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Lento 13,蒔神悟 ブログトップ
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蒔神悟-1 [Lento 13,蒔神悟]

蒔神悟は、高校時代に事故にあって歩けない体となった。
高校のバスケット部では実力を認められレギュラー入りが確定した頃のことでもあったから、彼は絶望のどん底に落とされた。
そんな頃の彼に声をかけたのは看護士の川上聡子だ。

「蒔神くん痛みはどう?」
「…。」
「薬はちゃんと飲んでる?」
「…。」
「でも良かったわね、足は痛んじゃったけど健康的に生きられそうよ。」
「…。」
「少し時間はかかるけどね。」
「俺がどうやって健康的とかに生きられるんですか!」
「あら? ずいぶん元気そうね。」
「元気じゃないですよ、バスケできないどころか歩くことすらできないなんて!」
「えっ? バスケならできる様になるわよ。」
「じょ~だん! ですか!?」
「真面目よ、車椅子バスケットって競技があってね。」
「えっ、障害者のお遊び?」
「はは、そうか車椅子バスケットの試合見たことないんだ。」
「えっ?」
「蒔神くんなら日本代表クラスまでなれる気がするけどな。」
「からかっているんですか?」
「いいえ、スリーポイントシュート、得意なんでしょ?」
「まぁ、それなりに、それも過去の話…。」
「椅子に座った状態でシュートしてどれぐらいの確率で入ると思う?」
「えっ?」


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蒔神悟-2 [Lento 13,蒔神悟]

「結構難しいのよ。」
「そんなことやったことがないから…。」
「シュート入ると思う?」
「…、俺なら…。」
「ねえ、状態が安定したら見に行かない。」
「…。」
「君は健康なの、確かに足は今まで通りには機能しないけど他は何ともないからね。」
「…。」
「リハビリだってゆっくりで良いから…。」
聡子は突然涙ぐむ。
とまどう蒔神に…。
「私の息子は高校生の頃に事故でね…。」
「…。」
「ごめんなさい。」
そう言い残して聡子は病室を後にした。

蒔神は色々考え始めることになる。
病院のベッド、考える時間はたっぷりある。
聡子の言葉の意味をじっくり考えていたところへ病院の院長が訪れる。

「蒔神くん調子はどう?」
「は、はい…。」
「川上くんがね、あっ聡子さんって言った方が分かり易いかな、彼女から君に変な話をしてしまったからと報告されてね。
少し説明させてもらおうかと思って来たんだけど。」
「はい。」
「彼女は事故で息子さんを亡くされていてね、君ぐらいの歳だったんだ。」
「やはり、そうだったのですね。」
「君と話していたら思い出してしまって、なんて涙ながらに話していてさ。」
「自分は聡子さんにずいぶん失礼な態度をとっていた気がします。」
「ふむ、そうなんだ。
まぁ、君のような目に遭ったら誰しもそんなものだから、あまり気にしなくて良いよ。
もちろん川上くんも分かっているからね。
そうそう、川上くんからはどれぐらいの話を聞いたかな?」
「車椅子バスケットのこととかですけど。」
「うん、君はある意味ラッキーだったんだよ、足以外は全部大丈夫だから。」
「足がだめになったことは自分にとって…。」
「それはわかるよ、でも今君に考えて欲しいことは何ができるか、ということなんだ。
今、何がしたい?」
「やはりバスケです。」
「もうしばらく様子を見て体が安定したらできるようになるよ。」
「でも、本当のバスケじゃないんでしょ?」
「うん、もっと大変かもな。」
「えっ?」
「腕を思いっきり鍛え上げないと上へは上がれないからね。」
「リハビリでちんたらやるスポーツじゃないのですか?」
「まぁそんな人もいるけど、君には世界を目指して欲しいな。」
「世界ですか?」
「もちろん簡単ではないけど…、そうだ今度名古屋で大会があるから、まずは見に行こうか。」
「は、はい。」
「それまでには普通に車椅子を扱える様になっていて欲しいかな。」
「はい。」


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蒔神悟-3 [Lento 13,蒔神悟]

