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近衛予備隊-381 [高校生バトル-81]

「十代の子が医療に携らなくてはならない程、医療環境が悪いのか?」
「ええ、怪我の治療がいい加減で障害を持つことになる人が普通にいます。」
「総合病院はここにしか有りませんので、海外からボランティア的に来て下さってる医療チームのいないエリアでは、治療と称して怪しげなことをする連中に頼るしかないのです。」
「ここの総合病院では受け付けられないと?」
「今は、観光客と我々の企業グループ従業員だけで手一杯ですね。」
「確かに人数を考えたら無理が有りそうだな。」
「看護実習生と医療実習生がいなかったら回っていませんが、それもこの国が教育を軽んじて来た結果なのですよ。」
「それで医療実習生の評判はどうなんだ?」
「悪くないです、患者が医師と話せる時間は短いですが、実習生は色々聞いてくれますからね。
 医師は実習生が患者の精神的な負担を和らげていると話してくれました。」
「実習生が患者の死に直面することはないのか?」
「基本、治る見込みの無い患者は入院出来ませんし、事故で重傷の場合も現場の判断で助かりそうにない人は病院に搬送しませんので、実習生が患者の死を見ることは稀のようです。」
「何とか命を救おうと言う感じでは無いのだな。」
「心臓が動いていても寝たきりで意識の無い、そんな人の為の病院ではなく、病気や怪我で苦しんでいても、治れば元気に生活出来る人の為の病院だと聞いています。」
「そんな感覚は平均寿命が短いから生まれたのだろうか?」
「元々医者の少ない国でしたから、様々な理由で命を落とす人が多かったのです。
 日本人スタッフから疑問の声を聞き日本との違いを教えられましたが、殆ど死んでる人の為に手間と暇そしてお金を掛けるのは無駄だと、ここの医療に携わっている人達は認識していまして、そんな金が有ったら子どもの教育に使うべきだと言われています。」
「確かにそうかもな、殆ど死んでる人に延命処置、若い子になら兎も角それを老人に施すことにどれだけの意味が有るのか、う~ん…、日本には医療費の問題が有って、その辺りの意識改革を進める必要が有るのかも知れない。」
「日本で意識改革ですか?」
「日本にも色々社会問題が有り意識改革の必要は有るのだよ。」
「豊かな国で、そういったこととは無縁かと思っていました。」
「豊かさの影に低賃金労働が有り、一旦貧困状態に陥るとそこから抜け出しにくくなる。
 自分さえ良ければ良いと考える人が多くてバランスの悪い状態が拡大してしまったんだ。
 従業員の賃金を抑えることで、自分達の高給を維持していたりとね。」
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近衛予備隊-382 [高校生バトル-81]

「ここでは貧困世帯が減りつつあり、上下水道の整備が進んで生活環境が向上しつつあると聞いているが、どんな感じなんだ?」
「日本とは貧困のレベルが違うと思いますが、衣食住に困らない生活を目標に改善しています。
 観光業を中心に仕事が増えていますので、能力が低くても雑用担当で雇って貰えたりと。
 また、上下水道の整備と病原菌を媒介する生物の駆除に力を入れたことで、病気になる人が随分減っています。
 特に王国の住人は衛生面に気を付ける様になりましたので、ハエや蚊などが激減し快適さが増しています。」
「やはり観光客を意識してるのかな?」
「まずは詩織さまです、我らが女王陛下に不快な思いをさせ、この国を離れられることが有ってはならないと、病原菌を媒介する生物の駆除を指揮した近衛兵が声を大にしてアピールしていました。
 彼の作戦は王宮を中心に広げられて行ったのです。」
「薬剤散布とか?」
「薬剤も使っていますが、その前に蚊の繁殖を助ける水溜まりを無くし、蠅の発生を抑える為にゴミ処理の仕方を変えてと言う感じです。
 結果、人目に付かない所も綺麗にする習慣が付きつつ有ります。
 食物の保管方法もネズミ対策を考える様になりました。」
「成程、人間にとって好ましくない生物が繁殖しにくい環境を作り出しているのだな。」
「ええ、但し人に害をなさない生き物まで排除したくないとのことで薬剤は最低限にしているそうです。」
「虫は鳥の餌になっていそうだから良い判断だと思うよ。
 大学にこういったことを研究する学部は有るのか?」
「学部の研究内容を全て把握している訳では有りませんので何とも言えませんが、特別なものは立ち上げられていません。」
「環境改善、王宮から離れた所ではまだ充分ではないのだろ?」
「はい、マーケットを中心に衛生に関する意識を高めて行こうとしてるのですが難しいです。
 王国に移住して来た人達の意識改革は進んでいますが、他は中々進みません。」
「医師を育てるには時間が掛かるが、国民に衛生観念を定着させて行く活動なら、医師を目指す程の能力がなくても出来るだろう、担当近衛兵にも手伝って貰い国民に対する衛生教育を進める活動の拠点を大学に置くと言うのはどうだ。
 それを通して、大学と言う存在を理解して貰うのも良いだろ?」
「そうですね…、大学をそういった活動の拠点にすると言う発想は有りませんでした。
 国民に向けて大学が何をしているのか明確に示したいとは思っていたのですが、こういった活動からなら良いと思います。」
「大学全体のことは近衛の担当者が取りまとめてるのだったな?」
「はい、まだ大学組織は未完成で、王国騎士団や近衛予備隊が手伝っています。」
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近衛予備隊-383 [高校生バトル-81]

