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近衛予備隊-131 [高校生バトル-56]

「元々遠江王国には国営の株式会社を設立する話が有ったそうで、今の企業グループの元となったのは国営…、ではなくえっと…、遠江王国建国前、市営の株式会社にする社会福祉を軸とした企業が計画されていたそうで。
 それは大人の事情で叶わなかったのですが、大統領が大きな力を持つ我が国でなら市営の株式会社どころか、国営の株式会社だって無理なく立ち上げられるだろうと。」
「それにしても、どうして大統領にそこまで大きな力が有るのかしら?」
「周りにいるのは不正行為を見逃して貰った人ばかりだと噂されています。
 大統領はその弱みを握りつつ、自身は家族も含めて不正行為に全く手を染めてないのだとか、本当の所は分かりませんが、新聞記者などが調べても何も出て来なかったそうです。」
「それが権力を使って握り潰した結果でないとしたら、不正まみれだった国では立派なことになるのね。」
「大統領の地位に有る間は地位と名誉、お金は引退後だそうで、その辺りの割り切り方がプリンセス詩織を動かした要因だと聞いています。」
「独裁者による改革に対して遠江大学が関わるとなると、国を挙げての社会改革実験になりかねないと思うのだけど、国民は失敗したらとか考えないのかしら?」
「まだ正式には何も発表されていませんので、動き始めたら国民がどんな反応をするのか分かりませんが、戒厳令前の状態に戻りさえしなければ構わないと思います。」
「う~ん、失敗したら悪いのは遠江大学、成功したら大統領の功績ってパターンになりそうだけど。」
「そうなったからと言って遠江大学に対して何かを要求出来る訳では無いのだろ?」
「ですね、最終的には大統領の判断です。」
「まあ、第三者の私としては面白そうだから今後の情報を待ちたいところだわ。」
「涼子としてはどんな改革が思い浮かびますか?」
「そうね、入札に於ける談合を条件付きで認め、会社の能力に問題が無ければ適正価格で仕事を請け負って貰う方法を確立するとか、やはり条件付きになるけど独占禁止法に違反してる様な案件でも許されるとか、どちらも問題を感じていてね。」

 談合や独占禁止法と言った俺達の知らない言葉が出て来たので、しばらく涼子と武史に教えて貰うことに、我が国でプリンセスの会社が独占しかねないものは普通に有る。
 ただ、日本の独占禁止法に相当するものが我が国の法律に有るかどうかは分からないが、大統領の一言で済んでしまいそうだ。
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近衛予備隊-132 [高校生バトル-56]

 東京へ来てからの生活は毎日が発見の連続で楽しい。
 テレビ局での撮影や町でのロケ、買い物、食事と新鮮なことばかりだ。
 食事一つとっても、涼子達案内役のスタッフは毎回メニューも価格も全く違う店に案内してくれるのだが、どの店で出される料理も美味しい。
 ただ、必ずしも高い料理が、より美味しいとは限らないことを学んだ。

「このパスタ、美味しいね。」
「うん、ケイトのパスタを思い出すな~。」
「ケイト?」
「ええ、予備隊の子でね調理実習でパスタを選択したのだけど苦労して…、涼子はパスタ作ったこと有る?」
「簡単なのだったらね。」
「ケイトは随分凝ったのに挑戦し、失敗を重ね随分泣きもしたのだけど、苦労して完成させたのをジョンに食べて貰って美味しいとの評価を得、また泣いてね。」
「ふふ、可愛かったなぁ~。」
「あれは色々な意味で美味しかったよ、料理は単に味覚だけでは無いな。」
「へ~、近衛予備隊の調理実習はハードなんだ。」
「あっ、プリンセスにも大変そうだと言われ日本の調理実習を教えて貰いましたが、私達が考えた調理実習は涼子達が思い描くそれとは違うのです。
 スタートは慣れないパソコンを使い、慣れない英語のサイトからメニューを探し決めることから始めます。」
「十三歳ぐらいの子にとっては、いきなり大変な試練が課せられるのね。」
「メニューを選んだら教官にチェックして貰います、食材が手に入らなかったり道具が無かったりすると作れませんので。」
「無謀なメニューを選ぶ子もいるの?」
「原則マーケットで買える食材を使うのですがあまり考えない子も…、マーケットにキャビアやフォアグラは置いてませんし、置いて有ったとしても予算は限られているのです。
 メニューが決まったら自分で見つけた英語のレシピを参考に、調理手順を整理し分かり易い調理マニュアルを英語で作成します。
 自分が調理するだけでなく、普通に料理の出来る人がそのマニュアルを見れば簡単に調理出来るのが目標です。
 それと並行して、マーケットで食材のチェックをし、販売価格の設定をしますが、実際に店を開くことを想定して計算しますので簡単なことでは有りません。
 この過程を通して仕事の難しさを経験して貰っています。」
「う~ん…、単なる調理実習ではなく、店舗経営の基礎にまで踏み込んでいるのね。」
「はい、この作業は、割合など算数の復習としても役立っていますが。」
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近衛予備隊-133 [高校生バトル-56]

