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広報-01 [シトワイヤン-05]

いずれ来る、いや、来なければ市民政党に明日は無いと考えていたのは取材依頼、その一つ目はテレビの情報番組だった。
党員たちがSNSで情報を拡散してくれた成果だ。

「清香、番組制作会社の担当者と直接会わなくて良かったのか?」
「大丈夫、その為の株式会社和馬です、マネージャーが交渉しなければギャラが発生しない恐れが有りました。」
「強気だな、まだ党員が多いとは言えないぞ。」
「愛華レベルの女性が政治を語るのです、ギャラを渋る様なら断って良いと思います。
マスコミに利用されるか、マスコミを利用するか、今後の状況によってはこちらがお金を払うことも想定していますが、今は愛華と康太の価値を高める時です。」
「そうだな、学生だからと言って低く見られたくはない、清香お嬢さまが十把一絡げのアイドル並みに扱われたら柚木社長だって怒るだろうしな。」
「私は一歩引いて和馬の後ろが立ち位置です。
今回は昼間の番組ですのでメインは女性視聴者を意識して康太、サブに愛華、私はおまけで締めは和馬としましょう。」
「康太、有る程度の台本は作るわね、アドリブに挑戦してくれても良いけど。」
「決定事項なのか?」
「康太の力で女性党員をどれだけ獲得出来るか楽しみだわ。」
「覚悟はしてたが…、田舎の婆ちゃんに俺が頑張ってるとこを見せられる様な台本にしてくれよな、でも番組制作側でシナリオを作って来るんじゃないのか?」
「次回の打ち合わせで、こっちのペースに持って行くつもりなの、私達のマネージャーは無能じゃないとすでに証明されてるわ。
先方は学生が始めたバーチャル政党に注目してコンタクトを取って来たでしょ。
そこに、女泣かせの康太という付加価値を付けることには成功したみたいなの。
当初先方は三分程度で紹介と考えてみたいだけど、写真を見せてギャラの交渉した結果、枠を広げる方向で調整中みたいよ。」
「収録なのか?」
「まずはね、その内容が良ければ、生のスタジオに呼ばれるかもって。
次の打ち合わせ風景も撮影しておくそうだから頑張ってね。」
「ああ…。」
「康太、頼むな。」
「和馬、他人事だと考えてないでしょうね?」
「ここは、君たちにお任せだろ。」
「和馬は、(仮)でも党の代表なんだから、代表らしいところを見せてくれなきゃ。」
「そうです、康太の浮ついた笑顔で人をひきつけ、私達がフォロー、締めで安心感を視聴者の方に与える存在が和馬なのですよ。」

俺が安心感を与える存在なのかどうかは甚だ怪しいのだが、彼女達に言われては頑張らざるを得ない。
俺達が立ち上げた政党でも有る、どこまで大きく出来、それが俺達の理想の形となるのかは全く分からないが、今は責任を持って拡大したいのだ。
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広報-02 [シトワイヤン-05]

初めてのテレビ出演、本番の撮影は大学で行われた、勿論、大学の許可は取って有る。
十分ほどに編集される予定だが、撮影に二時間以上かかったのは、制作側の思惑と愛華たちの思惑が重なったからだ。
美男美女が大学の構内を移動しながら話すという形にしたのは、市民政党という真面目な話にいきなり興味を示す人は多くないだろうと考えてのこと。
屋外でスタート、屋内に入って上着を脱いだ姿、暖房の効いた部屋に移動して更にと、場所毎で話のテーマも変え、視覚的にもトーク的にも変化を付けた訳だ。
そんな撮影を終え、現場の責任者から…。

