蒔神悟-11

就職してから２年が過ぎた頃。

「ねえ兄さん、社長から他の会社で働いてみないかって言われて…、それがねなんか意味深なんだよ。」
「はは、聞いてるよ。」
「自分の仕事ぶりに問題があったのかな？」
「ははっ、全く問題ないから安心しろ、問題があったら佐伯さんは他の会社に紹介しようなんて思わないよ。
まぁ佐伯塾卒業の時期になったってことかな。」
「えっ？」
「佐伯さんは若者を教え育てることが好きな人なんだ。
だから佐伯さんに育てて貰った人たちがあちこちで働いていてね、まぁ俺もその一人ということなんだけどな。
そうだな３年ぐらい前のこと、めったにないことなんだけど、佐伯さんの会社でさ、納期が迫っているのになかなか解決しない問題が起こっていてな。
どうしてもプログラムが正常に動かなかったんだ。
たまたま遊びに行ってた元社員も、色々試したんだけど原因が掴めなくてさ。
時間がないから、その人が、とりあえずそんな情報を、佐伯さんに育ててもらった人たちに流したわけさ。
手の空いてる人は会社に行って、ある人は自宅のパソコンからてな感じで気付いたら30人ぐらいが原因調査に参加しててさ、その内の一人が小さなミスを発見してとりあえず問題は解決。
でも納期が迫ってるから、そのまま何人かが仕事を手伝って納期に間に合わせたってことがあったんだ。
その後、佐伯さんはお礼って感じ、俺達にとっては同窓会かなって感じのパーティーを開いてな。
はは、それがさ、ふと気付いたらすごい情報交換の場になってたんだ。
佐伯さんに育ててもらった人たちのレベルの高さに改めて気付かされたよ。
その一員にサトもなれたってことさ。」
「でも、転職先の会社のこと全然教えてくれないのだけど…。」
「黙って了承しておけよ。」
「うん、兄さんがそう言うなら。」
「どんな会社かは、まぁ楽しみにしておけよ。」
「兄さんも意味深なんだな。」
「はは。」


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蒔神悟-12

ある日、蒔神は佐伯社長に連れられて面接に向かう。

「えっ！」
会社の正門のプレートに驚きの声をあげる蒔神。
「ここってHarmony Worksのsupport company…。」
「そうだよ、それがどうした？」
にやにやしながらさらりと応える佐伯。
「自分がここで働けるのですか？」
「だから今日来てるんだろ。」
「は、はい。」
「今日は花組勢揃いらしいけど、堂々としてろよ。」
「え～、何かどきどきです。」
「サトが緊張していると、それがかえって花組の皆さんに気を使わせることになるから、そうだなかわいい世話好きの妹が沢山できる、ぐらいに考えれば良いぞ、みんな素敵な子ばかりだら、普段のサトを出せればすぐ友達になれるさ。」
「はい、でも自分和音さまのCD何枚か持っていて、しょっちゅう聞いているんです。
何か不思議な気持ちです…。」


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