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Lento 11,演奏旅行 ブログトップ
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演奏旅行-1 [Lento 11,演奏旅行]

大学生達にとって一月はもっとも大変な時期と言える。
そこへ、演奏旅行の準備と和音達のテレビ出演などが重なった。
スケジュールには余裕を持たせてあったのだが注目度が上がったため色々なオファーが来ている。
祥子は本格的な活動を4月以降と考えて調整していたが、戦略的に先延ばししたくないものも来る。
そこを花組は、まあ色々協力しあって何とか乗り切った。
つまり全員無事大学を卒業できる目処が立ったということだ。

今日の花組会議はレストランで…。

「チア-ズ!」「チア-ズ!」…。
「祥子も何とかなって良かったわ。」
「ありがとう、皆のおかげよ、これからは花組の仕事だけに集中できるから、なんか嬉しいわ。」
「そうよね、落ち着いて和音達のことだけ考えていれば良いなんて、それだけで幸せな気分だわ。」
「桜子、そんなこと言ってると彼氏できないわよ。」
「裕子ったら余計なお世話よ。」
「はは、それよりウイーンに送る荷物の方はみんな大丈夫?」
「大丈夫よ、美帆。」
「それにしても貨物便で荷物を送るなんて美帆も考えたわね。」
「長い旅行だし人数も多いから…。」
「サビーネの屋敷は無駄に広いから助かったわね。」
「まずはウイーンなのよね、なんかワクワクするわ。」

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演奏旅行-2 [Lento 11,演奏旅行]

和音達がフランクフルト国際空港に到着したのは現地時間で午後3時20分、今日はここで一泊して明日ウイーンへ移動する。
飛行機から降りて。

「真子、何か変な感じよね、長い昼だったから。」
「そうよね、ねえ和音は時差ボケ対策してきたの?」
「一応、ここ二三日はこちらの時間に合わせて遅く寝てとかはしてきたけど、まあワクワクして寝れなかったということもあったけどね、飛行機でも乗ってすぐ寝て、こちらの遅めの朝の時間に起きてとしてみたけどね。」
「体調だけは気をつけてね、寝込んだりしたらせっかくの旅行が台無しだからさ。」
もちろんね、私だって目一杯ピアノ弾きたいし。」
「フランクフルトはあまり観光する時間なさそうね。」
「うん、それよりピアノ弾きたいな。」
「ふふ、和音はどこにいてもピアノなのね、祥子さんに相談してみる?」
「うん、あっ、祥子さん。」
「和音ちゃんどうしたの?」
「ピアノ弾きたい。」
「はいはい、お姫様早速用意させていただきますよ。
シャーリーンの家へ一緒に行きましょう。
ホテルも用意してあるけど、シャーリーンの家が気に入ったら泊まっていっても良いのよ。
彼女の屋敷は庭も素敵だからね。
真子はどうする?」
「川野さんと行ってみたい店があるの、ネットで調べて見つけた店でね、今後の参考になるかもしれないから。」
「通訳はどうする?」
「お願いしたいわ、さすがに初日から迷子になりたくないし。」
「わかったわ。
私は和音次第でシャーリーンの家で寝ることになるかもしれないからホテルのこととかは美帆に…、美帆達が同行して構わなかったら連れて行っても良いし、川野さんと…、どちらにしても通訳が同行するから同じことね。」
「ふふ、そこまで気を使わなくて良いですよ、祥子姉さん、何かあったら美帆さんに電話しますから。
もし私達が行ってみたい店に美帆さんも行ってみたいというなら一緒に行ってきます。」
「OK、とにかく慣れない土地なんだから気をつけてね。」
「はい。」


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演奏旅行-3 [Lento 11,演奏旅行]

ウイーンに到着した日は観光の一日となった。
演奏旅行の活動拠点にもなる地だから、幾つかのグループに分かれて散策、夜に情報交換となる。
和音と真子は行きかう人達から手を振られたり、サインを求められることも度々あった。
テレビ番組やCMの効果もあってすでに現地でも有名人となっていたのだ。

