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近衛予備隊-21 [高校生バトル-45]

 撮影の翌日、俺とシャルロット、ルーシーの三人は詩織近衛隊のメアリーと話すことになった。

「ジョン、撮影スタッフの連中があなた達を凄く気に入ってね。
 今後はモデルとしても活躍して欲しいと言って来たのだけど、どう?」
「モデルって服の宣伝ですか?」
「ええ、スケジュール調整はこちらでするから、副隊長や小隊長に任せる部分を増やしても良いでしょ?」
「任せることはむしろ進めて行くべきだと考えていましたので問題無いです。」
「メアリー、私もなのですか?」
「ええ、ルーシーの笑顔がとても良かったそうでね、勿論我々にはあなたを表に出して行きたいと言う思惑が有るのだけど。」
「私をですか?」
「ハンディを持つ人が生き生きと活躍する村としてアピールしたくてね、一歩間違えると見世物的な存在になってしまうから、そこは申し訳ないのだけど。」
「憐みの目で見られることには慣れています…。」
「もう一つ有ってね、昨日撮影した写真を、今、そこのモニターに出すから見て…。」
「メアリー、昨日はシャルロットが来てから盛り上がったのですよ。」
「ええ、それも聞きました…、さあ、このスリーショット写真はどう?」
「はは、ジョンとシャルロットと写して貰えるのが嬉しくて…。」
「少しくっつき過ぎよね、でも、ルーシーだけでなくシャルロットも負けじとくっついてるし、ジョンがでれっとしそうなのをこらえてる感じが良いのよ。
 撮影を担当した連中は、第一部隊や第二部隊の写真も受け持っているのだけど、この美形男女のスリーショット写真が最高の出来だそうでね、女子二人のジョンに対する気持ちが自然な形で表現されていて人気が出そうだから、ポスターに使いたいと話しているの。
 容姿で人を判断することに抵抗を感じる人もいるみたいだけど、魅力的な人はその姿だけで人の心を動かす何かが有るのよね。」
「ジョンやシャルロットは容姿だけでなく人としても素敵なのですよ、私はどれだけ二人に助けられたことか…。」
「ええ、色々聞いてるわ、だから隊長はジョンしか考えられなかったし、二人を副隊長にすることもね、教官達はさりげなく隊員たちに質問を投げかけ調査していたのよ。
 勿論、他の副隊長や小隊長の人選もそれを参考にした結果でね。」
「テストをしなくても私達のことは分かると話してくれた教官がいるけど、その裏にはそんな調査が有ったのですね。」
「教官達は忙しそうなのに俺達との時間を持つようにしてくれてた、と言うことは俺達もその調査に加わるべきですね。」
「ぜひ、お願いしたいわ、でも意識し過ぎると隊員たちとの距離が広がってしまい兼ねないでしょ。
 その辺りのバランスには気を付けてね。」
「はい、注意して取り組みます、でもみんなはルーシーに色々と聞いて欲しいみたいですよ。」
「そうなの?」
「誰にも言わないで、とか、内緒の話なのだけど、と言う話は良く聞いています。
 まあ、私に話すことでスッキリする程度のたわいもない事が殆どなのですが、スルー出来ない話は本人にジョンと相談して良いかを聞いてからジョンに話すことも有りました。」
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近衛予備隊-22 [高校生バトル-45]

「第三部隊はトラブルが少ないと思ってたら、そうやって解決して来たのね。」
「私が込み入った話だと思うようなことでも、ジョンの視点ではどうでも良いレベルのことみたいで、女子と男子の違いでしょうか、大抵の女子はジョンにアドバイスして貰うと納得するのです。」
「そうなの?」
「確かにそうでしたが、最近難しい話が来まして教官に相談しました、教官はプリンセス詩織に相談してみるとか…。」
「ふふ、それなら直接プリンセスに相談すると言う手が有るでしょ、メールを使って。」