「難しくは有るけど、より実践的で役に立つ学習をしているのね、子ども達は理解し切れているのかしら?」
「勿論個人差は有りますが、個々の総合力が分かりますので、その後の学習方針を決めて行くのにも役立てています。
 調理実習では、一人一人が料理長として指示を出す機会を作っていますが、仲間に助けて貰わないと全くダメな子もいます。
 でも、何度か経験する内に全体が見えて来て、仲間の力量を見極め、その成長を考えて指示を出せる様になる子もいるのですよ。」
「十三歳という年齢は、そう言った学習に取り組むのに早過ぎるとは感じて無いのね。」
「ええ、難しい課題に取り組むことによって成長する子の方が確実に多いと思います。
 実際に料理を作ることで充実感を味わえます、そこから将来の仕事として料理人を考える子や、チームリーダーを目指し始める子もいます。」
「そっか…、ケイトも成長した一人なのね。」
「彼女は自分で選んだメニューだからと、間違えても失敗しても諦めませんでした。
 試作の段階でなかなか思うように行かなくて泣きながら失敗作を食べていただけでなく、凝った分価格が高くなってしまい、販売促進策の策定でも苦労しましたが、調理実習終了後の店舗運営実習では店長として切り盛りし、しっかり売り上げを出してくれました。
 もう何時でも実店舗の店長が務まるレベルなのですよ。」
「今は?」
「現場実習をしながら学習に励んでいます。」
「本格的な職業訓練か、それぐらいの年頃から仕事について学び、将来を考える機会が有るのは良いことだと思うわ。
 日本では漠然と学習に取り組むばかりで、その学習は将来活かすことの出来るものだと、考えもしないで学習をしている子が多くてね。」
「日本と違って職に就くまでの猶予期間が短いですから、将来を考えてる子は早く仕事を覚えたい身に着けたいと言う思いが強いのです。
 何の技術も身に付けない状態で町に出た人が、まともな職に着けなかったと言う話は彼らも聞いていますので。」
「う~ん、日本で取り敢えず大学入試を頑張っておこうと考える様な年頃には既に働いてるのね…。」
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近衛予備隊-134 [高校生バトル-56]

