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藤本由香-01 [F組三国志-06]

「世界で一番素敵なクラス?」
「ええ、そうよ。」
「それって…。」
「まあ、言った者勝ちなのだけど、私達のクラスには凄い人がいてね。
 高校一年生だけど大学生を中心としたチームのリーダーなの。」
「えっ、どういう事?」
「ここにボランティアで来てる大学生の中にもチームメンバーが居るのよ。
 そうね、秋頃には活動内容をまとめての発表が有ると思う。
 チーム赤澤という言葉を目にしたら注目してね。」
「はい。」
「どんなチームかと言うと…。

 児童養護施設の中学生にも私達のことを知って欲しいと思いチーム赤澤について簡単に説明させて貰った。

 夏休み、私とあやかはチーム赤澤を通して募集の有った児童養護施設のボランティアをすることに。
 大学生が中心の活動なのだけど、中学生の学習を手伝ったり話し相手になったりするのは、高一の方が年齢が近いという事で、中学生の悩み、心配事を自然な形で話して貰えるかも知れないと言われての参加、その一回目を無事終えて…。

「由香、省吾さまと出会ってなかったらボランティア活動に参加なんて、なかったと思わない?」
「そうよね、チーム赤澤では、視野を広げる、と言う事を重視していて、登録してなかったら社会問題なんて考えもしなかったでしょうね。
 チーム赤澤の人からは考える能力が有るのに社会問題を知ろうとせず考えもしてないと言われて…。
 それまで、自分達の社会という実感が全然なかったから色々考えたわ。」
「うん、社会的弱者と言われも良く分からなかったものね。」
「あやかは初めての学習会で緊張しなかった?」
「緊張したわ、でも事前研修で彼らの事を教えられて、話す時に配慮は必要だけど弟や妹に接すると思って仲良くなりたいと、初めてにしては上出来だったでしょ。」
「次回以降、気を緩めて彼等を傷つけない様に気を付けないとね。」
「うん、聞き役に徹するつもり、でも、森くんが来てたのは、少し驚いたな。」
「彼は随分変わったね、今日は自分でも語ってたし、もう大丈夫だと思う、家庭に少し問題が有るそうだから、ある意味社会的弱者だったのかも。」
「そうね。」
「岡崎をいじめてた頃でも女子には何もしなかったじゃない、まあ、頭は悪く無いみたいだから。」
「また来るのかな?」
「どうかしら、ただ…、今日の学習時間は彼がいたから少し緊張感が有った様な気がしたのだけど。」
「あっ、それは有るかも、身長が高いのと表情の硬さが良い感じにプレッシャーを与えていたわね。
 大学生は優しくしようとして、逆になめられてた、高一の私たちの方が逆らいにくいみたいでスムーズだったよね。」
「森くんは、女の子達にとって身近にはいないタイプみたいで、数学を教えて貰って喜んでた、彼が人に教えてるとこ初めて見たけどポイントをしっかり押さえていて、少し見直したわ。
 彼女たちが憧れても不思議ではないと思う。」
「それだけの能力が有ったのに変な方向に行きかけていたのよね、F組でなかったらどうなっていたのかしら。」

 ボランティアとしての参加だったけど、良い経験が出来たと思う、多分、森くんにとっても。
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藤本由香-02 [F組三国志-06]

