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三学期-351 [花鈴-36]

「大学生ですか、この店に多くの大学生が協力しているとは聞きましたがどの様な形なのです?」
「人それぞれです、アルバイト感覚の人が居れば、研究の一環、卒論のテーマにしている人がいたり、卒業後は我が社に就職とか、趣味を活かして協力して下さってる方も、この店は彼らの協力なしでは成り立たないと言っても過言では有りません。」
「でしたね、経緯をここで説明していると時間が足りなくなりますので、詳しくは番組ホームページ、若しくは株式会社花鈴のサイトをご覧下さい。
 花鈴さん、彼らは花鈴さんのことを姫と呼んでるそうですが、その辺りを少しだけでも教えて頂けますか?」
「父が自社の本社をこの地へ移転したことで、ここが企業城下町となりつつ有ります。
 それをスムーズに推し進めて行くのも、子会社で有る我が社の役目なのです。
 元々私が姫と呼ばれ始めたのはニックネーム的なことだったのですが、何時しか広く定着してしまいました。
 私としては戸惑いが有ったのですが、姫として会社の会長としての責任を感じさせられる呼び名ですので、姫と呼んで下さる方々を失望させない様にと考えています。」
「それは小学五年生にとってプレッシャーでは無いのですか?」
「家族を始め協力してくれる人達が大勢いますので大丈夫です。
 ここは県境をまたぐ比較的交通量の多い国道が通り過疎地と言っても比較的条件が良いですからね。
 これから農業公園として整備して行く計画も有ります。
 父は、ここなら一企業の力だけで再生出来ると考えていまして。」
「行政の力を借りずにですか?」
「勿論、法的な問題も有りますので市役所の方々にも協力して頂きますが、税金で整備では無く私企業の力でと。
 今ある社会問題は大企業の姿勢に問題が有った為に生み出されたものが少なく無いと私達は考えていまして、大企業の社会貢献は当たり前の事だと思っているのです。」
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三学期-352 [花鈴-36]

「社会貢献ですか?」
「企業は消費者によって成り立っています。
 その消費者でも有る派遣社員やパート従業員の給料を安く抑え過ぎたことで消費が伸びず経済がなかなか上向かなかった側面が有るのですから、せめて企業として社会にお返ししないといけません。
 父は社長として従業員の給料をもっと上げたかったそうですが、社長の一存では難しかったのです。
 その代わりと言っては何ですが過疎地の再生を考えまして。
 それは魅力有る田舎造りを通して、都会では無く田舎に住むと言う選択肢の創設。
 ここへは既に多くの人が移住して来ていますが、どうしてもこの地で暮らせないと都会へ帰る人は極僅かなのですよ。
 大学生達は合宿所などを利用して田舎暮らしを体験していますが、この地を第二の故郷、いえ、ここを自分の故郷にしたいと考えていまして。
 何世代にも渡って都会暮らしの方からは、田舎に故郷の有る人が羨ましいと聞きます。
 正月やお盆に帰省するのは結構大変みたいですけどね。」
「分かります、私は親族が殆ど都会暮らしですので、田舎へ帰省する子が羨ましかったです。」
「ずっと都会志向の人が多かった為、地域間のバランスが悪くなり、過疎の問題が起こっているのですが、田舎でも暮らし易い環境を整えることが出来れば、都会では味わえない生活が出来ます。
 私達は、田舎暮らしと言う選択肢を皆さんに提供したい、この店はその為の拠点でも有るのです。」
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三学期-353 [花鈴-36]

「そこまでの事をもう直ぐ小学六年生になる花鈴さんは考えておられるのですか…。」
「ええ、私は社会学に興味が有りますので。」
「社会学?」
「社会のあらゆることが研究対象で簡単には説明出来ないのですが、日本がもっと暮らし易い国になったら良いと考えています。
 ブラック企業が存在し、詐欺を考える人が居て、控えめな給料しか支払われない職種、自殺する人が少なからずいる日本社会の問題点を少しでも改善出来たら良いと思いませんか?」
「思いますが…。」
「我が社が買収した事業所は従業員の待遇改善から始めています。
 まともな方法では簡単に出来なかったのですが、多くの方々に協力して頂き、裏技を使いました。
 待遇改善に成功しましたので、この店で働きたいと言って下さる方も少なからずいるのです、都会から移住してでもと。」
「田舎だと給料が安いと言うイメージが有ります。」
「我が社に関しては、仮設店舗の売り上げが大学生達の活躍と観光客のお陰で好調でした。
 住みたくなる環境の第一歩は充分な収入と考え…、出来る事なら専業主婦を増やしたいのです。」
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三学期-354 [花鈴-36]

「専業主婦ですか?」
「ええ、便利な電化製品が普及するまでは家事が大変だったことも有り、専業主婦が少なからずいたと聞いています。
 専業主婦が地域社会を守っていたとも。
 それが女性の意識が変わり、経済的な側面も有って激減したそうで。」
「そ、そうでしたね、私はあまり意識したことが無かったのですが…。」
「そのことが私達の社会から余裕を失わさせ、その原因が企業の在り方に起因しているのでは無いかと私達は考えているのです。」
「難しい話なのですね。」
「いえ、単純明快なこと。
 専業主婦どころか結婚もままならない人達を生み出して来たのは社会経済を動かして来た人達、自分達の利益を最優先にして来た私の祖父達も含まれるのですが。」
「えっと…。」
「大きな会社を動かせる力の有る人達は、私利私欲、自社の利益だけで動くのでは無く社会全体の幸福を考えるべきだと思いませんか?」
「ですよね…。」
「父の会社の子会社では有りますが、私は株式会社花鈴の会長として、人々がより心安らかに暮らせる環境を提案して行きたいと考えているのです。
 ですが私達だけの力では限りが有ります。
 この番組を見ておられる方々には、これから私達の活動を応援して頂けたら幸いなのですが…。」
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三学期-355 [花鈴-36]

