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夏休み-71 [花鈴-08]

 それから私の企みを話した。
 それは本社で計画しているインターンシップに繋がって行くことでも有る。

「…、ということで、夏休みに遊びに来て、また来たいと思って貰えるかどうかから始まるのですが、そこから住んでみたいに繋げられたら、新入社員の本社勤務希望者が増えるかも知れません。」
「成程、花鈴姫はそこまで考えておられるのですね。
 纐纈社長は本社の規模に関してどの様にお考えなのですか?」
「第一段階での移住希望者が思っていたより多かったので今のままでも良いし、倍になっても構わない、選択肢の有る働き方と言う視点で考えたらそんな所だが、過疎地の活性化を考え拡大して行きたいですね、皆さんはここに住んでみてどうです?」
「私は調査をドライブ気分で楽しんでいます。
 都心で車を走らせると走ってる時間より信号待ちの方が長かったりしませんか。
 ここでは私の活動範囲内に信号交差点は三か所しか有りません。
 移住は季節ごとに何度か足を運んでから決めましたので何の問題も無いです。」
「うちは子どもが小学生で馴染めるかどうか心配だったのですが、遊びが変わり自然豊かな環境を喜んでいます。
 田舎に暮らす子でも家でゲームばかりしてると聞いたことが有りましたが、ここの子達は外でも遊んでいるようです。」
「授業が終わってからの時間をゆったり取れる様に帰りのバスは少し遅くして貰ったのです。
 その方が家の人も助かるだろうと。
 早く帰りたい一年生もいましたが、もう慣れています。」
「そんなことも花鈴姫のお力で?」
「ええ、学校の先生と違い、役所関係は論理的に説明すれば動いてくれるのです。」
「先生は動いてくれないのですか?」
「決まりだから、ルールだからと言う言葉を何度も聞かされました。
 その決まりがどれだけ素晴らしいものなのか論理的な説明はして貰えないのです。」
「調査の過程で出会ったお母さんが、先生より姫さまの方が信頼出来ると話してみえた背景には教師のそんな意識が有ったのですね。」
「勿論、先生全員の話では有りませんが、そちらの改善は研究室の大学生達に期待しています。」
「花鈴姫が大学生達を手懐けていると言う話を耳にしていますが。」
「手懐けるなんてとんでもないです、ただ良好な協力関係を築いてるだけですよ。」
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夏休み-72 [花鈴-08]

 実際の所、徳沢さんを始めとした大学の調査メンバーは、彼らが合宿所として使用し始めた家屋の改修を私が指示したと思ってる様で私に従順では有る。
 既に学生は入れ替わりながらその人数を増やしているのだが、夏休み本番になると更に増える予定。
 ただ夏休み期間は小学校とずれるそうで、私達の夏休みは学生の少ない状態で始まることに。

「大賢者は夏休みをどう過ごすの?」
「花鈴姫達の企画したイベント以外は興味の有ることと何時も以上に向き合うかな。
 イベントも興味が有るのだけどね。」
「キャンプのついでにクワガタを捕りに行く話は中学生にお願いしておいたからね。
 彼のお爺さん所有の山で一般人は勝手に入れない所、そう言う所でないとお金の為にクワガタを捕りまくる人に荒らされるのだとか。
 猪や鹿だけでなく人間も私達にとっては害獣みたい。
 猪の行動は生きて行く為の自然なものだけど、売る為にクワガタを捕獲してる人達は徹底的に捕まえるのだとか。」
「昆虫は環境さえ整っていれば簡単には数を大きく減らすことはないそうだけど、それを上回る勢いではね、僕は絶滅させたい訳では無く、沢山捕まえる気は無いから。」
「飼うの?」
「種類によって違うけど成虫になってからの寿命は短いみたいだから…、繁殖させられたら面白いのだけど。」
「増やして売って儲ける?」
「小学生で商売を考えてるのは花鈴姫ぐらいだぞ。」
「そんなことは無いと思うけど、小さいながらも新会社の会長に就任したから周りが騒々しくなり始めてるのよ、大賢者が巻き込まれてしまったら御免ね。」
「えっ、また取材とか?」
「ねえ、今まで取材を受けた時には出演料とかの交渉はしたの?」
「全く知らないよ、お母さん任せで…、なんか微妙だったかな…。」
「微妙?」
「お母さんは取材を受けた後の態度が色々、機嫌良く外食と言うことがあるかと思えばブツブツと。」
「マネージャーがしっかりしてないと損をするわよ。」
「姫にはマネージャーがいるの?」
「私の場合は秘書をどうするか、取り敢えずお母さんに手伝って貰って考えることにしたの。
 社員と相談している内にスケジュール管理をしっかりする必要が出て来てね。」
「忙しいんだ。」
「忙しくしない為のスケジュール管理なの、明後日には地元で事業を営んでる人向けに新会社の説明会を開くのだけど、そこからの流れで私がどう動くことになるのかが決まって行くと思う。
 既にお話しした人達は前向きに考えて下さってたから、がっかりさせたくないとは言え、小学五年生に出来ることには限りが有るでしょ。」
「はは、花鈴姫は普通の五年生とは違うから限界が想像出来ないけどな。」
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夏休み-73 [花鈴-08]