 夏休みの予定はチーム赤澤に参加した事で大きく変わった。
 高校入学当初は思ってもいなかったことだが、母は…。

「由香、施設でのボランティアはどうだったの?」
「そうね、今日は無難にこなしたという感じ、中学生達とはまだ距離が有るからね。
 まあ、私みたいに恵まれた環境で育って来た子達ではないから、教えられた通り、聞き役を心掛けながら学習の手伝いが出来ればという感じなのだけど。」
「でも、ボランティア活動に参加なんてビックリした、高校受験を終えてもっと羽を伸ばすのかと思っていたら学習にも熱心だったし。」
「私もよ、でも人に強要されての事では無くクラスの仲間と一緒だからね。
 学習は脳みそを使うスポーツ感覚でさ。」
「由香にそう思わせてしまう省吾さまと早くお会いしたいわ。」
「ふふ、チーム赤澤の保護者説明会には行くのでしょ。」
「そうだけど、天才高校生に興味深々なのよ。
 案内によると、社長さんや大学教授とかも参加されているのでしょ。」
「ええ、大学生のサブリーダーが言うには、社会に対して閉塞感を感じてた人達が、省吾さまと出会って共に歩みたいと感じたのだとか。」
「う~ん、由香はどうなの、彼氏にしたいとか?」
「はは、美咲さまがいるからね、女子大生の中には省吾さまの遺伝子を頂ければ多くを望まないという人もいるけど。」
「それは…。」
「結婚に失敗して離婚するぐらいなら、始めからシングルマザーの道を選ぶのも有りだとか。
 哺乳類の中でオスが育児に関わる種は多くないそうで、人間は多様な価値観を持ち、社会の構造も変化しつつ有るのだから、経済的に自立出来れば、なんて言ってたけど。」
「由香はどう思ってるの?」
「普通に結婚したいわよ、でも、離婚率の高さとか…、経済的基盤が無いのに若くして結婚、子どもが出来て離婚、シングルマザーとなって貧困生活という道は歩みたくないわ。」
「そっか、そんなことを考える年頃になったのね。」
「チーム赤澤に参加して、社会問題に目を向ける事を意識し始めたかな、社会問題は決して他人事では無いでしょ。」
「頼もしいわね。」
「お母さんはお父さんとどうなの、離婚とか考えてない?」
「そうね、今まで全く無かったと言えば嘘になるけど、お父さんはチーム赤澤への参加を考える様な人でしょ。
 由香が素敵な高校生になってくれ我が家の話題が豊富になり、あなたのお父さんはとても素敵な人だと思い直しているのよ。」
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藤本由香-03 [F組三国志-06]

 F組の生徒は塾や予備校の夏期講習を受講していない人が多い。
 まだ高校一年生だという事も有るが、F組三国志が始まってから受け身の学習に疑問を持つ人が増え、その必要性の低さに皆が気付いてのこと。
 その代わり、プロジェクトF主催の学習会に参加。
 クラスの仲間と会えるし、学習会の後は皆で遊びに行ったりして楽しんでいる。
 学習会と言っても、その内容は学習に関してだけではなく…。

「ねえ、あやかは大学入試までの流れ、作れそう?」
「うん、計画的に効率良く、入試をゴールとした大まかなスケジュールは組めそうよ。
 でも今は、自分の力を将来どんな分野で活かして行くかを考えたいと思って…、由香はどう?」
「考え始めるときりが無いのよね、焦る必要はないと言われたけど、ほら人のポジションの話とか聞かされてさ。」
「うん、あの話は考えさせられたね、自分は将来どんな立場の人を目指すのか、組織の問題とかも…。
 由香なら、リーダー的立場でもやって行けると思うけど、私はそういうタイプじゃないし。」
「私だってリーダーは無理だと思うわ。」
「そうかな、今日の学習会でも頼もしかった。
 トップリーダーでなくても、グループリーダーだって必要でしょ。」
「うん、リーダーをサポートするという考え方も有るのよね、サポート役になるのなら尊敬出来る人のサポートをしたいかな。」
「省吾さまとか?」
「それはそうだけど、省吾さまを中心とした組織のどこに自分を置くのかは、まだイメージが難しいでしょ、どれだけの組織になるのかが未知数で。」
「そうね、今は組織の末端で教えて貰いながら考えていると言うレベル…。」
「ずっと、このポジションに甘んじてはいられない、自分に何が出来るのか、その為には何が必要なのか、でも、それを考えて行くには情報不足なのよ。」
「保護者向けの説明会でどんな話が出て来るのか分からないものね。」
「問題は自分でも理解出来る範囲なのかどうか、大人の参加が多そうでしょ、難しい話ばかりになったら…、夏休みの課題が増えかねないわ。」
「由香は、全部理解したいの?」
「うん、あやかは?」
「私は、マイペースで少しずつ、由香ほど欲張りじゃなくてね。」
「う~ん、それが正解なのかな…、でも私達を大人扱いしてくれる大学生と論理的な討論をしたくてさ。」
「そっか…、うふ、もしかして憧れてる誰かさんが大学生の中にいるのかしら?」
「まさか、あやかと一緒にしないでよ。」
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藤本由香-04 [F組三国志-06]

 チーム赤澤の説明会はメンバーの父兄が主な対象だが、高校生や大学生にとっては自分の関わってない活動の進展を知る機会でも有り楽しみにしていた。
 両親や兄弟と共に参加するという話を多く聞いてるからそれも興味深い。
 我が家も高三の兄を含め家族揃っての参加。

「由香、ご挨拶しておくべき人は早めに紹介しろよ。」
「お父さん、そう言われてもね、省吾さまとかは…、あっ、もう来てる。
 う~ん、今がチャンスかも、お兄ちゃんも来て。」