 東京での滞在期間はあっと言う間に過ぎ、明日は遠江王国へ移動の予定。
 東京を案内してくれた涼子達、スタッフとの夕食会では…。

「ジョン、東京はどうだった?」
「驚きの連続でした。」
「どう、住みたくなった?」
「それは…、観光で訪れるくらいが調度良いかと、ビルばかりが目立つ街には馴染めそうに有りません。
 便利さも、行き過ぎた競争社会によって生み出されたと聞かされて考えさせられました、そこから様々な社会問題が発生してるのですよね。」
「ええ、この社会を上手に活用出来る人にとっては、とても良い所なのだけど、それが出来ない人にとっては…、程度は様々だけど精神的に病んでる人が少なからず居ると言うのが現状ではね。
 ジョンの国ではストレスとか、どう?」
「比較しにくいですから何とも言えませんが、人それぞれ不満に感じてることは有るでしょう、うちの村は急速に変わりましたので戸惑っている人もいます。
 それでも、インフラ整備が進んで色々楽になり衛生面が向上して…、環境が改善されつつ有る今は一番良い時期なのかも知れません。」
「先のことは分からないものね、人の欲にはきりがないし、でも村長としてのビジョンは有るのでしょ?」
「はい、村には集中的に投資をして貰いましたので、村人の生活水準は確実に上がっています。
 その改善されたエリアを村外にも広げて行きたいです。
 教育水準を上げ、労働環境の改善も、村だけでなく国家的な問題ですが。」
「それにはジョンが大統領にならないとね。」
「はは、大統領は大変です、治安がマシになったとは言え暗殺されかけましたから。」
「テロリスト?」
「大なり小なり反政府組織はどこの国にも有るそうです。」
「う~ん、日本にも有ると言えば有るのかしら…、暗殺を考えそうな人達ではないと思うけど。」
「その辺りも社会環境や教育が関係しているのでは有りませんか。」
「そうね、暴力に訴えてまで変えなくてはならない程、ひどくは無いと考えられているか…。」
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近衛予備隊-135 [高校生バトル-56]

「明日にはお別れなのだから、お堅い話ばかりでなくテレビ番組のことも聞きたいわ。」
「そうそう、ジョン、レギュラー番組の話はどうなったの?」
「何でも、今の日本は同じ様な番組ばかりになりつつ有るそうで、目新しさを求めて色々な案が出てると聞きました、深夜の番組ならチャレンジ出来るのだとか。
 企画と編集を日本で行い、撮影をうちのスタッフが請け負う形にすれば然程経費は掛からないそうです。」
「ジョンをメインにした企画が通りそうなのね。」
「うちの会社がスポンサーに付くと決定すれば確定です。
 会社として力を入れている我が国とその周辺に位置する数か国からの輸入拡大や観光キャンペーンPRをメインにしたいからと、関係各国でのロケに協力出来るかどうかの確認が入りました。」
「詩織さまの予定は大きく変更されたけど、あのエリアに注力して行く方針に変わりは無いものね。
 村長業務などとの兼業に問題はないの?」
「こうして旅行をしていても、村に大きなトラブルは有りませんし、小さなトラブルは近衛予備隊が解決してくれています。」
「信頼出来る部下?」
「みんな自分達の村を守り発展させることを考えていてくれます。」
「刑務所から出所した人達も積極的に受け入れているのでしょ、そんな人がトラブルを起こすことはないの?」
「乱暴な人は対象外なのです、村役場でも働いて貰ってますが真面目に働いてくれますので、部署のリーダーをお任せしています。」
「そんな話もテレビ番組で扱って行くのかしら?」
「決定したら可能性は高いです、テーマを絞らず真面目な話から楽しい話題まで幅広く扱って行きたいと言われました。」
「日本との違いもクローズアップされるのかしら?」
「何処が違うのか自分達に分かることは少ないと思いますので、村で働く日本人スタッフ次第です、表面的な違いは短期滞在でも気付けますが、長期滞在でないと気付かないことも有ると世話になってるマネージャーが以前話していました。」
「ジョンはそれなりに日本人との付き合いが長いのでしょ、何か気付いたこと有る?」
「そうですね…、日本人はせっかちな人が多いでしょうか。」
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近衛予備隊-136 [高校生バトル-56]

