SSブログ
高校生バトル-52 ブログトップ

近衛予備隊-91 [高校生バトル-52]

 村立小学校をどんな形にするかは皆で意見を出し合うことになった。
 建物に関して俺が口を出せることは無いので、敷地を見渡せる丘へ担当者を案内したのが唯一俺に出来たこと、担当者はドローンを使って空から撮影し、その広さを確認した。
 その映像を見た人の中に村の調査をした人がいて、平らな所の多くは畑や家として使われていると思っていたと驚いていたが、その広さに学校だけで無く他の利用方法を考えたいと盛り上がっている。
 この辺りの土地は村を豊かにする為なら自由に使って良いとのお墨付きを大統領から貰っているのだ。
 学校の仕組みそのものも俺達には判断する材料が少なく、近衛にお任せとなる。
 何歳で入学しどう進級させ、卒業や進学をどうすれば良いのかは俺達には全く分からないが、小学校卒業後は中学校に進学するか、十二歳から近衛予備隊に入隊すると言う方向になりそうだ。

「ひとまず私達の役目は予備隊の新兵教育を充実させることかしら?」
「そうね、でもそれは新兵教育を進める中で修正すべき所を修正して行けば、自然と出来上がって行くものではないかしら。」
「ああ、俺達が経験して来たことでも有るからな、それより中学校のスタートの方が問題だろ。」
「そうね、初めて顔を合わせる人達、十名程度とは言え年齢に差が有り、私達よりの年長の人が四名含まれるのだから、少しやりにくいと思うわ。」
「職業訓練が中心になるとしても、ここの社会について正しく理解して貰う必要が有るからな。
 でも、色々考えるのは実際に会ってからで良いと思うよ、前もって考えようにも情報が無さ過ぎるだろ。」
「ジョン、彼らがここへ越して来る日程は決まったの?」
「小学生以上の子は学校の仮設校舎が完成してからになる、少しずつ越して来て貰って問題を探りながら慣れて貰うと聞いたよ。
 指導体制はその状況を見ながら固めて行く方向、教師は近衛隊メンバーがやりながら募集して行くのだけど、住まいが足りないので仮設住宅を建てるそうだ、仮設と言っても俺達の家よりはかなり住み心地が良いそうだけど。」
「そんな話を聞くと私達の部落をもう少しマシな建物に建て替えたくなるわね。」
「ルーシーのお小遣いで何とかならないのか?」
「もう少し昇給したら考えてみても良いけど、今は村長のポケットマネーだけが頼りね。」
「う~ん、真剣に商売を考えてみるか…。」
「学校はどうするの?」
「俺達に出来ることは子ども達が越して来てからだと思う、まだ見ぬ子達を想定して考えるには経験が無さ過ぎると思わないか?」
「それもそうね。」
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-92 [高校生バトル-52]

 俺達が学校に関して考えることを先延ばししたのは正解だったと思う。
 学校関連の会議に出ても近衛隊メンバーの頭の中に有る学校像が見えて来なかったからだ。
 プリンセスに説明して貰って少し理解したが、彼らが描いてる学校は自分達が通っていた学校とは掛け離れた存在としか思えなかった。
 それでも予備隊の新兵に対して行っている英語の対話練習は理に適ってるからと新しい小中学校でも採用されることになり、それがより効率的に進められる様、新兵と一緒に教え方の工夫をしている。
 後のことは子ども達が引っ越して来てからとして、俺達は真面目にお金儲けについて考え始めた。

