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41-大学 [岩崎雄太-05]

岩崎学園は幼稚園から高校まで岩崎村で小規模に運営されている。
大学は雄太が第三の拠点、最大の拠点と位置付ける地方都市でスタートした。

「地方都市の小さな私立大学が設立から間が無いのに超難関校になるとはテレビ番組の影響は大きいよな。」
「ああ、超実践的なカリキュラムは大学の名より質を考える高校生の心を射抜いたな、学生時代に起業した岩崎雄太の発想はすごいよ。」
「学生の実習の為に店を買収したり、優秀な学生を大学の理事として大学経営に係わらせたり、経済的に恵まれてない学生には成績に応じた奨学金、給付型だから必死に結果を出そうとする事によって学生のレベルがさらに上がっていると聞いた、バイトも関連企業がスキルアップを考えながら使ってくれる。」
「会社のマーケティング実習で成果を出してる学生もいるのだろ、卒業生がこの地の活性化に力を貸してくれる事を期待してます、なんて学長が話してたけどすでに貢献してるよな。」
「お前、どうする?」
「ダメもとで受けてみるよ、もう少し募集定員を増やしてくれたなら…。」
「先輩の映画やドラマにあこがれて受験して来る人も多いみたいだ、合格できれば親への負担も少なくて済むのに。」
「元々は地元の若者が大都市の大学を目指さなくても地元で学ぶ意味合いも有ると番組では紹介してたよな。」
「地元枠とか有れば良いのに。」
「お願いしてみようか、俺達の受験に間に合うか微妙だけど。」

数日後。

「岩崎さん、高校生から大学の枠を広げて欲しいとか、地元学生の枠を作って欲しいとの要望が来てますが。」
「学生の質は落としたくないが、推薦枠は学校に割り当てれば良いのかな、地元の有名県立高校なら四十人ぐらいでも構わないと思うが。」
「調べてみます。」
「将来的には総合大学を目指している訳だから学部の新設を早めるか、経営、経済の次は…、要望を寄せてくれた高校生とは連絡取れますか?」
「はい。」
「では、募集定員を増やす予定が有る事を伝え、他にどんな学部が有ったら良いか学校の子にアンケートを取って貰えないか相談して下さい。
地元の高校生でそんな要望出して来るなら県立高校の生徒でしょう、念の為確認してからお願いします。」
「分かりました。」
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42-展開 [岩崎雄太-05]

山に囲まれた地方都市はその姿を随分変えた。
大学は廃村だった所や過疎の村に広がり、寮も増えている。
優秀な学生が進学で都会へ行く事なく、全国から優秀な学生が集まるのは、どの学部も実践を重視したからだ。
卒業後社会で即戦力となるべく学生達は頑張っている。
就職先は岩崎家関連企業を中心に充実、一方では、そんな企業が幾つか過疎地に移り、その近くに社宅も完備、過疎の村を減らしつつ有る。
移住して来る社員は本人が希望した者のみ、のどかな環境を喜んでいる者も多い。
中核となる町では学生の協力によって経営を安定させた会社も少なくない。
結果、雇用状況の改善により都会から帰って来る若者も増えつつ有る。
そんな地方都市が変わって行く様はテレビ番組がずっと追い続けている。

