされましたので。」
「でも大卒の方が就職に有利ですよね。」
「株式会社花鈴もですか?」
「うちはそれ以前に採用予定が無いです、う~ん、もしアルバイトとして働いて正社員を必要をとする仕事を自ら作り出して下さるのでしたら…。
 でも折角ですから卒業は…。
 そうですね、小枝子さんのブログやYouTubeチャンネルはご覧になってますか?」
「はい、ピーマン関連が楽しく仕上がっていますし。」
「彼女に新しいネタを提供出来るかも知れません、小枝子さんとも相談してみましょう。」
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夏休み-85 [花鈴-09]

 色々相談した結果、中沢さんと藤田さんはうちのアルバイトとなった。

「花鈴姫、徳沢は姫にとってどんな存在なのです?」
「そうね、雑事を任せられる頼もしい人、少し成長して見返りを求めて来る様になったわ。」
「成長して?」
「お坊ちゃん育ちだからか社会のことを知らなくて、社会学的観点から色々話して来たの。」
「う~ん、姫は大学生に指導している小学五年生なのですね。」
「中沢さんは居酒屋でのバイトを通して視野を広げて来たし、藤田さんは奨学金の問題から社会制度のことを考えてるでしょ。
 彼はバイト経験が無いからか今でも理想論に走りがちなの、公務員を目指しているのは有る意味正解なのかも、悪い人ではないから消防団で可愛がられていてね。」
「完全に上から目線ですね。」
「彼が私達の調査に来てるのだからと言って、こちらが下手に出る必要は無いでしょ。
 私の指示に従って行動することによって調査対象の一人で有る私のことを知ることが出来るのよ。
 始めは彼の方が上から目線だったのだけど。」
「花鈴姫から色々教えられ反省してるとは言ってましたが…。
 姫は社会学的な考えをどの様に学んで来られたのです?」
「ベースは両親との会話です。
 毎日の夕食時間は私にとって学びの場なのだと、株式会社の会長に就任してから強く感じています。」
「纐纈社長から指導して頂けるなんて、羨ましいです、先日出された本も売れてますよね。」
「ええ、そこからの収入は我が社へ投資して貰うことになってまして、お二人への給料は本を買って下さった方々のお陰なのですよ。」
「そうでしたか、ならば安心して働けます。
 何とか自分の力で自分のポジションを確立し就職に繋げます。
 自分の仕事を自分で作り出して就職するなんて聞いたことが無いですから。」
「そのまま部長とか?」
「仕事の内容にもよりますが、新入社員は係長からぐらいが良いかと。」
「藤田さんはどう?」
「新会社に娘の名を付け会長に、花鈴姫に会うまでは娘に甘い社長かと思っていましたが色々考えておられるのですね。
 木の香がほのかに漂うこの本社の一室で大学卒業後に過ごせる様、頑張ります。
 中沢君の部下になるか上司になるかは分かりませんが。」
「お二人はライバルですか?」
「そうですね協力してことに当たりますが、どちらが上司になるべきかは共に働く内に見えて来ると思っています。
 共にこの地を気に入った、株式会社花鈴の仲間です。」
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夏休み-86 [花鈴-09]

「我が社の現時点での概要は掴んで頂けましたか?」
「はい、売り上げを伸ばしにくい移動販売を抱えていますので、新店舗で如何に稼ぐかですね。
 明日からは国道の交通調査を疲れない程度にやってみようと思います。」
「どんな調査なのです?」
「交通量調査はナンバープレートを見てカウントするのですが、我々は乗ってる人の顔を見てどんな人達がどれぐらい国道を利用してるのか大雑把に掴もうと考えています。
 夏休みと言うことを計算に入れつつ、店の需要を推測しようかと。
 場所はケーキ屋さんの所です。」
「そういうアプローチも有るのね。
 う~ん、ついでに野菜を売ってみる?」
「菜園の野菜は関係者の胃袋に納まると聞いてますが。」
「野菜を貰って来る話は出来てるから、一声掛ければすぐに仮設の八百屋さんを始められるの。
 野菜がどれぐらい売れるのかを知っておきたいのよ、地元の人で野菜を買う人は少ないから国道を通る人達をターゲットにね。
 暇そうな学生に手伝って貰えば良いと思うな。
 お爺さんお婆さんでは無く学生が売ってたら興味を引くと思うの、見返りとしては売り上げの何%かを、そうね契約書を交わしましょう。
 交通調査のスタートが少し遅れてもデメリットは少ないでしょ。
 販売は任せて二人は交通調査を適当にやれば良いわ。」
「いえ、野菜の試験販売の方がアバウトな調査より効率が良いと思いますので力を入れたいと思います。
 イベント感覚で…、まずは立ち寄りたくなる看板か。」
「中沢君、学園祭のノリで動いてくれそうな人は何人かいるよね。
 姫さま、野菜の方はどうすれば良いのです?」
「そうね、山根さんに話して直接連絡を取れる様にするわ。
 電話するから、ちょっと待ってて。」
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夏休み-87 [花鈴-09]