「まずは大学組織を固めて行く必要が有りそうだな、現場の人達は少しずつと考えているのかも知れないが、スピードアップしても良いと思うよ。」
「まだ、大学自体が拡大出来る状況に有りませんので。」
「無理に拡大する必要は無い、今の規模でしっかり形を作っておけば学生が増えても対応し易い。
 ジョンは学長とか考えているのか?」
「学長ですか…、近衛の担当者を学長と呼ぶのは少し違うと思っていますが、自分自身は近衛予備隊で受けた教育と、言わば現場教育で育って来ましたので、まだ大学のことを理解し切れていないのです。」
「私も大学を卒業した訳では無いのだが、詩織から王立大学の学長になって欲しいと言われていてね。
 システムエンジニアの育成に力を注ぎたいと言うことも有り引き受けようかと思っているのだが、ジョンはどう思う?」
「お願いしたいです、佐伯さんが大学のシンボルになって頂けるのなら、まとまりの有る組織になって行けそうです。」
「現状、問題点として思い浮かぶことは?」
「詩織さまのお父さまが学長になることに、大学関係者がどんな反応をするのかは分かりません。
 今はお金の出処が色々で大学職員を置くにしても調整がややこしくなっているそうです。
 でも、遠江王国王家の一員でも有る佐伯さんが学長になって下されば、すぐに解決するかと。」
「そう言うものなのか?」
「人々は強いリーダーを求めていまして、肩書も重要な要素なのです。
 大統領である自分と我が社の平社員が同じことを話した場合、受け止められ方は全く違います。」
「それは分かるが…、まあそう言うことで詩織は私を呼び寄せたのだろうな。」
「何か切っ掛けが有ったのですか?」
「遠江王国にいると来客が多くてね、詩織が拠点をここにしたのは正解だと感じていたのだが、自分の仕事を若手に引き継ぐタイミングだったんだ。
 会社の第一線からは退いてバックアップに回ることにしてね。
 まあ、詩織がたまにしか帰って来ないから、逆に私達がここに住むのも有りだとも考えたよ。」
「住まいはもっと広い家を用意出来ましたのに。」
「いや充分な広さが有る、部屋が六つもあるから全部使えないぐらいだ。
 広大な庭に隣接しているし、散歩コースやハイキングコースが充実していて満足してる。」
「歩くことが趣味ですか?」
「仕事中はパソコン画面を見てる時間が長かったからな。」
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近衛予備隊-384 [高校生バトル-81]

 大学関係者に詩織さまが直接話されたことも有り、佐伯さんの学長就任はすんなり決まった。
 佐伯学長はまず仮の大学本部を王宮内に置き、今までの担当者を事務局長に、高校の実習生をその部下に迎え入れる所から始められている。