「新兵の実習として始める商売は新兵達が昇格した時の給料に充てたいよね。」
「ああ、それとは別にと言うことで相談に乗って貰ってる。」
「良い案は有った?」
「微妙だけど、俺達の手で綺麗な家を建てて行く所をYouTubeで公開してみると言う案が出てね。」
「お金が無いのに建て始めるの?」
「うん、少しぐらいなら出せるし、自分達の手で工事をするのなら始めることは出来る、建設資金を稼ぐ所も映像で公開して行くからそれなりの本数は上げられるだろう、やるなら撮影は格安で請け負ってくれるそうだからな。
 稼げなかったら建設が中断となるだけで無理は無い、視聴数が伸びて収益が増えたら大工を雇うのも有りだ。」
「無理が無いのなら良いけど、大工実習を兼ねて貰うのも有りなの?」
「頼んでみようとは考えているが、基本は俺達の部落に住んでる人だけで始めたい、村の事業として行うのではなく、部落に自分達の家を建てるのだからな。
 ただ、設計は素人にとって難しいから、担当教官とも相談してみるよ。」
「自分達で工事をすると、かなり安くなるのかしら?」
「いや、仮設住宅以上のものにはしたいから材料はまともなものを使いたいし、トイレなどは日本からの輸入になる、安さは目標とせず、掛かった費用も公開して今後家を建てる人の参考にして貰おうと思うんだ。」
「今後家を建てようと思う人が村内にも居れば良いのだけどね。」
「部落によっては会社で働いてる人が数人いる所も有る、一人の給料では難しくても協力して建てようと思う人達が現れてもおかしくないよ。
 うちの部落だって農地改革に成功すれば二軒目や三軒目を建てることだって夢では無いだろ。」
「成功すればね…。」
「成功するさ、複数の作物を栽培することでリスクを分散させるし、採れた作物は遠くへ送るのではなく、希少性のある物はここの店で、その他はまもなく開店するマーケットでの販売を主に考えてるし、マーケットにはチェーン店展開の予定が有るからな。」
「マーケットが成功するかどうかも分からないのよ。」
「それなりに人は住んでるが便利なマーケットが近くに無い所を狙って展開して行くのだから大丈夫だろう、一店舗当たりの利益は小さくても赤字にさえならなければ良い、勿論従業員の待遇を良くした上での話だけどな。」
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-93 [高校生バトル-52]

「マーケットでは特別な物も売るの?」
「輸入品の中で比較的安価な物を置いてみるそうだよ、それと俺達のグッズを販売する提案も有った。」
「私達の?」
「ああ、若い世代は親衛隊より身近で親しめる存在として予備隊第三部隊に注目しているそうでね、公開しているパフォーマンス映像だけでは物足りなく、歌やダンスを披露して欲しいと言うリクエストが届いてるそうなんだ。
 そんな世代向けのグッズになるから単価は抑え気味になるが上手に売って行けばそれなりの収入になるだろうって言われたよ。」
「上手に売る?」
「まずは俺達の知名度をもっと上げるべく、親衛隊のYouTubeチャンネルにも積極的に出演する。
 その上で村のチャンネルに歌やダンスをアップして行けば視聴回数が伸びるだろうし、グッズの売り上げも期待出来ると言うことだ。」
「歌にダンスと言ってもジョンはお祭りの時に古いのを…、あれではダメよね?」
「ああいうのだけではね、かと言って町で流行ってる音楽はあまり知らないからな。」
「たまに鼻歌っぽく歌ってるのは?」
「店で流れてる曲を何となく覚えて何となくだよ。」
「誰かに相談してみたの?」
「いや、俺より歌が好きな連中に歌って貰えば良いと思ってね。」
「それではダメだと思うわ、人気度の違いが歴然なのだから、ジョンに憧れて英語学習に身が入る様になったと言う子がいるぐらいでしょ、だからジョンが英語で歌わなきゃ。」
「そう言われても、今まではお祭りの時に歌うぐらいだったからな。」
「村のチャンネルにはお祭りで歌われている曲を中心に上げて行けば良いと思うけど、相談してみる必要が有りそうね。」

 ルーシーに言われ近衛隊の音楽担当に相談したのは正解だったのどうか分からない。
 それ以来、空き時間の多くを歌の練習に充てることになってしまったからだ。
 それでも頑張っているのは、部落の大人達も新築住宅建設に協力してくれることになり、用地が確保され撮影が始まったと言う事情が有る。
 出来れば工事を中断させることなく完成させたいし、YouTubeの視聴数が伸びグッズが売れたら二軒目も建てたい。
 どうなるかは分からないが、今まで店で販売して来た俺達のグッズがそれなりに売れ、上水道敷設費用の一部に充てられていることを考えたら全く無理な話でも無いと思っている。
 ただ問題は…。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-94 [高校生バトル-52]

