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夏休み-111 [花鈴-12]

「私は一流大学への憧れが有りました、自己満足したかっただけかも知れませんが、就職に有利とは言われていましたので。」
「就職に関してはそうみたいですね、兄の場合起業を考えていますので就職は意識してなくて。
 起業して社長としてやって行く為に必要な知識を得て行くのに、大学入試に時間を掛けるのは無駄なのだと、始めから所謂進学校へ行く気が無かったみたいです。」
「起業と言うと、お父さまの跡を継ぐとかは考えておられないのですか?」
「跡を継ぎたいと思っているのですが、単に子どもだからと言って継げる様な企業ではないですし、三代目が会社を倒産させるって話はご存じでしょ?」
「そんな話も有りますね。」
「兄は自分が会社を引き継ぐハードルは他の人より低いと考えていますが、自身で起業し成功させた実績が有ると無いとでは大違いだと話しています。
 会社を危うくさせる様な後継者には成りたくない、でも父の跡を継ぐことは彼の目標なのです。」
「そうでしたか…、しかし会社社長の多くはそれなりの大学を卒業してとの印象が有ります。
 大学で築いた人間関係を卒業後に活かすとも。」
「社長になるのに他者と同じ道を歩む必要は無いと思います。
 私の叔父さんは、日本の将来を考えられない小者の社長ばかりだから少子化が進み日本経済が残念な状態になってると話してましたよ。」
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夏休み-112 [花鈴-12]

「小者ですか…。」
「目先の利益しか考えられないので、リストラがブームになると人件費を抑えようと人を減らし、減らし過ぎて仕事が回らなくなったとか聞いたことは有りません?」
「聞いたこと有ります、お父さまの会社は人を大切にして来たから今が有るのですよね?」
「ええ、祖父は武田信玄の『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』を座右の銘としていまして、まだ会社が小さかった頃に業績が芳しくなくても、ボーナスをケチらなかったそうです。
 社員なら経理状況は有る程度分かりますので、その祖父の心意気に応えてくれた社員達が会社を大きくして下さったのです。」
「社員を金儲けの道具ぐらいにしか考えてないブラック企業とは真逆だったのですか。」
「はい、福利厚生の充実は今も進めています。
 子会社の従業員も同じサービスが受けられますからね。」
「このキャンプ場も社員優先になるのでしたね。」
「社員が予約した残りの枠を一般向けにと考えています。
 秋からコテージの建設が始まります、冬でも快適に過ごせる施設を目指していますので期待して下さい。」
「良いですね、親戚にもここの取り組みを知って欲しいと考えています、冬場なら予約が減るでしょうから狙い目でしょうか。」
「暖炉が有る洋間は趣が有って良いのですが囲炉裏の有る和風コテージも計画に含まれているのです。
 それらを社員が気に入ってくれたら、一般客を受け入れることは無いかもですが…、まだ細かいルールは決まっていないので。」
「囲炉裏か~、焚火を囲んで語り合うのが楽しかったですから、囲炉裏を囲むのも悪く無さそうです。」
「ホントは合掌造りとか建てて欲しかったのですが色々難しいそうで、その代わりに竪穴式住居を作る話が出ているのですが、どう思います?」
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夏休み-113 [花鈴-12]

「昔の人の生活を体験ですか、住み心地はどうなのでしょう?」
「暖炉の有るコテージとは比べ物にならないぐらい悪いと思うのですが、テント暮らしとも違う経験が出来るそうで、まあ、普段とは違う環境を経験して昔の人に思いを馳せると言ったことでしょう。
 でも、私は遠慮したいです。」
「雨の日は絶対不快そうですよね、逆にツリーハウスは候補に挙がってないのですか?」
「ツリーハウスか、夢が有りますね~。
 でも、それに適した木が必要で、木にとっては迷惑だろうな…。
 トイレが地上だと面倒かも。」
「アニメに出て来る様な建物で一泊出来たら素敵だと思ったのです。」
「それは面白いわ、宿泊施設として人気アニメとコラボ出来たら…、でも平日の利用者を増やすことを考えたら高齢者を対象にしたいかも。
 誰の発案なのかは知らないけど、竪穴式住居なんて経験したい人はかなり限られそうでしょ。」
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夏休み-114 [花鈴-12]