「今回は私の発案に大勢の大人を巻き込むから、学校の先生と遊んでる様な訳には行かないのよ。
 うちの本社がここに移転して来て良かったと思って貰う為にも、地域社会に貢献する新会社にしなくてはならないの。」
「大変そうだ、普通の小学生は考えもしないだろうな。」
「そこは良く分からないのだけど、うちでは食事の時間に会社のこととか教えて貰うのが当たり前だったから、お兄ちゃんは中学を卒業するタイミングで自力でIT関連の会社を立ち上げるつもり。
 私はお兄ちゃんと違って殆ど人任せだから楽なのだけどね。」
「将来は会社経営者になるのか?」
「それは分からないわ、でも策略を練るのは楽しいし、それが上手く行ったらもっと楽しいと思う。
 ただ、必ずしも上手く行くとは限らないでしょ。」
「だろうな、過疎化を何とかしようと考えた人は少なからずいたのだろうけど、君のお父さんの様に動ける人が少なかったからバランスがどんどん悪くなったのだろ。
 う~ん、新会社の説明会、僕も参加して聞かせて貰うと言うのは難しいのかな?」
「興味を持ってくれたのね。
 問題無いわよ、私達の輪にはもう加わってる様なものだから。
 菜園でピーマン栽培してるのも繋がって行くことなの。」
「どう繋がって行くのかは分からないけど、手伝いに来てる色々な人達が輪を作って行くと言うことなのかな?」
「ずっとここに住んでる人も移住して来た人達も、そして離れた部落に住んでる人達ともね。
 元々村の人達は助け合って暮らして来たのだけど、それを現代風にアレンジして作り直すの。
 特に移住者とは互いに誤解を生みださない様に、現代版村八分なんて問題外でしょ。」
「近所の人は役場の人から適度な距離感を意識する様に言われたと話してたよ。
 折角移住して来てくれた人がトラブルから町へ帰ってしまうことがよその過疎地で有ったそうで、ここではそんなことにならない様にしたいとか。」
「うん、ここは移住者が増えつつ有るから、対立とかも怖いしね。」
「でも、花鈴姫に顔向け出来ない事は絶対しない、とも話してた。
 皆さん姫のことを御存じなんだな。」
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夏休み-74 [花鈴-08]