「ジョン、歌の練習はどう?」
「自分は詩織と違い歌は苦手なので苦労しています。
 祭りで歌う歌で変な癖が付いてると言われてますし、発声の基礎だけでも色々有りまして…。」
「お祭りの歌は録音を聴かせて貰ったけど、あれはあれで良いと思うわよ、村の紹介として動画をアップするのでしょ?」
「はい、あの歌い方を早く忘れないと今練習してる歌の妨げになりますので、動画の撮影は早めに済ませて貰いました、曲数は多くないので。」
「歌の動画で稼げるかどうかは微妙なのね。」
「今回はあくまでも個人的なものですから、近衛の方々は手伝ってくれますが甘え過ぎる訳には行かないのです。」
「そうね、村全体を考えたら部落の家をジョン達が自力で稼いで建て替えることに意義が有るものね。」
「歌や踊りが得意ならYouTubeの視聴数が伸びて楽になるのでしょうが…。」
「そうばかりでもないのよ、日本では歌が下手な子が幼稚な踊りを踊りながら歌っていてもファンがいたりしてね。」
「どう言うことですか?」
「曲はプロが作るから悪く無いし修正する技術が進んでいるからレコーディングしたものを聴いても凄く下手には聴こえないのよ。」
「へ~、人前で歌うことは無いのですか?」
「お客さんの前で歌う時は録音して有ったものを流し、それに合わせて口をパクパクしてれば良いの。
 客も分かってるからろくに歌を聴いて無かったりするみたい。」
「えっ?」
「顔やスタイルを気に入った子が何かをしてれば満足なのよ。」
「そう言うものなのですか。」
「そう言うものなの、そうだジョンも日本語の歌を歌ってみる?」
「えっ?」
「色々試す姿をドキュメンタリー風にアレンジしながら作品を発表して行くの。
 私の妹分である雅なら面白そうだと乗ってくれると思うわ。」
「えっと…、日本語は難しそうですが…。」
「日本語は挨拶だけ覚えれば良いかな、後は上手に歌ってる人の歌に合わせて口を動かす練習と、意味は分からなくて良いから、それらしく歌うのも試してみようか。」

 プリンセス詩織の提案は、正直言ってよく分からなかった。
 それでもプリンセス雅や彼女が集めたスタッフと連絡を取り合う様になり、自分が何をすれば良いかだけは理解しつつ有る。
 ただし練習を始めても、それが収入に結び付くとは思えないままだ。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-95 [高校生バトル-52]

「録画を見た雅がジョンは感が良いって褒めてたわよ。」
「そう言われましても、自分では何も分かりません。
 歌詞の意味だけは教えて貰いましたし、用意して貰った曲は悪くないのですが日本人が歌ってる様には全く歌えないです。」
「そこが面白いから、録画されたものは色々な形で使ってみるそうよ。
 YouTubeはまず一本目の動画から数回かけてジョンの紹介、メインターゲットを日本人にするからナレーションは全部日本語でね、英語字幕は入るけど。」
「対象が日本人だけでは視聴数が伸びないと思うのですが。」
「そうね、大ヒットは期待出来ないけど、雅が宣伝してくれるから家一軒分ぐらい稼ぐのに何か月も掛かることは無いと思うわ、彼女はジョンを有名人にしようと目論んでるのよ、日本国内だけでね。」
「そんなことが…、自分は日本に行く予定、無いのですが。」
「そこがYouTubeの強みなの、ジョンはバーチャルユーチューバーって知ってる?」
「いいえ、初めて耳にする言葉ですが…。」
「2DCGや3DCGで描画されたキャラクターが実際に話してるかの如く声優担当が話したりするのだけど、差し詰めその実写版と考えていてね、ジョンは声以外を担当する訳。
 因みに衣装はうちの関係で製造販売をしてるのを着て貰うから、その宣伝費もジョンに入るわよ。」
「だから詩織は強気なのですか?」
「ふふ、それだけでは無いわ、向こうのスタッフ連中中心にジョンのファンが増え始めているのよ、すでに。」
「えっ?」
「ジョンのルックスは日本人好みなのかもね。」
「はあ、良く分かりませんが…。」
「兎に角、村とは全く関係ない所で稼ぐのなら何の問題もないでしょ。
 だから少々面倒な注文にも応えて上げてね。」
「勿論です、プリンセス雅が自分の為に色々考えて下さっていますので。」

 ただ、プリンセス雅の考えに俺がついて行けないことも有り、様々な注文に戸惑うことはこれまでも多かった。
 ジョンと言う英語を話し村の村長をしている存在の他に、日本語を話し歌の上手いジョンと言う人格を作り出すそうで、俺が英語での質問に答えた内容は、日本語を話す人格が英語を話す人格に日本語で質問する形に編集されると言われたがピンと来ていない。
 完成したものには英語の字幕が付くので完成を待っているのだが、一本目から順に作業してるのでは無いそうで…。
 一つの救いは、近衛隊メンバーは全員プリンセス雅のことを知っていて、この企画に関して皆が協力的だと言うことだ。
nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-96 [高校生バトル-52]