 省吾さま達はご家族の皆さんと共に説明会参加者と談笑中、そこに加わり家族を紹介させて貰った。
 長くは話せなかったものの、父は省吾さまが自分の仕事に興味を持ってくれたと嬉しそう。
 母や兄とも、趣味の話とか…。

「由香、省吾さまに俺の事を話したのか?」
「話したのではなく、家族紹介の文をチーム赤澤に出しただけよ、お兄ちゃん、省吾さまと話してどうだった?」
「プログラミングについて最新の話題を振られて…、彼の専門はプログラミングなのか?」
「専門ね…、色んな事に興味が有ると話してたけど、ご本人が言うには広く浅くだそうで、でも全然浅くないみたいよ。」
「そうか、大学入試に向けて今年合格した先輩からの助言を得られる様にしてくれるそうで、お願いしてしまったよ。」
「お兄ちゃんの事は同じ高校の先輩だとか、私なりに気合を入れて紹介文を書いたのが正解だったのかしら。」
「はは、有難うな、話題の天才と会話出来たし、今日来て良かったよ。」
「説明会はこれからだからね、でも、自慢のお兄ちゃんを省吾さまに紹介出来て私も嬉しいわ。
 あっ、あやか。」
「由香さんと同じクラスの谷口あやかと申します、こっちは家族で…。」

 あやかの家族と紹介し合った後は、クラスメイトの家族とも。
 早めに会場に来たのだけど、開始までの時間は友人を家族に紹介したり、紹介されたりであっという間に過ぎた。

「お兄ちゃん、今日の進行は美咲さまなのよ。」
「美人だよな、入学早々三年生の間でも話題になってたけど、直ぐに省吾さまと付き合い始め、どれだけ多くの男子生徒をがっかりさせたことか。」
「お兄ちゃんも?」
「はは、あんな美人と付き合えるとは思ってないよ。」
「あやかとかはどう?」
「由香の友達は可愛い子が多いよな、後輩ということは頭だって悪くないだろうし。」
「付き合いたかったら紹介しようか?」
「いや、今はいい、どうしても第一志望の大学に余裕を持って合格したいからね、大学で全然彼女が出来なかったら由香に頼もうかな。」
「そうね、でも、お兄ちゃんは優しいから変な女に引っ掛からないか心配だわ。」
「変な女?」
「そのまま上手く行ったら、年齢関係なく私の義姉になる訳でしょ、気を付けてよね。」
「あ、ああ。」

 そんな話をしていたら美咲さまが舞台に。
 彼女の進行でチーム赤澤の理念や活動内容が紹介されて行く。
 スタートして間もないとは言え、参加者は増えプロジェクトも増え始めている。
 私たちが参加しているボランティア活動も、プロジェクトの一つとして組織化が進行中、という様に教育、経済、社会問題などテーマは多い。
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藤本由香-05 [F組三国志-06]

 多岐に渡る分野をイメージし活動しているチーム赤澤に於ける、私たち高校生の役割については麻里子が話す…。

 「チーム赤澤に参加し、省吾リーダーの助言を受けながら今の社会を見直した時、私たちは狭い視野、偏った視点で物事を捉え批判している人の多さに気付かされました。
 そこから私たち高校生メンバーは広い視野を持つことを一つの目標としています。
 また、チーム赤澤各プロジェクトの活動内容は私たちにとって難しい事ばかりですが、それに対して積極的に疑問をぶつけて行くことが自分たちの役割だと認識しています。
 省吾リーダーは大学生の皆さんに対し、高校生に説明出来なかったら、自身の理解が低いと考え、私たちからの疑問を掘り下げ違った角度から研究し直すべきだと話されています。
 どんなに素晴らしい考えを持っていたとしても、それを人に伝える事が出来なくては無意味になってしまいかねないという理由も有りまして。
 大学生中心のチーム赤澤に高校生が参加している意味は、単に私たちの視野を広げる為だけでは無いとお考え下さい。
 また…。」