「岩崎さん、全国の地方都市からの視察が増えているそうですね。」
「番組で冬坂さんが随分地方都市復活へのヒントを出して下さっているのに、なかなか他の所へ波及しないのが残念です、視察に来る費用が有ったら何に使うべきか分からない人が多すぎます。」
「まあ議員なんてそんなものでしょう、岩崎さんの方へは支援の依頼が届いているのですよね。」
「ええ、本当はここの実践例に倣い各地で新たな展開が、他社の手によって広がる事を期待していたのですが、色々工夫出来る人も支援を考えるお金持ちもあまりいないようです。
仕方がないので、経営学部の三、四年生を自分の故郷に近い地方都市での実習という形で送り込めないか相談して貰っています。
卒業に必要な単位が現地の大学で取得出来る体制を整える事が出来るかどうかが条件です。」
「その辺りは行政サイド任せですか?」
「それくらいの事が出来ない所では時間が掛かり過ぎるでしょう。
これからは、一点集中投資とは行かなくなります、グループ企業から資金を集めて、効率の良い投資を学生達と模索して行きます。」
「随分学生に入れ込んでみえるのですね。」
「当然です、次の世代への責任は我々に有りますが、それを実際に動かして行くのは彼等です。
私もまだ若いですが、老人が支配する様な社会では、国自体の老化を進めるばかりです。」
「そのお言葉、次の放送で使わさせて頂きます。」
「はは、ところで岐阜チームの他はどうですか?」
「相変わらずのペースで少しづつ進んでいます、小さいながらも経済効果は出てると思いますが、勢いは良くないです。」
「そちらも経営学部生と相談してみます、起業や企業再生に興味の有る学生ばかりですから。」
「それでは、番組の取材もよろしいですか?」
「大丈夫でしょう、番組がきっかけで受験を決意した学生も多いです。」
「番組的にも新たな展開が欲しい所で助かります、どんな案が出て来るか楽しみですね。」
「はは、意外と手堅いかもしれませんよ。」
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43-企業 [岩崎雄太-05]

第三の拠点である地方都市が雄太達の力によって発展しつつ有る事が世に知られ始める頃、雄太は祖父が会長、父が社長を務めるグループ中核を担う会社の副社長に就任している。
その段階で。

「岩崎村の開発と並行して行って来たグループ企業全体の改革が進んだ事によって、グループ企業全体のイメージが良くなっています、給与体系や労働環境の改善に掛かった費用、田舎への投資も、全体の売り上げアップによって問題のないレベルで推移しています。
よって、更なるイメージアップ戦略を練って行きます。
まずは地方の活性化に取り組む企業グループという事を前面に押し出してPR、今取り組んでいる第三の拠点の再生をアピールし目に見える所まで再生が進んだら、全国で展開、単なる寄付ではなくあくまでも投資と言う形を取りますが、そこで得られた利益はその地へ再投資という形にして行きます。
社員の皆さんの希望を尊重して調整しつつ、大都市に有る本社機能は縮小し地方の支社へ移して行きます。
ネットが普及した現代、土地が高く過密状態になっている都会でなくとも出来る事は地方へ移して行きます。
これは一気に行うのではなく、都会で暮らしたい人を無理に地方へとは考えていません。
ただ、新規採用は地方勤務優先としたいです。
それから…。」

それ以来、大都市から地方都市への流れは少しずつ進んでいる。
移住は強制されるものではなく反発は少なかった。
最大の問題はどこの地方都市へ移すかという事だったが、地方支社や営業所の機能を拡大する形に落ち着いた企業も多い。
企画部は岩手工場に併設、経理部は福井支社にといった形も有る。
この取り組みにより実家へ帰った者も多い。
単独の企業で有れば難しかっただろうが、グループ企業間での転職推奨が上手く行った。
地方の実家から通える職場を希望する者とその地方での社員増強を図る企業とのマッチング作業は簡単では無かったが、進めるべき事だと考える社員が多いのは雄太の功績だろう。
もちろんデメリットも有ったが、満員電車から解放され、家賃が大きく減った社員は喜んだ。
企業としても大きな試練では有ったが、地方の活性化に取り組む姿を見せる事によって売り上げを伸ばした。
さほど関係のない店でも グループ企業の商品を優先的に扱って応援しようという機運が芽生えた事も大きい。
他の企業とは逆の発想て地方再生に貢献、雄太はその中心人物として広く知られる様になっていった。
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44-就職 [岩崎雄太-05]