「そんな個人的な相談をするのは、相手がチーム詩織だとしても…。」
「プリンセスは個人的な相談にも積極的に応じて下さる方なの。
 もっとも私もプリンセスの脳の一部だから私が応えるかもだけどね。」
「メアリーもチーム詩織の一員なのですか?」
「そうよ、だからルーシー、隊員に関することなら私に直接メールしてくれて構わないのよ、内容によってはここのことを分かってる他の脳細胞に振るけどね。」
「私はプリンセス詩織とチーム詩織の関係が今一つスッキリしないのです。」
「ルーシーは考え過ぎなのよ、チーム詩織はプリンセス詩織として考え行動している、それが可能なのはプリンセスの考えに対して全面的に賛同してる人のみがチーム詩織の一員と成れるからなの。
 普通の組織との違いは、指揮系統によって上司の指示が絶対だったりするところを、チーム詩織では誰しもが時と場合によってトップになれるシステムを採用している所、だから私がトップになることもあるのよ、プリンセスの脳細胞としてプリンセスのことを考えながらね。」
「う~ん…。」
「簡単に言えば、プリンセス詩織が一人では出来ない事を実現させると言うのが私達の役目だと考えてくれたら良いわ。」
「そこに個人の考えは反映されないのですか?」
「プリンセスの意思から大きく外れさえしなければ個人の考えで動いて良いの、たまにプリンセスの考えから外れるような動きが有ることに他の脳細胞が気付いて、ディスカッションすることも有るのだけど、それもプリンセスの望んでいるところでね、そうやって脳が成長して行くのだとか。
 本当に重要なことはプリンセスに直接相談するのだけど、それはめったになくてね、プリンセスはお忙しいから少しでも彼女の時間を減らしたくないと脳細胞は考えているの。」
「直接相談した内容は脳細胞で共有されるのですか?」
「そうね、内容によっては全員で共有だけど、そんな重要なのは滅多にないかな。
 プリンセス発では無く各チームリーダーからの情報発信は凄く多いけどね。
 それらは整理され、自分の担当や興味関心によって取り込む情報を選び易いシステムになっているの、膨大な情報が脳内を飛び交っているから選ばないとね。」
「それを可能にしてるのがコンピューターなのですね。」
「ええ、だからここでもネット回線の整備は最優先、使える様になるまでは苦労したのよ。」
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近衛予備隊-23 [高校生バトル-45]

「俺達はパソコンが無くて当たり前と言うか、その存在すら良く分かって無かったのだけど、今、使えなくなったらと思うとぞっとする。
 高校生バトルが組んでくれてた学習プログロムが無かったら英語力の向上も遅れたと思うし、教官から、学習は教えて貰うのでは無く、自分から取り組んでこそ最大限の成果を上げられると言われたのだけど、その意味が分かったのはパソコンが有りネット環境が整ったからで、それまでは自分で調べようと思っても方法が無かったからな。
 もっとも、パソコン学習で成果が上り始めてから、教える作業を随分任されてしまったのだけど。」
「ふふ、ジョンのことを信頼してるのは隊員だけで無く教官達もなの。
 教官達はこの国の出身ではない人が多いでしょ、価値観の相違も有って指導しにくい面が有ってね。
 そんな隙間をジョンとルーシーが埋めてくれたおかげで、第三部隊は順調なのよ。」
「俺達には第一部隊や第二部隊の持つ時間的なハンディが有りませんから。
 でも少し複雑な気分です、彼らの国はそれだけ教育制度が充実している訳で、我が国では学校へ行かなかったとしても何の問題もなく、実際この村でも学校へ通ってない子は何人もいて。
 うちの親は絶対必要だからと、俺の働く時間が少なくなっても構わないからと学校へ行かせられていたのですが…。」
「だから識字率が低いのね、識字率の低さが国の貧困に繋がったりするのだけど。」
