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高校生バトル-82 ブログトップ

近衛予備隊-391 [高校生バトル-82]

「はい、簡易水力発電装置を見せて貰い、水車の形状によって発電効率が変わると教えて貰いました、自分でも発電効率の良い水車を作ってみたいと思い、流体力学などの学習を進めています。
 高校生が立ち上げた会社も見学させて貰いました。」
「そうか…、大学にはまだ流体力学を研究する研究室がないのだが、ついでに立ち上げるか?」
「そんなに簡単なのですか?」
「数学の研究室より簡単かも知れない、今まで発電装置の開発に取り組んで来たメンバーから希望者を募り、ワンランク上の知識に触れて貰う場とする。
 遠江大学に指導してくれる人材がいなかったら探す必要が有るけどな。」
「高校生を大学生にするだけなのですね。
 大学生になってメリットは有るのですか?」
「そう言われてみると微妙だが、研究室が立ち上がるのなら今まで以上に高度な情報に触れられる様にサポート出来るだろう。
 彼らは結果を出しているから必要ないかもだけど。」
「それは無いと思います、実験を通して得られたデータから最良の水力発電機を開発していますが、彼らはそこに理論的な裏付けが欲しいと話していました。
 それが解れば更に効率的な発電機を作れるのではないかと、そんな話を聞いて自分は流体力学などに興味を持ったのです。
 彼らは英語で調べていますが自分は日本語でも調べられますので役に立てるかも知れません。」
「成程、亮二の目から見て流体力学などの研究室を立ち上げて行くのは彼らにとってプラスになると思うのかな?」
「ええ、簡易発電の可能性は大きいです、効率を考えたら大規模な発電と送電網には全くかないませんが、災害時や観光を意識した取り組みは進めるべきだと思います。
 今は発電効率以上に観光資源としての需要を考えていますが、これから電気自動車の充電が出来るレベルのものの改良が進めば、開発の遅れてる地域でも使えると思います。
 大学の研究室なら3Dプリンターぐらい置けますよね?」
「あっ、そうだな、今までは簡易的な物が中心だったが、電気自動車の充電を日常的に行うことを考えたらレベルアップを図る必要が有る。
 電力会社の社長をしていた頃には、様々な発電方法、様々な規模による発電を考えていたが、高校生が取り組んでる規模の物までは頭に無かったんだ。
 でも、実際、大雨による土砂災害が有った所では停電の復旧に時間が掛かったのだけど、取り敢えず簡易発電機を持ち込んだことで住民に安心して貰えたそうだ。」
「はい、自分も聞きました、近衛予備隊が支援物資を取りまとめ王国騎士団の指示で国軍が運ぶ。
 自分も高校生になって近衛予備隊の一員になれたら誇らしいです、子どもでも国の役に立てるのですから。」
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近衛予備隊-392 [高校生バトル-82]

 亮二は自分が想像していた以上に知識を持っていて大人だった。
 英語での表現が分からない時は日本語になりそのまま日本語で話すことも有ったが、私の知らないことは分かり易く説明してくれた。

