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三学期-311 [花鈴-32]

「本社業務をそのままにして本社所在地を過疎地に移すって?」
「例え田舎で有っても、そこに本社が有る、とすれば、その会社が納める税金はその自治体に納められることになるのよ。
 お父さんの会社移転によって、ここの税収は増えてるの。
 つまり企業がその本社所在地を過疎地に移すだけで過疎地にとって有難いことなのよ。」
「そっか、ここに来なかったら、そんな社会の仕組みに触れることなく…。」
「情けない大人へ一直線だったかもね。
 大賢者は少々天狗になってたのでしょ。」
「かもな、数学に関して周りの小学生とはレベルが違い過ぎてたから。
 でも、社会の事に関しては、姫に教えられるばかり…。
 それで、小学生社員は何をすれば良いの?」
「そうね、ひたすら理想の農村について語るとかどうかしら。
 実現出来るかどうかなんて無視して。
 大人が考えると、実現が難しいと思った時点で思考が止まってしまうの。」
「姫は、この地を理想の農村としたいのか。」
「まあね、でも、ここでは観光をメインに考えてるから…。
 観光抜きでも盛り上がれる農村が、一つのテーマなのよ。」
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三学期-312 [花鈴-32]

「ここは隣の県とを繋ぐ国道が通っているのが強みだよね。
 車の交通量がそれなりに有るから、店をオープン出来るのでしょ。
 そんな国道の無い過疎地となると、余程の特産品でも無いと盛り上げるのは難しいだろうな。」
「薫の言う通りなのよ、この近くには紅葉で有名な観光の名所も有るからね。
 農業でも利益率の高い作物を生産出来れば、若い人が目を向けてくれるかもだけど、難しいみたい。」
「だから過疎化が進んでる地域が広がっているのだな。
 観光抜きで農村を盛り上げる何て、何も思い浮かばないよ。」
「Lily発案の国内留学を何処まで広げられるかに挑戦してみるのは有りよね?」
「絵梨、具体的には?」
「留学の対象を幅広くし、例えばお年寄りが家庭菜園の技術を学びに来るとかでも良い訳でしょ。
 お年寄りと子どもが交流出来る環境を整えるとか、ここは農業公園を目指してるのだから、その活動の一環としても面白いと思わない?」
「確かに留学生を子どもに限定する必要は無いわね。
 むしろお金に余裕の有るお年寄りに来て頂ければ、色々プラスになるでしょう。
 勿論宿泊施設を充実させる必要が有るけど。」
「宿泊施設は高級な所から安価で泊まれる物まで用意出来ると良いわね。
 学習型観光って感じに出来たら面白いかも。」
「そっか、観光って見物だけでなく体験型のも有る。
 ここなら、色々な植物を植えられるから…、でも都会とは環境が違うからどうなんだろう?」
「そうね、気温の差が有るから、その辺りの事は理解して貰う必要が有るかな。
 でも、作業する適期は違っても作業そのものは同じで…。
 薫、留学生に家庭菜園の仕事を手伝って貰えると私達が楽になると言うメリットも有るのよ。」
「はは、流石の絵梨ちゃんだ、既に手伝ってくれる人が増えて楽になったと聞いてたけど、更になんだね。」
「うん、農業公園が一つの目標だから、先は長いのだけど。」
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三学期-313 [花鈴-32]