岩崎学園大学経営学部生。

「谷川、就職はどうするんだ?」
「ああ、昨日、岩崎理事からアドバイスを頂いた、幾つかの会社から将来の役員、社長候補としての入社を打診されているのなら、経営コンサルタント会社を立ち上げれば良いとね。
そのまま俺が社長、社員にはうちの卒業生をって、株式会社として立ち上げる資金は岩崎理事が全部負担して下さる話まで進んで…、経済学部の彼女を経理で雇えば良いって…、どうして岩崎理事が俺の彼女の事までご存じだったのか、謎でしかないのだが。」
「それは、お前の実績だろ、皆の注目を集めるレベルでの、確かに何社もからのお誘いに対して一社に絞るより良い考えだと思うが、実家へ帰る気持ちに対しては、何かアドバイスを頂いたのか?」
「自分の拠点はどこに置いても良いと、確かに岩崎理事自身都会から遠く離れた岩崎村を拠点にしてみえる、と、言ってもヘリで移動してらっしゃるからな、一回のフライトで幾ら掛かってるのか見当が付かない。」
「はは、うちの卒業生中心に社員を増やしたら、お前は地元中心に動けるという事だろ。」
「まあな、一つの会社運営だけに縛られたくないって奴が多いから、形を作ったら後輩を社員に迎えて、俺は地元に支社を作れば良い訳だ。
岩崎理事は、若い内に色々経験して、落ち着いてから大企業の社長とか役員とかの道を選択しても良いと、いっそ持ち株会社を設立して俺を頼ってくれる会社をその傘下に置いてもいいと話して下さった。」
「それは、面白そうだな、岩崎理事からすれば小さな組織だろうが…、絶対大切にして下さると思うよ。」
「だよな、それよりお前はどうするんだ?」
「今取り組んでいる、過疎地五か所の再生を続けるよ。」
「番組関連か、どうなんだ、今後の可能性は?」
「俺達が関わり始めてから収入がかなり増えた、ただ北海道は難しいよ、あの番組がなっかたらとっくに忘れ去られている様な所さ、何とか大規模農場と冬場のお土産作りで安定させようと考えているが、番組が終わったら住む人が減りそう。
だから、番組に依存しない色々な可能性を考えている最中だ。」
「お前の立場はどうなるんだ?」
「株式会社岩崎の社員、はは、突撃部隊隊長という役職を用意して頂けるそうだ。」
「そうか、岩崎家の挑戦は広がって…、お前はその最先端で戦って行くという事か。」
「まあな、お互い頑張ろうや。」
「ああ。」
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45-都会 [岩崎雄太-05]

大都会のとある居酒屋。

「実は黙っていたが転職が決まりそうなんだ。」
「えっ? どこへ?」
「実家の有る和歌山だ、岩崎雄太関連の会社が事業再編成の過程で移転、それに伴って社員募集していたのに応募したのさ。」
「そうか、でも何にもない地方都市なんだろ?」
「まあ、そう思っていたのだが、今の生活を見直したらな、仕事して飲みに行って、休みの日はDVD
とか見て時間を潰して、別に満員電車に耐えてまでここで暮らす意味が有るのかってさ。
地元には友人もいる、さほど不便でもない、仕事が無かったらさすがに厳しいが、今注目を集めている企業グループの一つで給料などの条件も悪くない、単純に支出が減るから使える金が増える。
知り合いに聞いたら、報道されてる以上に改革が進んでいて働きやすいそうだ。」
「それなら他の大手企業が後を追わないのはどうしてなんだろう?」
「役員報酬の差じゃないのか、他の企業だったら役員報酬だけで何十億とかになるところを極端に低く抑えている。
その金が企業改革に回ってるから出来た事なんだ。」
「しかし、優秀な役員はやめていかないか?」
「優秀な社員に昇進のチャンスが増える、役員は転職を勧められているそうで、ヘッドハンティング大歓迎だそうだ。」
「へー大胆だな。」
「岩崎雄太の大胆さが、グループ企業全体に広がって人気がどんどん上がっているのさ。
でね、ヘッドハンティングで優秀な役員を引き抜いたつもりの会社は、雇ってみたら大した事なくて、結局、会社の役員が優秀なのではなく、岩崎雄太の力がずば抜けている事に気付かされるという事なんだ。」
「じゃあ無能な高給取りを他社にさりげなく押し付けている訳か。」
「そんな所だろうな、岩崎雄太自身の報酬も低く設定されている、彼の業績をアメリカの企業と比較して計算すると数十億の報酬でもおかしくないとの試算も出ている、そんな彼の報酬は二千万程度だそうだ。
株の配当がかなり入ってるが、それも次への投資へ回しているそうで、地方の活性化に貢献している。
役員の為の会社ではなく社員と顧客の為の会社だと言い切っている、若殿様は嘘偽りの無い名君なのさ。」
「う~ん、俺も転職考えようかな。」
「大都市の会社は規模を縮小、再編して地方へ、そして拡大と考えているから今がチャンス、地方で暮らせたらの話だがな。」
「地元じゃ就職先が少なくてここへ出てきたが、別に人混みが好きという訳でもない、出て来たばかりの頃は楽しくも有ったが住み続けたいかというと考えてしまう。」
「田舎暮らしという選択肢も有るぞ、岩崎村ではプログラマー兼ちょっと農業という募集が出てた。」
「ああ、一度真面目に考えてみるよ。」
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46-再編 [岩崎雄太-05]

