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近衛予備隊-231 [高校生バトル-66]

 今、絵本から純文学、ライトノベル、漫画やアニメ、YouTubeチャンネルのミュージカルなどに関わる人達で大変な作業が行われている。
 大変なのはアビュニス王国を始め遠江王国や俺達の王国に於ける様々な歴史設定を統一した作品群を構築して行こうと目論んでいるからだ。
 俺はあまり詳しくないのだが、ゲームの発達により作られた世界観が有るそうで、例えばヨーロッパの神話を起源に持つエルフは様々な作品に登場しているとルーシーが教えてくれた。
 架空の世界と我々の王国とをリンク出来たら楽しいに決まっているからと彼らが調整しているのは、文章だけの作品でも我が国の王宮と有れば、その姿は写真などで確認出来る、それと同様に空想から生み出された過去の風景も多くの作品で共有出来れば面白くなるだろう。
 著作権の問題も有り簡単な作業ではないが、一流のクリエイターも参加してくれていることで、作業に関わる人達の想像力と創造力の熱量には凄まじいものが有り、自分が口を挟む余地は全くないのだが…。

「今度はジョンとシャルロットの家系図を作りたいと言って来たのだけどどう?」
「家系図?」
「そう、ジョンの祖先を英雄にする為にね。」
「ルーシー、全部嘘で良いのか?」
「ひい婆様辺りまでは辿れると思うけど、そこも創作で構わないのよ、創作だと公表しておけばね。
 変に嘘をつくと人のあら捜しをして騒ぐ連中を喜ばせることになるけど、初めから創作だと言っておけば問題無いでしょ。
 作り話を公開して行くことでジョンは空想の世界でも王子さまとしての確固たる支持を受けることになるのよ、そしてそれは現実社会にもリンクされて行く。
 ジョンがお話しの中の登場人物として活躍すると、ジョンに対する尊敬の度合は現実社会でも高くなるって思わない?」
「それは…、確かに有るかもな、俺をモデルとした登場人物にジョンと名付けて活躍させると…。
 その設定が俺とかけ離れていたら面倒なことにならないか。」
「そこは、現実に合わせるわよ、ジョン王子に関しては私が担当ですからね。」
「う~ん、ルーシーの都合に合わせられていないか不安なのだけど。」
「ジョンが無理しなくて良い様に、ジョン王子には冷酷な一面も有ると伝えておいたわ。」
「冷酷か、その言葉をどう解釈して話を広げられてしまうのか心配なのだが…。」
「ジョンは、もう色々な意味で虚像になっているのだから、そこに冷酷が加わっても大差ないわよ。
 冷酷と言ってもその参考例としては、くまさんアイスに対してスプーンを目に突き刺して食べ始めたとか、事実しか話して無いのだから。」
「なあ、あれはどこから食べるのが正解とか有るのか?
 ルーシーだって顔をぐちゃぐちゃにしてただろ。」
「そんなことはどうだって良いのよ、ジョンに関する情報が頻繁に流れる状態を維持することが出来たら、色々と収入に繋がるのでしょ。
 でも事実を紹介してるだけではネタが尽きる、そこをジョン王子の設定として公開して行くのよ。
 ジョンの知名度を利用してグッズ販売などを強化して行かないとシェリルに負けてしまうでしょ。」
「はは、既に負けてるかもな。」
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近衛予備隊-232 [高校生バトル-66]

 三つの王国、その創造された歴史と風景写真などはデータベース化されているが、それを利用出来るのは会社が許可した作家やクリエイターのみ、その作品群には公式マークが付けられる。
 勝手に我々の王国を舞台にした作品を書いても著作権的に問題がなければスルーされるが、公式マークを付けたら法的にアウトだ。
 俺とシャルロットの結婚に合わせて発売された本は、あくまでも俺とシャルロットをモデルに書いた創作だとして発売されたがかなり売れている。
 俺達の写真を使っているのでシャルロットが着ていた服が売れ、作中、俺がシャルロットにプロポーズしたとされる場所などが、所謂聖地となり観光客が訪問。
 作者が抱え切れないほどの花束と表現したおかげで花屋の売り上げが上り、一緒に食べたとされるクレープ屋には行列が出来ることになった。
 良い感じのカップルが大勢来るようになり、ホテルはどこも満室状態が続いている。
 建国前のアビュニス王国も舞台となり、そこでは二人の関係を壊しかねない出来事が起こるのだが、その辺りの店も売り上げを伸ばしているそうだ。
 俺達がそこへ行ったと言うだけの事実に対して、話はとんでもなく膨らんでいる…。