 テンポ良く進められた説明会は休憩時間となり…。

「奥田麻里子って子もしっかりしてたな。」
「うん、麻里子はチームリーダーとしてチームを引っ張って来たからね。
 もともとリーダーとしての素質が有ったと思うのだけど、その力を発揮する場を得てその力を伸ばしている、というのが、プロジェクトFメンバーからの評価なの。
 どう、お兄ちゃんのタイプ?」
「どうかな、尻に敷かれそうじゃないか?」
「ふふ、そうかも、でも優しいのよ、彼女。」
「確かに悪い子には見えないが、それより由香、ここまでチーム赤澤の話を聞いて、自分もって気になったよ。
 漠然と大学に入ってプログラミングを極めたいとは考えていたが、自分の力を社会に生かさないとってな。」
「そうね、お兄ちゃんは取り敢えずチーム赤澤に登録しておいても良いし、大学生になってからでも、えっと、第一志望でなくてもね。
 省吾リーダーは大学のランクに拘ってなくてさ、どんな大学に入学しても自身の力を最大限にレベルアップ出来る環境を構築したいと話してたの。」
「学歴に拘るなってことか?」
「ええ、今は、まだそう言う環境が整ってないけどね。」
「う~ん、そういうネットワークシステムという事なのか…、彼がプログラミングに興味を持っているのは、色々イメージしてそうだな。
 その辺りをもう少し詳しく知りたいね。」
「じゃあ、質問内容をまとめて提出しておく?
 この後は質疑応答の時間だから内容によっては採用されるかもよ。」
「そうだな…。」

 午後は質疑応答の時間、兄の質問は採用され午前中には出されなかった省吾さまの構想が披露されることに。
 それはチーム赤澤の大きな目標の一つ、大学間の垣根を低くし地方の大学に進学しても高度な研究に触れることが出来るネットワークシステムを構築すること、省吾さまの話を聞いて自分の考えを述べる兄は恰好良かった。
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藤本慎吾-01 [F組三国志-06]

 妹の由香に誘われ、チーム赤澤の保護者向け説明会に行ってから自分の環境が変わった。
 その場で勧められチーム赤澤に登録した後、大学生の研究対象となったのだ。
 如何に効率よく大学受験で成果を上げられるか、前回受けた模試の結果が悪くなかったことから、安心して助言出来ると言われ、大学入試を研究してるチームのサポートを受ける事に。
 自分の学習スタイルを話し、それに対しての助言を貰いながら学習効率のアップを考えている。
 省吾リーダーが紹介してくれた第一志望の学部に通う先輩からは、入学後を意識した学習を勧められたが、彼とはプログラミングに関する話も出来て楽しく、自分が例え受験に失敗したとしても、情報を交換し続けスキルアップに協力すると約束してくれた。
 気を緩めさえしなければ普通に合格出来るだろうとも話してくれたが、それは実際に合格した人の言葉だけに心強い。

「お兄ちゃん、大学の先輩と話してどうだった?」
「そうだな、省吾リーダーの考えが浸透してると感じたよ。
 由香の一年F組では学習に対する取り組み方を見直してるのだろ。」
「うん、お兄ちゃんみたいに明確な目標を持っている人は多くなくて、まあ、私もだけど漠然と大学入試を捉えてた人達は色々考えてるわ、大学の在り方も含めてね。」
「俺も大学の事を違う角度から考え始めてるよ。
 第一志望に合格出来なかったとしても、そこと同等の研究環境が有れば良い訳だろ、プログラミングなんて、ネット回線さえ有れば、田舎に住んでたって出来る筈の作業なんだ。
 大学入試に対する省吾リーダーの考え方は間違ってないと思う。
 学校制度を大きく改革して行くのは難しいだろうけどな。」
「少しずつ、でも動かなかったら進まないのよね。」
「ああ、まずは情報交換をする事に問題の無い分野で、大学間の交流をもっと密に出来るシステムを構築はしたいと、工学部の先輩とも話しているよ。」
「インターネットの活用ということなの?」
「ネット環境を生かし切れてないと省吾リーダーが話してたろ。
 俺も幾つか提案してみたよ。」
「どんな?」
「高校教師でもピンキリじゃないか、俺たちの高校でさえね、だったら受けたくなる教師の授業を録画して、ネット上にデータベースとして整理し、誰でも閲覧出来る様にしたらどうだ?」
「あっ、それは有りかも、数学で私たちが省吾さまに頼ったのは、担当教師の授業が分かりにくかったからなの、彼の授業のどこに問題が有ったのかは、もう把握出来たけどね。」
「はは、先生にはそれを伝えたのか?」
「さすがに言いにくいでしょ、それは。」
「九月からもそのままで良いのか?」
「大丈夫よ、私たちは受け身の学習を卒業しているからね。
 先生の授業を受けなくても問題ないわ。」
「授業時間が無駄にならないか?」
「ちょっと動きが有ってね、校長先生とかが、チーム赤澤に登録するという話が出てるのよ、定期テストで一生徒の活躍によりF組が他クラスを大きく引き離したという結果を、進学校としては無視出来ないでしょ。
 省吾さまの計画通り、無意味な授業は減らせると思うわ。」
「一年生のクラス分けは偏らないようにした筈だからな。
 まあ、由香が学年上位になって俺も嬉しかったよ、うちのクラスの連中の中には由香に注目してる野郎が少なからずいてな。」
「へ~、お兄ちゃんに恥をかかせなくて良かったのかしら、お兄ちゃんはずっと上位でしょ。」
「地元との国立大学を目指しているからな。
 で、野郎連中の中には可愛い妹を紹介しろという奴がいたが、却下しておいた。」
「却下なのね、まあ、お兄ちゃんレベルの人が多くないことは分かってるから問題ないのだけど。」
「はは、この前、哲平と呼んで下さいと話してた彼や、嶋くんの方が魅力的だと思うよ。」
「お兄ちゃんの目にもそう映ったんだ、でも彼らにはね…。」
「由香は出遅れたのか?」
「そういう感じじゃないけど、基準がお兄ちゃんだから難しいのよ、まだ焦ってないし。
 やっぱ年上が良いかな。」
「そうか、チーム赤澤なら優秀な先輩との出会いも考えられる、俺たちの視野を広げてくれそうな人は少なくないだろう、人と出会う場でも有るからな。」
「うん、でも、お兄ちゃんに彼女が出来るまではいいかな…。」