「せっかちか、確かにルーシーはのんびりしてるものね。」
「え~、これでも仕事の出来る女で通っているのですよ。」
「それでも日本では普通なのかも、だからと言ってルーシーの価値が低い訳ではないからな。」
「そうよね、英語に日本語に、特に日本語は村の仕事をこなしながら学習したのでしょ。」
「日本語は難し過ぎて苦労しています、漢字は一体幾つ有るのですか?」
「日本人でも普通に使える漢字は限られるのだけど。」
「ところで、日本人は昔からせっかちだったの?」
「う~ん、ここ数十年のことかしら、効率が重視される様になったのは。」
「流石に江戸時代は今ほど時間に追われてなかったでしょうね。」
「今は時間に追われているのですか?」
「そう言う環境に置かれている人は少なからずいるわよ、時間厳守で。
 近衛隊の人とかは時間にうるさくないの?」
「一応会議の開始時間とかは決められていますが、早く来た人は適当に情報交換を始めていますので、遅れて来る人がいてもあまり気にしません。
 流石にプリンセス詩織が同席される場には皆さん時間までに来てますが。」
「詩織さまをお待たせするなんて考えられないものね、私は子どもの頃から遅刻しては行けないと言われて育って来たから当たり前のことなのだけど。」
「その差なのかな、私達の学校では先生自身が時間にルーズだったの、近衛予備隊の教官が遅れて来ることは無かったけど。」
「時間を守ることが教育の成果だとしても、その結果が時間に追われる生活ではね…。」
「ジョンは時間に追われること、ないの?」
「そう言った業務は無いです。」
「店で働いていた時に、お客様を待たせるとかは?」
「自分が処理する様な苦情は、ほとんどが客の我儘によるものでしたから待ってて貰えば良かったです。」
「対応が遅いと怒りだす人はいませんでしたか?」
「怒って帰ってくれたら余計な手間が掛からなくて済んだのですが…。」
「ジョンに相手して貰えるのが嬉しい人ばかりだったかな~。」
「そっか、ジョンは特殊で参考例にはならないのね。」
「ええ、子どもの頃からジョンが大人に怒られている所なんて見たことないです。」
「怒られる様なことはしてないからな。」
「そうかしら、他の男の子と同じことをしていてもジョンだけ怒られない、なんて普通に有ったと記憶してるのだけど。」
「やはりルックスが関係してたとか?」
「それと要領の良さです。」
「ルーシー、ジョンが小さい頃から優しかったからでしょ。」
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近衛予備隊-137 [高校生バトル-56]

 それから話題は子どもの頃の話になり…。

「子どもの遊びにもお国柄が出るのね。」
「お国柄もですが経済的な格差も関係してます、綺麗な着せ替え人形なんて店での実習を経験するまで見たこともなかったですよ。」
「シャルロットは人形で遊んだりしなかったの?」
「してましたが、古着などを再利用して作られた簡単な物で…。」
「でも今にして思えば、ちっちゃい子の為に取れた手足を直して上げたのは良い経験になったと思うわ。」
「ルーシーは、取れた首を前後逆に付けてたよね。」
「シャルロット、あれは人形自体が雑な造りで前後が分からなかったのよ。」
「そうだっけ、ちっちゃい子に指摘されてたけど。」
「直してたと言うのは何歳頃の話?」
「十歳頃からですね、失敗を通して上達したと思ってます。」
「子どもの頃ってそう言った経験を通して成長するものなのよね、私はお菓子作りで良く失敗して、今では楽しかった思い出になってるけど。」
「涼子は今でも失敗してるでしょ、バレンタインとか肝心な時に。」
「はは、あの時はちょっと間違えて焦って…、その焦りが更なるミスを招き寄せてしまったのよ。」
「彼氏作りは焦ってないの?
 私は子どもの頃からの経験を役立てているから、彼に料理を褒めて貰えるのだけど。」
「余計なお世話です~。」
「子どもの頃の経験ってさ、今になって役立ってると思うことと、何の為にやってたのか分からないことが有ると思わない?」
「そうね…。」
「私が役に立ったと思うのは学校ごっこかな。」
「学校ごっこ?」
「学校に行き始める前に遊びで学校に行く真似事をしていたのですが、私達の集落には実際に教えてくれる人がいましてね、おかげで学校に行き始めたら他の子と差が出来てて、その優越感から学習に取り組む気持ちが前向きになりました、ジョンもでしょ?」
「ああ、でも、予習をしていたことで授業が面白くなかったと言う奴もいたな。」
「結局人それぞれと言うことなのね、教えてくれたと言うのはどんな人なの?」
「町で働いてる時に大怪我をして村に帰って来た人で、畑仕事が出来ないから子ども達の面倒をみたりしてくれてたのです。」
「結構いい加減な人だけど、彼からは多くのことを学んだかな。」
「いい加減?」
「自分でも分からないことを聞かれた時は神様が登場して、適当な作り話で解決とか。
 でもちっちゃい頃は正確な情報が必要な訳ではなく、質問に答えてくれる大人が必要だと思う今日この頃です。」
「そうね、そんな幼児の…、なぜなぜ期とも言われてる時期をどう過ごすかが、その後の思考力に影響を与えると聞いたことが有るわ。
 親は忙しかったり、答えるのが面倒になったりするから、その人の様な存在がいたことはあなた達の成長にプラスだったのでしょうね。」
「はい、予備隊に入るまで自分の知的欲求を満たしてくれてたのは彼と本でした。」
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近衛予備隊-138 [高校生バトル-56]