「その辺りも価値観の相違なのでしょうか、プリンセス詩織の価値観は私達の遠く及ばない崇高なものだと感じます。」
「ルーシーはプリンセスの価値感を受け入れられる?」
「まだ…、私は助けられている立場で、プリンセスの様に多くの人達の為になんて考えられません。」
「そっか、でも…、あなたがモデルとして活動してくれたら、多くの人が助かるのよ。」
「えっ?」
「モデルって服を売ると言う目的が有るけど、ブランドのイメージを高める意味合いが有るの。
 そしてハンディを持つルーシーが生き生きとしてる姿はハンディを持つ人達を勇気づけるのよ。
 さて、ルーシーの活躍で百万ドルの売り上げが有ったとしましょう。」
「いくら何でも多過ぎません?」
「例え話だから良いの。
 その百万ドルの意味は考えられるかしら?」
「意味ですか…?」
「売り上げ百万ドル、それは多くの人で分け合うことになるでしょ。」
「えっと…、服を作った人や売った人の給料だったりと言うことですね。」
「ええ、服の元となる糸を作った人、販売する為の商店を維持することや、店の開店時に借り入れたお金の返済に充てられたり、勿論ルーシーに対する報酬にもね。」
「一着の服には多くの人が関わっていると言うことですか…。」
「広い見方をすれば、繋がりの強さに差は有っても売り上げの恩恵を受ける皆は私達の仲間なのよ、経済活動を通してのね。
 そして売上が百万ドルではなく百ドルだったら、その経済活動は随分小さいものになってしまう。
 この国の経済が思わしく無い理由は分かるでしょ。」
「えっと、収入が少ないから経済活動が活発にならない、そこに悪循環が生じている。
 言葉では何となく分かっていても、良く分かっていません。」
「店がオープンし、プリンセスが来て下さったら分かるかもね。」
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近衛予備隊-24 [高校生バトル-45]

「私がモデルになったとしても百万ドルではなく百ドルぐらいだと思うわ。」
「隣村の店だけを考えたらね、でも、あなた達のポスターはこの国だけでなく幾つもの国に貼られるの、そして株式会社SHIORIの詩織近衛予備隊を世に知らしめると共に、グループ企業全体のイメージアップに繋げる。
 全体的に考えたらその経済効果が百万ドルになる可能性は普通に有るのよ、あなた達の写真はプリンセス詩織も気に入るでしょうから。」
「断言出来るのですか?」
「ええ、綺麗な人の笑顔には特別な力が有ると話されていてね、まあ、その綺麗な人には皺だらけのお婆さんが含まれたりするのだけど。
 私達は写真の背景も伝えて行くから、そこにも興味を持って下さると思うわ。
 彼女が兄と慕う男性には妻がいますからね。」
「第二夫人の座を狙ってるのですか?」
「どうかしら、でも、このままあなた達三人が仲良しで居てくれることを願われるでしょう。」
「私は第二夫人として三人仲良く生きて行きたいのだけど、シャルロットの気持ちやジョンの経済力が問題なので…。」
「おいおい…。」
「ジョン、この国で一夫多妻は普通なの?」
「いえいえ、お金持ちが浮気相手を第二夫人と呼んだりして揉めることが有って、お金がないのに妻以外を妊娠させるなんてとんでもないことです。」
「そっか、でもジョンならお金の心配はいらなさそうだから…、シャルロットはどう考えてるの?」
「よく分かりません、ジョンもルーシーも大好きで…、ジョンは二股してると友達から言われますがルーシーの事情は理解していまして…。」
「ふむ、法的にはどうなのかしら?」
「ふふ、メアリーはご存じないのね、法律はそれに関わる人の都合によって決まるのよ。
 一応法律を定める時に旧宗主国の法をお手本としたのだけど、第二夫人や第三夫人を持ってる偉い人達が決めたのだから…、元々女性の立場は弱いでしょ、この国は。」
「男女の差別意識は有るみたいね、でもジョンからそれを感じることはないと教官達が話してたわ。」
「ジョンは優しいの、ハンディを抱えている私のことを守ってくれて…。」