岩崎村、岩崎雄太宅のリビング。

「雄太、また合併の話が持ち上がったのね。」
「ああ、業績不振の会社が…、まあ業績不振に陥らせたのはうちの社員が頑張ってくれたからだけど、向こうの社員の方が再建するならうちとの合併を望んだそうだ。
まあそれを受け入れるだけの度量があちらの社長に有ったという事かな。」
「他社の重役からは目の敵にされてるのよね、大きな企業グループが過疎地や地方都市の再生で人気を得つつ企業改革に成功して成長しているのにも拘わらず、役員報酬を低く抑えていて、そのお陰で他社の役員は高額の役員報酬を受け取りづらくなって…、あなたが暗殺されたらどうしようかと不安になるわ。」
「はは、そこまでの心配はいらないと思うが、まあ色々刺激を与えてしまった事は間違いないな。
こうすれば会社が成長するというお手本を示したつもりだが、苛立っているのは自分の収入を減らすだけの度量の無い人達だよ、明香の様な堅実な金銭感覚の人を嫁に出来なかったのだろうね。」
「ふふ、このまま合併が進んで行くと経済界の再編となって行くのね。」
「ああ、うちとの競争に負けている会社は優秀な人材を集められないどころか人材の流出を引き起こしている、自力で再建できない企業がどう動くかだね。
問題は独占禁止法に気を配らなくてはならない分野が幾つか出始めているという事だ、競争相手の会社に生かさず殺さずのレベルで会社を存続して貰うか…、こちらが支援する訳にも行かないだろ。
公正取引委員会が問題視する様な状態になる前に何とかしてくれるとスタッフを信じているがね。」
「社員を大切にする姿勢が、社員の意識を高め売り上げアップに貢献、その資金を使って近代的な工場を建設、建設はグループ企業が行うから、大き目の投資でもグループ全体で考えたら、すぐに回収が始まってる様なもの、積極的な設備投資が業績を伸ばす原動力でも有るのよね。
それが伸びない会社では、古い機械を使って効率の悪い生産、故障も多いから社員もストレスが多かったり無駄に残業したり。
以前のグループ企業には、そんな会社も有ったのでしょ。
それがこの村の再生をお爺さまや、お父さまと話し合う様になってから、グループ企業改革も始まって、きっかけは伯父さまなのでしょ、だから、せめて名誉回復というか、何か有っても良くないかしら?」
「そうだな、そういった事には無頓着な人だったが…。
今なら名前を使わせて頂いても、他の親族達も配当が増えたり、グループ企業再編に伴う調整で潤っているから文句も言えないだろう。」
「では村の高台に有る杉の大木に、お名前をお借りして、岩崎村を開くきっかけを作って下さった人物として由来をって、どう?」
「はは、そこまで考えていたのか、もちろん良いと思うよ、他は?」
「道路の名前とか、でもやり過ぎてもいけないわね。」
「ああ、ほどほどに、広報部とかとも相談してくれな。」
「ええ。」
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47-心理 [岩崎雄太-05]