「詩織、佐伯学長はかなり活動的なのですね。」
「ええ、実習生の子達が素直で呑み込みが早いと嬉しそうに話してたから充実してるのでしょう。
 今まで仕事で高校生と接する機会なんて無かったでしょうから新鮮なのかも。」
「仮の事務局が王宮内でスタートした所ですが、具体的にどんな大学になって行くのですか?」
「そうね、特徴的なのは学生から教授まで、全員に学籍番号が割り振られたことかしら。」
「学籍番号とは学生を事務的に整理、管理する為の番号では無いのですか?」
「大学教授も、大学に籍を置く研究者の一人で有ることに変わりは無いでしょ。
 大学は学び研究する人達の場、基本的な所は全員同じと言う考え方からなの、教授達も賛成してくれたそうよ。
 番号は自由に選べるのだけど、希望が重なったらくじで決めたとか。」
「一から順に割り振るとか学部ごとに分けるとかした方が楽ではなかったのですか?」
「留学生も含めた管理の為の番号で重複が無ければ良いの、クレジットカードの番号と同じ感覚ね。」
「留学生もですか?」
「ええ、本人達は喜んでるし、こちらとしてはずっと繋がりを持っていて貰った方が何かと心強いでしょ。」
「留学生達もずっとここの学生になるのですね。」
「留学生からは学費を頂いてるけど、それはプログラムの終了までよ。」
「はは、さすがに一生学費を納めて下さいとは言えません。
 大学の運営費はどうなります?」
「一番人数の多い教育学部には教授クラスがいないし、個人研究と情報交換がメインになるから一番お金が掛からないけど、逆に人数の少ない工学部は何かとお金が掛かりそうね。
 大学運営予算は私の会社が負担する形にして行く方向で調整してるの。
 そうして行かないとややこしくなりそうでしょ。」
「学部ごとに、それまでの活動から資金の出処が違ってましたものね、工学部は会社の発電部門がお金を出していたりとか、でも、取締役会の承認は得られるのですか?」
「ええ、ここは沢山日本から輸入して日本国内の関連企業を潤して来たのよ。
 まあ、経営学部が実習で稼いでくれなくて、工学部の研究が成果を上げられなくても、支出は問題にならない額だと思うわ。」
「工学部が頑張ると、色々お金が掛かりそうなのですが。」
「そこは、遠江大学と調整して行くことになるわね。
 ホントに必要な研究で日本であまり進められていない分野なら予算は取れる、それぐらいの力は父にも有るのよ。」
「それを考えて学長に?」
「まあね。」
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近衛予備隊-385 [高校生バトル-81]

「大学の正式な本部はどうしますか?」
「丘の上、中学校の隣に建設することで話が進んでるわよ、学長は眺望など色々気に入ったそうでね。」
「本部だけなら王宮エリア内に置いても問題ないですものね、他の施設はどうします?」
「基本は今使ってる所をそのままになるわ。」
「教育学部には学部としての建物が無いのですが。」
「教育実習が盛んに行われているのだがら、全ての公立学校に教育学部キャンパスの看板を付けることになりそうね。」
「それで教育学部生は納得するのですか?」
「各学校に教師や実習生の為の部屋を設けて、ネット環境を今より充実させれば、特別な校舎を建てるより喜ばれると思うのだけど。」
「う~ん、予算面の比較はしにくいです。」
「教育実習は留学生と高校生が中心になっていて、今の教育学部は現場の教師が中心なのだから、変に特別な建物を建てても無駄なのよ。
 工学部の研究室は動かせないし、経営学部はここの店を拠点にしている。
 鳥類研究所はネット環境を整えたキャンプ場のログハウスで問題ないみたいでね。」
「確かにそれぞれの事情を考えるとベストかも知れませんが、学生が増えても対応出来ますか?」
「難しくなるのはシステムエンジニアの育成コースぐらいだと思うのだけど、育成コースを目指してる子はまだ少ないでしょ。
 学長としては、大学とは別にシステムエンジニアが快適に働ける環境の建物を建設するよう指示してるから、そこが完成したら、その片隅で学ぶことになるのかな。」
「そんな建物、どこに建てるのです?」
「それが中学校の隣なのよ、大学の本部はそのおまけね。」
「本部に大勢の人が来る必要は無いでしょうから納得出来ますが、王宮の敷地内にシステムエンジニアとは言えども、その作業場を建てるのは…。」
「そこで働く人達は子達に良い影響を与えると思うのよ。
 肩書を特別なものにすれば、子ども達が憧れるのではないかしら、算数の得意な子しかなれない職業としてね。」
「子ども達にとっての目標とするのですか?」
「ええ、システムエンジニアやプログラマーの需要は今後も伸びると予想してるし、実際足りて無い所も有るみたいなの。
 頭脳労働に子ども達が憧れてくれたら、自然と理数系の力が伸びるでしょ。」
「そうですね、システムエンジニアの存在を知らない子がエンジニアを目指すことは有りませんから。」
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近衛予備隊-386 [高校生バトル-81]