「農業公園として花を植える事も考えてるのかな?」
「勿論よ、花の苗を育てている農家も有るのだから。
 オクラの様に花が綺麗な野菜も存在するのだけどね。
 花木も植えるし、勿論果樹も。
 大学の農学部と協力出来たらと考えてるのよ。」
「農学部と?」
「品種改良とかね、大学で農場を持っていても、こことは環境が違う、その辺りを交渉材料に進めて貰っているの。
 大学側としても研究施設を充実させられる事が出来たら嬉しい筈でね。
 今も大学生が教育関係中心に研究の為ここに滞在してるでしょ。
 そこに農学部が加わったら更に楽しくなると思うわ。」
「合宿所を利用してる人の中には竹林再生ボランティアも居るのですよね?」
「ええ、どう言う形で有れ、ここにやって来る大学生の人数が増える事は良い事だと思わない?」
「ですね、若い人が来るようになり活気が出て嬉しいと話して下さる方がおられました。」
「Lily、そこなのよ、お年寄りしかいない風景にしてはならないの。
 その先に有るのは限界集落からの廃村しかないわ。
 このエリアは不便過ぎる限界集落以外、既に廃村となってる所でも再生したいと考えていて、移住して来る人達の為に宅地の整備計画を進めているのよ。
 特に地形的に水害や土砂災害に合いにくい場所を優先的にね。」
「そうか…、川から離れ崖も無い土地だから安心して住めるとお父さんが言ってたのはそう言うことなのか。」
「でもね、薫、順調に人口が増え続けたらそんな土地はすぐに無くなってしまうの。
 だから、ここの最終的な人口を何人ぐらいにするのが妥当か、何て研究も始まっているのよ。」
「それって、物理的な問題だけで無く社会学的な要素が絡んで来るよな。」
「ふむ、大賢者も分かって来たのね。
 健全な地域社会はその年齢構成まで意識する必要が有って簡単な事ではないの。
 子どもにとって通学が負担になっていると親が感じたら都会への移住を意識すると思わない?」
「そうだな、自分の場合は都会の小学校が負担と言うか合わなかった…、だからと言って田舎の小学校なら何処でも良いとは考えられ無い。
 大きな声では言えないが、ここへ移住し集まったメンバーが良過ぎたから、自分にとって最高に楽しい小学校な訳で。」
「だよね、でなかったら僕は『ミラクルプリンスひろっち』何て作曲してないよ。」
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三学期-314 [花鈴-32]

「薫はここへの移住に否定的だったのでしょ、その辺りはどうだったの?」
「知らない土地への引っ越しに抵抗が有ったし、引っ越しの理由が自分の為だったからな…。」
「越して来てみてどう?」
「はは、ここに自分の同類が暮らしていると知ってたら何の迷いも無かったと思うよ。
 僕たちみたいな存在は、とても少数だから学校で浮いてしまったり、誤解されたりしてるだろ。
 トーク力に長けてる連中は上手くやってるみたいだけど。」
「テレビ番組に出てる子達ね。」
「でも、テレビに出てる子達でも姫と繋がれるレベルの子は多くは無いと思うな。」
「まあ、色々、番組の方針も有るのでしょうから…。」
「姫、ピーマンの会はそれなりに知られているのだから、もっとアピールしても良いと思うのだけど、どうです?」
「そうね、薫が加わってくれたことでイメージが変わったとは思う…。」
「僕がピーマンを嫌いだったことなんてどうでも良いレベルになってるものな。」
「確かに。」
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三学期-315 [花鈴-32]

「私はただ英語を使う環境にいただけで、みんなみたいに特別な才能が有る訳では無いのだけど…。」
「Lily、そんなの気にしなくて良いよ、日本では二か国語を話せるだけで特別な存在だからな。」
「そうよ、Lilyがいたからこそ、学校の皆が英語学習に前のめりになってる事は間違いないもの。
 ピーマンの会関連の動画に対して英語でのコメントも貰えてるのもLilyがいるからでしょ。」
「う~ん…、何か私の事を過大評価してる人がいそうで…。」
「ふふ、過大評価何て言葉を使う小学五年生は多くないわ。
 算数は苦手でも、国語の力は伸びているでしょ、それだけでも凄いことだと思うの。
 今の才能を伸ばして行けば立派な大人に成れるのだから自信を持って。」
「立派な大人か、たまに情けない大人に出くわすからな。」
「大賢者もか、僕もだよ。」
「薫が経験したのは、どんな大人なの?」
「僕の才能を利用して金儲けを企む大人かな。
 そんな人達はうちの両親も好きでは無いから断るのだけど、しつこい人もいてね。」
「だから、ご両親はここへの移住を考えたのかしら?」
「それは有るかも、株式会社花鈴の所属にして貰ったから、もう大丈夫だと思うのだけど。」
「えっ?
 所属って、どんな感じで?」
「自分の活動に関するお金のことを中心に曲の権利に関することとかね。
 大賢者は株式会社花鈴の業務内容について聞いてないのか?」
「ああ、勿論聞いて無い、そう言った事に関しては普通の小学五年生なんだ。」
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三学期-316 [花鈴-32]