「お疲れ様でした、反響が無くても第二弾を考えていますから、お願いしますね。」
「岡田さん、どういう意味ですか?」
「テーマが固いので反響は弱いかもしれません、ですが四人は学生ユニットとして面白いと思うのですよ。
放送用は棚橋君をメインに編集させて頂きますが、別編集のロングバージョンを上の人に見て貰うつもりです。
で、生の番組に出てコメンテーターという立ち位置も考えて於いて頂けませんか、四人交代でとか。」
「需要は有るのでしょうか?」
「政治に興味の有る現役大学生という枠を作ります、皆さんなら直ぐに慣れると思いますよ。」
「その場で党の紹介をさせて頂いても良いのですか?」
「むしろお願いしたいです、生番組と言っても台本は有りますので心配要りません、私自身党員になって討論の場を見させて頂いた上での判断です。
皆さんは既存の政党政治、その問題点を国民の皆さんに考えて頂く切っ掛けを作ろうとしているのですよね?」
「はい。」
「偏向報道という言葉を聞かされても、それに直接係わっていない私達末端の人間は良く分からないのです、ここで市民政党の取材を続けたら、上から圧力が掛かるのかどうか、それを試してみたい気がしていましてね。
ネット上のバーチャル政党、それが一部の人にとって脅威と感じられる存在になるまで紹介し続けたいです、君たちが中年の怪しげな活動家だったら無理ですが、知性と美貌を兼ね備えた大学生なら継続的に行けると思ってるのですよ。」
「その…、自分は美貌では無いのですが…。」
「そんな事ないです、落ち着いて話してくれたから人気が出るかも、棚橋君とはファン層が分かれて良いと思う、ねえ、四人で歌ったり踊ったりするかバンド組んだりとかは考えてないの?」
「そ、それは…。」
「岡田さん、お遊び程度ですが検討させて頂きます。」
「清香…。」
「ある意味、市民政党若葉は君たちの手を離れて拡大しつつ有る、君たちの役目は更なる拡大に向けてより多くの人に知って貰う事だろ、その為の応援はさせて貰うからね。」
「はい、お願いします。」

にっこり笑って岡田さんに応える愛華の横顔はとても素敵だったが、歌ったり踊ったりは無理だ。
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広報-03 [シトワイヤン-05]

VTRの収録後に岡田さんがどう動いたのかは不明だが、俺達は生放送のスタジオに呼ばれた。
事前に大きなニュースが入ったら出番が無くなると聞いていたが、至って平穏な一日。
俺達を紹介する形に編集されたVTR映像が流された後…。

「ちょっと~、こんな美形を揃えてしまって、今日はスタッフが何時もより多くない?」
「ええ、モデル級、だけど誰も知らない大学生がスタジオに来て下さるとの情報が流れまして、でも、梅子姉さん、今日は真面目なテーマですからね。」
「おバカネタで無い事ぐらい私でも分かるわよ、でもね…、ねえ、イケメン男子の康太くんは二人の美少女に相手にされてないでしょ。」
「えっ、分かりますか?」
「何となくね、でも気にしなくて大丈夫よ、貴方には、今日、大勢のファンが出来たのだから。」
「はあ。」
「ファンの皆さんが市民政党若葉に入って下さったら嬉しいでしょ。」
「は、はい、自分達は既成政党とは違う角度から政治を考えています、単なる学生のお遊びで無い事は、すでに多くの大人が参加して下さってることで分かって頂けると思います。
選挙権が有って、さあ一票を投じようと考えた時、妥協するか棄権するしかないのが現状だと多くの方が思っておられます。
市民政党若葉はバーチャル政党ですので、一票を投じる対象では有りません、それでも皆さんに政治を考えて頂く場として拡大して行けたらと考えています。」

康太を中心に、ほぼ台本通り進んでいたが途中からアドリブが増える。

「バーチャル政党を作るのにどれぐらいのお金が掛かったのかしら?」
この瞬間三人の仲間達は一秒の狂いも無く俺の顔を見た。
予定に無かった質問を俺に押し付けて来る君たちはホントに可愛い、と思いながら。
「そうですね、コンピューター関連の機器を整えたり…、具体的な額をお話ししにくいのはシステム構築をして下さった方々の人件費が関係します、彼等とは成功報酬的な契約を結ばせて頂いていまして、所謂出世払いみたいな。」
「じゃあ、成功したら支出が増えるってことなの?」
「はい、これまでの収支は党のサイトで公開していますので、ご覧下さい。
えっと、この番組のギャラも公開して構いませんか?」
「それは…、こちらから費用をお訊きしたのだから、そこでカンペ出した貴方、大丈夫よね。」
「市民政党若葉はサイト内の広告とスポンサー企業によって支えられていますが、金銭面はすべて公開しています。
自分達にギャラが発生するのがこの番組だけですと、隠す事は出来ません。」
「そうね、いいんじゃないかしら、その額を多いと思う人がいれば少ないと思う人もいるでしょう。
取り敢えず、和馬くんがボスキャラって分かったから、もう少し攻めても良い?」
「はは、優しくお願いします。」