「それで亮二くんはどうだったの?」
「十一歳になったばかりの子とは思えない知識を持っていて驚かされました、詩織も一度会ってみると良いです。」
「数学の研究室を開いて貰うのは決定なのね。」
「その前に発電に関する研究室を立ち上げることになりそうです。
 高校生の会社は、発電効率より見た目の面白さがウケているのですが、電気自動車の充電を考えたら根本的に見直す必要が有るのです。
 彼らの会社から研究開発部門を独立させ大学の研究室とし、3Dプリンターなど機材を充実させます。
 彼らは試してみることで良い物を模索して来たのですが、そこに流体力学と言った知識を加えて発電効率を上げ、まずは電動バイク用バッテリーの充電装置を開発して貰いたいと考えています。」
「電動バイク?」
「電気自動車は車両価格が高いですが、電動バイクなら坂道の多い王国内でも普及させられそうで、レンタルサイクルより人気が出るかも知れません。
 バッテリーの充電は簡易発電装置を使い、バッテリーを交換するタイプにすれば、充電の為に待つ必要は有りません。
 不測の事態が起き停電しても人の移動手段として役に立ちます。」
「そのアイデアは亮二くんから?」
「ええ、日本では電動アシスト自転車が人気だそうです。」
「そうね、運転免許の無い人にとっては便利な移動手段だと思うわ。」
「でも、主婦向けの自転車でも結構高額だそうで、ここの免許制度は緩いから半端なアシスト自転車より電動バイクを普及させるべきだとか。」
「彼はそんなことまで考えていたの?」
「友達と会話する中で色々考えていたそうです、電動バイクを使ってみたいとも。」
「調べてみないとだけど、まずは輸入することになるわね。」
「ええ、ただ、バッテリーは輸入に頼らざるを得ませんが、他のパーツは極力我が国で製造し組み立てられたら製造業の拡大に繋がると話していました。」
「そんな考えも友達の影響かしら?」
「多分、そうだと思います、彼の親しい友人は二十歳前後の近衛予備隊リーダーですので。」
「坂が多くて自転車移動に負担を感じてるリーダー達が亮二と相談したと考えれば良いのかしら?」
「色々なことを話しているそうですので、その一つなのでしょう。
 電動バイクをレンタル出来る様にすれば観光客にも喜んで貰えると思います。」
「簡易発電による電動バイク向けのバッテリー充電システムが出来れば、そこから色々応用が利きそうね。」
「はい、将来的には化石燃料の輸入をゼロにしたいです。」
「そうね簡易発電が広がれば主力の発電網に余裕が出来るのでしょ。
 それで、電動バイクには私も乗れるのよね?」
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近衛予備隊-393 [高校生バトル-82]

「あまり宮殿の敷地から出ないで頂きたいのですが、どこか行きたい所でも?」
「敷地が広がったでしょ、敷地内を車で移動することも有るけど、電動バイクで中学校まで車道を走るとか気持ち良さそうだわ、自転車で行くだけの根性はないからね。」
「その程度なら、電動バイクの導入は宮殿の敷地内から始めても良いです。」
「サンプル的に何台か取り寄せましょう、敷地内なら車も少ないし。
 簡易発電の研究をしている高校生には大学生になって貰い、電動バイクを実際に使いながら充電の為の発電装置を研究開発なら、今以上にやる気が出ると思うわ。
 実験環境も充実させ大学の研究室らしくしないとね。
 それで、その室長を亮二にお願いするの?」
「いえ、彼には遠江大学教育学部数学科との交流を始めて貰います。
 簡易発電に関する研究室は直ぐに簡易発電研究所とし、流体力学研究室など複数の研究室を誕生させられたらと、彼にはそこでの活動を通して自身の立ち位置を確立しつつ、数学教育の研究室設立を考えて貰えたらと考えています。」
「随分大変そうだけど、大丈夫かしら?」
「その辺りは椙山さんが調整してくれます、亮二にとって数学は趣味の一つに過ぎないので。
 我々の役目は彼の環境を整え、彼にその能力を遺憾無く発揮して貰うことです。」
「そこまでの人材なのね。」
「ええ、我が国の為に働きたいと話してくれています。」
「日本では国の為に働くと言う感覚が薄いから、友達が上手く導くことに成功したのかな。
 彼の為のおもちゃは3Dプリンターなのかしら?」
「はい、機種選定を始めて貰っています。
 まずは試作品製造用と製品製造用の二台、製品製造用のコストパフォーマンスが良ければ、更にもう一台導入しても良いと話して有ります。
 亮二がかなり親しい友達だと話してた人達とも連絡を取っているのですが、彼らは亮二の存在が大きな刺激になっているそうで、大学の研究室を充実させたいと話してくれました。」
「高い能力を持つ人には、その能力を活かせる環境を用意しないとね。
 彼が日本を離れこの国を選んだのは正解だったと、心の底から思えるだけの環境を整えて、高校生や大学生に刺激を与え続けて欲しいわ。」
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近衛予備隊-394 [高校生バトル-82]