「ですよね、色々な虫が入って来そうで無理ですよ。
 今回のキャンプでも私達女子は合宿所で寝てます、それではキャンプとは言えないと反対されましたが、花鈴姫のテントは大丈夫でしたか?」
「ええ、大学生の使ってるテントと違い広くてしっかりしてるでしょ、このキャンプ場を本格オープンさせたら常設される予定のものを試しているの。
 今回は間に合わなかったけどモンゴルのゲルを用意する計画も有って…、さっきの話だけどエリア毎に色々な宿泊施設を用意出来たら楽しいかも。」
「エリア毎に分けられるのなら良いですね。
 問題は利用率と初期投資ですか?」
「そう考え、多少初期投資額が高くなっても平日に高齢者の方が使ってくれそうな施設をと合掌造り風の建物を推したのだけど、先が見えて無い状態で先行投資額が嵩むのは避けたいし、ここはキャンプ場だからと却下されたの。」
「全体のデザインを整え合掌造りの建物中心のキャンプ場を整備をしても良いとは思いますが、どれぐらいの予算が必要になるのか、割高になるとしかイメージ出来ません。」
「そうね、高級コテージの話も有るのだけど、微妙なの。
 高級なコテージで宿泊するぐらいならホテルを選択しそうでしょ。
 自然に囲まれたコテージでバーベキューを、と言うのを売りにしても高齢者向けでは無いのよ。」
「平日に遊びに来てくれるのは高齢者と考え、付加価値を考える必要が有るのですね。」
「ここを社員向けの施設として完成させた後の話だから、急いで無いのだけど、活用したい土地は他にも有るのよ。」
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夏休み-115 [花鈴-12]

「山間部の平地は貴重だったと聞きましたが、それが今では放置されていますものね。」
「ええ、狭い平地での稲作だけでは足らず、棚田を作る所も有ったのだから。
 林業は山の斜面で作業が大変、ここのことを学習して先人達の苦労が感じられたわ。」
「活用したい土地は、ケーキ屋さんの隣以外にも多く有るのですか?」
「ええ、父が指示し調査した結果、管理されてない田畑や山林がそれなりに有ってね。
 我が社へもそれらを有効利用する案を出す様に言われてるの。」
「そうでしたか、私も考えてみます。
 休耕田をコスモス畑にする、と言ったレベルでも良いのでしょうか?」
「ええ、ただ他との差別化は考えたいでしょ、花の見頃が短いと効率が悪いし、ここの気候に合った植物である必要が有るの。
 オオキツネノカミソリの自生地は有るけどマイナー、PR方法を工夫する必要が有るのよね。」
「確かにマイナーです、ここに来るまで聞いたことも有りませんでしたから。
 でも、そこに可能性を感じます。
 一時、観光客を増やすぐらいのことは出来るのではないでしょうか。
 そんなのを幾つもやって行けたら、一つ一つは小さくても国道を通る人達がここでお金を落として行ってくれると思います。」
「ですね、大きなことでなくても、常に新しい取り組みに挑戦していれば注目度が上がるから…。
 企画の数で勝負しましょうか。」
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夏休み-116 [花鈴-12]

