SSブログ

夏休み-120 [花鈴-12]

「でも、花鈴姫の策略には悪戯が含まれるからな。」
「姫さまは、ささやかな悪戯を通して人間観察をしているのでしたよね。
 人間観察をしてみて如何でしたか?」
「相手を怒らせない、むしろ楽しんで貰える悪戯を考えているのだけど、認知症の人とはもっと遊んでみたいと思ったわ。
 デイサービスセンターの人に認知症のことを教えて頂いてね。」
「どんな感じだったのです?」
「私が話した人は直ぐに忘れてしまう人、嫌なことを直ぐに忘れてしまえるのなら幸せかもだけど、次に会ったら私と遊んだことなんてすっかり忘れていると思うと少し寂しかな。
 問題は…、例えば選挙のことは覚えていて、選挙のお知らせを見ると投票に行こうと思うのだけど、日にちに対する認識が曖昧で投票日に関係なく出掛けようとするとか、今日は病院に行く日では無いと言っても、暫くすると病院へ行く用意を始めたり。
 同居してる人は知らない内に出かけてしまい、そのまま帰って来なかったらと心配させられるそうなの。」
「うちの祖母もそんな感じだったです、次男の嫁である母の名前を忘れてしまって、同居していた伯父さん達は大変そうでした。
 それでも、外の掃除は出来るし昔のことは覚えていたのですよ。」
「人間の脳って不思議よね。」
「それは自分も思います。
 人の能力には先天的なものと後天的なものが有ると思うのですが、しばらく前まで自分は後天的なものを軽んじていたのです。」
「そうでも無かったと?」
「ええ。」
nice!(10)  コメント(0) 

nice! 10

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。