「私もちっちゃな頃からずっと守って貰って、大きく成ったらジョンのお嫁さんにしてね、と話したのもずっと忘れないでいてくれるし。」
「あなた達が英語の学習に熱心なのもジョンの影響なのかしら?」
「ルーシーには別の事情も有るのですが、私はジョンに教えて貰えるのが嬉しくて、ジョンが入隊してから近衛予備隊は私にとって憧れの存在になりました、早く入隊させて貰えて嬉しかったです。」
「そこには、大人の事情が有ったのだけどね。」
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近衛予備隊-25 [高校生バトル-45]

「巨額の投資をしているから、色々な事情が有るのですね。」
「ええ、そんな事もシャルロットはジョンから教えて貰ってるの?」
「はい、ジョンが入隊してから予備隊の話をして貰うのが楽しくて、でも借入金の額が半端なく多いので…。」
「心配?」
「思う様に来客数が増えず売り上げが伸びなかったら、返済が重荷になるのですよね?」
「確かにそうね、でも、そこには一つのからくりが有ってね。
 えっと…、お金持ちの国が貧乏な国にお金を貸してあげるから大きなダムを作りませんか、港湾整備しませんかと持ち掛けることが有るのは知ってる?」
「知りませんでしたが、借金するだけのメリットが有るのですね。」
「メリットが有ると考え貧乏な国は借金をするのだけど、お金持ちの国はそれで利益を上げるの。」
「利息ですか?」
「それよりも、ダム建設や港湾整備をお金持ち国の大企業が請け負うメリットが大きくてね、貧乏な国には大規模な工事を行える企業がないから、つまり…。」
「お金持ちな国が貧乏な国に貸したお金は、お金持ち国の大企業の売り上げになる、と言うことですか?」
「ええ、結局貧乏な国の借金が増えて、お金持ち国が儲かるって仕組みなの。」
「なんかな、私達の国が如何に遅れているのか分かって来たから…。」
「それと似たことをプリンセス詩織はしてるの、但し貧乏な国の為に借金をして開発を進め、利益はその国の為にって方針でね。」
「プリンセスの利益にはなら無いのですか?」
「そうね、プリンセス自身は今の収入で充分過ぎると考えているから、まあ、会社としては借金してでも投資して行くメリットがあるの。」
「借りたお金を返せなかった人が恐ろしい目に遭って早死にした話は親から聞かされています…。」
「ふふ、あなた達は借金するべきではないわね。
 隣村の大規模工事は確かに多額の借入金を利用して行われているのだけど、その工事をしてるのは株式会社SHIORIの子会社が中心になってるの、当然その会社の売り上げは伸びてるし雇用も増えてる。
 私達には長期計画が有るから子会社は短期間で仕事がなくなることは無く、安定した受注が見込め、安定した雇用の場なの。
 工事だけでなく、新しい店で売る商品は全て株式会社SHIORIの関連企業で製造した物か、関連する販売会社を通した物だけになるから、その売り上げは多くのグループ企業を潤すことにもなるのよ。
 そう考えると、一見巨額に見える借入金も大したことなくて、実際、返済能力が認められているから銀行が融資した訳でね。
 お金持ち国がしているお金儲けと似てるけど、利益はこの国に再投資して行く方針だから、全く違うのよ。
 店の利益を活用してこのエリアの生活水準を高める、それが一つの大きな目標だからね。」
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近衛予備隊-26 [高校生バトル-45]

「生活水準と言われても、他と比べる事が有りませんでしたのでまだ良く分からないのです、お金持ち国は生活環境が良くて寿命が長いと聞きましたが、生活水準が高いと言うのはそう言う事なのですか?」
「そうね、基本的にはそんなとこかしら、ただ他の国を知らないシャルロットには理解しにくいかもだけど、微妙な問題が有って簡単な話ではないのよ、今の状態が幸せなのに生活水準を上げることでそれを壊してしまう可能性も有って。」