翌日の交響楽団との初顔合わせにはマスコミ関係者が多数取材に来た。
Team Harmonieの仕事の成果だ。
とりあえずは合わせてみましょう、ということで演奏が始まる
チャイコフスキー、ピアノ協奏曲第一番。
和音はあこがれていた交響楽団との演奏に全く臆することなく、雄大で壮大な演奏を和音らしい温かみも加えた形で奏でていく。
迫力ある和音の演奏はマスコミ関係者達を圧倒している。

演奏が終わると観客全員がスタンディングオーベーションとなる。
観客だけではない交響楽団のメンバーも全員立ち上がっている。
楽団員達の拍手はマスコミ関係者のそれ以上に熱のこもったものだ。
それには裏がある。
日本に送られたコンチェルトのカラオケは少し古いもので、今日の指揮者とは違う指揮者のタクトで録音された物、今日はあえて、それとはかなり違う演奏をしたのだった。
しかし、その演奏に和音はしっかり合わせていただけでなく、一部では指揮者をリードする様な演奏をしたのだ。
本物の感性を持った天才ピアニスト、とにかく彼らは認めた、和音の力を。
少し古いカラオケと違う演奏というのは和音を試す意味があった。
彼等はそれを恥、後で和音に謝罪した者も何人かいる。
が、当の本人はあのアレンジも素敵でした、と全く意に介してない。
実際今日の演奏を一番楽しんだのは和音だったのだろう。

しばらくの休憩を挟んで記者達の質問に祥子が答え始めた。
和音はピアノに向かってBGMのように静かに演奏している。
『オーケストラとの共演は初めてと聞きましたが本当なんですか?』
『はい初めてです、ただこの楽団のチャイコフスキーは和音のお気に入りでよく聴きながら演奏していたそうです。』
『それにしてもこれだけの才能が有りながら最近テレビで紹介されたりする前まで、全く無名だったなんて信じられません。』
『そうですね、なぜかコンクールが苦手だったんです。』
『信じられません。』
『実際、昨年初夏の日本のコンクールで金賞を取ったのが唯一の賞で、それまでも幾つかコンクールに挑戦していたのですけどね。』
『ということは、苦手を克服したということですか?』
『そうです。』

「すいません、和音さんにも質問したいのですが…。」
流暢な日本語で声を上げたのは、日本駐在経験のある新聞記者。
和音は視線を向けにっこり微笑む。
祥子は、どうぞ、と答えながら同時通訳を務め始める。
「まずはウイーンの感想とかお願いできますか?」
にっこり微笑んでピアノのトーンを上げる和音。
到着までの期待、町を楽しく散策する様子、重々しく伝統あるウイーンへの敬意…。
ピアノが語っていく。
当然日本語で答えを聞くと思っていた記者たちは驚きを隠せない。
曲がチャイコフスキーになりトーンを落とすと祥子が。
『ということだそうです。』
「今の曲は?」
『和音の即興です。』
和音はにこにこしながらBGMを弾いている。


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演奏旅行-4 [Lento 11,演奏旅行]

交響楽団との初顔合わせ翌日、ドイツとオーストリアの新聞、テレビ、ラジオではこの演奏のことがずいぶん報じられた、テレビ局によっては当日夜のニュースで情報を流した局もある。
もちろん反響も大きい。
そしてスケジュールの見直しが始まった。

「始めに予定していた交響楽団とのリハーサルは全部中止にすることに決定したわ。」
祥子が花組メンバーに告げる。
「どういうこと?」
「短い演奏旅行中にリハーサルをやるのは無駄で、必要がないとの結論に達したのよ。
予定していた日は全部本番のCDレコーディングか、演奏会ってことね。」
「日程的に忙しくなる訳ではないのね。」
「うん、まあ練習に当てるつもりだった日が本番になっただけね。」
「我らが姫に乾杯!」
「演奏曲目はどうなるの?」
「それは今検討中、ピアノ協奏曲を幾つか演奏してピアノ協奏曲集といったCDを出す方向で話が進んでいるわ。」
「でも和音ちゃんコンチェルトの経験はほとんどないのじゃ?」
「和音たら、楽譜を見て、一回弾いとけば何とかなるんじゃないかな、なんて言ってたわよ、初見の曲でもね。
まぁCD録音がゲネプロの代わりになるから、もちろん本番も録音するから、何回か演奏した中で一番良いのをCDにすれば良いわね。」
「あまり何回も録音すると選ぶのに困るかも。」
「そうよね。」