「ジョン、一冊の本が大きな経済効果を持つとは思って無かったよね。」
「そこはシャルロットの写真を入れたからだよ、作中の写真ページで着ていた服がバカ売れだからな。」
「かなり事実とは異なるお話だったけど、気持ちの部分は上手く表現してくれてたのかな、でも、ルーシーの三枚目で有りながらもジョンに対する一途な気持ちまで書かれてしまったわね。
 ねえ、側室を持つのは、私に第一子が誕生した頃で良い?」
「世の女性は男が浮気すると心中穏やかざる状態になると、あの本にも書かれていたが良いのか?」
「ルーシーならね、他の人はダメよ。」
「う~ん、本の続編でも俺達が仲の良いままにして欲しいね。」
「現実の私達が仲良しのままなら、その通りに書かざるを得ないでしょ。
 妻が二人いても法的な問題は無いのだから…、でも人々の反応には興味が有るのよね。
 世界的に見ても一夫多妻は少数派でしょ、ルーシーがジョンの側室にならなかったら、ルーシーと結婚出来たかも知れない男性が居る、なんて言われたりして。」
「一夫多妻は兎も角、大家族を見直して欲しいと詩織さまは話してたね、伯父叔母従兄とかが一緒に暮らす大家族には良い所も悪い所も有るのだけど。」
「作者は本の執筆に関してルーシーに感謝してたでしょ、続編では私が感謝される立場になるのも有りかな。」
「俺は構わないよ、君に隠し事は無いからな。」
「そうね、ルーシーに対する微妙な気持ちも教えられてるから…、ねえ、ジョンだけがすっきりしていて私とルーシーがもやもやしてるなんてずるくない?」
「えっ、そう言われても…。」
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近衛予備隊-233 [高校生バトル-66]

 正直、自分達をモデルにした作り話に対しては違和感を感じたが、その経済効果を考えると何も言えない、それだけの利益をもたらしてくれたのだ。
 ただ、これだけで終わらせてはダメだとのシェリルからの言葉は、少しのんびりしていた自分に喝を入れられた気分になった。

「これで満足せずファンサービスを行い更なる利益をか、シェリルは経営者に向いてそうね。」
「だな、俺達のスケジュールに余裕が有ると知ったら、早速の提案、まあ資金は多いに越したことはないからやるしかない。
 セリフなしで小説の名場面だけを演じるぐらいなら下手でも許して貰えるだろう、本格的な映画ではないのだからな。」
「セリフが無いとは言え、あまりにも残念な演技だったら、皆さんを残念な気持ちにさせてしまうわよ。」
「そこは、自然体で何とかなるだろう、本人が演ずるのだから。」
「でもね、ちょっとだけやってみたのだけど、カメラを意識すると結構難しくて、今まで私達が撮影して来たYouTube動画の様にカメラに向かって説明するのとは全然違うのよ、練習が必要だわ。」
「そうか、実験的な取り組みだから成功させたいものだが…。
 結婚式のシーンはそのまま使えるから良いが、プロポーズのシーンとかは作者の空想だろ、現実ではプロポーズなんてあやふやだったし。」
「子どもの頃から結婚するつもりだったものね。
 でも、本のページに印刷されたQRコードから無声映像へと言うのは上手く行くのかしら。
 電子書籍からでも読むのを一旦止めて無声映像を見ることになるのでしょ、本の持つ、読者が勝手に状況を想像し思い浮かべることが出来る、と言う長所を奪うことにもなるのよ。」
「その辺りは写真ページが有るから同じだろ。
 既に本を持ってる人向けには、何ページ辺りの映像として動画を辿れる様にし、その動画で俺達のグッズや服を見せるのが目的の一つ、一回読んで終わりと言う本より得な気分になれるのではないか。
 本を読みながら時々スマホで動画を見ても良いし、読み終わってから動画を見ても良い、やってみて好評なら今後は初版本からの採用を目指すそうだよ。」
「アビュニス王国の建国に合わせて続々と発行されるのよね。
 不思議な三つの王国を舞台に繰り広げられる冒険小説、恋愛小説に国家社会の在り方を問う文学作品、YouTubeチャンネルのミュージカルは三か国を舞台にプリンセス雅が遠江王国のプリンセス役、脚本と作曲はかなり出来上がったと聞いたわ。
 絵本にもQRコードを付けたりするのかしら?」
「子どもの学習に繋がるシステムを考えたいとは聞いているが、どんなものになるのか楽しみだよ。」
「私達の子が喜んでくれるものになれば良いのだけど。」
「まずは、無事に生まれてくれないとな。」
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近衛予備隊-234 [高校生バトル-66]