雄太は三十代半ばで父の会社、グループ企業の中核をなす総合商社の社長の座を引き継いだ。
とは言っても、それまでの改革は親子でやって来た事、祖父が引退し父が会長になり対外的立場が若干変わったに過ぎない。
この十年で企業グループは随分大きくなった。
雄太達がまず取り組んだのは子会社の廃止など組織改革、合併や分社化によって各企業を適正なサイズにした、それによって状況変化に素早く対応出来る体制とした。
子会社の廃止にはイメージの問題も有った、親会社、子会社というと社員の立場に上下関係の意識が伴い兼ねない。
どのグループ会社の社員も基本的に平等、但し働きに応じてボーナスに差は出来る、といういう意識の徹底によりグループ企業全体の結束を高めた。
この過程で幾つかの下請け企業を吸収合併したが、その段階で新たに社員となった人達の給料も、グループ全体の水準にすぐ合わせた、新たにグループ会社の社員になった人達は、当然の様にそれに見合った働きをしようとする。
そんな改革と並行して行われて来たのが、過疎地の再生、地方の再生。
自分の所属する会社が社会貢献として行っている事が毎週テレビで放送される。
それは社員にとっても誇らしい事だ。
自分の属する集団が誇れるものか否かは小さい事ではない。
各企業が株式会社岩崎から積極的に木材や木工製品を仕入れる事に繋がり、過疎化を食い止める資金源となった。
そんな状況下でも、雄太は月に何度か岩崎学園大学へ出向き経営学部生達との時間持っている。

「すごく大変な改革を岩崎理事が先頭に立って成果を上げて来られた訳ですけど、そのポイントはどこに有るのですか?」
「逆に聞くが、君達はどう思う?」
「やはり資金力だと思います、半端な投資ではなく思い切った投資有ればこそです。」
「ふふ、一年生はまだまだ勉強不足ね、会社が十年間何をして来たか追って行けば答えはすぐ分かるわよ、岩崎理事にお伺いするまでもなくね。
あなたに莫大な資金が有ったとしても、それを減らすだけで終わりそうだわ。」
「自分が今まで調べて来て思ったのは、人がどう思うか…、岩崎理事は人の心理を常に考えて来られたと思います、消費者の心理、社員の心理、皆が会社にとってプラスになる思考をしてくれる様に方向づけをして来られた、その結果では有りませんか。」
「良かった、まともな後輩がいてくれて。」
「はは、まともな後輩くんは恵梨香くんのチームに入れて貰ってはどうかな、彼女はその心理戦を実践して成果を上げつつ有るからね。」
「お願いします!」
「良いけど甘くはないわよ、一年生は時間的な余裕がないと言って泣いても知らないから。」
「でも先輩はコンサルタント会社を在学中に立ち上げた伝説の先輩が、新たな伝説の始まりだと評価されてる方なのですよね、学生ながらすでに社員としても成果を上げておられると聞いています。」
「その通りさ、伝説を作ってく連中はひたすら人の心理と向き合って行く作業をしている。
時には狡猾なまでにね、気が付いたら恵梨香くんにすべてコントロールされてるかもしれないぞ。」
「え~、岩崎理事に言われたく有りませんわ、ふふ、理事は君達の事何もかもお見通しなのよ~。」
「え~!」
「まあ、冗談はこれぐらいにして、恵梨香くん、今回再生に取り組む企業の概要をみんなに説明してくれるかな。」
「はい、小さいながらも伝統工芸を扱っている会社で…。」
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48-マスコミ [岩崎雄太-05]