「それからね、追加公演の話が持ち上がっていてね。」
「演奏旅行の期間が延びるってこと、祥子?」
「そうなの、で初音さんに伝えたらね、しばらくして白川さんからの伝言が返ってきたの。」
「白川さんの判断か…、で?」
「交換条件を出してみて下さい、何ヶ月も先、来年でも構わないから、交響楽団が日本に来て和音と共演してくれるのなら、と。」
「世界でもトップクラスの交響楽団を日本に呼んじゃうわけ?」
「で、そんな話を楽団側に伝えたら、喜んで検討させてもらうという感じで、日程の調整を始めたみたいなの。」
「和音は何て言ってるの?」
「全部私にまかせるって。
ある意味、まだ今後の予定をあまり埋めてない段階だからね、こちらとしても最優先でスケジュールを組めるから実現させたいと思うわ。
大学の方は全く無視して構わないからね。」
「でも…、さすが白川さんね、交響楽団を日本に呼ぶなんてこと考えもしなかったわ。」
「そうよね、う~ん、和音はもう世界的名ピアニストの仲間入りということなのね。」
「はは、楽団側の担当者に言わせると、今世界中を探しても和音以上のピアニストはいないそうよ。」
「その意見には賛成だわ。」


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チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調

  • アーティスト: リヒテル(スヴャトスラフ),ラフマニノフ,チャイコフスキー,ヴィスロツキ(スタニスラフ),カラヤン(ヘルベルト・フォン),ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団,ウィーン交響楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/10/24
  • メディア: CD



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演奏旅行-5 [Lento 11,演奏旅行]

マスコミで大きく取り上げられたことによって和音が気軽に観光を楽しむということは不可能となった。
どこへ行っても声をかけられる。
当初は祥子と茂根と三人で散策するという予定もあったが、花組、風組がガードする形になった。
もっとも、皆でおしゃべりしながらの散策というのも楽しいものだ。

「ねえ、茂根くんてさ、和音ちゃんと話してるとこ、あんまし見たことないけどどうなの?」裕子が訊ねる。
「う~ん、そうだな、和音の家へ行っても、お父さんやお母さん、妹の絵美ちゃんと話してることが多いかも。」
「ふ~ん。」
「でもさ、和音、ピアノで結構話しかけてくるんだぜ。」
「あっ、成る程。」
「で、俺は絵で応えたりしてるよ。」
「えっ?」
「はは、絵って、しゃれですか?」
「のんのん、で絵を描いていて対話は成り立つの? ペース的にさ。」
「別に急ぐ必要ないし、ぼくらのベースはLentoですよ、まぁ簡単にスケッチという時は俺も早いから、和音との対話に問題はないんですよ。」
「う~ん、その対話って一度見てみたいな。」
「うん、和音が良いって言えば別に構わないけど。」
「どんな会話なのかしら?」
「まあその…。」
少し顔を赤らめる茂根。
「プライベートな会話でなくていいからね。」
「はい。」


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演奏旅行-6 [Lento 11,演奏旅行]

和音、ヨーロッパでの初めての演奏会はウイーンで開かれた。
真子たち風組メンバーも舞台にあがる。
今回は茂根と和音のデュエットも。
茂根が舞台に上がることは、裕子の提案で決定した。
ピアノと絵による対話を見てのことだ。

優しく語り掛けるピアノ。
それに応えるように描かれていく暖かいクロッキーはモニターを通して観客の目に届く、和音もピアノの近くのモニターでその絵を見ながらの演奏。
クロッキーを描く時の、茂根はとにかく早い。
一枚の絵があっという間に完成して次の絵を描き始める。
和音のピアノに応える形で、何枚も描かれていく。
春をイメージさせるメロディが流れると茂根は自分の故郷の春を次々と描いていく。
そこに和音の姿も。
描かれた絵のイメージを和音が奏でる。
そして観客たちは気付く、二人の心に。
二人の暖かい時間を共有。
そして思う、こんな芸術のスタイルは今まであったのだろうかと。