 い、妹よ、そんなに甘えた表情で俺を見るんじゃない。
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藤本慎吾-02 [F組三国志-06]

 チーム赤澤に登録してから、時間の使い方が変わりつつ有る。
 妹から省吾リーダーの指導内容を教えて貰い参考にしているだけでなく、大学生たちが自分の成績や模試の結果、それと自分の学習時間配分等を分析し、手抜き出来る部分を指摘してくれたのだ。
 その半面、高三の今だから出来ること、という課題を課せられはしたが、大学受験だけに意識を集中しているより良いと思っている。
 今思うと、夏休み前の自分は大学に対して偏った見方をし視野が狭くなっていた。
 一年生の学習会に参加するなんて以前は考えられない事だったが、心に余裕が出来たのと最近大人びて来た妹が兄妹の時間を大切にしたいとさり気なくアピールして来て…。
 まあ、学習会は真面目なプログロム、大学生も来るが数学の質問を受ける立場として参加することにした…。

「藤本先輩、ここが良く分からないのです。」
「ああ、これはね…、でもここは高二の範囲じゃないのかな?」
「そうですけど、夏休みを利用して先の内容に挑戦しています。
 省吾さまから、数学は頭のトレーニングでもあると教えられていますので、少し難しい内容にも挑戦しているのです。」
「うん、その考え方は間違って無いと思うよ、それならヒントだけにしておくね…。」

 自分も数学中心にずっと予習中心の学習をして来て、それが模試の結果に反映されていると思う。
 後輩達が学習と向き合う姿勢は頼もしく嬉しい。
 そう言えば、妹以外の高一と話す機会は今までほとんど無かった。
 省吾リーダーは、違う年齢層の人とも接することを勧めていて、話を聞いた時は年上を意識したが、年下と接するのも新鮮、妹以外の子に助言するのも面白いと感じる、今まで暇な時はパソコンと向き合ってることが多かったから。
 由香はそんなことも意識して学習会に自分を誘ったのだろう、出来の良い妹がいると同級生の女子とは…、ちっちゃい頃、お兄ちゃんのお嫁さんになるとか言ってくれてたな…。

「藤本先輩って理系ですよね、理数系クラスってどんな感じなのです?」

 おっと、質問タイムが始まってた…。

「どんなと言われてもね、文系の実態を知らないからどう答えて良いのか分からないよ。」
「国公立志望が多いのですよね。」
「ああ、志望校を絞って真面目に取り組んでいる人ばかりだから学習環境は悪くない。
 ただね、チーム赤澤に関わり始めてからクラスメイトの事を思い返しているのだけど、大学合格を目標にしていて、その先をイメージしてなさそうな奴がいてね。」
「やはりそうですか、私もそうならないようにと考えてはいるのですが、まだ明確な目標がないのです、藤本先輩がプログラミングに興味を持たれたのには何か切っ掛けが有ったのですか?」
「そうだね、始めはゲームかな、小学生の頃ゲームをしている時にね、これはゲームを作った人に作業をさせられているだけだと思ったんだ。
 それからゲームを作る事に興味が行ってね。
 うちの親父は小学六年生の自分にハイスペックなパソコンを用意してくれる人だったことも有り、のめり込んで行ったという感じだよ。」
「へ~、そういうの私はないです。」
「今、興味を持っていることはないの?」
「チーム赤澤に参加してから、一気に視野が広がり、今は色々な事を知り、考えたいとは思っています、社会問題から政治経済、彼氏の作り方まで。」
「はは、由香もそんな感じなのかな?」
「いえいえ、由香ほど貪欲ではないです、まあ彼氏をどうこうという話を除いてですが。」
「そうよね、由香は、そういう話になるといつの間にかお兄さまの自慢話になって、ブラザーコンプレックス、ブラコンですよね。」
「えっ、そうなのか。」
「でも納得しました、先輩は優しくて…。」