 シャルロットの懐妊はまだ公式発表されていない。
 急いで発表する必要はなく今は発表するネタが沢山有るから、タイミングを見計らっての予定だ。
 生まれた子は王位と無関係だが、子どもが生まれるのは目出度いこと。
 遠江王国の王家では国王の孫が何人も生まれているが、やはり王位には関係ない、それでも誕生する度に国民からの祝福を受けているそうで、日本国のニュースにもなったと聞いている。
 ただ、生まれて来る子のことを考えると、つい血筋を重んじる王国の王の子に思いを馳せてしまう。
 ただの幼児なのに親が王家の一員と言うことだけで注目を浴び自由を奪われてはいないだろうか。
 何も分からない幼児期なら兎も角、思春期を彼らはどう過ごしているのだろうかと。
 自分は王子となったものの誰かに強制されてのことでは無く、村の改革を進めるべく村長になったことの延長に過ぎない。
 王の子として生まれ王位継承権を持つ彼ら全員が、その立場を理解し国民が納得する振舞いを続けられる訳ではなく、それは歴史を紐解けばいくらでも…。

「シャルロット、俺達の子には王位継承権が有る訳でも無く自由に生きて欲しいと思うが、俺達の子と言うことで目立ち余計な期待を持たれたりしないだろうか?」
「ある程度は有るでしょうね、今から心配しても仕方ないけど。」
「我が子には伸び伸びと育って欲しいだろ、国民からのプレッシャーが強くなるのは何とか…。」
「そんなに気にする必要ないと思うわよ、だって私達は国民の税金で生活を成り立たせている訳ではなく、むしろ私達が国民の為に稼ぎインフラ整備などでお金を使って来た、私達が資産として増やしたのは価値が微妙な株ばかりなのよ。」
「そうだな、アビュニス王国の建国が話題になったおかげでうちも潤ってはいるが…。
 なあ、資産家の子どもって誘拐されたりしないのか?」
「警備は必要でしょうね。
 ふふ、ジョンがそんなに心配性だったとは、随分長い付き合いだけど気付かなかったわ。」
「なんか落ち着かないんだよ、俺達の大切な子どもをより良い環境で育てられるかどうか考えると。」
「それは私達だけの問題では無いわね、王国内は兎も角、共和国内にはまだまだ解決されていない貧困問題が残ってるでしょ。
 そこで育つ子達も私達の子どもではなかったかしら?」
「勿論だ、その為の事業も進めてはいるが…。」
「なかなか難しいのよね、マーケット関連の展開でかなり改善されたとはいえ。」
「国の王子としては我が子のことばかり考えていてはダメだよな、共和国では何の地位も力もない俺だが…、貧困対策の予算を増やして貧困層の子にも明るい未来が見られる様に出来ないのかな。」
「アビュニス王国では企業による実験的ベーシックインカム制度の導入を進めているけど、うちの共和国では貧困層の人数が多過ぎるのよね…。
 ねえ、共和国で義務教育を導入し貧困層の子に給食を支給するだけの予算を確保することは出来ないかしら?」
「う~ん…、簡単ではないが…、国軍の訓練として子ども達の為に食材を作り、訓練の一環として給食を作る、そして明日の国家の為、国軍の兵士が教師になると言うのはどうだろう?」
「平和だから訓練の一環として土木工事をしてるものね。
 そもそも他国から攻め込まれても、それに対抗出来るだけの装備は無く、周辺諸国と仲良くするしかなく、近くの国も似た様なものだから軍事費を抑えたいところだけど軍は雇用の場でも有るから…、大統領との交渉はジョンの役目になるけど、最後の一押しは詩織さまにお願いしても良い案件だと思うわよ。」
「そうだな、我が子が生まれるまでには何とか道筋だけでも付けたいと思う、近衛隊にも手伝って貰い大統領を説得する準備を始めるよ。
 王国の皆にも教師役の訓練を手伝って貰わないとな。」
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近衛予備隊-235 [高校生バトル-66]