「彼の能力を日本で活かすことは出来なかったのでしょうか?」
「椙山氏が日本を見限ったのは分かる気がするの、本当の意味で著しく能力の高い子の才能を伸ばす環境は無いし、基礎計算の怪しい子に理解出来ない数学の授業を受けさせているレベルだからね。
 この国で実験的に進めて来た教育は、まだ広く認められてはいないけど、着実に人としての総合力を伸ばすことに成功してるでしょ。」
「それは感じます、子ども達の意識が随分変わりました。
 大人の意識改革が進んだのは子どもの教育に力を入れたことが関係していると思います。
 特に高校生は詩織の教えと真正面から向き合っていますのでバランスの取れた子が多いと感じます。」
「知識だけではない教育、亮二はどうかしら?」
「詩織を女神と信じている人達に囲まれているのですから、すでに詩織の信者ですよ。」
「私はただの人間なのだけどね。」
「目に見える形で国民を導き改革を進めているのですから、架空の神とは比較になりません。
 詩織が鳥と戯れる映像には癒しの効果が有ると言われ、DVDやblu-rayは売れ続けています。」
「みたいね、3Dプリンターなどの設備投資は私のお小遣いから出しても良いのよ。」
「そこは自分達で何とかしようと考えていたのですが。」
「ジョンは小中学校への設備投資をして、更に民衆の心を掴んだら良いと思うわ。
 パソコンの数はまだ充分ではないのでしょ?」
「そうですね、管理の問題が有ってむやみに増やすことは出来ないのですが、パソコン管理の資格を新設しましたので、有資格者が増えれば何とか。
 システムエンジニアやプログラマーを目指す子の入り口を作りたいです。」
「予算の問題だけではないのね、学長がそこに関して急いでいない理由なのかしら?」
「セキュリティーの甘いパソコンはハッキングされ攻撃に使われる可能性が有るそうで、学校職員の負担を考えながら環境を整えて行きたいとのことです。」
「そっか、学長が進めてるシステムエンジニアの職場建設はどう?」
「大統領親衛隊は学長から提示された宮殿エリアのセキュリティ強化策と引き換えに承諾しました。
 これから造成工事に入る所ですが先を見越して広い範囲を造成する様に指示して有ります。」
「宮殿エリアを広げるのは良いけど、使い道がなかったら?」
「まだ特には有りませんが、今後極秘の研究とか出来る様になった時には王宮の敷地内がベストだと思いませんか?」
「そうね、そこまでの研究で無くても王宮を含めたこのエリアが学問の中心になるのは良いことだと思うわ、取り敢えず学生が多目的に使える施設と学生寮を建てておくのはどう?」
「そうですね、警備担当は宮殿エリアに入れる人を増やしたくないと話していましたが、これから高校生や大学生が増えますので余裕を持って対応して行きたいです。
 警備は特別エリアのセキュリティーを強化すれば問題無いでしょう。」
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近衛予備隊-395 [高校生バトル-82]

 表向き、大学は拡大しつつ有るのだが、3Dプリンターなどの機材を充実させている簡易発電研究所は兎も角、高校生達が趣味の延長で始めた文学部などは、詩織に言わせれば学生サークルレベルだとか、だが、まともな大学の文学部が何をどう研究してるのか自分達には全く分からないので問題ない。
 また、心理学部は体験的心理学と謳い歴史的に研究されて来た心理学とは一線を画すそうだ。
 心理学に関して少し調べてみたら難し過ぎたと言うのが本当の所なのだが、彼らなりに観光客を楽しませる心理トリックを考えてくれたりして結構役に立っている。
 高校生達にとって大学は未知のものだったが、お金の掛からない学部の設立に対する制限を殆ど作らなかった結果で、佐伯学長の方針に基づくもの。

「学長、詩織さまから文学部は学生サークルレベルだと言われましたが。」
「それで構わない、彼らは働いていて趣味の仲間を集めて立ち上げたのだからな。
 だいたい文学作品とは外国のものばかりだろ、そんなのを研究するより、自分達で文字による作品を生み出して行けば良いと話して有る、盗作にならない範囲で海外の文学作品を参考にして良いともね。
 文学作品を読み解くことに時間を掛けたとしても、そこから得られるものがどれ程のものなのか微妙だと思わないか?」
「自分には良く分かりませんが、心理学部もそんな感じなのですか?」
「ああ、私も分からないから心理学的なこと自由にやれば良いと話したら結果を出してくれたよ。
 彼らとしては心理学の本と向き合って挫折した結果なのだがね。」
「学部はこれからも増えて行くのでしょうか?」
「学部は増えないが学部内で学科は増えるだろう、それぞれの趣味の延長でね、所謂文系の学部はそれで良い、学生サークルレベルで構わないのさ。」
「それでも大学にとって必要なのですね?」
「勿論だ、彼らは自由だからね、仕事のストレスを癒す場となっていても構わない、全員が近衛予備隊の一員だから不真面目なことには考えない。
 ちなみに友人の職場環境改善を目指す研究室を立ち上げたいと言う話も来ているよ。
 どんな名称になるのか分からないが前向きに検討中だ。」
「う~ん、職場環境改善が友人から始まって広がれば面白いかもです。
 実際に職場環境を改善して貰いたいですね。」
「ああ、そのまま国の改革に繋がるのだからな。」
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近衛予備隊-396 [高校生バトル-82]