そこからは梅子姉さんとの対話が中心になった。
打ち合わせに無い話が続いたが、そこはさすがにプロの仕事で俺達のことを上手く引き出してくれた。
後で聞いたところ、人的トラブルが有って俺達の次に予定していたコーナーが消滅、その穴埋めで俺達の時間を延長していたとのこと、番組サイドとしても助かったそうだ。
そんな事情が有ってか、俺達は梅子姉さんから食事のお誘いを受けた。
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広報-04 [シトワイヤン-05]

番組の三日後、俺達は梅子姉さんが招集した夕食会の場に。

「和馬くん、党員は増えた?」
「はい、一気に増えました。」
「軽い気持ちの人が多そうだけど、そんな党員でも大丈夫なの?」
「問題ないです、バーチャル政党自体に、政治と真正面から向き合う教育の場、という側面が有ります。
討論も、極力中高生でも分かる様にと、難しい表現が出た時は解説して下さる方も見えます。」
「変な輩は入って来てない?」
「少し来ましたが、党の規約違反という事で発言は削除されています。」
「そんな発言が増えたら大変ね。」
「党員の方々がすぐ通報して下さいます。
後は機械的に削除するだけですが、場合によっては党員資格を剥奪します。」
「いたちごっこに成らないかしら?」
「状況を見て、威力業務妨害で訴えると明記しています。
悪質な人が現れたら費用が掛かっても刑事罰を受けて頂くつもりです。」
「そうだったわね、私も党の規約を読んで党員になったけど、そこまで強く考えているのなら安心だわ。
それでね、番組スタッフとも相談してるのだけど、これからも番組に出て貰えないかしら。」
「俺達でお役に立てるでしょうか?」
「女の子たちは充分なトーク力が有ると思うわ、康太くんも台本通りならなんとかなるでしょ、大学と時間が合えばなんだけど。」
「毎回四人では無いですよね。」
「和馬くんをメインにしたいのだけど、だめかしら。」
「自分がメインですか?」
「四人にまた出て欲しいという声が多くてね、SNSでも話題になってるでしょ。」
「美形三人が中心みたいですが。」
「そうでもないわよ、和馬くんも私と対等に渡り合ったって評判よ、私としては変な芸人よりやり易いの。
もうすぐ大学は春休みでしょ、その間に何回か出て見て調整、四月からのレギュラー出演を考えてみてくれない?」
「少しお話は頂いていましたが、そこまでは考えていませんでした、みんなで相談してみます。」
「他の三人はアイドル枠として日替わり、和馬くんは番組の顔になって欲しいのよ。」
「は、はい…。」

正直、ここまでの事は考えていなかった、だが、番組のディレクターも乗り気、俺達を採用することで視聴率が上がると考えているそうだ。
それは分かる気がする、出演が決まるまでは見た事が無かったこの番組、確かにコメンテーターに魅力を感じなくて、梅子姉さんの気持ちは分かる。
取り敢えず相談だ。
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広報-05 [シトワイヤン-05]