車椅子バスケットの大会当日は院長だけでなく数人の看護士の姿も、元入院患者の一人が今日の試合に参加するから、その応援ということだ。
蒔神は車椅子を自分の足として使える様になってきた、まだ不慣れではあるが。
またスポーツができるということが彼の心の支えとなって練習に励んでいる。

体育館に入ると試合前のウォーミングアップが始まっていた。
「あっ、うまい!」
「だろ。」
「車椅子ってあんなに自由自在に操れるものなのですね。」
「特別な車椅子だからね。
君も感が良さそうだから上達も早いと思うよ。」

しばらくして試合が始まる。
「あっ。」
蒔神は圧倒されることになる。
そして気付く、この人たちは病人でも怪我人でもない健康な人たちなのだと。
「すごい、かっこいい、先生自分もやりたいです。」
「後で選手に紹介してあげるよ。」
「お願いします。」


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蒔神悟-4 [Lento 13,蒔神悟]

試合後の体育館。
帰り支度を急ぐ者、後片付けをする者、今日の試合について語り合う者、そんな人たちに混じって蒔神はコートにいた。
「蒔神くんだね、院長先生から色々聞いているよ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「俺は山吹篤、まぁ色々な意味で君の先輩ということだ。
はは、ボールに触りたくてうずうずしてるって顔だな、ほらっ。」
山吹はボールを蒔神に投げ渡す。
受け取った蒔神はそれをいとおしそうに触ってからドリブルをしてみる。
「おっ、良いドリブルができるじゃないか。」
「山吹さんシュートしてみて良いですか。」
「おお、やってみろ。」
「有難うございます。」
ボールを膝に乗せてフリースローサークルへ。
真剣な表情でゴールを見据える蒔神。
蒔神が放ったシュートは惜しくも外れた。
すぐ山吹がボールを拾い蒔神にパス。
2回目のシュート。
入らなかったが良い距離感をしている。
山吹がボールを拾い蒔神にパス。
この頃から周りの視線が集まり始める。
普通の車椅子、しかも新品となれば事情は察しがつく。
自分達が始めた頃を思い出す者も多い。
3回目のシュート。
それは綺麗な弧を描いてゴールにすいこまれた。
会場から拍手と歓声が沸き起こる。
山吹が蒔神にパスしようとした時、蒔神は泣いていた。
「や、やまぶきさん、僕またバスケできるんですよね。」
「当たり前だ、ここにいる連中でこんなに簡単に初シュートを決めた奴なんていないぞ。」
「はは、そうなんだ初シュートなんですね、車椅子バスケでの。」
「一緒にやるか、練習はきついぞ。」
「ははバスケできないことに比べたら…。」
「もっとシュートしてみるか?」
「だめです、涙でゴールが良く見えないんです。」


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蒔神悟-5 [Lento 13,蒔神悟]

その後の蒔神は色々考え動くこととなる。
まずは高校への復学。
彼の高校は以前に車椅子の教師や生徒がいたこともあって、施設面で特に問題はなかった。
だが級友たちは、車椅子に乗って現れたスポーツマンを拍手を持って迎えたものの、どんな言葉をかけて良いかとまどっていた。
そんな雰囲気を感じ取った蒔神はホームルームの時間に。