 田舎暮らしを体験しに来ている大学生達には野菜の収穫と販売と言う仕事を増やしてあげることに。
 藤田さんが学園祭のノリをさりげなく演出してくれたからか、皆さん楽しそうに作業している。
 収穫はあちこちの畑から少しずつ。
 畑のオーナーと交流しながらなのだが、つい自分達の食べる分まで学生にあげてしまったと、笑いながら話すお爺さんもいるそうだ。
 期間限定、夏野菜売り切れたらおしまいと書かれた看板には漫画チックな野菜の絵が描かれているからか、通り過ぎてから買うためにUターンして来る車が少なからず見られるとか。

「藤田さん売り上げはどうです?」
「思っていたより良いですね。
 元が商品作物では有りませんので形が悪かったりするのですが、面白い形の大根が有ったりしまして、スーパーで売ってる野菜より美味しい気がする、気がするだけかもと言いつつ三日連続で買いに来られた方もおられるのです。」
「成程、形を気にしないのなら野菜を作る面積を増やしてもそんなに負担ではないと聞いています。
 それを収穫し販売するには手間が掛かる訳ですが。
 中沢さんは見ていてどうでした?」
「自分は結構な量を集められたのに驚きましたが、それが殆ど売り切れることにも、早めに閉店しないと自分達が食べる分まで売れてしまうとかで、安くし過ぎない様、気を付けて価格設定をしたつもりなのですが、それがかえって良かったのかも知れません。
 自分で食べる為に育てた野菜と言うのを売りにしましたので、農薬を気にする人が喜んで買って行かれたと聞いています。」
「商品作物には無い良さが有るのかしら。
 一週間分の収支報告を協力して下さった方々全員に配るのは大変かもだけど、その辺りのこともお伝えして今後に繋げたいわね。」
「はい、それによって経済に関する皆さんの意識を把握しておきたいと思っています。
 移動販売に携って来た人の給料を上げることに対して、野菜の提供と言う形でどの程度協力して頂けるのか、長期的な視点で確認して置きたいので。」
「ですね、今回は試験的な取り組みで、移動販売に関係ない人も協力して下さってるけど、それが一時的なことなのか継続して頂けるのかによって随分な差になる、勿論、店がオープンしたら色々変わるでしょうが。
 今回の利益は移動販売に携ってる人に対する特別ボーナス予定額を上回りそうかしら?」
「はい、軽く越すと思います、学生の取り分も予想より多くなりますので、合宿所の運営費に充てたいと、まあ、我々学生にとっては金銭的なことより、収穫作業を通して地元の人と、販売を通して様々な人達と交流出来てることが良い経験になっていると思います。」
「計画してたことが出来なくなったとかは?」
「そこは調整しながら作業していますので大丈夫ですが、我々を食事に招待することがブームになりつつあるみたいで、その調整が大変だと一番人気の藤井が話してました。」
「高齢者のアイドル的存在になりつつあるとは聞いていたけど。」
「彼は話を聞くのが上手いのですよ。」
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夏休み-88 [花鈴-09]

 そんな高齢者のアイドル、藤井さんとは仮設店舗の見学に行った時に話をした。

「藤井さんは高齢者に人気だそうですね。」
「はは、皆さん花鈴姫の話などをしてくれますが、自分はそんな話をただ聞かせて貰ってるだけです。」
「途中から自分の身の上話とか子どもがここを出て行ってしまったとかに代わって行くのでしょ?」
「ですね、ある意味結構な個人情報を知ることになっています。
 姫さまもお年寄りの話を聞いておられるそうで。」
「ええ、ただ五年生の女の子に話す内容には限りが有るので、私が本当に知りたい情報にはたどり着けないのです。」
「どんな情報を知りたいのです?」
「息子に対する愚痴とか諸々の不満を知りたいのですが私では聞き出せなくて。」
「でしょうね、小学生に愚痴をこぼすとしたら認知症の人ぐらいだと思いますよ。
 自分が聞かせて頂いた愚痴などを整理しておきましょうか?」
「お願いします、お礼は何が?」
「そうですね…、今度のキャンプで歌って頂くと言うのは如何でしょう、ギター伴奏は自分がします。
 YouTubeチャンネルで歌ってるのを見て是非生で聴かせて頂けたらと思っていたのです。」
「そんなことで良いのなら喜んで、曲はどうしますか?」
「姫さまが決めた曲を教えて下されば楽譜はこちらでダウンロードしておきます。」
「キャンプの様子を撮影することになっているので、ちょっとしたサービスにもなるのかな。」
「それで、皆さんから聞かせて頂いた話ですが、誰からどんな話をと個別にまとめるか、皆さんのお話を大きくまとめるかどちらが良いです?」
「そうね、出来れば個別にお願い出来ると嬉しいのだけど。
 うちの社員は我が社に関係する人達のデータベースを構築し始めていてね、社外には漏らさない極秘資料としてサービス向上に使うつもりなの。
 例えば趣味でソートすれば同じ趣味を持つ人を確認出来たりとか。」
「成程、趣味の話をしていて、それなら誰々さんの仲間なのですねと話したら、その人と趣味が同じだと言うことを御存じなかったことが有りましたので良いと思います。
 個人情報と言っても大声で本人が話してることや近所の人達が普通に知ってること、それでもまとめておけば役に立つ発見が有るかも知れません。」
「でしょ、作り話が混ざるかもだけど、データが蓄積されて行けば虚言癖の人だと確認出来るの。」
「はは、確かに、話が徐々に大きくなって行く自慢話も有りましたからね。」
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夏休み-89 [花鈴-09]