「良い事ばかりでは無いのですね?」
「ええ、説明しにくい話なんだけど…、この国は植民地化が進むまで大きな争い事は無かったのでしょ。」
「大きな争いは無くても小さなトラブルは絶えなかったそうです、大勢をまとめ上げる強いリーダーがいなかったから部族間の結びつきが弱く、あっさり植民地にされてしまったと聞いています。」
「それでもそれなりに幸せに暮らして来たのでは無いかしら?」
「どうしてそう思うのですか?」
「自殺率って分かるかな?」
「自殺は…、ルーシー、話題になったのは随分前のことよね?」
「滅多にないことだから…。」
「この国の統計は信頼性が低いのだけど、それによると自殺する人はとても少ないの、生活水準の高い国と比べてね。」
「生活水準の高さが自殺に関係しているのですか?」
「そんな傾向が有りそうな気がしてね。
 動物の本能に逆らう自死と言う行為の裏に何が有るのか、私には分からないのだけど。」
「私達の生活環境が良くなることが、そんなことに繋がるとは思えません。」
「ええ、もし影響するとしたら、うんと先のことでしょうね。
 ただ、人の幸せってシャルロットはどう考えてる?」
「私は、ジョンと一緒に居られたらそれだけで…。」
「副隊長としての職務に生き甲斐を覚え、より自分の力を発揮したいとか考えた事はない?」
「まだ入隊したばかりですし、副隊長になったのもジョンの手助けが出来ると思ったからです、メアリーが近衛隊の一員となったのには、何か思いが有ったのですか?」
「そうね、入隊する前に働いてた会社は給料が良かったのだけど、ふと気付いたら自分をすり減らしてる様に感じてね。
 そんな頃にプリンセス詩織のことを知り調べまくったの、遠江王国へも行ったのよ。」
「近代的な乗り物が走る街並みが有るのだけど、農業にも力を入れているとか、でも、この村とは違い過ぎて動画では現実感が有りませんでした。」
「実際、綺麗な町でね、ヨーロッパの街へ旅行に行った事も有ったのだけど全然違うの、ゴミは落ちて無いし至る所に花が咲いていて、でも一番の違いは人間性の違いかな。」
「人間性?」
「社会の一員としてね、遠江王国の人達は困ってる人が居たら手助けを試みるし、ゴミが落ちてたら拾う、花壇の手入れは大人から子どもまで気付いた人がしているの、報酬目当てでなく自然にね。
 河川敷が公園になってて芝生が綺麗だったけど、維持管理は役所ではなく市民団体がボランティアで行ってるの。
 芝刈り機を使ってる人に聞いたら、たまの事だから負担は少ないし芝刈り機に乗ったり草刈り機を扱うのは面白いそうでね、そして作業後に皆でするバーベキューは格別だからと言って私を誘ってくれてね、そこでは色んな話を聞かせて貰えて楽しかったわ。」
「初対面の人を誘うなんて…。」
「私が旅の目的を話したから、彼は私の力になりたいと考えてくれたの。」
「自身に何のメリットもないのにですか?」
「ええ、でも私が詩織近衛隊のメンバーになったことをとても喜んでくれてね、仲間の私が遠く離れた国で活躍してることが嬉しくて励みになるのだとか、今もメールのやり取りを続けているのよ。」
「仲間か…。」
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近衛予備隊-27 [高校生バトル-45]

「遠江王国への旅はメアリーにとって良い経験となったのですね。」
「ええ、旅を通して、自分のしていた仕事は自分をすり減らしているだけでなく他人にストレスを与えていたとも思えて来て。
 帰国後に近衛隊募集の情報をメールで教えてくれたのも旅先で出会った人でね、直ぐに迷うことなく応募したの。」
「給料が減るのにですか?」
「ええ、その時は給料のことなんて気にしてなかったわ。