 教育制度を拡充して行く必要性は前々から言われていたのだが、共和国にはそれだけの力が無く難しいと思っていた。
 だが義務教育に国軍を最大限に活用する思い付きは予算面のハードルを大きく下げることが出来る。
 教育の質は兎も角、子ども達が栄養のバランスを考えた給食を食べられる環境と、識字率を上げる必要性を中心に大統領を説得した。
 戒厳令を出した頃は独裁者と言われることも有った大統領だが、その後はお歳のことも有り年々穏やかに。
 彼が老害を撒き散らす様な独裁者にならなかったのは我らが女王陛下、詩織さまの影響が大きい。
 国の改革に成功した大統領として名を残す道を、彼女がさりげなく勧めて来た成果なのだ。
 結果、義務教育に関する話に対して、それを大統領としての最後の仕事のしたいと話してくれ、自身の後継者についても…。

「シャルロット、大統領は義務教育制度を受け入れてくれただけでなく、自身の進退についても話して下さったよ。」
「お歳ですものね、戒厳令以降は周囲を私利私欲に走らない優秀な人材で固めて来たから大きな問題は起きて無いけど、後継候補はいるのかしら?」
「それが…、はっきりとは言われなかったのだけど、詩織さまにはお願い出来ないと話しながら、俺を意識しておられるみたいでね。」
「詩織さまの目論見通りに、共和国を私達の手で更に改革して行くことが可能になりそうなの?」
「ああ、彼の周りにも優秀な人はいるけど裏方に向いてる人ばかりだそうだ。」
「部下に野心家は必要ないと話していらしたものね。
 詩織さまが後継者を育てる必要性を大統領に説いておられた時には、詩織さまにお任せしたいと冗談交じりに話しておられたけど、意外と本気だったのかも。
 それで、ジョンは大統領になる覚悟は出来てるの?」
「自分だけの力でどうなることではないが、ここまで支えて来てくれた人達は喜んで応援してくれると思う、組織のトップが無能でも幹部スタッフがしっかりしていたら大丈夫だと話していたからな。
 トップが無能でも聞き訳が良ければ部下は動き易いと言う人もいてさ。」
「ジョンは無能では無いけど聞く耳を持ってるから評判が良いのよね、私が近衛予備隊に入隊した時に、バランス感覚を身に付けなさいと言われたけど、ジョンなら安心だと思う。
 それで、大統領になるまでの道筋は教えて貰ったの?」
「いやいや、はっきり言われた訳ではないからな、まだ若過ぎると思うし。」
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近衛予備隊-236 [高校生バトル-66]

 共和国の大統領を我々の仲間が担う、それは以前から話し合われて来たことだが大統領が引退を意識された今、具体的に話を進めるべき時となった。
 アビュニス王国の建国がせまり女王陛下のスケジュールは詰まり気味になっているのだが…。