「えっと、改めて自己紹介させてもらおうかな。」
「そんな必要ないぞ。」
突っ込みを入れたのは親友の牧野だ。
「いや長いこと休んでいたから…、自分の生活も大きく変わったし、今自分が考えていることとか皆に知っておいて欲しいと思ってさ。」
「わかった、話せよ。」
「まず…、俺は留年する、まあずいぶん休んだから仕方ないけど、その分ゆっくり学習できると思っている。
じっくり理数系に取り組んで、コンピューター関連の学部に進学するつもり。
バスケは続ける、マネージャーとかではなく選手として。」
小さなどよめきが起こる。
話を続ける蒔神。
「車椅子バスケって知ってる?」
「知ってるわよ!」
大きな声で叫んだのは伊藤可奈。
「あっ、可奈知ってたんだ、でも俺は知らなかった。
病院の人たちに教えてもらうまで絶望のどん底だったさ。
でも院長先生に連れて行ってもらった体育館で、車椅子に座った状態でフリースローを決めれたんだ、さすがに一発でとはいかなかったけどさ。
入った時はまじで泣いたよ、コートに帰れた、またバスケができるって。」
話を聞いて涙ぐむ女生徒もいる。
「ヒゲ親父と交渉して、一年生の面倒を見ながら自分の練習もしていけそうなんだ。」
ヒゲ親父とはバスケ部の顧問梅田のこと。
「それと、みんなに分かっておいて欲しいことがあってさ。
俺は病人でも怪我人でもないと思って欲しいんだ。
確かに足で移動することはできなくなったけど、それ以外はいたって健康そのものでさ。
車椅子での移動も今はまだ慣れていないけど、自分の力でやっていけると思っている。
やっていかなくちゃいけないんだ。
でも、どうしようもない時もあって…。」
「遠慮するなよ、仲間だろ。」
声を上げたのは柔道部の斉藤。

涙ぐむ生徒が増えていくこのホームルームの時間、車椅子生活者として何をして欲しいか、何をして欲しくないかを蒔神は級友たちに伝えることができたようだ。


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蒔神悟-6 [Lento 13,蒔神悟]

蒔神は山吹篤の所属する車椅子バスケクラブの練習に参加する様になる。
初めての見学の日、山吹は付きっ切りで説明していた。

「まずは競技用の車椅子に乗ってみるか?」
「はい、お願いします。」
車椅子から車椅子への移り方などを説明する山吹。

「どうだ?」
「普通の車椅子とはずいぶん違うんですね。」
「まぁお散歩用じゃないからな。
まずは短い距離でパスの練習から始めてみるか?」
「はい。」

軽くパスをしながら。
「まず、車椅子バスケを始めるに当たって大切なことがあるんだ。」
「何ですか?」
「あせっちゃだめということだな。
今は、ゆっくりじっくり取り組んで欲しい。」
「あっ、院長先生にも言われました。」
「だろうな、でもこのことは本当に守って欲しいんだ。」
「はい。」
「そうだな実際にあった話しなんだけど、福祉系の大学に入学した障害者がいてね。
キャンパス内では色々な障害を持った学生達が普通に学生生活を送っている様な大学だったんだけどね。」
「はい。」
「彼女は新入生対象のキャンプに参加したんだ。
基本全員参加だったからね。
それで、ハイキングにも参加してさ、本人もテンション上がってるし回りもがんばれがんばれってな感じで。
で、ハイキングはなんとか終えたもののその後、高熱を出して病院行き、そして休学となったんだ。」
「それって?」
「うん誰を責めることも出来ないかもしれないけど、俺達の視点では本人が自分の力をきちんと把握できなかった、ってことになるのさ。
俺も普段は健康なんです、って言ってるけど古傷がうずく時もあるからな。」
「そうですよね、自分の場合はまだ古傷ではないですけど。」
「とにかく冷静に自分の体の状態と向き合って、とことん自分の体に語りかける癖を付けるんだ。
トレーニング中でも、絶対無理をするんじゃないぞ。」
「心は熱くても頭はクールにということですね。」
「そんな、とこかな。」
「心掛けます。
で、ちょっと休みたいのですけど。」
「あっ、ごめん、話し込んでいてついパスが強くなっていたな。」
「自分も嬉しくてつい、でも今の山吹さんのお話で自分にストップをかけるべきかと…。」
「うん、それで良いんだよ。」


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蒔神悟-7 [Lento 13,蒔神悟]

バスケクラブの練習時間は蒔神にとって、とても貴重な時間となる。
バスケのことだけでなく色々なことを山吹から学ぶことができたからだ。
実体験を元にアドバイスしてくれる山吹の存在は大きく、彼を兄のように慕うようになって行く。
山吹も素直な性格の蒔神を気に入って、人に紹介する時には「俺の弟です。」と冗談ぽく言うようになった。