「佐伯学長、お久しぶりです、大学の方は如何ですか?」
「随分形が出来て来たよ、色々驚かされたけどね。」
「どんなことで?」
「経営学部生達が実習として会社を立ち上げてることに驚いたが、小企業を買収し立て直していてね、その利益を大学の運営費にと考えていたんだ。
 資本金は詩織のおこづかいだそうだが、調べてみたら結構利益を出している。」
「その分本部からの資金が減らされるのでしょうか?」
「いや、それは詩織が許さない、大学設備の拡充に充てられるだろう。
 高校生達が立ち上げた会社の利益も学校設備の拡充に充てられているからな。」
「国として教育にもっと予算配分をしたいのですがなかなか難しいのです。」
「インフラ整備に貧困対策だろ、仕方ないさ。
 政策研究室のメンバーも今のペースで問題ないと話してたよ。」
「政策には彼らの意見も取り入れていますので、問題が有ったらこちらに伝えて貰わないと困ります。」
「彼らはジョンのシンクタンクなのか?」
「ええ、大学生全員に対して国政に問題が有ると感じたら教えてくれる様に話しています。」
「なるほど、大統領が絶大な人気を誇っているのはそう言ったお願いを普通に出来るからだろうな。
 これから大学生になる連中にも、それが伝わる様にしておこうか?」
「お願いします、先輩達が指導してくれるとは思いますが学長からも伝えて頂ければ安心です。
 今後大学生はどの様な形で増やして行くのですか?」
「高校生の中から大学で進めている研究に興味が有り優秀な子をピックアップして行く。
 自薦他薦出来る体制はもう直ぐ出来上がるよ。
 教育学部は教育実習生の中から教員を目指す者全員を教育学部へと言って来たから了承しておいた。
 教育学部生が何人増えようが大学の予算に影響ないからな。
 国軍兵士出身者が教師を引退したがっていて教員は不足気味だろ。」
「はい国軍には無理なお願いをしました、子どもに教えるより施設環境を整えたり実習の手伝いに専念したい人が多いと聞いています。
 高校生と留学生からこの国の教員に成りたいと申し出てくれる学生が増えてくれれば良いのですが。」
「ここで教職に就きたいと言う留学生の多さに少し驚いたが、教育システムの差を見せて貰って納得したよ、選択授業でも人気の有る先生の授業は大勢が熱心に受講していた。
 義務教育内容は簡単で全員がクリア出来る水準、そこから選択授業に繋げて行けるかどうかが教師の力量だと聞かされて授業参観をして来たが、改めて学校教育について考えさせられたな。」
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近衛予備隊-387 [高校生バトル-81]

「日本との違いですか?」
「ああ、ここでは皆、自分のペースで学習しているだろ、実際にノートを見せて貰ったが同じ十歳でも日本なら中学の学習内容まで進んでる子がいれば、足し算引き算の練習をしてる子もいる、だがどちらも学習に対して前向きだった。
 あっ、十歳の子が日本から留学と言うか親と共に来ているのは知ってたか?」
「いえ、どんな子なのです?」
「ギフテッドの子でな、数学を高校生に教えていたよ。
 日本の学校で色々嫌な経験したそうだ。」
「いじめられたとか?」
「ああ、教師からもね。
 小学校に入学して直ぐに算数の能力が周りの子と違い過ぎて、何故こんな簡単なことに長々と付き合わされなきゃいけないのかと感じてから、親も学校側に相談したそうだけど、日本の学校は特例を認めないんだ。
 周りの子ども達が自分と違うレベルの子を受け入れられなかったのは仕方のないことかも知れないが、教師も同様で、心の狭い日本人は少なく無いんだよ。」
「そうなのですか…。」
「不登校になったが教育は親でも出来る、だが社会性は必要だろ、それで色々調べている内にこの国の教育制度を知り、留学生からも情報を仕入れて見学に来たそうでね。」
「親の目から見た教育レベルに問題は無かったのでしょうか?」
「ジョンは自身が進めて来た教育制度改革にもっと自信を持って良いと思う。
 能力の高い子達はより上のレベルをゲーム感覚でクリアしようとし、そうで無い子達はそれなりに算数と向き合っている。
 算数教育は既に日本のレベルを超えてるのではないかな。
 不登校になってから英語の学習にも取り組み始めていた本人は、ここで一気に英語をマスターしたいと話したそうでね、両親もここが気に入って移住して来たのさ。」
「仕事は?」
「ネット環境が整っていれば大丈夫な仕事、小さくても大きな利益を上げてる会社の社長だよ。
 子どもの学校問題でつくづく日本が嫌になったそうでね。」
「う~ん、一度お会いしたいです。」
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近衛予備隊-388 [高校生バトル-81]