「大統領の支持基盤は今も盤石なのかしら?」
「だと思います、目に見える形で改革が進み、それが実際には詩織の指示によることでも妨害されることなくスムーズに進んでいるのは間違いなく大統領の功績ですから。」
「始めの頃はコミュニケーションを取るのに少し苦労したけど、私達が実績を上げ始めてからは良き理解者になってくれたものね、戒厳令には驚いたけど結果的には良かったし。
 一つの企業体に国の根幹事業を複数握らせるなんて他国では有り得ないのよ。
 共和国内王国の成立も発表された当初は反対が多かったけど、王国中心の観光業が更なる外貨獲得に繋がり、マーケット関連の事業展開で失業者を減らして来たなどと大統領がフォローしてくれ、そんな声は一気に小さくなったものね。
 それで、ジョンとしては大統領、どうなの?」
「自分では若過ぎると思いませんか?」
「調べて貰ったのだけど、法的に問題は無くて当選したら世界的にも最年少大統領になるわね。
 大統領選挙に立候補しそうな人は何人かいるみたいだけど、反政府関連の人が当選することは無さそうで、国民の人気度を考えたら若過ぎると言うハンディは簡単に乗り越えられると聞いているわ。
 国の代表は死にかけのお爺さんより村長から王子となった美形が良いって声が結構有るのよ。
 お話の中では王国の英雄として美しき姫と結婚してるしね。」
「あんな作り話が大統領選挙に影響するのは良くないと思うのですが…。」
「実際、電力会社の社長として安定した電力供給の為に働いてるでしょ、その現場は雇用の拡大に繋がってるし、停電の無くなったエリアでは、少しずつ冷蔵庫の売り上げが伸びている。
 今は少しずつ国民の生活環境が良くなっている途中で、それを感じている人は増えつつ有る。
 この少しずつと言うのが良いのよ、一気に大金持ちになって贅沢三昧するよりも精神的にね。」
「そう言うものですか…。」
「冷蔵庫を買えたから次は、と頑張れるでしょ?
 人間、目標が有った方が良いのよ。」
「確かに目標がないと成長出来ないのが人間ですね、少し前の村は特に目標の無い人ばかり、生活を改善出来る知識も能力も無く…。」
「そんな村は共和国内にまだまだ有るのかしら?」
「ええ、衛生面に無神経だから病気で苦しんだり、文字の読み書きが出来なくて良い仕事に就けないとか、義務教育を通して色々教えて行く必要が有ります。」
「ジョンが大統領になったら、今以上に改革を進められるのかな?」
「自分一人では無理です。」
「そうね、でもジョンの周りには素敵な人が自然と集まって来る、そして、その人物を見極め多くを任せられるだけの力量がジョンには有る。
 規模が大きくなるだけで仕事は村長と大差ないのだから大丈夫よ。」
「もし自分が大統領に成ったら、詩織はバックで支えてくれますか?」
「勿論よ、当然でしょ。」
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近衛予備隊-237 [高校生バトル-66]

 アビュニス王国の建国祭には新しい女王陛下に連なる王族と言う立場で式典に参加したが、遠江王国王家の皆さんは俺とシャルロット、そしてルーシーをより詩織さまに近い位置に立たせてくれた。
 俺達の隣には新たなプリンセス、シェリルが。
 俺達としてはアビュニス王国に住むシェリルに目立って欲しいと話したのだが、彼女は話題性を重視したいと。
 確かに俺達に関する話題は多い、第一子の誕生予定とルーシーとの結婚、そして大統領が後継候補として俺を指名、とても小さく正式な独立国でもない国で勝手に王子を名乗っていた俺が、共和国の大統領に推薦されたのだ。
 その発表時、大統領は国民に向け、俺の提案に従い最後の仕事として義務教育を進めて行くとまで。
 シェリルがプリンセスになるのも大きな話題だと思うのだが、国の規模を考えたら俺が王族の中で一番高い地位に近づいていると言うのが彼女の言い分だった。
 一通りの式典や行事を終え。