この演奏風景は後にDVDに収められる、僕達は出会ってしまった、というタイトルで。
そして分野を超えた芸術として高い評価を得ることになる。


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演奏旅行-7 [Lento 11,演奏旅行]

和音の家族がザルツブルグに到着したのは二月の中頃のこと、世界的バイオリニスト、クラウス マンシュタインとの共演に合わせてだ。
しばらくして花組のメンバーが気付く、彼らが茂根と話してることが多いということに。

桜子が。
「あの~、和音より茂根くんと話していることが多い様な気がするんですけど。」
和音の父、和夫に問いかける。
「えっ、あっ、そうかな、和音が絶好調なのはピアノ聴いていればわかるからね。
茂根くんは私の友達みたいなものだし。」
「えっ? そんな感覚なんですか?」
「何か変かな?」
「いえ、そんなことないですけど。」
「私は弟みたいに感じたり息子みたいに思ったりしてるわね。」
和音の母、紗枝子が続ける。
「お兄ちゃんの描く、お姉ちゃんの絵、私は大好き。」
と、妹の絵美。
「なるほど、和音ちゃんの一家は揃って茂根くんのファンなわけね。」
「もちろんさ、それに彼のご両親も農家を営んでみえる素朴な、感じの良い人たちだよ。」
「えっ、もうそんなに話が進んでるんですか?」
「正直、茂根くん抜きで今の和音はないと思ってるから。
ステージでの余裕はすべて茂根くんに寄るところだから、親としては嫉妬してるけどね。」
「そんな風には感じてませんでした。」
「和音はもともと繊細な子でね、大ホールでの演奏会なんて考えてもいなかったけど、彼が裏で支えていてね。」
「ほんと、茂根くんと付き合い始めてからずいぶん変わったわね、すごく余裕ができたみたいで、演奏もね。」
「あっ、そんな視点で見てませんでした。
う~ん、確かに、今思い起こせば、花と妖精がLentoで演奏された後、和音ちゃんのピアノが一段と良くなった気もします。」


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演奏旅行-8 [Lento 11,演奏旅行]

クラウス マンシュタインは現在世界でもトップクラスとの評価を受けている名バイオリニストだ。
その彼が初めて和音と真子のDVDを見た時は大変な感動を覚えたという。
名も知らぬ女の子がきちんと自分の演奏スタイルを確立していて超一流レベルの演奏、そこに真子の動く絵の様な踊り。
ふと気付くと感動の涙が頬を伝っていたそうだ。
そして、真子の後ろで演奏しているバイオリニストが自分だったらと思い描き始める。
どう考えても自分の方が絶対に良い演奏ができる。
すぐさまカールに電話、そして共演が決まる。
チェロもすぐ決まり、会場もザルツブルグの古城が確保された。
真子の踊りがより良い絵となるようにと。

初顔合わせも、その古城で。
和音たちは早めに着いた。
ピアノの演奏を始める和音、茂根はスケッチを、真子と川野は軽いストレッチをしたり和音の演奏に合わせて軽く踊ったりしている。
途中からピアノは古城の印象を奏で始める。
そこにクラウス マンシュタインが入ってきてしばらく演奏を聴いたのち演奏に加わる。
和音が起こしたテーマを元に、古城の印象をバイオリンが奏でていく。
二人が目を合わせにっこり微笑んだのが合図のように、ピアノはトーンを落としてバイオリンを引き立てる、しばらくするとバイオリンが抑えた演奏になり、和音は豪華な舞踏会をイメージさせる演奏にと変わる。
しばらくしてワルツに、きっかけはバイオリンが出した。
ワルツになれば真子と川野の出番だ。
真子たちが踊り終えたところで演奏も終わる。
花組メンバーから拍手が。
マンシュタインは満足そうに話しかける。
『和音のピアノも真子たちの踊りもすばらしい。』
『有難うございます私はマネージャーの長井祥子と申します、ほんとにすばらしい演奏でした、初めてとはとても思えなかったです。』
『君達は初めてでも私は和音たちのDVDやCDをずいぶん聴いたからね。
だからほんとにすごいのは和音ということだな。』
祥子はメンバーに通訳する。
もう一度拍手、和音はにこにこしている。
そこへチェリストが入ってきて、しばらくは紹介とか簡単な打ち合わせ。
そしてゲネプロが始まる。
本番まであまり時間がとれなかったから、祥子は少し心配もしていたのだが、すごくバランスのとれたピアノ三重奏がホールに流れる。