 佐伯学長が直ぐに連絡を取って下さって、日本からの移住者である椙山さんと食事をすることに。

「椙山さんはこちらに来られて半年ほどと伺っていますが、生活には慣れましたか?」
「ええ、移住を手伝って下さった日本人スタッフのお蔭で快適に暮らしています。」
「お子さんは?」
「上の子はここの学校をすっかり気に入りいましてね、高校生と一緒に数学の問題を解いたり、同じ歳の子と自然観察、苦手なことを強要されることが無いのでのびのびと学習に取り組んでいます。」
「義務教育に関しては?」
「算数や語学などの大部分はテストに合格するだけで良かったので楽しんでクリアしていました。
 それ以外のことは彼なりに考えていまして、生きて行く為に必要なこと、この国の一員として知っておくべきことなのだと理解して取り組んでいる様で、この半年で随分成長したと感じます。」
「英語での生活に戸惑いは無かったのでしょうか?」
「それも彼にとっては一つの遊びです、こちらに来る前から英語学習はしていましたが、一日の大半を英語だけで過ごすのはとても刺激的で楽しいと、移住して来た直ぐに話していました。」
「特に優れた能力をお持ちのお子さんですが、その将来について何か考えているのですか?」
「全て本人次第です、息子は女王や大統領の活躍を知り憧れています、何かしら国の役に立てる仕事を選ぶのではないでしょうか、私もこの国の為に働きたいと考えています。」
「有難う御座います、ある意味若い国で改革の為の人材が…、労働者は居ても能力的に高い人材は乏しいのです。」
「その若さが私達にとって魅力的なのです、日本でスーパーへ買い物に行くと老人ばかりが目に付きましてね、社会制度を考えても老いた国だと感じていたのですが、ここは活気が違います。
 息子を通して高校生とも知り合えたのですが、彼らは国の将来を考え自分に何が出来るのかを考えています。
 そんな高校生、日本にはいても僅かでしょう。」
「高校生とも交流して下さっているのですね。」
「ええ、高校生だけでなく中学生や小学生とも、見た目だけでは誰が中学生なのか全く分からないのが愉快ですが、彼らはあまり気にしていないようです。」
「試験で負けて挫折を味わってる子もいますが、上を見てる子は中学生には成れます。
 王国で中学生になれれば就職先には困らないのですよ。」
「ローティーンの子でも将来を考えてるのには驚きました。」
「それだけ貧しい経験をして来たのです。
 王国の子達は随分生活改善されているのですが、彼らにはもっと上を目指して欲しいと思っています。
 お子さんは、日本との差をどう感じているのでしょう?」
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近衛予備隊-389 [高校生バトル-81]

