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42-展開 [岩崎雄太-05]

山に囲まれた地方都市はその姿を随分変えた。
大学は廃村だった所や過疎の村に広がり、寮も増えている。
優秀な学生が進学で都会へ行く事なく、全国から優秀な学生が集まるのは、どの学部も実践を重視したからだ。
卒業後社会で即戦力となるべく学生達は頑張っている。
就職先は岩崎家関連企業を中心に充実、一方では、そんな企業が幾つか過疎地に移り、その近くに社宅も完備、過疎の村を減らしつつ有る。
移住して来る社員は本人が希望した者のみ、のどかな環境を喜んでいる者も多い。
中核となる町では学生の協力によって経営を安定させた会社も少なくない。
結果、雇用状況の改善により都会から帰って来る若者も増えつつ有る。
そんな地方都市が変わって行く様はテレビ番組がずっと追い続けている。

「岩崎さん、全国の地方都市からの視察が増えているそうですね。」
「番組で冬坂さんが随分地方都市復活へのヒントを出して下さっているのに、なかなか他の所へ波及しないのが残念です、視察に来る費用が有ったら何に使うべきか分からない人が多すぎます。」
「まあ議員なんてそんなものでしょう、岩崎さんの方へは支援の依頼が届いているのですよね。」
「ええ、本当はここの実践例に倣い各地で新たな展開が、他社の手によって広がる事を期待していたのですが、色々工夫出来る人も支援を考えるお金持ちもあまりいないようです。
仕方がないので、経営学部の三、四年生を自分の故郷に近い地方都市での実習という形で送り込めないか相談して貰っています。
卒業に必要な単位が現地の大学で取得出来る体制を整える事が出来るかどうかが条件です。」
「その辺りは行政サイド任せですか?」
「それくらいの事が出来ない所では時間が掛かり過ぎるでしょう。
これからは、一点集中投資とは行かなくなります、グループ企業から資金を集めて、効率の良い投資を学生達と模索して行きます。」
「随分学生に入れ込んでみえるのですね。」
「当然です、次の世代への責任は我々に有りますが、それを実際に動かして行くのは彼等です。
私もまだ若いですが、老人が支配する様な社会では、国自体の老化を進めるばかりです。」
「そのお言葉、次の放送で使わさせて頂きます。」
「はは、ところで岐阜チームの他はどうですか?」
「相変わらずのペースで少しづつ進んでいます、小さいながらも経済効果は出てると思いますが、勢いは良くないです。」
「そちらも経営学部生と相談してみます、起業や企業再生に興味の有る学生ばかりですから。」
「それでは、番組の取材もよろしいですか?」
「大丈夫でしょう、番組がきっかけで受験を決意した学生も多いです。」
「番組的にも新たな展開が欲しい所で助かります、どんな案が出て来るか楽しみですね。」
「はは、意外と手堅いかもしれませんよ。」
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