翌日、愛華たちと相談。

「和馬なら月金の週五でも大丈夫でしょ、急いで卒業しなくて良いし、番組には毎回遅刻とかで良いんじゃない。
私達は適当にローテーションを組んで和馬を盛り立てるわ。」
「俺は事前打ち合わせに時間の取れる曜日が良いかな、四年での卒業を前提に。」
「康太、何とかなるわよ、う~ん、同じ衣装を着て出演したらママに怒られる、和馬が決断したら衣装面はうちに任せてね。」
「番組のスポンサーにお父さま関連の会社が付いたら面白く有りませんか、圧力を掛けられるのかどうか分かりませんが、お父さまと相談しておきます。」
「康太はバイトを減らせるんじゃない、私達の力で視聴率が上がればギャラの交渉も出来るでしょ。」
「みんな乗り気なんだな。」
「今回の事が有りまして、昼間のワイドショーを調べてみたのですが、どこも似た様な話題が中心、司会者やコメンテーターの人気頼みです、視聴者の年齢層を考えてなのか出演者に私達の年齢層はあまりいません、和馬のトークは新鮮だったと私の周りでは総じて好評価です。」
「政治関係の固いテーマなのにね、ねえ、番組で取り上げられた内容を市民政党で検討し党員アンケート、その結果を番組で発表しても良いのでしょ。」
「そうだね、俺達はバーチャル市民政党若葉の発起人という肩書を貰ったのだから問題無いだろう、そその結果を踏まえたトークも出来るね。」
「和馬は芸能関係の話題とかでも大丈夫なの?」
「知らない話題の時は聞き役に回れば良い、何となく自分の役回りは考えているよ。」
「なら、前向きに進める方向でマネージャーに伝えて良いかしら。」
「そうだな、俺達がどれだけ視聴者に受け入れて貰えるのか試してみよう。
テレビの反響は大きくてラッキーだった、始めは雑誌社からの取材をイメージしていたけど、雑誌だったらここまでの反響はなかっただろう。」
「そうそう、雑誌関係からの取材依頼が数件来ているわよ、和馬のスケジュールはマネージャーに伝えておいたからね。」
「春休み中はともかく、四月からが大変そうだな。」
「大丈夫です、昨日の話を学生チームのメインスタッフに伝えた所、和馬が番組レギュラーになるのなら先輩方でサポート体制を整えて下さるそうです。
効率良く単位が取れる様に動くだけでなく、番組で扱うニュースの傾向と対策とか、同じ様な話題が多いので始めの内は大変でも直ぐに慣れるそうです。」
「学生チームの組織化が更に進むのかな。」
「はい、番組担当が置かれます、党の広報活動として費用が掛からず大きな結果に繋がりそうですので。
中には就職先として放送局を考えている方もみえるそうです、その下心は尊重してあげて下さい。」

親父を始め周りの大人達は番組出演に賛成してくれた、卒業に時間が掛かることになっても大学の講義では得られない経験が出来るからと。
それは自分でも強く感じている、世の中の出来事に対して自分の意見をまとめて分かり易く話す、簡単な事だとは思わないが挑戦する価値は有る、そして俺が目立てば市民政党若葉も注目される。
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広報-06 [シトワイヤン-05]

春休みの平日は何度もテレビ局へ。
番組出演予定のない日も、学生スタッフと共に見学したり打ち合わせをしたりして、四月からのレギュラー出演に備えた。
三月一杯で降板する人達には申し訳ないのだが、番組メインパーソナリティーの梅子姉さんは俺達を可愛がってくれている。

「和馬くん、レギュラー一回目は瀬田和馬さんと紹介させて貰うけど、後は和馬くんで良いわよね。」
「俺の事は和馬と呼んで下さい、後は、愛華ちゃん、清香さん、康太くんで如何です。」
「そうね、清香ちゃんではイメージに合わないし、康太!って私が呼んでしまうと彼は委縮しそうね、彼等が慣れるまではそうするわ、どう、和馬から私への要望とかないの?」
「そうですね、自分がコメントを求められたら、まず、自分の考えを話す、それから違う視点での考えも話させて貰うって、生意気ですか?」
「そうね、ちょっぴり生意気な和馬という設定にしましょう。
今までは何人かに話を振っても似た様なコメントしか返って来ない事が多かったのよ。
和馬が頑張ってくれたら、他のコメンテーターを減らしてスリムに出来るかも。
和馬はワイドショーなんて低俗なもの見て無かったのでしょ。
これからも見なくて良いから、自由に話して良いわよ、長くなりそうなら私が…、そうね、何時まで話してるの和馬!って切るから。
一回の放送中にそれを何回入れるかは今後検討して行きましょう。」
「お約束のネタにするのですね。」
「ええ、和馬の方から私に対して、くそババア的なネタを入れてくれても良いのだけど。」
「はは、それは自分の芸風に合いません…、さすが梅子姉さんです、というのを色々なニュアンスで使うというのは如何です。」
「うん、テレビはあまり見ないという割に分かってるのね。」
「春休みに入ってから集中的に研究しています、うちのスタッフが教材を用意してくれまして。」
「そうか、初めて番組に出て貰った時に頭の回転の良さを感じたのだけど、ねえ、全然面白くない芸人より上を目指してみない?」
「芸人の芸については良く分かっていませんが、何か練習をするのですか?」
「本番が練習、和馬にはその日のテーマを伝えておくけど、すべて打ち合わせなしのアドリブで行きましょう、和馬にはカンペなし、発言に問題が有ったら私の方で修正する。
ミスしても良いのよ、それを反省して次に活かして行けば、貴方ならすぐに慣れるわ。
大学の講義が終わってからの移動時間も有って大変でしょ、毎回遅刻して良い代わりに打ち合わせなしということよ。」
「緊張感が有って良いかも知れません、頑張ってみます、一応大学側にも話は通して有りますし、先輩方が色々フォローしてくれますので、遅刻する曜日は固定化されると思います。
ただ政治経済で大きな動きの有った日は、単位に影響しない程度で自主休講にし頭からと考えています。」
「成績が落ちてしまったら御免なさいかしら。」
「いえ、それは自分の責任ですし、大学の評価はどうでも良いのです、良い経験をさせて頂けそうですので。」
「和馬自身の将来はどう考えているの?」
「そうですね…、清香の親父さんの所とか、自分が希望した瞬間に内定が決まる会社は五社ほど有るのですが、自分の中では流動的です、すでに株式会社和馬の副社長ですから。」
「確かに大学の評価は気にしなくて良さそうね。」
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広報-07 [シトワイヤン-05]