岩崎学園大学経営学部の一室。

「岩崎理事、マスコミの活用が大きなポイントではないかと思っていますが如何ですか?」
「ああ、とても大きいよ、うちでは冬坂さんに助けられたな。」
「六ケ所の廃村を再生するバラエティー番組のチーフプロデユーサーの方ですね、確かに面白い番組です、私もあの番組がきっかけでこの大学受験を決意しました。」
「そうだな、今日の始めに話題になった、人の心理もあの番組を見直すと色々見えて来るよ。」
「バランスが良いから長く続いてるのに飽きません、六つの現場が有るお陰で、おバカチームで笑って、体力チームに感動、会社を立ち上げたチームはそのまま学習の参考になっています。」
「さすがに分かっているね。」
「岩崎理事が経済の話を分かり易く話して下さったのも良かったです。
イケメン青年社長中心に会社の仕組みの説明、その時グループ企業で取り組んでいる事の話は興味深かかったので始めの内CM枠だと気付きませんでした、民放なのにどうしてCMが無いんだろうと思ってまして。」
「それが高視聴率に繋がったみたいだよ、こちらのアイデアに冬坂さんが乗ってくれたのさ、バラバラでCMに使ってた金をあの番組に集める事で可能になった、その効果はしっかり出てるだろ。
多少面白い番組でもCMのタイミングでチャンネルを変えられてしまうそうだからね。」
「ええ、企業イメージが抜群に上がったと思います、同じCMをくどくど見せられるとその商品が嫌いになることも有ります。
社員でもないのに社内改革の説明を聞いて応援したくなり、実際に理事の関係会社の商品を買っています、まさに消費者の心理を考えての事だったのですね。」
「では社員はどう思ったと考えるかな?」
「あの内容なら自分達の企業が誇らしく思えるでしょうね、それが…、やる気に繋がったり、グループ企業の結束にも繋がったのでは有りませんか。」
「そういう事さ、全グループ企業を国に見立てたり、同一労働同一賃金を元にした給与体系改革をした事もあったけどね、以前はグループ以外の会社の商品を使っていた部署がグループ企業の商品に変える、その時、商品が他社の製品より劣る部分が有るのなら改善を提案する事も出て来た。
この取り組みを始めるまでは企業グループのメリットを最大限に活かせて無かったと言えるね。」
「具体的なメリットは資本関係以外にどんな事が有るのですか?」
「そうだね、給与体系の改善と並行して労働環境の改善や工作機械の更新に取り組んで来た、大き目の投資だったのだが、ほとんどをグループ企業で引き受ける形にしたから、支払った金額の多くはグループ内に留まる、中核で有る総合商社の視点で考えれば、すぐに投資した何割かが回収できた事になる訳だ。
全部賄える訳でもないし、税金も払わなくては行けないけどね。」
「グループの規模が大きくなると有利になる訳ですね。」
「そう単純でもないが、社員やその家族達がグループ企業に目を向ける様になって来たから、それだけでも売り上げアップに繋がっていると思うよ、家族も番組を見てるからな。」
「私も見てます、そして岩崎理事のお役に立てればと考えています、他の企業家は理事の様な大きな視点で考えておられない様ですから。」
「ああ、例え少しずつで有っても日本を良くしていこうな。」
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49-岩崎村 [岩崎雄太-05]

時間は掛かったが、廃村だった岩崎村は全く違う村に成長した。
集落は整備され、統一感の有る建物、電柱の無い綺麗な街並みはそれだけで観光資源となっている。
森は綺麗になり、木々の間をクロスカントリーなどの競技施設が整備された。
それらは万が一山火事が起きた時延焼を防ぐ役割も果たす、人が森に入る事で野生動物の侵入を減らすという目的も有る。
もっとも、猪や鹿の肉は店の看板メニューになっていたりするが。
当初雄太が相続したエリアはすべて生まれ変わったが、村は周辺の土地を確保する形で拡大中。
開発が進んだ事により固定資産税が上がり、安くても手放したいという人が程よく現れてくれている。

佐々木村長は正式な村の村長選挙に立候補し無投票で当選。
株式会社岩崎の社員とその家族を合わせると元からの住人を遥かに上回る人数。
元からの住人にした所で、岩崎の恩恵を受けている訳であっさり決まった。
議会も同様に社員の家族が中心となっている。
そんな状況を大企業の横暴と書く雑誌もあったがほとんどの住人は喜んでいる。
佐々木村長が手掛けた事の一つは村名の変更、岩崎村と勝手に名乗って来たエリア内はもちろん、周辺に住む村民の同意も取り付け、県や国の機関とも調整の結果、岩崎村が正式名称となった。
株式会社岩崎により税収が増えている村は、増えた分の予算を岩崎とは直接関係のない所へ重点的に組んだ。
新生岩崎村は村全体の発展を考えている。