「ジョンのチャンネル一本目は感じ良く仕上がったわね、時間が掛かっただけのことは有るわ。」
「日本語だから良く分からなかっただろ、英語字幕が付いていても。」
「でも、プリンセス雅が出演して下さってるなんて光栄じゃない。
 日本語でジョンがジョンに質問し、ジョンが英語で答えたのを日本語に訳すジョンなんて発想も面白いと思うわ。」
「あの場面は日本語に合う様に口を動かすのが微妙に難しかったのだけど、俺の日本語担当が上手く合わせてくれてたな。」
「自然な感じに仕上がってたわね、まるでジョンが普通に日本語を話してるみたいに。」
「俺も日本語担当もコツを掴み始めたから、これからの撮影は早くなると思うよ。」
「ジョンが苦労したのに、もし視聴数が伸びなかったら残念だわ。」
「少なくとも一本目は会社に関係する多くの人が見て下さるとかで安心する様に言われたよ。
 会社の商品を使っての宣伝効果も狙ってるから、その代価も含め、一回目の入金で家の一軒ぐらい簡単に建てられるだろうともね。」
「そんなに?」
「俺達が建てる家は土地代が要らないから安いものだとか。」
「気が遠くなる様な金額だと思っていたのだけど…。」
「そこがプリンセス詩織をトップとする企業グループの力なのさ。
 日本には会社の従業員やその家族、様々な形でプリンセス達の活動に協力してる人達を合わせると軽く百万人を超す仲間がいると聞いてるし、プリンセス達のYouTubeチャンネルを楽しみにしてる人の総数はもっと多いのだからな。」
「言語が英語だったら、もっとうんと多かったのにね。」
「でも、俺の実力だと英語圏では継続的に見て貰えないだろうとプリンセス詩織は判断したんだ。
 日本向けなら、日本の事情に強い人が多くて継続的な制作に間違いがないそうでね。
 まあ、結果は明日か明後日には見えて来るだろう。」

 出来はまあまあだと思う、ただ、色々言われ力づけられてはいるが俺としても期待と不安が入り混じっているのが正直なところだ。
 今は開き直って結果を待つしかないのだが。
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-97 [高校生バトル-52]

「ジョン、なかなか良いペースで視聴数が伸びてるわね。」
「ああ、二本目三本目もこの調子なら家一軒分稼ぐのに時間は掛からなさそうだな。」
「ただコメントが日本語ばかりで評価がさっぱり分からないのだけどどうなのかしら?」
「概ね高評価を得られているとは聞いているが何が書かれているかまでは教えて貰ってない、この後プリンセスと夕食だから、その時にでも教えて貰えて貰おうか。」
「そうね、お願いしてみましょう。」

 プリンセス詩織は俺達のことをとても気に入って下さったそうで、昼食会や夕食会に招かれることが多くなっている。
 その場での話題は多岐に渡り色々学ばせて貰って来たが、固い話ばかりでなく、最近は自分達から話しを振れる様になっていた。

「詩織、自分のYouTubeチャンネル、視聴数が伸びてるのは分かるのですが、コメント欄は日本語ばかりで何が書かれているのかさっぱり分かりません。」
「でしょうね、でも安心して良いわよ、ルックスの良さでファンになったと言う人だけでなく、若いリーダーを応援したいと言う声が多くてね、その結果がチャンネル登録者数に表れているのよ。」
「アンチはどうですか?」
「そうね、雅の力を利用してる、なんて書き込みやイケメンに対するやっかみは有るけど無視して構わないのしか見当たらなかったわ。」
「このまま伸びると思いますか?」
「ええ、相乗効果で村などのチャンネルも視聴数が伸びてるし、二本目や三本目も見たけどあれなら大丈夫、撮り溜めして有って一日おきの更新は暫く続けられるのでしょ。」
「そう聞いています、最近はふと気付くとカメラが回ってることが多いのですが、カメラ担当は遠江王国からの指示で撮影してるのだとか。
 特別な撮影は、日本語を意識して口を動かさなくてはならないので簡単では有りませんが、長時間ではないので、他の作業に影響するほどでは有りません。
 でも自分が日本語を話している様に見えて、違和感は感じられないのでしょうか?」
「日本では海外の映画を日本語吹き替えで見てる人もいるのだから大丈夫でしょう、英語学習に繋がらなくてもね。」
「これを機に日本語もと考えていますが難しくて…。」
「英語とは根本的に違うものね、それでも適当に単語を並べれば何となく伝わる、店の日本人スタッフなら喜んで協力してくれると思うわよ。」
「やはり語学は使ってみるのが上達の近道ですか?」
「ええ、それはどんな言語でも同じでしょ。」
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-98 [高校生バトル-52]