「亮二はどうです?」
「流体力学をメインに色々取り組んでいるが彼にとってはすべてが遊びの様だね。
 計算通りに体が動かないと嘆きながらも楽しんでるフットサルと同じなんだ。
 まあ、絵や音楽の才能は普通だそうで、少し安心したかな。」
「数学は?」
「遠江大学の数学科から面白いテーマを貰ったとかで、私に説明してくれた時は、さっぱり分からなくて、教育学部数学科の講師として数学教育に取り組んでいる大学生達に助言をお願いしたのが少し心配になったよ。」
「自分が理解することと人に教えることは別問題ですから仕方ないです。」
「それでも、高校生として『教える』に取り組み始めてから変わって来てるそうで、彼の助言が徐々に分かり易くなってるのだとか。」
「彼も学習して成長しているのですね。」
「ああ、聞けば『教える』に取り組む子達は、その実習を通して視野が広がり成長を実感させてくれるそうだな。」
「はい、人に教えるには、教える相手のことを考える必要が有ります。
 相手が理解出来ない事を一方的に説明しても、それは教えてるとは言えません。
 教えると言う行為によって子ども達は多くを学ぶのです。」
「それを教科として確立させたのはジョンの功績だと聞いたが?」
「いえいえ、たまたま自分が近衛予備隊のトップだっただけで皆の力です。
 自分としては教えることを教科として確立していない諸外国の方が不思議なのですが。
 それで、亮二は『教える』以外にどんな学習に取り組んでいるのですか?」
「今はどうかな、椙山氏の助言を受けてはいるが、基本本人が好きな様に決めている。
 講師としての時間以外を我々が制限しては行けないからな。
 他の高校生も必須教科以外は自由だろ?」
「はい、個人の特性に合わせ、出来れば学んで欲しいことを教師が示しますが基本自由、ただ、自分が就きたい仕事を考え、それに必要な知識を得て置こうと考える子が多いです。」
「それが良い伝統に成りつつあるとか?」
「伝統と言っても大した歴史は有りません。」
「そうだな、伝統も長く続くと怪しげな慣習とかが発生する。
 今は先輩が導くと言うスタイルが確立されて…、変な慣習を後輩に押し付けたりとかはないのか?」
「う~ん、自分が知ってるのは詩織さまを敬う儀式ぐらいで、特に害はないかと。」
「そのまま変な宗教が出来上がってしまうとかないよな?」
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近衛予備隊-397 [高校生バトル-82]

「詩織さまの教えが有りますので例え彼らが宗教組織を作ったところで変な宗教にはならないでしょう。
 儀式も、詩織さまへの忠誠と共に自分の目標を確認したりと言ったものですので。」
「盲目的な忠誠心は少し恐ろしくも有るのだが。」
「彼らだけでなく国民の詩織さまに対する忠誠心は、誰かから強制されたものでも、誰かが意図的に仕組んで形成されたものでも無いのです。
 国民の多くは、詩織さまがこの国に関わって下さったことで、生活環境が大幅に改善されたと感じています。」
「そうか…、最近自分の写真がマーケットに飾られ始めてるみたいでな…。」
「ええ、大学の権威を高めるにはその学長の存在を国民に知らしめる必要があると聞いています。」
「女王の父親が学長と言うだけで大学の権威は最高レベルになりますから。」
「諸外国の大学と比べたら情けないレベルだぞ…。」
「レベルなんて関係有りません、もっと研究したいと思った高校生が大学生となり研究する。
 そこに学びと成長が有れば良いのです。
 これからも人数が増えて行くと思いますが大丈夫ですよね?」
「工学部は施設を更に充実させて行きたいが、他は学生任せで大丈夫だろう。
 小学校に併設された教育学部の部屋は色々な形で活用されているそうだよ。
 教育学部とは関係の無い学生も、自分達のミーティングで使うついでに子どもの相手をしてるそうでね、そこから子ども達の視野が広がる可能性が有る。
 まあ、就職した連中は自宅のパソコンを利用して研究や学習をしてるから問題ないだろう。
 卒業が無くて教授連中まで学籍番号を持っているのだから、いずれ世界一学生数の多い大学になるだろうが、情報交換のセンターとして機能していれば悪くないと思うよ。」
「はい、向上心の有る人は学び続けると詩織さまから聞かされています。
 就職して学習から離れても近衛予備隊は心の拠り所、仕事で必要になった知識を得るために何時でも近衛予備隊を利用することが出来る形にして来ました。
 そこに大学と言うワンランク上の組織が出来たことの意味は大きいと思います。
 開学当初は能力の高い者だけを大学生として来ましたが、研究したい、もっと学びたいと言う近衛予備隊メンバー全員に門戸を開放して下さいましたので、これからどうなって行くのか楽しみです。」
「近衛予備隊や高校生、留学生以外が大学生になることは今後も考えなくて良いのか?」
「ええ、大学生になる事を希望するなら高校生になって貰えば良いのです。
 高校の入学試験に通らないレベルの人が大学生になることは避けたいと思いませんか?」
「王立高校生以外に能力の高い子は居ないと?」
「いたとしても我々の仲間になろうとして来なかった人ですので気にしなくて良いでしょう。
 共に国の改革を進めて行こうと考える子は王立高等学校を目指しますので。」
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近衛予備隊-398 [高校生バトル-82]