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演奏旅行-9 [Lento 11,演奏旅行]

この日、一番時間をとったのは始めに即興で演奏した曲に関してだ。
古城、というタイトルで本番でも即興的な演奏と決まった。
和音が。
「もっとこのお城のことを知りたくなったわ、どんな歴史があるのかしら?」
それをきっかけに花組たちが動く。
祥子は管理人から色々聞き出す。
他のメンバーたちはあちこち歩き回って色々な発見をしていく、きれいな物、歴史を感じさせる物…。
マンシュタイン達もそんな探索を楽しんだ。

茂根はひたすらスケッチしていた。

そして演奏会本番、観客達を迎えたのは、この城が築かれた頃の華やかな舞踏会をイメージした大きな油絵だった。
茂根が実に短い時間で仕上げた作品だ。

演奏会本番前日のこと。
「すごい、もう完成したの、油絵って簡単に短期間で描けるものじゃないと思っていたわ。」
美帆の言葉に茂根が返す。
「描き始める時に頭の中で絵が完成してる時は一気に描ききった方が良いんです。
迷いながら時間をかけて描いた物は勢いがなくて結局やめちゃうこともあります。」
「ふ~ん、あれ? 絵の中の人物って?」
「風組、花組中心に、美帆さんはどこにいるかわかりますか?」
「あっ! 私も絵の中に…、不思議な気分ね。
お~い、直美!」
「どうしたの。」
「この絵を見て。」
「ふ~ん、じやあ明日の花組はこの線で行きましょう、ただ和服でという注文もあるから途中で着替えなくちゃね。」
「和服が先よね?」
「うん、そうしないと、私達が和音ちゃんの演奏楽しめないからね、祥子と相談してくるわ。」
直美を見送って茂根が問う。
「そんな感じでプログラムが変わっていくのですか?」
「当たり前でしょ、私たちも姫様の演奏を少しでも多く聴いていたいからね。」
「う~ん。」


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演奏旅行-10 [Lento 11,演奏旅行]

古城での演奏会は花組の舞台で始まる。
祥子中心に全員春をイメージした振袖姿で登場。
和音は振袖での演奏とはいかないので直美が探してきた和服風の服を着て、うんと静かに宮城道雄の春の海をピアノにアレンジしたものを弾いている。
祥子が和音と、和音 with Harmony Worksの簡単な説明をしている間、他のメンバーは少しずつポーズを変え自分達をアピール、流れは真子のアドバイスと自分達で相談して決めた。
後に、この光景はアレンジを少し変えて撮り直しドイツのスポンサーがCMに使うこととなる。
そして、そのギャラはすべて花組の衣装代となっていった。

演奏一曲目は和音のソロで、滝廉太郎の荒城の月をベースに和音がアレンジした曲。
日本的な物を入れたいということで決まった。
花組メンバーは舞台の両袖で振袖姿のまま聴いている。
もちろん観客達の視線を意識しながらだ。
二曲目は故郷の春、茂根が自分の故郷の春を描いた水彩画からイメージを受けて和音が作曲した曲だ、もちろん即興的にだが。
心地よいメロディが観客達の心に届く。

会場にも飾られている茂根の水彩画はウイーンでの演奏会中に描いたクロッキーを元に仕上げたもの。
こちらに来てから茂根は絵を描いてる時間が長い。
それは和音の演奏会に花を添えたいという彼の気持ちからだ。


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