「でも、いい加減だったのでしょ?」
「そこが良かったと思うのですよ。
 成長して、自分には適当な作り話が通用しなくなった頃から、彼は自身で答えを出さなくなり、質問の答えを知っていそうな人を教えてくれる様になりました。
 残念ながら、その助言は外れることが多かったので、少しずつ自分で誰に聞けば良いのかを考え始めまして、そしたら彼が何を根拠に人を選んでいたのかなど、色々気付ける様になったのです。
 結局、まともに答えてくれる人は少なく、調べる方法も限られていましたので予備隊入隊まではもやもやした日々を送ってはいたのですが、考えることに目覚める切っ掛けは彼が作ってくれたと思っています。」
「そっか、彼の存在はジョンにとって大きく、詩織近衛予備隊の存在は更に大きかったのね。」
「ええ、サルから人間に進化した様なものでしたから。」
「ふふ、パソコンと言う道具を使う様になり私達は劇的な進化を遂げたのよね、慣れない英語に苦労したけど。」
「学習環境か…、私達は調べようと思えば色々な方法が子どもの頃から整っていて、それが当たり前だったけど、充分使いこなせてたとは言い切れないかな…。」
「情報量は多くても必要のない情報も有るのよね、しかも正確な情報ばかりではなくて、ジョンはその辺りの判断、どうしてるの?」
「ネットを使い始めた頃に情報を鵜呑みにするなと教えられ、自分にとって重要な情報は必ず疑って掛かる様にしています。
 店での実習を始めてからは、意識的に自分が知り得た情報に対する意見を周りの人に尋ね、人とのコミュニケーションを取る切っ掛けとして役立てつつ、自分の視野を広げることに繋げています。」
「その結果が村長へと繋がって行ったとか?」
「ええ、無関係ではないです。
 少し聞いただけでは全く違うと思える二人の考えが、突き詰めた質問をして行くと似た様な考えで表現が違うだけのことが有りますし、勿論その逆も。
 通訳をする時は、特に人の話を慎重に聞き真意を掴み切れるまで質問して確認する様にしています。」
「あやふやな言い方をして真意を表に出さない人がいるものね、嫌よ嫌よも好きの内、なんて言うからな~。」
「なんですか、それ?」
「言ってることと思ってることが違う場合も有るのだとか。」
「う~ん、身近にそんな人がいたら迷惑だな。」
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近衛予備隊-139 [高校生バトル-56]

「ジョンが人の話を真面目に聞く姿勢には大人達を信頼させるだけのものが有るから、プリンセス詩織は村長にと考えられたと思うのです。」
「身近で見ていたシャルロットはそう感じたのね。
 そのシャルロットやルーシーと大人達の関係はどうなの?」
「村で女性差別の心を持っていないのはジョンや近衛隊の幹部ぐらい、私達は彼らにとって問題外の存在なのです。」
「そっか…、男性達の差別意識に気付いたのは何時頃?」
「店での実習を始めてからです、それまでは全く気にしてなかったのですが、店には指導的立場の女性がいましたし、役立たずの男性社員もいましたので。」
「成程…。」
「女性差別は我が国だけの問題では無いですよね?」
「ええ、多くの国で、程度の差こそ有れ存在するみたい、男性としてジョンはどう考えてるの?」
「そうですね、オリンピックの記録を見ても男女で運動能力に差が有る訳で、何かと身体能力の優秀さが重要だった時代、女性が子を産み育てると言う大きな役目を担っていることも有り、集団を守る為の社会が男性中心になったのが、そのまま続いて来たのかと。
 でも、現代は体力的な能力より頭脳を使った能力が問われることが多くなっていますので、性差を意識しつつも平等で有るべきだと思っています。」
「村長として何か考えてるの?」
「大人世代に考えを改めて貰うことは難しいですが、若い世代なら理解してくれると思っています。
 予備隊でも英語学習能力は明らかに女子の方が上回っていますので、男子はその能力を認めざるを得ないと思いますし、店で働き稼げる様になったことで収入が男女同じと明確に示され、能力によっては女性の方が地位も収入も上になることが増えて来ています。
 勿論、村立学校では男女平等と教育していますので、少しずつ変えて行けるでしょう。」
「そうね、確かに男の人達の意識を変えるのは難しそう、表面上は理解してる様に振舞っていても、ふとしたはずみで本心が出るのよね。」
「はずみでですか?」
「怒らせてみれば分かるわよ。」