 翌日から休憩時間を狙って日本人スタッフに声を掛けてみたのだが、日本語の単語を並べただけでも喜んでくれ、英語での解説付きで応えてくれた。
 YouTubeでは上手に日本語を話せてるのにと突っ込まれてしまったが、訊くと俺のYouTubeチャンネルは彼女達の間でも評判らしく、日本の知人からも俺に関することを教えて欲しいとの連絡が幾つも入ったそうで、友人に送るからとツーショット写真を何枚も撮られることになった。

 YouTube向けの撮影をしたり日本語の学習に取り組んだり出来るのは、相変わらず村長としての職務が少ないからだが、とても静かに自分が村長として気を引き締めるべきことが進行していたと知ったのはそれから間もなくのことだ。
 以前プリンセスとは警察官の訓練教育施設の話や給料の安い警察官の為に副業を認める話しをしていたのだが、それが形を変え実現するすることになっていたのだ。
 話が大統領とプリンセス詩織を中心に進んでいた為、近衛隊のリーダーでも知っていた人は僅かだったそうで、俺がプリンセスから聞かされるまで何も知らなかったのは当然のこと。   
 当初の話とは少し違い、警察官だけでなく国軍の兵士が訓練に加わるだけでなく、他の国家公務員も警官や兵士とは別の形になるがここで研修を受けるそうだ。

「詩織、話が随分広がって進んでいたのですね。」
「ええ、大統領としては、そろそろ目に見える実績を上げておかないと立場が危うくなるそうで、かと言って彼の取り巻きに任せていたのでは何も進まないことに気付いたのだとか。
 まだ詳しくは話せないのだけど、ここで訓練する国軍の兵士には警察官と同等の権限を持たせて薬物の取り締まりに当たらせるとか考えているのよ。」
「兵士なら通常の訓練から離れても問題ないと言うことですか?」
「そうね、一応警察官の増員も進めているのだけど、給料が安いからどうなるのか分からないの。」
「給料が安いのに町を離れてここまで訓練に来る人達からは不平不満が出ませんか?」
「警官と兵士の一部訓練は副業扱いでね、学校建設予定地を中心に荒れた土地を切り開き、まずは警察官と兵士が生活するテントを建てられるように作業、その後仮設の建物を建てて貰う代わりに、給料は普段の五割増しなの。
 但しうちのプリペイドカードへ普段の給料分と同じ額が入金され、それ以外は今まで通りの方法で支払われるのだけど、それを了解した人達だから問題無いでしょう、マーケットでも使えるからね。」
「それだけの額を会社が負担するのですか?」
「まあね、全額店の売り上げになるし、その内の何割かは回収出来るから、この形にしたのだけど。」
「それでも、それなりに…。」
「長い目で見ればきっと利益に繋がって行くと考えてのことだら心配しなくて大丈夫よ。
 それより、第一陣が来週到着して自分達の野営地整備を始めるの、村長として彼らと会ってくれる?」
「分かりました、フォローをすれば良いのですね。」
「ええ、お願いね。」

 聞きたいことは色々有ったが、俺はプリンセスに訊ねるより警察官や兵士から直接聞いた方が良いと判断した。
 だが警察と国軍は仲が悪い、村長としてその間に入る可能性を考え、緊張感が高まっている自分がいた。
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-99 [高校生バトル-52]

 警察官と国軍の兵士、第一陣は五名ずつの十名だったが、若い人ばかりで指揮官と言えそうな人はいなかった。
 それは訓練生を募集する時に、一定以上の給料を受け取っている人は給料五割増しとならない規定や管理職をしている人でも、ここでは若手と同等に扱われるなど上官が来たくならない条件がしっかり揃っていたからだそうだ。
 勿論自分より年長者ばかりだが、話し易そうだったので警察官と国軍の仲について単刀直入に聞いてみることに。
 彼らは、確かに上司達は互いに良く思って無い様だが自分達は一緒に作業することに対して何の抵抗も感じて無いと話してくれた。
 普段貰ってる給料には少しだけ差が有るが、ここではプリンセス詩織が調整してくれ同額を受け取れるそうだ。
 俺は、彼らを現場に案内しただけでなく、そのまま作業を手伝い一晩を共に過ごしたが、その間色々な話を聞き出すことが出来た。