「まだ子どもですのでどの程度理解しているのか分かりませんが、友達に誘われ十五人家族の家に遊びに行ったとか話してくれます。
 日本には無い大家族が新鮮だったそうですが、当初の目的から外れ中学生のお姉さんとずっと話していたとか、すでに年齢関係無く多くの友達がいるからか、この国に対する不満は一切口にしません。
 たまに日本のことを思い出して怒っていますが。」
「安心しました、外国人スタッフの子達の中には馴染むのに時間が掛かった子もいましたので。
 彼の能力を最大限に活かして楽しく暮らして欲しいですが、ご存じの通り我が国の大学は立ち上がったばかりで息子さんの為に充分な環境を整えられないかも知れません。」
「そこが良いのですよ、その分自分の力で作って行けるでは有りませんか。
 がちがちに出来上がってる日本の学校では無用なルールが多過ぎて無駄だらけ、そこで無駄な時間を使ってるより、多少時間が掛かっても自分の力で切り開いて行く。
 息子は友達に教えて貰ったと、近衛予備隊や王国騎士団の活躍を話してくれまして、自分も王国騎士団を目指して高校に入ると言いながら、入学する為に必要なことを調べています。」
「合格出来そうですか?」
「最大の問題は年齢だとか、十二歳に成ったら絶対合格出来ると言っています。」
「そうでしたか、今までは飛び級的な制度を必要とする子の話が有りませんでしたので、特に考えていなかったのですが検討して貰います。
 なんなら息子さんに数学教育とかの研究室を開いて貰っても構わないのですが。」
「さすがにそれは…。」
「数学を高校生に教えてると聞きましたので、勿論無理にとは言いませんが、能力が有れば十歳の子が大学の研究室長でも問題ないと考えています、研究室の運営面は二十代の学生に任せれば良いのです。
 室長と言っても、週に一回教えるだけで良いのです、後は小中高の何処で学んでいようが遊んでいようが構いません。」
「真面目な話ですか?」
「勿論です、我が国の課題は理数系に強い子を増やして行くことなのですが、大学では直接営利事業に繋がったり、通常の教育に関係することを優先していましたので、ハイレベルな数学と言った分野はこれからなのです。」
「数学が得意と言ってもまだ高校卒業レベルなのですが。」
「学習が必要で有れば遠江大学教育学部数学科に協力して貰います。
 日本で著名な大学の先生方が参加してるそうで、きっと興味を持たれると思います。」
「数学教育のシンボル的存在にしたいと言うことですか?」
「ええ、ご迷惑でしょうか?」
「いえ、高校生レベルの数学は私でも助言出来ましたが、その先はさすがに難しいですので息子と相談してみます。
 その場合大学生になるのですか?」
「高校生でも大学生でも構いませんが、高校生の友達は増やして欲しいです、近衛予備隊で培われて来た様々なことに触れて感じて貰いたいです。
 我が国の教育は学力の向上だけを目指しているのでは有りませんので。」
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近衛予備隊-390 [高校生バトル-81]

 ギフテッドの存在は話に聞いていたが実際に会ったことは無かったので、椙山さんにお願いして本人と会わせて貰うことにした。
 その前に高校や大学研究室の話は一通り椙山さんからしておいて貰い…。

「亮二、ここでの生活は楽しい?」
「はい、とても楽しいです、大統領閣下。」
「はは、ジョンで良いよ、高校生になったら近衛予備隊への登録も考えてくれているのだろ。」
「勿論です、仲間外れには成りたくありませんから。」
「友達は沢山出来たのか?」
「はい、かなり親しい友人が七人、そこそこ親しい人は二十六人、一緒に遊んだり学んだりしている子は七十四人になります。」
「三つのグループにはかなりの差が有るのかな?」
「そうですね、かなり親しい人達は難しい話をしても聞いてくれる人達で、自分も彼らの話を聞くことが楽しいです。
 そこそこの人達と難しい話をすることは出来ませんが、彼らは仲良くしたいと特に意思表示して来ます、他の子達も色々な形で一緒になる機会の有る子達、みんな日本から来た自分を快く受け入れてくれました。」
「移住で日本の友達とは離れてしまったが寂しく無かったのか?」
「いいえ、日本には友達がいませんでしたので、頭が悪いと言うより心の狭い子ばかりでした。
 ここでは算数や数学が得意だと話したら、みんなが教えて欲しいと頼ってくれ、自分のことを誰も変な目で見なかったのです。
 彼らとは真面目なことから、おバカなことまで色々な話をしているのですよ。」
「そんな話の中で印象に残ってることは有るのかな?」
「この国がジョンや女王陛下のお力によって、どんどん良くなってると皆が誇らしげに話すのは、なんかまぶしかったです。
 女王陛下が日本人なのだから、自分もこの国でずっと暮らして良いのですよね?」
「勿論さ、高校や大学の話は聞いてくれたかい?」
「はい、大統領からの誕生日プレゼントだと聞いて興奮しました。
 一年待たなく良いなんて嬉し過ぎますが、大学の研究室と言うのは良く分かっていません。」
「まあ、私も良くは分かっていないのだが、部屋を用意して遠江大学教育学部数学科の人達と交流出来る様にする。
 そこで週一回、高校生と共に数学の学習をしてくれれば良いと思ってるのだが、数学以外にも興味を持っていることは有るのだろ?」
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