「佐伯学長、留学生達は如何です?」
「今の所教育と語学のみだが、ここでの留学を経験した学生が日本へ帰ってから積極的に紹介してくれているので留学希望者は多いそうだ。
 日本での適性試験に合格する学生は増えてるそうで、大学事務局が調整で困らない様に人員の増強を指示したよ。」
「留学生には好評なままなのですね。」
「ああ、ここの学生が積極的に調べ学ぶ姿勢を見せられ、日本では講義を通して教えて貰うと言う受け身だったと感じる学生が多いみたいだ、真面目な子でもね。」
「教育学部には教授がいませんが問題はなさそうですか?」
「教育実習が中心の実践的な研究学習活動だからな、ここでの教育実習を通して日本の大学で学んで来たことの無意味さを知ったと言う話も聞くよ。
 大学の教室でどれだけ講義を受けたところで、それが現場で役に立たなかったら意味は無いそうで。」
「ここの高校生、早い子は十四歳ぐらいから教育実習に取り組んでいますからね。
 小さい子達はお姉さんお兄さんに教えて貰うのが嬉しくて学習が進むのだとか。」
「だろうな、教科としての『教える』では子どもの心理にまで踏み込んでいる、その辺りを理解した上で教育実習に取り組んでいるのだから、日本で教員を目指す大学生が経験する教育実習とは、質も実習時間も比べ物にならないのさ。
 ただ留学生が、ここでの経験を日本の学校で活かせるかと言うと制度上の問題が多くてね。
 だからこの国で教員を志望する者が増えているみたいだが、彼らを受け入れ続ける訳には行かないだろ?」
「ええ、教員採用の担当者は彼らにこの国の事情を説明し、それなりの覚悟が有る人だけを採用しています。
 教員として採用した人達には、会社での社員教育も担って貰いますが、その過程で実際に社員として現場で働いて貰うことも有ります。」
「その目的は?」
「学校と言う環境しか知らない人に職業教育が出来ると思いますか?
 小学生のまま十五歳で就職する子もいるのですよ。」
「うん、日本でも教員の中には学校しか知らなくて視野の狭い人がいると聞いたことが有る。
 ここの高校生達は様々な実習に取り組むからそんな心配は要らないのだろうな。」
「留学生が話していましたが、日本の高校はアルバイトを禁止している所が有るそうで、それによって実社会に触れる機会を失ってるのだとか。」
「学力重視で生徒の管理を考えてのことだろうが、それで学力が上がっても、人としての総合力はここの高校生に劣るとと思う、ここの学生と話していると大人だと感じることが多いんだ。
 仕事をしながら芸術学部に籍を置いたりしてるからかも知れないが。」
「趣味で芸術学部に籍を置く学生が増えていると聞きました。」
「ああ、彼らは留学生から話を聞いて大学祭の企画を始めたよ。」
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近衛予備隊-399 [高校生バトル-82]