「去年は神社のお祭りを手伝ってね。
 そのついでに、お父さんがどうして本社を移転させることにしたのか、大人達にお話させて貰ったのだけど、それから良い噂が色々広まったみたいなの。
 それが有ったから会社の会長に就任することはプラスになると判断。
 新会社の話は、もう広がりつつ有るから私の知名度は更に上がってると思うわ。」
「噂話って悪い内容ばかりではないんだ。」
「お父さんはここの為にお金を使ってる、ここが気に入らなかったら他の過疎地でも良かった訳でしょ。
 大工さんや製材所が儲かるだけも喜んで貰えたのだから、お金の力は強いの。
 その投資を新会社で更に増やして行く、移動販売をしてるお店だけでなくお年寄り向けのデイサービスセンターや宅配便、プロパンガスの会社とね。
 そんな話を明後日の説明会でするのよ。」
「花鈴姫は全然夏休み気分では無さそうだ。」
「いやいや学校へ行ってたら思いっ切り出来ないでしょ。
 新会社のことをしっかりやりたいから、夏休み期間中が勝負なの、と、言ってもキャンプはするし、ちゃんと遊ぶけどね。」
「だからスケジュール管理なんだ。」
「ええ、畑の管理と同じなのよ。」
「畑か、ピーマンを植えた頃には今ほど人が多くなかったからビックリしてる。
 大勢の人が関わってるから調整しないとな。」
「植物の生長速度が五月とは違うから、それに合わせてのことだけど、口コミで参加者が増えたのよ。
 数十人の人が関わってるから一人当たりの作業量が少なくて済む。
 収穫量とのバランスは微妙だけど、皆さん納得してるし、近所の人からのお裾分けが有ったりするから、THE田舎の共同体って感じが強まって嬉しいわ。」
「共同体か、村落共同体の話を教えて貰ったけど、町に住んでた頃は隣に住んでる人の事すら知らなかったからな、作業のコツを教えてくれてる人はボランティアなんだろ?」
「そうね、下手な作業をしてる私達のことを見かねて教えて下さる様になったのだけど、それを楽しんでおられるみたい。
 昔の村落共同体は生きるのに大変だった人達が、協力するしか無くて出来上がったのだろうけど、今は行政の力も有って変わって来てるの。」
「行政って?」
「政治、地方行政についての資料は簡単にまとめたものをメールで送るわ、明後日の説明会でも出て来るから。」
「はは、学習しとけってことだね。」
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夏休み-75 [花鈴-08]

 大賢者にはついでに他の資料も送ったのだが、彼は意外と律儀でそれらに目を通してくれてたみたいだ。
 説明会を終えて…。

「資料を貰って無かったら説明会の話は全然分からなかったかも。」
「資料を読んでくれてたんだ、大賢者って意外と生真面目なのね。」
「いや、資料を見始めたら、花鈴姫達のしようとしてることが見えて来て、今まで姫から教えられて来たことの意味がね。
 ぼくが普段してる学習とは違い、人の生活に直接関わることで大人の話だろ。
 僕の場合は数学の得意な子どもだけど、姫は大人を動かしていて子どもじゃないよな。」
「そうね、真面目な話をしてる時に子ども扱いするのは学校の先生ぐらいかも。
 それで、キーワードの『ついでに』はどう?」
「面白いと思ったよ、中心部から離れた所に住んでる人の所へ、三つの業者が一つずつ商品を届けに行くのを一つの業者にまとめて運んで貰う。
 調整は凄く難しそうだけど、上手く行けば効率的だよな。」
「それぞれのニーズを考えないと行けないからシステムの構築が大変なの。
 でも様々な住民情報を集約して運用したら、配送コストが抑えられるだけでなく皆さんの暮らしを良く出来る、初期投資は充分回収出来ると思うわ。」
「これから展開して行くサービスの料金を抑える代わりに野菜を寄付して貰う、その野菜はお年寄り向けデイサービスの送迎ついでに回収され、そのまま施設での食材に、スーパーの店頭に並べる訳では無いから形を気にする必要は無いとか合理的なのだけど、花鈴姫の発案だと強調されてたね。」
「そのまま、ここで働く人達の給与水準を上げる話をしたでしょ、そこがとても重要なのだけど事業主の皆さんは軽く考えてたの。
 国が定めた最低賃金より上なら良いと考えてるからなのだけど、その考えが過疎化を進めて来た一因だと言うことに気付けない人もいてね。
 だから小学生だって色々考えてるんだと気付いて貰おうって、田中社長がね。」
「賃金の話は実感が湧かなかったけど、田舎でも給料が良ければ都会で就職するのではなく地元で働こうと考える人が増えるかもなのだろ。
 地元にまともな就職先を少しでも増やす、花鈴姫の話は皆さん真剣に聞いておられたよ。」
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夏休み-76 [花鈴-08]