テレビ出演に関して、愛華たちの興味は衣装にも有る。
愛華は毎回気合を入れた衣装で出演したいのだが、あまりに華美だと市民政党のイメージを悪くしかねない。

「愛華は毎回違う衣装を私服で通すつもりなんだろ、それだと私服が溜り過ぎるとか考えないのか?」
「康太、特別な服以外は売れば良いのよ、適度に売って来なかったら私の部屋は大変な事になっているわ。」
「安く売って処分すれば部屋が片付くということなのか?」
「ええ。」
「安く売らずにオークションというのは如何でしょうか、愛華の着た衣装なら、これからはプレミアムが着くと思います。」
「そうだな、差額がプラスになったら党の資金に出来る、いっそ番組のコーナーに出来ないか、和馬、梅子姉さんと相談してみてくれよ。」
「う~ん、利益より話題性だな、清香、うちの学生スタッフも動かせるのか?」
「はい、衣装チームは動き始めていますので、オークションチームを作って頂きましょう。」
「番組サイドとしても、こちらで有る程度完結できる企画なら喜んで貰えるかもしれないな。」
「オークションの売り上げは大きくならないかも知れませんが、政党のグッズも試作が出来始めています、番組で和馬が着れば宣伝効果が大きいです。」
「良いのが出来たの?」
「デザイン重視で、市民政党若葉のグッズかどうかは知ってる人しか分からないレベルになりました。
少なくともサンプルを見た関係者は購入を考えています。」
「製造はスポンサー企業が担当してくれるのだよな。」
「ああ、スポンサーは俺達のテレビ出演以降増えていたが、和馬がレギュラーになると知らせてから、協力体制を強化するとも言って来てる、システム構築スタッフに充分なお礼をし、四月から株式会社和馬で正規社員として働いて貰う人達の給料も大丈夫だろう、後はグッズを売って彼らのボーナスを他社と比べて遜色のない額にしたいね。」
「さすが社長ね、それで康太、学生スタッフの扱いはどうなってるの?」
「市民政党の党員となって下さった先輩中心に、党のグッズ制作から始まったのだけど、ボランティアと言うか、サークル活動になりつつ有る。
これからメインスタッフの先輩方と協議して行くよ。」
「康太ファンも少なくないから、強気で行きなさいよ。
お~、君達、僕の為に働いてくれるんだね~、と康太が言えば人件費を浮かせる、元々市民政党に興味を持って集まってくれた人達だから、仕事として拘束する人以外はボランティアで良いと思うのよ。」
「そんな恥ずかしいセリフは言えないが、いずれリアルで市長ぐらい立候補させられるぐらいの体制作りはイメージして貰うよ。」

株式会社和馬は大学近くのビルにオフィスを構え学生スタッフが出入りしていたが、四月からはフルタイムの正社員を置く、今までも手伝って貰っていて仕事の出来る人達なのだが、ボランティアスタッフが頑張り過ぎると双方の人間関係が悪くなるかも知れないと和馬は危惧していた。
実際は先輩方も大人で、株式会社和馬を中心に置いたサークル組織を構築中、学内サークルという案も出たが、大学側が苦慮するかも知れない事と、他大学からも参加し易いようにと考え、四月からは正式名称を、バーチャル市民政党若葉リアル学生部として活動する事になっている。
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広報-08 [シトワイヤン-05]