「プリンセス シェリル、お疲れさま。」
「ジョン、プリンセスは公式の場だけにして下さい、皆の目をくぎ付けにしたロイヤルカップルの前では恥ずかしいです。」
「自分達は全然ロイヤルじゃないよ、近衛予備隊に入って無かったら山猿レベルだったからな。」
「いえ、たとえ幼少期がそうで有ったとしても、気品溢れる振る舞いは王家の名に恥じぬもの、私は真似しようとしたのですが撃沈しました、やはり裏方の方が向いているのでしょうか?」
「いやいや、まだこれからだよ、これからプリンセスとして振舞う内に身に付いて行くものさ。
 経済の立て直しを進めて行く過程でプリンセスの肩書は役に立つし、その肩書を意識していれば自然と背筋が伸びるというものだよ。
 まだ様々なことを学んでいる最中なのだろ?」
「そうですね、頑張ってみます。
 ジョン、式典のことが有ってなかなか聞けなかったのですが、義務教育の普及はどんな形で進めていくのですか?」
「興味有る?」
「この国でも義務教育は有りますが、今のままで良いのか疑問に感じることが有りまして。」
「ふむ、うちの共和国は教育が遅れているから識字率が低いし貧困問題も有る。
 だから欲張らず、義務なのは学校で給食を食べること、昼食だけでなく希望すれば朝食や夕食も学校で食べられる様にする、栄養面に問題の有る子が少なからずいるからね。
 学習面では読み書きと算数、それと生活に関する安全衛生面の学習を義務とし、職に就くまでの助言を重視したいと考えてる。」
「学習に関してはシンプルなのですね。」
「家の手伝いをしなくてはならない子もいるから、学校で拘束するのは食事前後が中心なんだ。
 但し、義務教科以外で多くのことを履修出来る様にしたい。
 履修自由な教科にも興味を持ち学習したいと思わせられるかどうかは教師の力量次第だけど。」
「国軍の兵士が担うのですよね?」
「ああ、だから教師に質は求められない、子どもにとっては運次第になると思ってる。
 でもね日本の公立学校に通っていたスタッフは、どんな教師と出会うかは、どうしても運不運の側面が有るが、教育システムを強化して行けば才能の有る子を埋もれさせることは無いと話してくれたんだ。」
「教育システムか…、義務教育の基本がシンプルなら学習の苦手な子に余計な負担を強いることは無く、用意されたカリキュラムに興味を持って取り組むのであれば学習に対して前向きになりますね。」
「ああ、そこが狙いなんだ。」
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近衛予備隊-238 [高校生バトル-66]

 義務教育を進めて行くに当たっては、国民から大統領に対して何故国軍なのかと言う問いが有ったのだが、彼は自分で答えず俺に訊く様にと応じた。
 俺を後継候補として国民に認知させる意味合いが有ったのだと思うが、こちらとしても大統領に説明して貰う為の原稿を用意するより話が早く助かった。