 株式会社花鈴は移動販売を手掛けている店とお年寄り向けデイサービス施設の買収から始まった。
 それぞれのサービスを受けてる人達には従業員の待遇改善を目標にしているとはっきり伝え、野菜の寄付など協力を求めたが、サービス向上に向けた提案も受け付ける。
 私が部落の訪問を始めた夏休みは動き始めたばかりだったが…。

「移動販売に同行してみて如何でしたか?」
「田中社長、皆さん思っていたより新会社を好意的に受け止めて下さっていて安心しました。
 肉や魚と日用品は移動販売に頼り切っているけど自分達が食べる野菜は余ってるそうで、世話になってる人達の生活が良くなるのなら栽培する量を増やしても良いと、若者が職を求めて都会へ出て行くのを止められるのなら協力を惜しまないと言って下さる方もみえました。」
「花鈴姫の目で見て、それが本心だと感じられましたか?」
「子どものいない集落で私のことを知らない人達でしたが、移動販売に対する感謝の気持ちを感じられました。
 私達の買収に応じて下さったオーナーを尊敬されているとか。」
「移動販売に関しては利益の出ないボランティアに近いことをされていましたからね、三人の従業員も安い給料で。
 免許証の返納を考えるお歳になられていたので良いタイミングでした。」
「何としても新しく建てる店を成功させて皆さんの給料を上げたいです。
 まずは田舎だから給料が安いと言うイメージを無くして行かないと。」
「ですね。」
「今日は収穫が有ったのですよ。
 放置されて荒れた竹林が有りましてね、持ち主が確認出来、竹もタケノコも自由にして構わないと。
 念の為契約書を作成して、年間千円ぐらいでどうでしょう?
 キャンプ場から近いのです。」
「どう活用して行くおつもりで?」
「大学生の山村実習の一環と称し、竹を間引いて綺麗にして貰います。
 竹はそのままではあまり売れないかも知れませんが、竹細工の材料にし観光客向けの商品を作り需要を見ます。
 製造は遊びの一環として取り組んで貰います。
 勿論タケノコは売ります。
 荒れているので商品価値の高いものは収穫出来ないでしょうが、小さくてもタケノコに違いないと思うのです。」
「成程、大学生は動いてくれるのでしょうか?」
「徳沢さんが田舎暮らしを体験するサークルを立ち上げてくれたのです。」
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夏休み-77 [花鈴-08]

 大学生のサークルがどんなものだかは良く分からないが、徳沢さんに誘われた人達が、テスト期間終了後、田舎暮らしを体験する為に十名程来るそうだ。
 その人達に竹林の再生と言う課題をプレゼント。
 部落の人達と交流して貰うことも密かに企んでいる。
 皆さん無駄に広い家に住んでみえるから、十人ぐらいが押しかけても何とかなるだろう。
 今日はオフィスへ…。

「花鈴姫、竹林に関しての契約を交わして来ましたが、他の素材に関しても姫に言われた通り話しました所、山を荒らすことが無ければ構わない、むしろ綺麗にしてくれるので有れば、竹林同様にお願いしたいと話しておられました。」
「山菜や、きのこの話は?」
「相談したエリアにマツタケは無いと一笑に付されましたが、毒キノコに注意する必要が有るのと、山菜は来年のことを考えて採る必要が有るとのことです。
 ご自身は家の近くでしか山菜採りをしなくなったそうで、都会で働いておられる息子さん達も山には興味が無いと話しておられ問題はなさそうです。」
「ではあのエリアもキャンプ場用地として父が確保したエリアの延長として自由に利用出来るのですね。」
「はい、但し猪には気を付けて下さいと。」
「そうね、清六おじさんにはキャンプ場を中心にして猪の罠をお願いして有るけど、ねえ、山根さんもわな猟免許取る?」
「はい、そのつもりで調べています、このエリアの猪を全部食べ尽くすのは難しいそうで人手が必要だと言われていまして、花鈴姫が道で猪とばったり出くわすことの無い様にと考えています。」
「猪も生きる為に頑張ってるから油断出来ないのね。
 猟師と言うのは想定の範囲内だったのですか?」
「ええ、都会でぬるま湯に浸かってる様な生活から抜け出そうと思い本社勤務を希望しましたが、株式会社花鈴は更に面白そうで、姫、このド田舎を変えてやりましょうよ。」
「そうね、朽ちかけた空き家を減らし、移住したくなる田舎に出来れば本社勤務希望者が増えると思うの、そうしないと山根さんが結婚相手と出会える確率が低いままでしょ?」
「はは、それがそうでも無いのです。
 すでに孫と見合いをしないかと言うお誘いを幾つか受けているのですよ。
 扱いは子会社でも大企業と同じ待遇だと知られていまして自分は優良物件なんだそうです。」
「へ~そうなんだ、じゃあ本社勤務の独身者とここで暮らしても良いと言うお孫さん達が出会えるイベントを計画しましょう。
 担当者特権として気になる人がいたら人より先にアタック出来るのだけどどう?」
「はは~、謹んで引き受けさせて頂きます。」
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夏休み-78 [花鈴-08]