「薫は違うのでしょ?」
「ああ、著作権についてとか、色々教えて貰ってるよ。」
「それを理解出来る力が有るからだよね?」
「まあね、それは姫もでしょ?」
「難しい話は学習するのに時間が掛かることも有るけど、周りの大人達は私の能力を理解してくれてるから、私に対する教え方が上手いの。
 それが一番下手なのは小学校の先生かも。
 一般的な小学生に対することしか学んで来なかったのだろうから仕方無いのだろうけど。
 特別な才能を伸ばす教育なんて考えて来なかった人達なのだから。」
「そう言う事だったのか、単に頭の悪い大人だと思ってた。」
「大賢者の居るクラスなんて先生も嫌だったろうな。」
「よね、私達が教えてる子達は素直で可愛いから。」
「確かに大賢者は可愛げが無いわよね。」
「ちょっと待て、僕だって両親や祖父母に可愛がられてだな…。」
「その可愛げの無さが人として面白いのよ。」
「うんうん、私達は個性派集団として認知されてるからね。」
「僕は平凡だと思ってるのだけど…。」
「はは、ひろっちみたく姫の僕に徹してる様な小学生なんて、そんなにいないと思うぞ。」
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三学期-317 [花鈴-32]

「ねえ、ひろっちにとって姫はどう言う存在なの?」
「どうと言われても…。」
「好きなのでしょ?」
「それは間違い無いけど好きでも色々有ると思う。
 自分の場合は尊敬や敬愛と言った感じかな。
 同級生に対して敬う気持ちが芽生えるなんて、ここに越して来るまで考えもしなかったことだけどね。
 今は姫にお仕えしてるのが心地良いんだ。
 沢山学習する必要が有るけど、無理無く自分に出来る範囲を姫は考慮してくれてる。
 大賢者みたいに特別な小学五年生で無くても、中学一年生の数学を理解出来たのが嬉しくてね。」
「能力に関係なく一律なカリキュラムに疑問を感じていたのだけど、ひろっちが、そこをはっきりさせてくれたのよ。
 無理して先の内容まで学習して行く必要は無いのだけど、沢山考えることで脳が鍛えられる可能性は有ると確信し始めていてね。」
「脳が鍛えられる?」
「将棋の藤井聡太さんは元々遺伝的にも能力が高かったのだろうけど、将棋を通してその才能を鍛え上げたのだと思うの。
 私達は沢山考えることで、それぞれの力を伸ばしているのだと思わない?」
「言われてみれば…、私は英語を普通に話す環境に育っただけで普通の小学生でしたが、この小学校では英語を教える立場になり…、算数は苦手なままですが。」
「Lilyは変わったよな、始めて会った四月はおどおどしてて自信なさげだったのが、今は英語の先生。」
「それは姫が導いてくれたからなの。
 英語が話せることと、英語を教えることは全く別の能力だとは理解してるでしょ?」
「勿論さ、将来を考え英語に取り組んでいるけど、ここにLilyが居てくれて良かったと思っているよ。」
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三学期-318 [花鈴-32]

「語学って微妙なのよね。」
「どこが?」
「例えば、大賢者がアメリカに住んでたら自然と英語が身に付いてたと思わない?」
「言われてみればそうだよな、Lilyが英語を話せるのもカナダで普通に使っていたからで…。」
「ええ、私はたまたま日本語とカナダ英語を使う環境にいたから二か国語を話せるだけなのよ、それが特別なことだとは思わずに。」
「でも、日本ではとても特別なことだわ。
 英語の学習をしていても普段使わない私達では本当の意味では身に付かないから。」
「だよな、英語で話す時は英語で考えるのが一番と教えられても、聴いた英語を頭の中で日本語に直してから英語で答えることを考えてしまう、Lilyの頭の中はどうなっているんだ?」
「一応切り替えられてはいるのだけど、たまに混乱することは有るのよ。
 英単語としての意味と日本語として扱われている言葉の意味に違いが有ったりしてね。
 和製英語何てのも有るし。」
「Lilyは日本に来て色々戸惑ったのだろうけど、もう慣れたの?」
「ええ、ここに来るまでは色々嫌な思いもしたけど、ここでは姫だけでなく皆に助けられて…。
 そんなに特別な能力を持ってる訳では無いのに、ピーマンの会の一員として貰えて。」
「いやいや、二か国語を普通に話せるだけで凄いと思うし、漢字の検定にも挑戦してるのだろ。
 僕は普通に尊敬してるよ。」
「尊敬?
 好きだよって言って良いのよ。」
「えっ、ちょっと…。」
「赤くなって可愛いぞ。」
「う~ん、その辺りの無神経さが絵に描いた梨の欠点だよな。」
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三学期-319 [花鈴-32]