「大学祭?」
「取り敢えず芸術学部の連中は発表の場と考えている。
 個別にライブとか作品展は行ってはいるが、大学として行いたいそうで他の学部と調整をしてるよ。」
「大学祭は日本の大学で普通に行われている祭りなのですか?」
「ああ、大学だけでなく高校でも学園祭や文化祭、体育祭を行っている。
 ここの高校は実習としてイベントを開いてるから年中文化祭なのかも知れないが。」
「イベント実習は子ども達にとって人前で話す良い機会なのです。
 バンド演奏も年々上達しているのが感じられ、イベント全体の売り上げも伸びています。」
「そのバンドから芸術学部に入った子もいるのだろうな。」
「と思います、大学祭を名乗ると言うことは他の学部も参加するのですね?」
「勿論だ、準備が一番盛り上がってのはミュージカルの舞台でね、台本には文学部の有志が関わり、心理学部が観客をより盛り上げる為の策略を練っている、簡易発電研究所が風車を使っての演出と照明、風が吹かなかったら人力で回すそうだ。」
「どこで見せるのです?」
「店前の大広場、今ある舞台を建築科がミュージカル用に作り替え、終了後は元に戻すのではなくもっと使い易い状態にするのだとか。
 映像科が撮影し易いようにもするそうだ。」
「当然出演者の衣装やメイクも学生が担当するのですね。」
「ああ、芸術学部には舞台照明などを考えてる学生もいる。
 美術科が舞台セットを組むが、工学部の連中がそれを手伝いつつ、面白い仕掛けを考えてると言う話も聞いているよ。
 働いてる学生が多いが、だからこそ皆でやりたいそうでな。」
「こういったことが大学祭なのですか?」
「ミュージカル以外にも個別の演奏や展示が有る、売り上げを自分達の活動資金にする為に、みんな工夫してるそうだ。」
「準備費用は足りていますか?」
「こちらが資金を貸し出す形にした、学生達は利子を付けて返すと張り切ってるよ。」
「大学に潤沢な予算を付けられれば良いのですが…。」
「なに、学生達は分かっている、大学の予算増額を大統領に要求する馬鹿はいない。
 自分達の大学をより充実させて行くのは自分達の力だと考えての大学祭だからな。」
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近衛予備隊-400 [高校生バトル-82]

 大学祭の開会宣言は詩織さまが行ってくれた、注目度を高める為だ。
 因みに開会はするが閉会はない。
 これから大学生が行うイベントは株式会社大学祭実行委員会が取りまとめ、準備費用を提供するだけでなく手伝う人の調整も行う。
 実行委員会の株式は大学の他、佐伯学長と詩織さま、そして自分が持つことで資本金に余裕を持たせた。

「シャルロット、株式会社大学祭実行委員会の概要は見てくれたか?」
「ええ、学生達が大学祭の一環として行う諸々に関してマネージメントする会社なのね。
 中には利益を期待していない発表も有るみたいだけど。」
「YouTubeでの工学部研究発表は高校生や中学生に向けての案内が目的だからな、でも大学祭の一環としてならついでに見てみようという気になるかもだろ。
 そこに芸術学部の子がトークで加わり盛り上げ、工学部の工夫を楽しんで貰おうと目論んでるのさ。」
「学部を超えた横の繋がりなのね。」
「普段の研究活動だけでは学部を超えることは少ないからな、大学祭を通して彼氏彼女を作って欲しいものだよ。」
「そんな目的もあるのね、それで大学祭はこれからずっと続いて行くの?」
「ああ、大きなイベントはたまに開催するだけだが、学生によるミニコンサートや絵画の展示会、YouTubeを通しての発表などは毎日の様に、今までバラバラで行っていた活動も大学祭実行委員会が取りまとめサポートして行く。
 仕事を持ってる芸術学部生が自身の発表に専念出来る様にもね。」
「ミニコンサートでの収益を自分の生活費に充ててた人は収入が減るとかないの?」
「生活費は分からないが、小さいバンドが自分達で集客活動をした所でたかが知れてると思わないか。
 会場の手配から宣伝活動まで大学祭実行委員会がしてくれるのなら、そのコストを支払っても個人の利益は増えると思うよ。
 勿論委員会に頼らず自分達で企画運営をしても構わないのだが、学生達の多くは大学祭参加登録を済ませたそうでね。」
「工学部の人達も?」
「裏方の仕事が有るからな、まあ工学部には女性が極めて少ないそうでね、彼らは純粋な気持ちで登録しているのさ。」
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