 でも、実際に入隊してみたら家賃を払わなくて良くなっただけでなく、シチュエーションによって選べる隊服が色々用意されていて服にお金を掛ける必要が無くなり出費がぐっと減ってね、その分美味しい物を食べることに使えるのだけど、隊としてのパフォーマンス訓練で体を動かすからダイエットをそんなに気にしなくても良くて良い事ばかりだったのよ。」
「ダイエットと言う概念は教官の話で初めて知ったな。」
「確かに痩せてる人が多いけどそんなに食糧事情が悪いの?」
「畑が有るので食べる物は有るのですが、そんなに美味しくない…、と言うことは予備隊に入隊してから気付かされまして、以前は空腹が満たされたら、それ以上食べたいとはあまり思わなかったのです。
 でも入隊後は、お菓子を食べさせて貰ったり調理実習で作る食事が美味しくて。」
「運動量の多い連中は問題ないと思うけど、ルーシーは食べ過ぎに気を付けるべきかもね、重くなりすぎるとジョンに抱っこして貰えなくなるわよ。」
「う~ん、ちっちゃい頃は抱っこしてくれたけど最近はしてくれないのです。」
「そっか、ルーシーが成長してジョンは気軽に抱っこ出来なくなったのね。」
「はい、バスには車椅子のまま簡単に乗れるので助かりましたよ、初めての時は車椅子の固定に手間取りましたが。」
「前はどうしてたの?」
「ルーシーがバスに乗ったのは幼い頃だけで…、ずっと乗ってなかったよな。」
「うん。」
「じゃあ、村から出ることも無かったの?」
「ええ、でもそれは私だけでなくて…。」
「現金収入が少ないから町へはそんなに連れて行って貰えなくて、俺も年に一回、お祭りの時だけで。」
「そんな生活をしてて良く今の学力を身に付けられたわね。」
「学校が有るだけでなく、兄が仕送りしてくれる時には必ず本を一緒に、それを兄弟だけでなくシャルロットやルーシー、今の副隊長、小隊長などとみんなで回し読みしてたのが大きいのかな。
 兄なりに本は選んでくれてたみたいで。
 自分が給料を貰える様になり手紙を送り易くなってから、英文で近況報告の手紙を送ると、とても嬉しいと返事をくれてね。
 プリンセス詩織が隣村に滞在中に絶対帰るからと返事を貰ってるから、メアリーにも紹介するね。」
「お兄さんはどんな仕事を?」
「商社の下働きだけど、真面目に働いていたらランクを上げて貰えたとか、それでもメアリーの給料には及ばないのだろうな。」
「そんな中から仕送りをして、本も?」
「だから、学習には真面目に取り組むしかなくてね、俺達は。」
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近衛予備隊-28 [高校生バトル-45]

「それなら是非ともお兄さんを紹介して貰わないとね。
 この国のことはこの村の周辺しか知らないから町がどんなだか良く分からないのよ、治安の状況によっては施設の防犯対策を強化しないと行けないし。」
「隣村が目立つと良からぬ輩に狙われる可能性が有るのですね。」
「国としても観光の目玉に出来ないかと考えてくれて警察は協力的なのだけど、警察も疑って掛かるべきだと話す人がいるの。」
「お金持ちが違法行為をしてもお金の力で何とかなってしまうと叔父さんから聞きました。
 そんなお金持ちがここへ来ることは有りませんでしたので私達には関係ないと思っていたのですが。」
「人が集まる所に金儲けのチャンスは有る、と考える大人が少なからずいるのよ、うちが買い取った土地に勝手に小屋を建てて商売を始める輩とかね。」
「商売か、この村で商売しても儲からないから店は伯父さんが経営してる一軒だけだものな。」
「儲からないって?」
「伯父さんの店だって、商売と言うより村を代表して買い出しに行ってる様なものだとか。」
「そんなレベルなのね、あなた達はこの村を変えたいと思ったことは有る?」
「そんな発想は無かったな…。」
「この辺りの人達は色々なことを受け入れていると言うか、あまり欲を感じられないのよね。」
「欲ですか…。」
「良くも悪くもね、お金持ちに多いのは欲望の塊、必要以上にお金を欲しがって人を蹴落としてでもお金が欲しいみたいな。