 株式会社花鈴に関する話は他の大学生達とも色々話した。
 過疎地に立ち上げられた株式会社に皆さん興味が有るのだ。
 焚火を囲む場でも…。

「企画を色々試してみるのは良いと思うな。
 国道は多いとは言えないけどそれなりの交通量が有るからね。」
「企画の情報をどう発信して行くかが重要でしょ、小枝子さん発信の情報に触れて無い人達にも届けて行かないと。」
「自分は国道沿いの立て看板がそれなりに効果が有ると感じたよ、国道沿いでの野菜販売は立て看板だけで繁盛してる、ネットでのPRに目が行きがちだけど看板の威力を改めてね。」
「学園祭的なノリの看板に引き寄せられ、リピーターがいて盛況なのだから大きな利益とまで行かなくても継続してたいわ、でも今後は人件費の問題が有るのかしら?」
「花鈴姫、ボランティア学生が減っても大丈夫なのですか?」
「ええ、野菜販売を手伝ってくれてる地元の人達には、その給料を貯蓄に回さず地元での消費に充てて貰う話をしてるの、それが活性化に繋がる近道だからと。」
「地元での消費と言っても限られますよね?」
「ええ、それでも、そんな話をしていれば意識は変わって行くと思うのですよ、色々な意味で地産地消は進めて行きたいです。」
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夏休み-117 [花鈴-12]

「自分が話したお年寄りはお金をあまり使わないとかで地域経済にはあまり貢献してないみたいでした。
 畑の野菜が食のメインで贅沢しないから食費は僅か、欲しい物も無く年金生活でも貯金が増えているそうです。」
「貯めこんでるとか?」
「どうでしょう、そこまで踏み込んだ話はしなかったのですが、遊びにお金を使うことは無いそうで。」
「微妙ね、この先老人ホームへとかなったらお金は掛かると思うのだけど、無駄に貯め込んでいるのなら適度に使って欲しいわ。
 銀行預金なんてお金を眠らせているに過ぎないでしょ。」
「ですね、今は利息なんて無いに等しいレベルです。
 昔の定期預金は預けておくだけの価値が有ったみたいですが、今は無利子のタンス預金と大して変わらない、資産運用を考えたら定期預金は考える必要が無くなりましたね。
 花鈴姫はお小遣いをどうしてるのですか?」
「普段は必要なだけ貰ってるけど、生前贈与の形で頂いた分は優良企業の株式に、と言っても十年分ぐらいだから一千万ぐらいしかないのだけど。」
「いえいえ、充分な額ですよ、配当もそれなりに有るのでは?」
「どうなのかしら、一応中学生になったらお金の管理を学ぶことになってるけど、今は母に任せてるから。」
「小五で一千万か…、大学生には奨学金と言う名の借金を抱えてる奴もいるのですけどね。」
「だな、真面目な奴なら分かるが、奨学金で大学に通ってるのに遊んでばかりの奴もいる。
 まあ、うちの大学でそんな奴は少ないけど。」
「やはり大学生でも人それぞれなのですね。」
「ええ、ただ理解に苦しむ行動をしていた奴が大きな成果を上げたことが有りまして。」
「あいつか、良く分からんよな。」
「う~ん、大賢者の行動は普通よね。」
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夏休み-118 [花鈴-12]

「えっ、僕が何か?」
 隣で数学の話をしていた大賢者が反応した。
「大賢者って意外とまともねって話。」
「意外とって所が引っ掛かるな。」
「周りの子と能力に大きな差が有るのだから、性格が歪んでいてもおかしく無かったでしょ。」
「あのね~、親も常識人だから色々教えられて来たのだよ、人それぞれなのだからと。
 花鈴姫の方こそ社長令嬢、嫌なお姫様にならないでくれよ。」
「少し癖の有るお姫様像を描きつつは有るのだけど普通が一番なのかしら。」
「大賢者、姫さまって普通か?」
「兄貴、僕には分かりませんよ、姫の人格は数学より複雑過ぎて何を考えてるのかさっぱりです。」
「だよな、理数系の高い能力で注目されてる大賢者とは違った分野で秀でているのだろうけど。」
「そうよね、数学とかだとその能力が一目瞭然だけど、社会学的分野で高い能力を発揮されても今一つ分かりにくいと言うか。」
「私は普通ですよ。」
「普通の人は自分のことを普通だとは言わないよな。」
「そうですか?
 では普通の定義について考えてみます?」
「だから普通の小学五年生は普通の定義を考えたりしないのだよ。」
「う~ん、そう言われると返す言葉が思い浮かばない、所詮私は大人にとって嫌な子どもなのね。」
「みんな気を付けろよ、姫は同情を誘って味方を作ろうとしてるのだから。」
「え~、藤井さんってもっと優しい人だと思ってたのに…、残念な気分。」
「ええ、藤井くんらしからぬ、ちょっとひどい発言だと思うな。」
「い、いや、そんな…。」
「かくして姫には逆らえなくなると言うことか。」
「自分は姫と共にこの地を盛り立てて行くつもりです、どこまでも姫をお守りして行きますからね。」
「はぁ~、大学生達に色々言わせてる花鈴姫は絶対普通じゃないでしょ。」
「大賢者もそう思うか?」
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夏休み-119 [花鈴-12]