「サト、学校の方はどうなんだ?」
山吹は蒔神をサトと呼ぶ、競技中に蒔神とか悟と呼ぶより短い方が良いという理由からつけられた呼び名だ。
「はい、適当に真面目にやってます。」
「えっ?」
「留年は確定してるのでそんなにがんばる必要も無いのですが、テストでは結構良い点を取っているんですよ。」
「ふ~ん、真面目な弟を持って俺も鼻が高いぞ。」
「はは、まぁ今やっておけば来年余裕ができるってことなんです、その余裕が再来年の受験に生かされると思ってます。」
「そうか進学を考えているんだな、どんな学部に進むつもりなんだい?」
「はい工学部の情報処理関係と考えています。
理数系は得意だし、コンピューター関連なら車椅子のハンデも少ないかなと思って。」
「うん、その通りだな…。」


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蒔神悟-8 [Lento 13,蒔神悟]

蒔神の話に少し考え込む山吹…。

「なあ春休みにバイトしないか?」
「えっ? 自分にできるバイトがあるのですか?」
「うん、俺はいわゆるシステムエンジニアって仕事をしててな、今大きな仕事抱えているんだ。
パソコンの操作は、えっとブラインドタッチはできる?」
「中一の頃に練習してそれなりにできます。」
「システム構築に付随してデータ入力の作業があってさ、まあ誰でも出来る仕事なんだけど量が半端じゃなくてさ、その作業の合間に実際のシステム構築の現場を見とけばきっと将来役に立つと思うんだ。」
「そういうことならぜひお願いしたいです。」
「うん、それなら社長と相談してみるよ、何時からできる?」
「はは、留年確定してますから明日からでもオーケーですよ。
テストが終わったからまともな授業もありませんし。」
「よし、じゃあ決まったらすぐ連絡をするよ。」
「お願いします。」


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蒔神悟-9 [Lento 13,蒔神悟]

蒔神は車椅子バスケ、学習、そしてバイトと充実した学生生活を送ることになる。
その学生生活を支えたのは兄と慕う山吹だった。
大学3年生の頃…。

「ねえ兄さん、大学といっても決してレベルは高くないんだよね。」
「ふ~ん、どんな感じなんだい。」
「プログラミングの授業なんか、結構簡単でさ、あれなら自分でも教えられるよ。」
「はは、それはサトのレベルが高すぎるからじゃないのか?」
「え~、そうかな。」
「高校時代から実践の現場で色々経験してきたろ。
大学の先生といっても実践経験が豊かという訳ではないだろうからな。」
「確かに兄さんには色々教わったな。」
「はは、後少しのコツを掴めばシステムエンジニアとしてやっていけると思うぞ。
まぁそんなレベルの学生に教えなきゃならない大学の先生に同情するけど。
それよりメシ食いにいこうや。」
「うん。」


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蒔神悟-10 [Lento 13,蒔神悟]

就職についても山吹が面倒をみた。

「サト、就職は考えてる?」
「はい、でも実際問題、車椅子生活の自分を雇ってくれる会社って、どうなんでしょう?
バスケもやりたいし。」
「なぁ俺が前に勤めていた会社に行ってみないか?
社長の佐伯さんは面倒見の良い人だし、俺が働いていたぐらいだから車椅子でも問題ないんだ。」
「兄さんの師匠なんですか?」
「まぁ、そんなとこだ。
そうだなぁ~春休み中にバイトでもしに行って感じを掴んでくれば良いじゃないかな。
ちょっと人手が欲しいらしいんだ。
うちは今大きな仕事が終わりに近づいているから…。
状況次第では社長と相談して俺も応援に行くことになるかもしれない。
うちの会社で働いてもらっても良いけどさ、この前うちの社長と話していてね、かわいい子には旅をさせろってことで意見が一致してな、あそこはうちとは違う分野の仕事も手がけてるから、サトのスキルをワンランク上げることになると思うんだ。」
「そういうことなら喜んで、一応親にも話しておきます、まぁうちの両親は兄さんに自分のこと任せっきりですから問題ないとおもいますが。」
「はは、兄だからな。」
「はい。」


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