 それから暫く返答に窮する質問を受け…、由香は困ってる自分を遠くから見てるだけ。
 とにかく、級友からシスコンと言われていることは絶対秘密にしておこうと決意した。
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藤本慎吾-03 [F組三国志-06]

 俺達の夏休みが終わっても大学生はまだ休み。
 プロジェクトFは由香のクラスから始まったのだが、活動範囲がかなり広がり高三の受験に対する意識調査とかも始めている。
 自分は協力者集めを手伝ったが、チーム赤澤の噂が広がりつつ有る状況下、調査に対する見返りとして、自分たちの志望大学に合格した人からの情報が得られるので簡単に済んだ…。

「藤本くんは、チーム赤澤のメンバーになったのでしょ、どんな感じなの?」
「そうだな、俺にはまだ全体像が見えていないが研究機関という存在で有ることは間違いない。
 俺自身が大学生の研究対象だが、大学生とプログラミングについての研究を始めていてね。」
「さすが学年のトップクラスは違うのね。」
「いや、そんなんではない、妹のクラスの子達だって色々考えているよ。」
「一年生とも話したの?」
「ああ、夏休みに彼らの学習会で数学を教えて来た。」
「妹のクラスでか、やっぱシスコンだな。」
「いや、そういう感じではなく、彼らの方が省吾リーダーから多く学んでいるという面が有ってな。」
「俺は妹と喧嘩ばかり、有り得ないね、そんなの。」
「それは兄ががさつだからでしょ、藤本くんは優しいもの。」
「でも、藤本は女子からの告白、学習への集中を理由に断って来ただろ、実は妹の方が可愛いと思っているのではないか?」
「妹は普通に可愛いだろ、お前だって紹介しろと言って来たぐらいに。」
「理知的な感じが良いよな。」
「ねえ、藤本くんは妹さんと仲が良いの?」
「ああ、だが、シスコンとか言うのは止めて貰いたい。
 同じ高校なのだから、妹の友人とかにそんな話が伝わって変な誤解を生じさせたくないんだ。」
「兄弟姉妹って色々よね、うちは姉妹で喧嘩することも有るけど、お姉ちゃんのことは嫌いじゃない、でも、藤本くんみたいなお兄ちゃんが欲しかったかも。」
「凛香は彼氏にしたいんじゃないの?」
「彼氏にするには真面目過ぎるかな。」
「その前に藤本が却下だよな、どう考えても妹の方が可愛い。」
「ちょっと~、喧嘩売ってるの!」
「まあまあ落ち着いて…、そんな話より、大学生からの助言はどうだった?」
「藤本くん有難うね、色々な分析データを自身の経験と共に教えて貰えて参考になったわ。
 学部は違っても同じ大学に合格しようね。」
「うん、ただ…、大学合格後の事は考えてる?」
「就職に向けてってこと?」
「それも有るけど、大学生活をどう送るとかさ。」
「やっぱ真面目なのね。」
「高一連中はチーム赤澤から刺激を受けて色々考えているぞ、大学の意味とか職業についてとか。」
「う~ん、漠然とは考えて来たけど…。」
「彼らは社会問題とも向き合って行こうと考えている、勿論、まだ学習している段階で重要課題が恋愛だったりはしてるがね。」
「恋愛だって大切だと思うわよ、でも、妹と喧嘩してる誰かと違って意識が高いのね。」
「ああ、何の為に大学進学を目指しているのか、随分話し合ったよ。」
「藤本は目標がしっかりしてるからな、う~ん、どうだ妹の他にも可愛い子、いたのか?」
「いるが、お前にだけは紹介したくない。」

 それから学校制度の話に、真面目な話を普通に出来るのが理数系クラスの良いところで…。
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藤本慎吾-04 [F組三国志-06]