「それを冷静に指摘する所が薫の長所よね。」
「長所なのかな、あまり考えた事、無かったけど。」
「今のは大賢者の気持に配慮しつつ、絵梨に考えて欲しいと思っての発言でしょ?」
「まあ、そうなるのかな。」
「四月からは私達が小学校の最高学年になるのだから、そう言う視点は必要、薫の存在は大きいと思っているのよ。」
「あまり期待されても…。」
「今まで通りで良いの、今年度転校して来た子達は皆ここに馴染んでくれてるからね。
「あっ、そうだよな、あまり意識して無かったけど、自分が転校して来るまでに何人も転校して来ていたと聞いてた。
 皆、普通に仲良しだから、その辺りもピーマンの会メンバーが影響を与えていたのかな?」
「うん、でも、転校すべき環境にいた子が何人かいたのだよね、姫?」
「ええ、この学校ではいじめをしたら恰好悪いと皆から指摘される、それだけでも違う。
 薫、この兎沢小学校はなかなかの物でしょ?」
「だな、ここへの転校に躊躇した自分がバカだったよ。
 四月から転校して来る子もいると聞いたけど。」
「移住事業は継続的に続いて行くから、問題の有る子が転校して来る可能性も有るけど、よろしくね。」
「ああ。」
「六年生となって下級生の面倒をみる、今までは六年生の立場に配慮する必要が有ったけど、それが無くなるのだから頑張りますよ、姫。」
「ひろっち、お願いね、でも無理はダメよ。」
「無理なんてしません、余裕が無いと良い仕事は出来ないと父から教えられていますから。」
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三学期-320 [花鈴-32]

「余裕…、心の余裕か…。
 ひろっちは小さい子達の我儘とかも広い心で受け止めてるけど、僕には無理だよ。」
「無理無理、大賢者はお子ちゃまですもの。」
「そう言う絵梨はどうなんだ?」
「妹や弟の面倒を見て来たから大賢者よりは大人に近いと思うわ。」
「そっか、一人っ子は兄弟の感覚が分からなくて…。」
「下級生を弟や妹だと思って可愛がって上げれば良いのよ。
 悪い事をした時には諫める必要が有るけど。」
「絵梨の言う通りだと思うわ、私達は集団の中で色々な事を学んでいるの。
 人間関係は、その中で最も大切なことでね、特に大賢者の様に特別な才能を持った人は注意深く有るべき、感覚のずれから誤解されることが出て来かねないのだから。」
「感覚の違いか…、確かに、どうしてこんなに簡単なことが分からないんだ、って思う事が有る。
 そこから人間関係を悪く…、していたのだろうな、前の学校では。」
「ここでは問題無く?」
「ああ、薫、ここでは姫が間に入ってくれ、クワガタ捕りを教えてくれる子とかもいるからね。」
「ピーマンの会メンバーだけでなく、他の子とも付き合いが有るんだ。」
「多くは無いけど、話題の合う子は居るよ、薫はこれからか?」
「どうなるのかな…。」
「薫は無理して小学生と付き合う必要はないと思うわ、中学生の友達を作るのは有りだと思うけど。」
「姫、そんな切っ掛けなんて有りませんよ。」
「中学校にも移住して来た転校生が居てね、薫は年上に可愛がられるタイプだと思うの。」
「可愛がられる…、ですか…。」
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