 でも、ここの人達は生活に余裕が無いのだけど、不満は無いのでしょ。」
「俺達は他を知らなかったからね、友達がいればそれで満足してたかな。」
「町へ働きに行くことになればシャルロットと離れ離れになることは気にしてたのでしょ?」
「うん、自分にとっての大問題、でも先のことだと思ってた…。」
「ジョンでさえ、その程度にお気楽と言うことは他の連中は何も考えてなさそうね。」
「でも、近衛予備隊に入ってから考えることが一気に増えたとみんな話してるよ。」
「それは良い事だと思う?」
「多分ね…、ただ、前は欲しい物なんてそんなに無かったんだ、欲しくなる様な物の存在を知らなかったからね、店がオープンしたらどうなるのかな。」
「メアリー、給料の使い方を皆で考えないとダメじゃない?」
「そうね、教官とも相談しておくわ、お金に関する学習や給料を計画的に使うことを学ぶ必要が有ると、ただ、真面目に働けば昇給するのだから、欲しい物を手に入れる為に、より仕事を頑張ると言う発想も有るのよ。」
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近衛予備隊-29 [高校生バトル-45]

 メアリーとは随分話し込んだ。
 今までもたまに村へ来てくれ話はしていたのだが、彼女としてはモデルの話だけでなく、店のオープンやプリンセス詩織の滞在に向けて情報交換しておきたかったそうで、俺達が驚かされる話を色々してくれ、俺達は隊員達のことを伝えた。
 メアリーを見送って。

「ねえ、ジョン、電話を持つってどういう感覚だと思う?」
「全然分からない、ルーシーは電話、使ったこと有る?」
「勿論ないわ、メアリーが便利だけど自由を奪われると話してたのが気になるけど。」
「有れば便利なのか…。」
「ジョンもルーシーも近くに住んでるのだから会いに行けば良いのだけど。」
「シャルロットがジョンと電話で話し込むと料金が嵩むのでしょ、何時も沢山話してるのにそんなことはと思ったけど、私が家で手にしてたらジョンに何度も電話を掛けてしまいそうだわ。」
「そして給料の多くが電話代となってしまうのね。」
「メールならそれ程でもないし、町へ出てる兄貴とも連絡がし易くなるかもって話してたが、その前にパソコンのメールアドレスを兄さんに教えるなんて考えて無かったよ。」
「パソコンメールなら手紙より簡単、英文でのやり取りになるから学習の一環と見做して貰えるわね。」
「しかし…、メアリーの話してたメールも送れる電話だけど、彼女の国では子どもでも持っていて普通に使ってるのだよな。」
「生活水準か…。」
「便利になってもマイナスの側面も有るのよね…。」
「まずは使ってみないと、来週隣村での実習で体験してから考えれば良いと思うけど、隊長には個人で所有して欲しいな。」
「どうして?」
「ジョンが持ってたら私達がそれを借りて使えば良いでしょ、電話代はジョンが払ってくれるから。」
「ふふ、ルーシー、誰に掛けるつもりなの?」
「あっ、ジョンには掛けられないか…。」
「それに、私達は結婚後の生活に向け、貯えを増やそうと考えてるの。
 それがルーシーの無駄話で減らされるのは嫌だわ。」
「え~、そんな話…、私は仲間外れ?」
「私達は町へ働きに出なくて良さそうでしょ、真面目に働けば給料を上げて貰える。
 それなら、家にシャワーや綺麗なトイレを付けることを考えても良いと思わない?」
「近所の人が全員使いに来そうね。」
「そうなったら、シャワーもトイレも増やせば良いかな、でも、その為には資金が必要なのよ。」
「工事費は給料の何年分になるのかしら?」
「ルーシー、今の給料では何年も掛かるかもだけど真面目にやってれば昇給する、そんな所をメアリーは欲と言う表現で俺達に伝えたかったのでは無いかな。」
「そうね、隣村の寮に入った大人達は衣食住を会社で面倒見て貰えるから給料が安いと話してたけど、私達は食と住の分、彼らより給料が良くなる、ずっと隣村で働かさせて貰えればね…。」