村には雄太が社長を務める総合商社の情報センターも有る。
と、言っても大きな建物が有る訳ではない。
元はグループ企業各社からの情報を受け取り整理し雄太に報告という事から始まった。
しかし、すぐにグループ全体にとって重要な部署となったのは改革が進んだからだ。
株式会社岩崎が総合商社から請け負っているとの形にしたのは地方へのお金の流れを考えての事。
必要に迫られグループ企業全社からの転職希望を募った所、応募が殺到した。
それは仕事が企業の明日を左右するやりがいの有る職種だった事と、村がそれだけの魅力の有る村になっていた事による、教育環境も含めてだ。
大勢が集まる必要はないという事で幾つかの建物に分かれて作業している。
グループ企業から送られて来るデータを分析し、必要が有れば雄太を交えて会議。
表向きは情報センターだが、実質は雄太を支える本社中枢の業務を担っていて、裏の本社とか本丸とも呼ばれている。
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50-店 [岩崎雄太-05]

岩崎村では人口増加、観光客の増加に合わせて店も増えている。
それらは社員が相談して運営、自分達が必要な店を自分達の考えで営業。
どの店も黒字だが、それには訳が有る。

飲食店は混み具合をネットで確認出来るシステムが構築されている。
岩崎村飲食店情報一覧へアクセスすると、どの店にどれだけ空席が有るかが一目で分かる。
空いている席数は、店員が来客のオーダーを受けた段階で利用席数が入力されて減る。
客がレジで支払いを済ませた段階で空席数が増える。
情報にアクセス出来る社員は、お目当ての店が空いていたら外食、混んでいたら自宅でといった選択が可能。
昼休みを二時間以上取る事も可能な社員も多いので問題はない。
店が暇になり過ぎない様社員が利用している訳だ。
もちろん味に問題が有ったらすぐ改善されている。
このシステムへは貸コテージからでもアクセス出来、好評だ。

衣料品店は、関連企業の通販サイトで選んで、店へ注文というシステム、一週間分の注文をまとめて発注しているから無駄が少ない。
店に並べている商品は店員達が、村人や観光客の衣装の傾向から判断して発注。
山村で有りながら、オフィスで働いている人が多くお洒落な人も多い。
村人がお洒落する事が観光地としての魅力を高める事に繋がると考えている社員も多く、老若男女衣服に気を配ろうとの呼びかけは社員からなされている。

人口の増加に伴いスーパーマーケットも町で展開している店のチェーン店としてオープン。
但し、他店と比べ品揃えは良くない。
敢えて選択肢を減らしたのは販売コストを下げる為と、村の発展に協力してくれた系列企業の商品を優先しライバル企業の商品を少なくしたからだ。
売り上げへの貢献はささやかかもしれないが、観光客がここで試して気に入ってくれたらという思いも有る。

村内の店舗はすべて株式会社岩崎が経営している。
自己資金で店を開きたいという人もいたが、店は岩崎で用意し社員になって貰った。
村自体が一つの観光施設でも有る、個人オーナーが店を開く事は色々不都合が有るという事を理解してくれた人達により、手作りパン屋と洋菓子店等がオープン、賑わっている。
忙しい時は普段パソコンの画面とにらめっこしてる様な社員が応援に入る事も。
ケーキ屋さんが子どもの頃の夢だったと言いつつ楽しそうに接客。
それが可能なのも、同じ会社の従業員だからだ。
この様な応援時に良いアイディアが出て来る事も有る、社員も普段と違った作業でリフレシュ出来る。
仕事に余裕の有る時に、全く違う職種の研修を受けている人も少なくない。
作業効率だけを考えたらマイナスかもしれないが、それだけでは計れないプラスの面も有る訳だ。
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