 うちの社員は仕事が早い。
 話をした翌日には山根さんから毎月一回の婚活イベントを九月から開催する案が送られて来た。

「お父さん、婚活イベントって会費は幾らぐらいが適当なのかしら?
 担当の山根さんが迷ってるみたいなの。」
「イベントの内容にもよるが安過ぎても高過ぎても駄目だろうな。
 どんなイベントを考えているんだ?」
「キャンプ場でバーべーキューをするか本社ホールでの会食を中心に考えてくれてるのだけど、一回目は募集して何人ぐらいの人が来てくれるのかさっぱり分からないでしょ。
 本社の独身者だけになったとしても構わないのだけど。」
「だな、移住して来て落ち着いて来た頃合いだろうから、婚活抜きのイベントを開いても良いぐらいだ。
 ポイントは孫達に宣伝してくれる地元のお年寄り達がどの程度動いて下さるかだな。
 孫達に全くその気が無い可能性は有るし、意外とその気になってくれるかも知れないし。」
「大企業で働く人と、知ってる土地で結婚し暮らす…、でも、応募が少なかったらこことは無縁の人に向けてもアピールして良いのよね?」
「農村に嫁ぐイコール農作業ではないのだから有りだと思う人がいるかもな。
 まずは九月と言わずにお盆の頃に軽くやってみてはどうだ?」
「そっか、お盆休みはお婆ちゃんちでって人がいるものね。
 お年寄りに宣伝して貰うのだから紙のチラシが必要になるのかな。
 でも、社員さん達が実家へ帰ってたらダメよね。」
「その辺りの調査は今からでも間に合うだろう、男女比がどうなるのか予測出来ないが。」
「そうね、最悪の場合、調整は大学生にお願いするわ。」
「簡単にお願い出来るのか?」
「婚活の目的は果たせなくても若い人と交流出来たら満足して下さるでしょ。
 違う趣旨のパーティーを企画して二つを合体させるとか誤魔化せる手は有ると思うの。」
「はは、お主も悪よの~。」
「いえいえ、お代官様、それ程では御座いません。」
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夏休み-79 [花鈴-08]

 山根さんと相談し、お盆の頃、試しにと言うことで婚活パーティーを開くことに。
 一度試してみて、参加して下さった方々の意見を聞き、その後どう続けて行くのかを決めると明記したチラシを作り配って貰った。
 軽い気持ちで参加して欲しいので開催日までの期間が二週間でも問題ないだろう。
 会費を安くする代わりに、飲み物や食べ物を持ち寄って貰うことにしたのは、準備の手間を掛けない為と、手作り料理で自己アピール出来る様に、足りなければ山根さん達が買い足しに行けば良いし、余る様なら大学生にお裾分けだ。