「問題は給料が増えても、ルーシーがそれをお菓子につぎ込んでしまうことだな。
 今は貰ってる立場だから量は控えめだけど、店がオープンしたら美味しいお菓子を沢山自分で買える様になるんだぞ。」
「ふん、良いもん、どうせジョンが抱っこしてくれないのならおデブになっても構わないわ。」
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近衛予備隊-30 [高校生バトル-45]

 隣村の店では従業員研修と並行して搬入作業が進んでいる。
 俺達も、店での研修時間が長くなって来た。
 そんな中、予備隊幹部の中でも英語の話せるメンバーは日本人スタッフが昼食に誘ってくれることも有り彼らと親しくなりつつある。
 特に予備隊が担当する売り場のフロアーマネージャーは俺達のことを高く評価してくれているのだが、何故かと事情を尋ねたら信頼出来る大人が少ないそうだ。

「今の調子だと暫くは混乱しそうだから、ルーシーとシャルロットは交代でサービスカウンターのメインになってくれないか。」
「はいマネージャー、何をすれば良いのです?」
「フロアー全体の情報をそこに集約する。
 客からの要望や小さなトラブルは自分の判断で近くに居る社員に指示、英語での対応を求められたらなるべくサービスカウンターに来て貰って対応、判断しかねる時はジョンか私に連絡してくれれば良い、店員たちの困りごともな。
 ジョンは店内を見て歩きフロアー全体の状況を把握、必要が有れば社員に指示を出し客のストレスを減らすことを考えてくれ。」
「ですが、マネージャー、自分はこんな店なんて始めてで何も分かりませんよ。」
「私はそこが面白いと考えていてね、私とジョンでは感じ方が全く違うと思うんだ。
 私だってこの国どころか日本以外の店は初めてでね、英語と日本語しか話せないからジョンを頼りにするしかないんだよ。」
「大人の社員は頼らないのですか?」
「勿論頼りにしてるが、何処まで信じて良いのか…、寄せ集めだから微妙でね、それより近衛予備隊隊長の方が信頼出来るのだよ。
 例え君がミスしたとしても、それは君にとっての経験として蓄積されるのだから、必要以上に気にする必要はないからな。
 まあ、ジョンのことを困らせる様な輩は、例え大金持ちだったとしてもリピーターになって欲しい客では無いのだから気楽にな。
 暫くは私の通訳を担当しながら学んでくれたら良い。」
「はい…。
 しかし、店内作業で使う携帯端末は兎も角、電話には慣れません。」
「店舗内での通話に通話料は掛からないのだから、店内を回り電話を使って状況を伝えることを積極的にしてみたらどうかな、店舗内電話を使ってシャルロットと愛の語らいをするのは周りの独身社員の為にも良くないが、シャルロットにとってはその連絡内容を把握出来るかどうかのトレーニングにもなる、プリンセス詩織グッズコーナーと言われて、そこが何処に有ってどんな売り場なのかイメージ出来るかどうか試しておいても悪くないだろう。
 予備隊メンバーは今日の午後、搬入作業の手伝いとなってるが、ジョンは搬入作業の進捗状況をサービスカウンターに居るルーシーとシャルロットに伝えると言うトレーニングをしてみようか、詳しく正確に伝えられることを目標にしてな。
 ルーシー達は、受けた情報を整理し私に報告してみてくれ。
 その時、ジョンからの報告と君達からの報告を同じにしようとは思わないでくれな。
 同じでは整理されたとは言えないし、君たちの考えで私が必要とするであろう報告をして欲しいのだよ。」

 フロアマネージャーはこんな感じで、さりげなく俺達に難題を突き付けて来る。
 俺達は、そこから相談し実際に試してみて彼の評価を聞くしかないのだが、これは少し嬉しくも有った、そう俺達は彼に能力を認められた上でテーマを提示されているのだと実感しているのだ。
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