四月から番組が大きく変わるという情報が流れ、俺達への取材の申し込みが多かったことも有り、市民政党と番組の宣伝を兼ね、新聞社や雑誌社向けに俺達の記者会見を開くことにした。
勿論、それを編集したVTRは番組でも流して貰う。
俺達はリアル学生部のメンバーにも参加して貰って記者会見への準備を。

「和馬くん、市民政党の設立から番組レギュラーになるまでの経緯説明は、それで良かった?」
「はい問題ないですが、この後直ぐに質疑応答ですか?」
「党のことは党のサイトを見て頂いた方が良いでしょ。
我らが代表は、真面目な質問は何が来ても問題ないですよね。」
「(仮)ですけどね、まあ込み入った事を長々と追及して来る輩がいたら、番組内でお答えしますと返しますよ。」
「問題は貴方たちの三角関係ね、すでに番組内の雰囲気からSNSでも話題になってるから、絶対追及されると思う、誤魔化すの?」
「いえ、正直に話す方向で梅子姉さんにも了解して貰っています、下手に隠すと週刊誌とかが煩くなりそうですし、番組への注目度を上げる事を考えたら一番のタイミングだと思います。」
「愛華たちはそれで良いの?」
「私達の個性ですからね、裏では清香と私が殴り合いの喧嘩をしてるとかデマが流れるぐらいに注目されれば、番組にとってはプラスでしょうし、市民政党にとっても悪くないと思います。
私と清香の仲が本当はどうなのか、画面を通して探る人たちで視聴率が上がりそうな気がしませんか。」
「身を削る決心をしたのね。」
「削ると言うより、私達から和馬を奪おうと考える人が現れない様にしておきたいですし、お付き合い禁止のアイドルみたいな扱いはされたく有りません。
番組ではアイドル枠みたいな感じですが、十把一絡げのアイドルになる気は有りません。」
「そうね、進行役としては突っ込んだ質問への対処が心配なんだけど。」
「有る程度話して、後はご想像にお任せしますで何とかならないかしら。」
「和馬くん、大丈夫?」
「何とかしますよ。」
「おおっ、頼もしい、惚れてしまいそうだわ。」
「先輩、惚れても無駄ですよ。」
「はいはい、でも愛人ぐらいなら…。」
「絶対だめです!!」

そして迎えた記者会見の当日。
市民政党若葉発起人四名の簡単な挨拶に始まり、市民政党の設立からの経緯説明を愛華が済ませ、質疑応答。
始めのうちは真面目な質問だったが。

「瀬田和馬代表は美女に囲まれていますが、特定の彼女はいるのですか?」

この質問を切っ掛けに、二人との出会いと、その時の想いを語って差し上げた。
続けて愛華と清香が恋を語る、記者たちが引くほどに。
俺達三人はインパクトの有る記者会見を考えていた、実際こういう話が好きな記者は多く盛り上がった。
すぐに二股だとか色々書かれるのだろうが、俺達の歴史を知る人が増えることは悪くないと考えている。
それによって親近感を覚えるか嫉妬心を抱くのかに関係なく知名度が上がるからだ。
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広報-09 [シトワイヤン-05]

記者会見を終えた三月最終週、リアル学生部のメンバーは、政党のグッズ制作と俺達の番組出演サポートに向けて忙しくしている。
清香が提案したオークションは、今日の衣装はオークションで売ります、というコーナーとして決定し、着こなしのポイントや、購入価格を紹介しながらスタートすることとなった。
学生が中心となって運営して行くが、愛華ママが裏で手を回したことも有り、準備はスムーズに進んでいる。