「なあ、そもそも学校って本当に必要だと思うか?」
「う~ん、そう来たか…。」
「うんと昔は親が生きて行く術を子に教えていたのでしょ。」
「学制は明治時代の1872年に発布されたけど、江戸時代だって藩校や寺子屋が有ったのよね。」
「何の為に?」
「富国強兵、殖産興業を推し進める為には…。」
「そうね、豊かな国を維持して行くためには教育が必要、その為の学校。」
「別の視点で考えると、社会の中で一個人が生きて行く力を身に着ける為という事が有るのかな。」
「そうだろうけど、そのシステムは明治時代から随分変わった現代社会に至る過程で正常に発展、進歩して来たと思うか?」
「言いたいことは分かる、思い起こせば小中学校の授業なんて…、私はお利口さんだったから黙って座ってたけどね。」
「うちの生徒は皆感じて来たことだと思うし、逆も有るだろう、生きて行くのに必要の無い知識を強要されてる子達もいるのだから。」
「そうよね、頭の悪い子に色々強要するから問題児を生み出すとか。」
「彼らだって悪くない、問題は学校のシステムに有り、今のネット環境を最大限に活用すればそれをましな方向へ持って行けるのでは無いかと、チーム赤澤のメンバーは考えているんだ。」
「一年生達も?」
「勿論。」
「そのシステム構築とかを藤本くんは考えているのかしら?」
「まあな。」
「じゃあ、絶対第一志望に合格しないといけないのね。」
「いや、そうでもなくてさ。」
「どういうこと?」
「最近、大学の先輩と情報交換していてね、本気で自分のスキルアップを目指すのなら大学以外にも道が有ると感じているんだ。
 大学という枠組みに拘る必要は無いのかもとね、まあ実際問題として大学に籍を置くメリットは大きいから大学には入りたいと思っているが。」
「そうよね、肩書で判断する人もいるのだから。」
「うん、人脈をうまく作ることに成功したら、アメリカの名門大学と繋がれるかもと思っている。」
「えっと…、その切っ掛けもチーム赤澤ってことなの?」
「ああ、省吾リーダーは海外との情報交換も指示しているからね。」
「指示か…、赤澤省吾ってやっぱ天才?」
「ご本人は普通の高校生だと話してるけどな、普通の高校一年生の下に大人を含めた多くの人が集まると思うか?」
「大学生に指示する高一が普通だとは思えないわ。」
「うん、大学間の垣根を越えて、という壮大な計画がすでに進み始めているからね。
 自分のポジションは、それを円滑に進める為のシステム構築だと考えている。」
「将来の目標がより鮮明になったのね、藤本くんは良いな~。」
「佐々木さんだって、目標が有るじゃないか。」
「でも、キャリアウーマンなんて漠然とし過ぎてるでしょ、自分の力を発揮したいけど。」
「佐々木さんもチーム赤澤に登録する?
 受験向けの学習ばかりでなく視野が広がる、自分は学習効率を上げる助言を貰って時間の使い方を見直したよ。」
「私でも参加出来るの?」
「今はメンバーの紹介という形だからね。」
「藤本くんに紹介して貰えるのならお願いしたいわ、受験の方は余裕の有るとこを狙ってるから。」
「ねえ、もし登録したら何をするの?」
「まずは、省吾リーダーの主張に触れて考える事、勿論マイペースでね。」
「そっか、特別縛られるとかは無いのね。」
「ああ、その辺りは自由なんだ。」
「縛って欲しかったら俺が縛ってやろうか?」
「あなたは黙ってて!」
「藤本くん、私もお願い、教育を考えていたけど、視野が狭かった気がする、既存のシステムに囚われていないのよね、チーム赤澤は。」
「うん、宮田さん、今の学校制度を前提にして議論したところで、本当に新しく効果的な教育制度は出て来ないと思うんだ。」
「大学受験に取り組んでいてたまに思うのよね。
 世界史とかさ、入試が終わったら頭から消去しても全く問題ないでしょ、そりゃあ、そこから学ぶものは有るのだろうし役に立つことが有るのかも知れないけど、所詮世界史の目次みたいなことでしかなくて。」
「暗記能力を試されているとしても、人の能力は多岐に渡るよな、藤本、俺はこいつと違って真面目に考えてる、俺もチーム赤澤に参加させてくれないか?」
「そうだな、大学はまだ夏休み、時間を合わせて自分の担当者と相談する、何時が良いかな…。」

 クラスの仲間を巻き込めるのは嬉しい、由香のクラスと交流出来るかも知れない。
 参加を希望しているのは大学受験に向けて比較的余裕の有る真面目な連中ばかりだから安心して紹介出来る。
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藤本慎吾-05 [F組三国志-06]

 高三への説明会には結局十一人のクラスメイトと他のクラスから三人が参加、大学生の他、妹のクラスからの参加も有って賑やかなものに。
 会の進行は一年生の奥田麻里子さん。