「ジョンによるテレビ番組での解説は分かり易くて好評だったみたいね、大統領も満足しておられたそうよ、軍隊に教育を委ねるなんて随分乱暴な話だけど、ジョンから爽やかな笑顔と共に平和な世の中で軍隊の役割が変わっても良いと聞かされたら、人々は簡単に受け入れてしまうのね。」
「バックに詩織が居ることは知られていますし、予算が充分に無い現時点では最善策ですから。」
「国軍とは話を始めたの?」
「はい、戒厳令前にここで訓練を受けていた国軍の知り合いが大統領親衛隊の上級職になっていたので、大統領にお願いし義務教育の担当に指名して貰いました。」
「大統領の信頼を得ているのね、ジョンが大統領になったら直属の部下になる人達とはどんなことを?」
「今後の展開として、軍の土地では有ったものの、あまり使われて無かった土地を中心に国営農場を広げて行き給食用の食材を生産しますが、そこでは子ども達に農業実習をして貰います。
 作物の一部は貧困家庭への支援に、それが余る場合はマーケットで買い上げて貰おうかと。
 そういったお金で、少しずつ教材を充実させて行きたいと思っています。
 給食を担当するのは学校の規模にもよりますが食材確保と調理で一個小隊になります。
 学習面を担当する人は軍内部で希望者を募りトレーニングしてとなりますが、今後は教員希望者を軍での採用時に受付けます。
 将来的には軍から切り離した組織を考えていますが、まずは大統領をトップとする国軍によって教育制度を充実させて行くことになります。」
「そうね、組織の構築を考えても国軍に基礎を任せるのは良いかも。
 今までの学校はどうするの?」
「しばらくはそのまま続けて貰います、読み書きと算数を教えていれば義務教育を実行している学校と認め、給食に関しては個別に相談して行きます。
 後は王国で実験的に行って来た教育の内、成果を上げているものを広げて行きながら…、時間は掛かると思いますが今よりまともな国にして行きたいです。」
「今まで高校へ進学するのは富裕層の子弟だけだったのでしょ、その辺りはどうするの?」
「まずは詩織近衛予備隊を優秀な子の受け皿にするつもりです。
 学費無料の代わりに労働実習を通して稼いで貰いますが、現在のリーダー達に期待しています、彼らは近衛予備隊拡大構想に対して乗り気ですからね。」
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近衛予備隊-239 [高校生バトル-66]

 詩織近衛予備隊第三部隊は共和国中から入隊希望者を受け入れたことも有り随分拡大した。
 隊服に憧れて入隊して来る者もいるが、入隊試験をクリアした子達は真面目で学習や職業実習に対して真剣に取り組んでいる。
 工場が実習現場として彼らを受け入れると、子ども達の前で恥ずかしいことが出来ないからか全体の生産性が向上するそうだ。
 そんな彼らに新たな課題として投げかけたのが義務教育の推進、それに対して大きな手応えが有ったのだが…。

「ジョン、識字率の低さは予備隊の子達も残念に思っているのだけど、英語教育との兼ね合いで迷ってるみたいよ、二か国語をマスターするのは大変だけど、今後の観光業を考えたら英語は必須でしょ。」
「そうだな、英語だけに出来たら話は早いが、そうもいかないものな。
 制度上、英語学習は義務と位置付けていないが履修を推奨する上位に入れて有る、英語が出来たら職業選択の幅が広がることは間違いないのだが。」
「義務としてはどちらか一つを選択出来ればと思うのだけど難しいのかしら?」
「う~ん…、読み書きは英語だけでも良いのかな。
 でも問題は英語教師の確保かな、国軍への入隊で英語力は重視されていないだろ。
 給食担当の小隊編成は目途が立ちつつ有るが、教師担当は必要な人数を揃えられるかどうか微妙、近衛予備隊の力が不可欠になりそうなんだ。」
「英語を話せない人が英語を教えるのは無理だものね、この国で英語を話せるのは…。」
「一番は観光客だな、いっそ観光客に頼るか?」
「頼るって?」
「読み書きは兎も角、英会話はどれだけ話したかが重要だろ、様々な国からの観光客程、英会話を学ぶ相手として相応しい人はいないと思わないか?」
「確かにそうだけど、彼らは遊びに来るので有って子どもの教育と言う仕事に来る訳では無いのよ。」
「確かにそうだが、旅の途中で現地の子と触れ合えたら嬉しくないか?
 遠江王国へ旅した時に出会った香菜とは今でもメールのやり取りをしているのだろ?」
「ええ、色々教えて貰ったり相談に乗ったりしてるわ。
 でも、どんな形にするの?」
「そうだな…、まずは近衛予備隊メンバーの英語力向上を手伝って欲しいと、事情を正直に説明し何らかの特典を用意して短期ボランティアの募集ってどうかな?」
「う~ん、そうね…、こちらが下手に出るより近衛予備隊現役メンバーと交流出来るみたいな企画から始めてみるのはどうかしら?」
「あっ、待てよ、逆手を取って英語教師養成学校を作って留学生を受け入れるってどうだ?
 留学生の実習として教壇に立って貰うんだ。」
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近衛予備隊-240 [高校生バトル-66]