「山根さん、婚活パーティー参加者募集の反響はどうです?」
「年齢制限を設けて正解でした、四十代の人から怒られましたが、申し込みが結構来ていまして、聞くところによると、この機会に中学の同窓会を兼ねてとか、新しい本社ホールに興味が有るとか、応募の動機は様々みたいですが、会社以外の人が女性中心に二十名を超えています。
 会社側は男性が多いのでそれなりに男女のバランスは取れそうです。」
「食べ物の調整は出来そうなの?」
「みんなで作るパーティーをうたい文句にしましたので、ネット上でのやり取りを始めています。
 女性側のまとめ役は役場の支所で働いてる人が名乗りを上げて下さいましたので自分は思ってたより楽です。」
「県外に住んでいて、お婆ちゃんから言われて参加と言う人もいるのかしら?」
「詳しくは分かりませんが、ここで暮らしてる人は今の所五名だけです。
 まとめ役の女性によれば、ここに企業の本社が移って来たことはニュースにもなったことで色々と関心を持たれているのだとか。
 それで、花鈴姫や大賢者に会えるかどうかと聞かれているそうですが如何でしょう?」
「困ったわね、私はまだ結婚する気は無いのだけど。」
「皆さん小枝子さんのYouTubeチャンネルを見てるのです。
 新会社の会長にピーマン嫌いの天才少年、英語を話すLily嬢に、油断してると厳しく突っ込んで来る絵梨、凄く個性的なメンバーに囲まれていても揺らぐことなく姫に仕えるひろっち、とピーマンの会の五年生は役者が揃い過ぎています。」
「私は覘きに行くつもりだったから、そうね、美味しい物が食べられそうなら皆に声を掛けても良いわよ。」
「では、その方向でお願いします。
 ケーキ屋さんオリジナルの新商品試食会を兼ねることになりましたので。」
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夏休み-80 [花鈴-08]

 パーティー当日、この企画にケーキ屋さんを絡めたのは山根さんのグッドジョブだと思った。
 ケーキ屋さんの店主としては、参加者がお婆ちゃんちへ遊びに来た時に寄って貰える可能性を高めつつ、新作の反応を直に見られ、私達は美味しく試食させて貰えたのだ。
 今回は婚活を前面に出し過ぎない演出で、小学生の保護者も結婚後の生活をアドバイスすると言う名目で参加しているのだが…。

「お父さんが女性の相手をしてたら婚活パーティーの意味が無いでしょ。」
「だよな、だが花鈴だって人に囲まれて無かったか?」
「だって~、私と写真をって人が多くて…、断れないじゃない。
 大賢者やひろっちもモテモテだけど、そろそろ私達は退席した方が良いかも。
 後は若い人同士でどうぞってとこかしら。」
「はは、パーティーを盛り上げることには貢献出来たから、そろそろ潮時か。
 それにしても花鈴達が来ると聞いて参加者が一気に増えたと聞いたぞ。
 ホールを広目にしておいて正解だったな。」
「小学生や社長に会えるから婚活パーティーに参加、ってどうかしら?」
「切っ掛けは何だって良いのさ、パーティーが無かったらお盆休みにこちらへ来なかった人もいるそうだから、お年寄りにも喜んで貰えただろう。」
「そうね、山根さんは会社に関する質問をされていたけど、それが切っ掛けになる可能性も。
 次回以降は人数が減るだろうけど、毎月来てる内に親しく成る男女が出て来るパターンに期待かな。
 役場の美咲さんが山根さんと楽しそうに話してるから、今回は成功ってことにしておくわ。
 女性が多めになってしまったけど、同窓会を兼ねてる人達もいるから…。」
「ああ、それを気にしてる人は少なそうだよ、婚活に関係なく来てる人ばかりでは残念だが、都会に就職したけど疲れたと話す人もいたからな。」
「本社で雇って欲しいとか?」
「本社の場合は高いスキルが要求されるだろ、株式会社花鈴で採用出来ないのか?」
「新しく建てる店が観光客で繁盛するようなら人は必要になるわね、オープンは来年の四月だけど…。」
「都会なら新規オープン、アルバイト募集で何とかなるのかも知れないがここではな。
 初期投資が多少増えても、早めに雇い研修をして余裕を作ることも長い目で見たら必要なことだぞ。
 そこを疎かにすると新規事業は慣れない人ばかりで混乱してしまうんだ。」
「そっか、関連企業で研修して貰うとかは有り?」
「花鈴からの近況報告を待ちわびてる人もいるのだから、新店に関することを含め小枝子さんと相談して発表、皆さんに協力を求めても良いと思うぞ。」
「そうね、あそこで浮かれてる社員とも相談してみるわ。」
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