 シャルロットも気になってる様で…。

「ジョン、訓練生達はどうだった?」
「真面目そうな人ばかりだったよ、警察でも国軍でも、ここでの訓練内容はあまり良い物だとは考えられてなくて、実直で真面目な人達に押し付けたみたい。
 まあ、皆さんにはプリンセスから差し入れられた食材で作った食事を喜んで貰えたし、彼らは一様に上司のいない環境を喜んでいた、近衛隊の担当者は優しいからね。」
「普段は安い給料で上司にこき使われているのかしら?」
「ああ、警察でも国軍でも同様にね、だから所属は大きく違っても意気投合したみたい、これから共に作業して行けば更に仲間意識が強く成ると思うよ。
 これからは開拓作業と並行して研修が始まるのだけど、その内容を聞いて何か感じ取ったみたいだったからね。」
「何か?」
「これまで警察に出来なかったことに取り組むのだけど、彼らの中からリーダーを選ぶと聞かされていた、つまり彼らは組織の中で特別な立場になるかも知れないんだ、今は推測でしかないけど。」
「大統領はかなり思い切ったことをしようとしてるのかしら?」
「だと思う、彼らとは今回の訓練や研修の意味を考えたのだけど、考えれば考える程、単なる若手の訓練とは思えなくてね。」
「う~ん、楽しみな様な…。」
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-100 [高校生バトル-52]

 警察官と兵士からなる訓練生は第二陣の宿泊地整備と並行して研修を行っているのだが、今は組織運営に関することが中心になっている。
 宮殿内で行われているので自分も時間が合えば参加しているのだが、そんな時の休憩時間には極力彼らと過ごす様に。
 彼らが英語を話せないこともあるが、警察や国軍の実情を知りたかったからだ。

「ジョンは若いのに凄いな、かなり学習したのだろ。」
「うん、始めの内は良く分かっていなかったけど、学習が進むにつれて視野が広がり、村を良くしたいと言う思いが強く成ったからね。」
「俺だって、警察官になった頃は犯罪を減らして、とか思っていたのだけどな。」
「裏切られた?」
「ああ、警察幹部のしてることなんて犯罪に等しいと思うんだ。
 犯罪の取り締まりより、如何にして私腹を肥やそうかと考えていそうでね。」
「国軍も似た様なものさ、装備品や食料代、多分自分達の給料の為の予算も含めてその一部が軍幹部の懐に入ってるとしか思えないよ。」
「でも彼らを取り締まる存在はいないのだよな、国の偉いさま方とも組んでいそうだし。」
「大統領は兎も角、プリンセス詩織に期待するしかないのかな。」
「プリンセスはそう言い立場ではないだろ。」
「でも、こうして自分達に研修の場を作ってくれ、美味しい食事と適度な作業を用意してくれてるじゃないか。」
「こんなに恵まれてると知ったら第二陣の連中もビックリだろうな。」
「第二陣は何時頃になるのです?」
「自分達のキャンプ地は毎週拡大して行くと聞いてるから週明けじゃないかな、作業や研修に無理の無いペースだよ。」
「始めは銃器に関するトレーニングが中心になると思っていたのが全然違うものな。
 組織について自分達が学ぶとは考えてもいなかった。」
「だよな、普段は上司に言われるがままで、自分の意見など言えたものでは無かったが、ここでは自分の考えを明確に示すことが求められているだろ。」
「それが正しかろうが誤っていようが関係ないのだから驚いたよ。」
「ああ、リーダー論に出て来る理想的なリーダー像は自分達の上司と真逆だものな。」
「考えさせられるね。」
「う~ん、自分は店の開店に合わせて組織論やリーダー論を学習して来たのだけど、その内容は普通に納得出来ましたよ。」
「それは分かる、警察の組織の方がおかしいんだ。」
「プリンセス詩織がそれを知ったらどう思うのかな?」
「まあ、ご存じだから動いているのですよ、ただ、この先のことは自分にもさっぱり分かりません。」

 さっぱり分からないと言うのは本心。
 人の心が有る程度読めると言っても、プリンセスが考えてること、特に込み入った話については全く分からないのだ。
nice!(9)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー
高校生バトル-52 ブログトップ