「三年生の先輩方には事前にチーム赤澤のサイトを見て頂き、質問を文章で送って頂きましたので、その質問に応えることから始めて行きます。
 まずは、総合的な話を、彼の事は哲平と呼んでやって下さい。」
「よろしくお願いします。
 チーム赤澤は発足から間が無いのですが、多くの大学生が参加を表明したことにより多岐に渡る分野で意見交換が進んでいます。
 内容によってはプロジェクトとして動いていたり、ボランティア活動、学習会という形で人が集まることも有れば、ネット上での活動も進んでいます。
 今は、それぞれに短期目標、中期目標、長期目標の設定を検討しています。
 自分たち一年生はそれを見て学んでいる段階です。
 先輩方からの質問ではチーム赤澤に参加して何をするのか、というのが有りましたが、まずは高校三年生という視点で活動を見て頂き、自分たちとも意見交換をして下されたらと思っています…。」

 哲平くんは無理のない範囲で一年生とも交流することを提案しつつ、大学生との関係や大きく動いているプロジェクト梶田などの話も簡潔に話してくれた。
 続いて大学受験に向けての話はプロジェクトFから派生して誕生したチームから三枝さん。

「チーム赤澤としては、大学や大学受験の在り方に対しての見直しをしていますが、現状、優秀な後輩には是非希望する大学に合格し、我々と共に歩んで欲しいと考えています。
 まずは藤本くんを研究材料としていますが、彼は少し優秀過ぎて、我々の助力が無くても何らかの間違いが起こらない限り志望校に合格出来ます。
 我々が取り組んでいるのは、入試を分析、人を選抜する手段として入試が有る訳ですが…。」

 三枝さんは、遠回しでは有るが自分たちの研究材料になって欲しいと、協力してくれたら学習効率を上げる手伝いをすると、まあそういうチームのメンバーなのだ。
 学校改革については、秋山美咲さん、妹と同学年とは思えない程大人びた美人の登場に場の雰囲気が変わる。

「学校制度の見直しは私たちにとって大きなテーマです、簡単にどうこう出来ることでは有りません。
 何の為の教育なのか、何の為に学習するのか、という根本に立ち返る必要が有ると考えていますが、それは学歴社会、大学入試の存在によって、本来の目的が歪められているからです。
 公立の小中学校では全員が同一に扱われている児童生徒ですが、その能力は人それぞれ、本来はそれぞれが、それぞれの能力に合わせて成長し、この社会の中で責任有る大人として生活して行ける様にと在るべき教育の場に歪みが生じ、そんな視点から…。」

 さすが省吾リーダーの彼女なのだが、野郎連中の頭に話が届いているのかは疑問、いや女子達も…。
 美人過ぎるというのは…、由香ぐらいの可愛さが丁度良いのかも知れない。
 と、思ってたら、由香がボランティア活動について経験談を交えながら話し始めた。
 我が妹ながら…。

「藤本くんの妹さんも素敵ね、あんな可愛い妹ならシスコンになっても不思議じゃないわ。」
「た、頼むからそのワードをこの場で口にするのは…、ここからは交流の時間だからな。」
「そうね、ちょっと由香さんと話して来るわ。」
「あ、ああ…。」

 佐々木さん、お願いだから妹に余計な話をしないで下さい…。
 彼女と入れ替わりに一年生が…。

「由香ご自慢のお兄さまは、プログラミングについて大学生の方と情報交換をされているのですよね、どんな感じなのです?」
「そうだな、先輩とは視点が少し違っていて面白い、アプローチの仕方が違うと言うかね。」
「先輩に教えたりもしているのですか?」
「教えるというか、情報交換だね、協力することによって効率が良くなったかな。」
「頻繁に連絡を取り合っているのですか?」
「そうでも無くてね、これは実験的にやってる事なのだけど、互いに情報を送るだけで、それに関しての返信はあまりしない様にしているんだ。」
「効率重視ということですか?」
「うん、人間味が無いと言われそうだけど、時間の使い方を考えていてね。」
「時間の使い方を考えないと、由香が怒るとか?」
「由香は怒ったりしないよ。」
「先輩、ブラコンの妹を持つって、兄としてどうなのです?」
「えっ、そ、それは…。」
「ちょっと~、あやか、お兄ちゃんと何話してるのよ~。」
「羨ましい兄妹だと思って…。」

 日頃見る事のない妹の怒った顔も可愛いが、妹がブラコンと思われ、俺はシスコンと…、これってやばくないのか…。
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