 その後少々過激な発言が出たのは、彼女達自身が面白くない経験をしたからだろう。
 こう言った場面で俺は聞き役に徹することにしている。
 それは、そうした方が楽なだけでなく、彼女達のストレス発散に繋がるからだ。
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近衛予備隊-140 [高校生バトル-56]

 東京を離れ遠江王国へ向かう列車は綺麗でとても早く、車窓からの眺めも良かった。

「我が国の鉄道とは雲泥の差ね。」
「台風や雪の時以外、ほとんど予定時間通りに運行されてるそうだからな。」
「働いてる人達の努力の結晶なのだろうけど、そんな仕事にストレスを抱えている人もいるのかと思うと複雑だわ、高速鉄道では無かったそうだけど、精神的に追い詰められた運転手が大事故を起こしたことも有ると聞き、改めて便利さについて考えさせられたわね。」
「事前に調べていた時は何て凄い国だろうって思っていたけど、東京で色々教えて貰う内に光ばかりでなく影や闇の部分も有るのだと分かったよ。」
「私達の国が見習うべきことは沢山有るけどね。」
「見習うと言っても根本的に国民性が違うからな…、こんな列車を走らせようとしたら何が起きることか。」
「完成しても動かなかったり…、そんな国民性でもそれなりに楽しく暮らしているのなら良いのかも。」
「でも、医療レベルは上げたいし、衛生面の問題も改善したいよね。」

 などと話している内に列車は遠江王国駅に到着、因みに駅名は王国建国後、旧駅名から変更されるまで随分時間が掛かったとか、王国の存在を快く思っていない人達が随分頑張ったそうだ。
 出迎えの人垣に手を振り、ここからの担当スタッフ、結衣の案内でリニアモーターカーに乗り換える。
 都市間を結ぶ高速鉄道とは違い速度は普通の自動車並みだが…。

「このリニアモーターカーは走行中の静かさを売りにしたシステムを採用しています。」
「結衣、本当に静かですね、でもここまで静かにする必要が有ったのですか?」
「ちゃんと理由が有るのですよ、もう直ぐ駅が見えて来ますので…。」
「あっ、ビルの中へ?」
「ええ、この実験都市の要で有るこの路線は、遠江王国内で人が多く利用する施設を繋いでいまして、それぞれの施設と駅が一体となっているのですが、現時点で路線の三割ほどの部分が建物内の二階を走っています。
 これは走行時に騒音を発生させないことで可能になりました。」
「この駅は学校ですか?」
「はい、国立高校です、生徒はホームから直接校舎へ入れますので、雨の日でも濡れることは有りません。
 また、駅の隣や三階四階には高校生向けの商店が店を構えていますので、生徒にとっても店主にとっても便利なのです。
 この路線はほとんどの駅が同様の造りになっていまして、部分的には駅と駅とが建物で繋がっている所も有ります。
 その建物内の廊下から、会社のオフィスや店に入れる、つまりこのリニアモーターカー路線が巨大なビルと同じ役割を果たしているのです。」
「へ~、エレベーターで移動する代わりにリニアモーターカーの車両で移動ですか?」
「ええ、そんな感じですが人だけで無く荷物も運んでいます。
 物流拠点で仕分けられた荷物はコンテナ専用車両に積みこまれ、駅ごとで引き込み線へ入り、その内の多くはそのまま自動で目的の店やオフィスに届けられます。」
「汗をかく人は少ないのですね。」
「はい、人は故障が起きないように点検作業で汗をかいています。」
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