「そう言う大賢者は他人とは違うと言う意識が有るのよね?」
「それは、まあ。
 何故そんな簡単なことが分からないのか、不思議な同級生達と過ごす時間が有りましたから。」
「それは絵梨ちゃんも感じてたのでしょ?」
「そうですね、私は大賢者程知力が高い訳では有りませんが、花鈴姫と出会うまでは…。」
「友達を作りづらかったとか?」
「ええ、同じ学年では無理が有りました。」
「それで大人と。」
「絵梨は好奇心旺盛だからね、初対面の人とも平気で話してる、私には無理だわ。」
「花鈴姫、それでも部落のお年寄りと話して来たのですよね?」
「ええ、社員に手伝って貰いながらですけど。」
「それって一歩下がった感じの方が姫様らしいとか考えてのことでは無いの?」
「そうか、絵梨、それは考えて無かったけどそう言う効果も有るのね。
 うん、これからはその路線で行こう。」
「姫様らしさとか、意識してるの?」
「そうね、人前ではおしとやかに。」
「おしとやかにしてる時の花鈴姫が一番怖いのよね、何か策略を巡らしていそうで。」
「俺の知ってる花鈴姫は何時もおしとやかなのだが…。」
「藤井さんをどう料理するか考えてるからかもよ。」
「やだな、そんなこと考えて無いわよ、私は何時もおしとやかな女性を目指してるの。」

 実の所、絵梨の発言は間違ってないのだが。
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夏休み-120 [花鈴-12]

「でも、花鈴姫の策略には悪戯が含まれるからな。」
「姫さまは、ささやかな悪戯を通して人間観察をしているのでしたよね。
 人間観察をしてみて如何でしたか?」
「相手を怒らせない、むしろ楽しんで貰える悪戯を考えているのだけど、認知症の人とはもっと遊んでみたいと思ったわ。
 デイサービスセンターの人に認知症のことを教えて頂いてね。」
「どんな感じだったのです?」
「私が話した人は直ぐに忘れてしまう人、嫌なことを直ぐに忘れてしまえるのなら幸せかもだけど、次に会ったら私と遊んだことなんてすっかり忘れていると思うと少し寂しかな。
 問題は…、例えば選挙のことは覚えていて、選挙のお知らせを見ると投票に行こうと思うのだけど、日にちに対する認識が曖昧で投票日に関係なく出掛けようとするとか、今日は病院に行く日では無いと言っても、暫くすると病院へ行く用意を始めたり。
 同居してる人は知らない内に出かけてしまい、そのまま帰って来なかったらと心配させられるそうなの。」
「うちの祖母もそんな感じだったです、次男の嫁である母の名前を忘れてしまって、同居していた伯父さん達は大変そうでした。
 それでも、外の掃除は出来るし昔のことは覚えていたのですよ。」
「人間の脳って不思議よね。」
「それは自分も思います。
 人の能力には先天的なものと後天的なものが有ると思うのですが、しばらく前まで自分は後天的なものを軽んじていたのです。」
「そうでも無かったと?」
「ええ。」
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