「あちこちの方から食事に招待されていると聞きましたが、どんな感じなのです?」
「話の流れから是非とも食事に招待したいと話して下さった方の所へお邪魔させて頂いたのですが、その話があっと言う間に広がりまして、それならうちへもと夕食時のスケジュールはもう一杯です。」
「一人で?」
「いえ、自分はお酒を頂くので、車の運転と向こうでの家事を手伝ってくれる女の子と二人でです。
 孫を嫁にと言う方々を牽制する意味も有りまして。」
「彼女さんなの?」
「はは、そんな雰囲気になりつつ有ります。
 招いて下さった方々は孫夫婦が遊びに来てくれたみたいに喜んで下さっていまして、養子になってくれたら家も畑も全部下さると言う方も。」
「流石に受けられませんよね?」
「介護の現場を見させて頂くことが有りましたので真面目に考えたら簡単に受けられる話では無いのですが、先祖のお墓さえ守ってくれたらと話す人もいまして、考えさせられました。」
「う~ん…、お墓か…、私の場合顔を知らない人のお墓参りだから実感が湧かないのですよ。
 他人で有っても祖先のお墓を託したいと言う感覚なのでしょうか?」
「家もですが管理する人が居なくなって荒れ果てると言うのは想像するだけでも寂しいものです。」
「確かに朽ち果ててる家は…。」
「子ども達が生活の拠点を都会に置いている場合、ここの土地や家屋は負の遺産に成り兼ねない、そこを幾つか引き受けて下さった纐纈社長には感謝しかないと皆さん話しておられます。」
「そうね、改築して住める様になった合宿所レベルの家ばかりでは無かったから、取り壊して建て直した社宅も有るのです。
 でもここには古くても立派な家が結構有りますよね。」
「お金に余裕の有る人にとって、その使い道は家だったのではないかと思いませんか。
 かつては林業で稼げたそうですが、稼いだお金で豪遊する人は一部だったのではないかと。」
「そんな話もしてるのね、人力任せの林業はとても厳しかったそうだけど、それに見合った収入が有ったとか、昔の人の楽しみは良く分からないけど立派な家を建てて自慢したかったのかも。」
「今は花鈴姫の活躍が楽しみなのですよ。
 小さな女の子が大学生を顎でこき使ってると話が広がってますから。」
「うっ、間違っては無いけど、もう少しましな表現を選んで欲しいです。」
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夏休み-90 [花鈴-09]

「藤井さんは聞き上手だそうですが、何かコツが有るのですか?」
「コツと言う程のことではないのですが、まず話し相手に興味を持つことですかね。
 世の中には色々な人がいてそれぞれ様々な体験をしています、その辺りを質問すれば大抵の人は自分のことを話すのが嬉しくて色々話して下さいます。
 そんな話の中から自分が興味を持ったことについて質問すれば話が盛り上がるのです。」
「う~ん…、私も興味の有る人の話は聞くし仲良く成れるから…、その辺りをもっと意識して話す様にすれば良いのかしら。」
「花鈴姫はお年寄りの話を良く聞いていて人気者、姫さまも聞き上手なのだと思いますよ。
 孫より幼い子から自分達の生活に不満は無いかとの質問をされて多少戸惑いは有ったみたいですが、賢くて可愛くてと、姫さまの話になると皆さん顔がほころぶのです。」
「お年寄りの話を聞かせて貰いに行ったのは間違って無かったのね。」
「社長令嬢で自らも会社の会長ですので、変な話は出来ないと考えるのは普通のこと、姫さまに出来ない様な話は自分が聞いて来て報告しますから。」
「お願いします。
 それで、これまでここで暮らしてみて如何でしたか?」
「毎日変化が有って楽しいです。
 竹林再生に取り組み、お年寄りと話し子ども達と遊んだり野菜を収穫したり販売したり。
 田舎暮らしは思っていたほど不便でも無くて真面目な話ここで就職するのも有りかと考えています。」
「それは嬉しいですが…。」
「都会で信号待ちの為に使う時間の長さを考えてみたりしたのです。
 ここではその時間が極端に短いのですが、その短い時間ですら自然を感じられまして。
 それと…、姫さまは変に思われるかも知れませんが群衆の中の孤独って嫌なんです。」
「孤独?」
「知らない人ばかりに囲まれた群衆の中での孤独が嫌で人ごみは苦手なのです。
 普通に一人だけでいるのには何の抵抗も無いのですが。」
「う~ん、孤独感は本を通しての知識…、あまり考えたことがなかったの。
 ここには一人暮らしの人もいるのよね…。」
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