「和馬、リアル学生部からの番組企画が通りそうです。」
「そっちまで気が回ってなかった、行けそうなのか?」
「大学の紹介とか頑張ってる学生の紹介なのですが、先輩方は視聴者の性別や年齢層、同じ時間帯に放送されている他番組などを分析した結果に基づいて提案しています、中高生の子を持つ親を意識したり。」
「視聴者の興味を引けるのかな?」
「愛華をリーダーに、目立ちたい学生からオーデションで選んでユニットを作ります。
番組のリポーター役から始めて、人気を掘り起こせたら次の展開をと考えています。
それなりの容姿とトーク力が有って番組に頻繁に出ていたら、それなりにファンは付くそうです。」
「それはリアル学生部限定?」
「はい、あくまでも党員拡大に向けて、広報活動の一環ですので。」
「なあ清香、それならリアル学生部で原発問題を掘り下げ、視聴者の方に分かり易く説明することは可能だろうか?」
「党でまとめれられている内容を、番組向けにということですか?」
「ああ、原発反対と訴えてる人にも、日本のエネルギー問題を考えて欲しいだろ。
原発を無くせたとして、安定した火力発電が維持出来るかどうかは国際情勢も関係する、原発誘致で過疎化に歯止めを掛けたいと思った人の話にも触れなくてはいけない。
原発を題材に、視聴者の皆さんと共に学ぶコーナーを作るのも有りだと思うんだ、勿論その危険性と負の遺産を子孫に遺す事は強調したいけどね。」
「はい、学生部に打診しておきます、複数の視点から物事を判断する、それこそが市民政党若葉の姿勢です、そのモデルとするには良いテーマだと思います。」
「梅子姉さんとも相談してみるよ、学生が動かなかったら番組スタッフに動いて貰うからね。」
「和馬は、市民に対する教育を考えてるのですね。」
「必要だろ、原発が事故を起こしたら怖い、だから反対するのは自然なことだろうが、それなりに現在のエネルギー事情を考えないと、せめて電力の安定供給がなかったら冷凍食品が成り立たなくなる、というぐらいの認識はね。」
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広報-10 [シトワイヤン-05]

我らが市民政党若葉は、原発反対を訴えるプラカードを抱えてデモ行進を行うといったことを完全に否定している。
市民政党党員たちの出した結論は、無駄だから他の方法を考えよう。
そんな流れが有ったからか、リアル学生部は俺からの提案を受け止めてくれ、すぐに原発問題を整理するチームを組み始めてくれた。
そのリーダーと…。

「そう言えば、和馬代表は自身の意見を党内では表明してないですよね?」
「ええ、あくまでも発起人に過ぎず、まだまだ学習している段階です。
既存の政党と違ったものが出来ないか考え、市民政党若葉を立ち上げましたが、自分達がどうこう言うより諸先輩方が核を形成して下さると信じていました。
変な方向へ進みそうなら意見を出したでしょうが、その必要はなかったです。」
「その姿勢はこれからも変えないのですか?」
「はい、自分達は党員を増やすための存在、党内で決議されたことを世に問いかけて行く立場と考えています。」
「代表(仮)という立場は?」
「党首か代表か、名称は党員にお任せするとして、被選挙権をお持ちの方を党員選挙で選出して頂いて、自分は代表(仮)から降りるつもりです、それに関しては根回しをして頂いてる段階なんですよ。
正式な党首を立て、今は難しい問題に関して両論併記で誤魔化している部分も一歩踏み込んで、党の主張を明確にしていくことになります。」
「和馬代表がそのまま(仮)を外して続けてくれても良いと思いますが。」
「難しい政治的判断は自分には重荷ですし、大学生のお遊びというイメージから脱却して行く必要が有ります。
党のメインはとっくに自分達を離れていますので、自分は広報担当とかの肩書を頂けたら動き易いですね。」
「何となく和馬代表のスタンスが分かりました、こう言ったことは今後番組を通して告知して行くのですか?」
「党首選挙に関しては発起人会名ではっきり党員に対して意思表示させて頂きます。
市民政党若葉が実に素敵な政党として拡大しているという事は、番組を通して視聴者の方々に伝えて行きたいですね。」
「そのサポートを自分達が担えば良いのですね。」
「お願いします、学生が政治に係わる事を歴史的な流れからか快く思わない人もいるみたいですが、科学的な分析から、多くの視点を示して行くという、我らが市民政党の手法を多くの人に理解して頂くことで、社会の意識を変えて行きたいのです。」
「はは、もし和馬代表の気が変わり、党首選挙に立候補されるのでしたら、自分は一票入れますよ。」
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