 俺は英語教師に関する思い付きを詩織さまに相談した。

「面白いわね、留学生から学費と寮などの費用を払って貰った上で子どもに英語を教えて貰うのなら予算は掛からない、語学教育の基礎なんて質より量なのだから良いと思うわ。」
「質より量、そこまで軽く考えて良いのですか?」
「大丈夫、日本の中学で英語を教えてる人が英語での対話が出来なかったなんて話を聞いてるのよ、しばらく前の日本ではまともに英会話が出来なくても、中学生に対して高校受験向け英語教育が出来たそうでね。
 中学生の相手しかしていないのなら、まともに会話出来なくても支障がなかったのでしょう。」
「それって…。」
「普通に英語を使う機会が無かったのよ、意識の低い英語教師は特にね。
 逆にこれから英語を教えようと言う志の有る人の方が意識が高くて上手に教えるかもよ。
 意識が高い人向けに実験教育コースを設けて色々自由な授業を試せるとかどう?
 本気の人達なら大学で教えて貰うより自分で色々試してみたいと思う筈だわ。」
「それで良ければ、こちらとしては教材を用意し読み書きの力を定期的に確認する為のテストを行うぐらいに出来ますか。」
「スタートはそんな感じで良いと思うけど、テストで合格点を取れたらランクアップとかはどう?
 レベル1から始めて、子ども達に競わせるの。
 こちらで目標を作っておけば教員志望の学生もやり易くなるでしょ。
 観光の一環として子ども達と交流する時間を作るのも悪くないと思う、邪な目的の人が居ないか監視する必要は有るけど。」
「はい、まずは近衛予備隊の英語力向上を目指してスタート、それからここの学校で試してみた後、義務教育の為に新設する学校へと広げて行ければ…。
 問題は留学生や子どもとの交流を希望する観光客を集められるかどうかです。」
「留学生は日本から呼べると思う、日本では教員資格を得る過程で教育実習が有るものの極めて短期間なの、ここでは短期から長期まで様々なコースを用意出来るでしょ。
 観光客は企画次第かしら…。
 まずは、英語教員養成専門学校の設立と寮の建設、寮はコテージレベルで構わないと思うから、余裕を見て半年後の開校を目指しましょう。
 予算の少ない人向けに教室で寝泊まりするコースを用意すれば、こちらとしても寮を建設するコストが抑えられるわね。」
「英語教員養成学校の講師とかはどうしますか?」
「予備隊の上級生に任せてみてはどうかしら、実際に英語を教えてる子が何人もいるでしょ。
 教えを必要とする程度の留学生より余程優秀だと思うわよ。」
「講師が若くて留学生が反発したりしませんか?」
「本来ならカリキュラムに沿って行うべき教育、でも今は質を重視出来ない理由が有るから自由度が高く、それ故本当に教育と向き合う人を対象にした実践的英語教員養成学校が成立していると言い切ってしまえば良いのよ。
 予備隊の上級生はジョンが育てたのでしょ?」
「育てたと言う程のことはしていませんが、空いた時間に彼らと話し合う様にはして来ました。
 ただ、自分は他と比較が出来ないので、自分が教えたり提案したことが正解だったのかどうかは判断出来ません。」
「難しく考える必要は無いのよ、語学学習に対して嫌にならずに取り組める環境を作れているし、実際に学習したことを使える場が有る、そこが重要なの。
 それに気付けた留学生は私達の英語教員養成専門学校を絶賛する、そして自分で気付けない人達にそれを気付かせるのが講師の役目、その辺りを担当する予備隊メンバーが理解していれば新しい学校は必ず成功すると思うわ。
 留学生の募集は雅に手伝って貰えば簡単だからね。」
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