「その想いは皆さんに届くと思いますよ。」
「ですかね、生意気な小学生として、これからSNSなどで叩かれる覚悟は出来ていますが気持ちの良い物ものでは有りません。」
「…、それは何とも言えませんが…。」
「確実に出て来ると思われるのですが、極端な発言で無い限り、それを規制する法が充分では無いのが現状です。
 今頃、私に対する誹謗中傷をでっち上げている人達がいるかもですね。」
「事実無根のことでしたら問題ないのでは?」
「事実無根のことを信じてしまう人達が存在するのです。
 総理大臣経験者でも何の裏付けも取らずに発信してしまう。
 そんな人を総理大臣にしてしまったと、父は嘆いていました。」
「…。」
「国会議員が金銭面で不正を行うのが当たり前に思えてしまう状況下で、私達はどうしたら良いのでしょう?」
「はい、確かに現状では…。」
「既存の野党は様々なしがらみに囚われているのか、与党の上げ足取りに懸命なだけで、まともな行政が出来るのか怪しく、結局はお役人の力に期待するしか無いのかも知れません。
 私のお爺さまは世界に誇れるものが少なからず有った日本が情けない国に成りつつ有り悲しいと話していました。」
「えっと…、姫さまからその様なお話を頂けるとは思っていませんでしたので…。」
「えっ?
 社会問題の話とかもして下さいと言われていたのですけど。」

 勿論、テレビ局側の思惑を理解した上での発言だ、生放送のタイミングを確認した上での。
 生意気な小学生と言うレッテルを私に張り付けると言う意図も有る。
 ここからどうなって行くのかは神のみぞ知る所なのだが。
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三学期-356 [花鈴-36]

「花鈴が出演した番組は全部見させて貰ったぞ。」
「お父さん、あんな感じで良かったのかな?」
「ああ、真面目なだけの小学生では面白くないからな。
 当然SNS上には生意気だとか批判的な書き込みも出て来てるが、そんなのを気にする必要は無い。
 大物は細かい事を気にしてはいけないのだ。」
「その辺りは理解してるけど、悪口を書かれていると思うとちょっとね…。」
「見なきゃ良いのさ、ただ、視野の狭い連中の書き込みに対して花鈴姫を擁護する書き込みが沢山有り、我々の作戦は成功しそうだよ。」
「可愛いだけの女の子よりは注目して貰えてるってこと?」
「ああ花鈴が『社会学的に考えて』と話したことを理解出来た人達が少なからずいるのさ。
 社会学的に考える小学六年生として四月からは取材が増えるかもな。」
「そのまま店や株式会社花鈴の宣伝になるのなら良いのだけど…。」
「我が社の社員達からは知的な姫として高評価を得たみたいで、花鈴と株式会社花鈴を我が社のイメージアップ戦略の柱に据えるべきとの声も上がって来てたよ。」
「今でもイメージは悪くないよね?」
「まあな、だが、子会社を利用してのイメージアップが更なる売り上げアップに繋がれば、この地への投資なんて安いものとなるからな。」
「私は、お金を貰って会社の宣伝をして貰える存在に成れるのかしら?」
「ああ、今まで花鈴は社会学について熱心に学んで来たが、そんな小学生なんて僅かだろうし、こんなに可愛いと有ればマスコミが注目して当たり前。
 花鈴、今以上の有名人になるかもだけど、心の準備は出来てるか?」
「まあね、新店舗の宣伝をマスコミからお金を貰って展開して行くと言う、お兄ちゃんからの案を受け入れてから色々調べ考えたのよ。
 社会学的に考えても、上手く行けばマスコミを最大限に活かせる取り組みだと確信はしてるの。
 でも人には話さないでね、嫌な子だと思われそうだから。」
「う~ん、そこは微妙だな。
 社会学的に考えられる小学生として、更にアピール出来るかもだぞ。」
「まだ株式会社花鈴の会長として、私がどんな評価を得てるとか把握出来て無いの。
 大賢者みたいに単純なギフテッドではないでしょ、私は。」
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三学期-357 [花鈴-36]

「確かにな、数学が得意な小学生はそれだけで理解されるが、社会学をメインに考えてる小学生となると…、そもそも社会学のことを知らない人は少なからずいるのだから。
 まあ、その辺りのことも含めて説明出来る小学生、そんな感じで売り出して行けば、店の宣伝に繋がる動きが色々出て来るだろう。
 そこまで頑張らなくても店は繁盛しそうな気がしてるけどな。」
「私も、それなりに行けるとは思っているのだけど、より確実な成功を目指して最善を尽くすべきだわ。
 店に対する注目度は可能な限り上げないと。」
「うん、人見知りな所が有った花鈴が、会長になって何か吹っ切れたみたいだね。」
「そうね、立場が人を成長させると言われて会長になったけど、それは本当だったかも。
 ただの小学生だったら、沢山学ばなかっただろうし。」
「今では周りの大人達を驚かせる知識を持ち、判断出来る能力を伸ばしている。
 花鈴が立場に押し潰されて潰れてしまう可能性を指摘されてはいたのだが、私の娘はそんなに柔で無いと信じてたよ。
 学校の先生達にも負けて無かったのだからな。」
「それは絵梨と教頭先生の力で、私は後ろから見てただけよ。
 ただ、その過程で色々学ばせて貰ったと感じてるわ。
 絵梨が教師を軽んじる発言をした時に教頭先生が論理的に窘めていたりとかね。
 流石、教頭先生だなって思った。」
「能力の高い子に対しては論理的に説明出来る大人が必要なのが、教師でも論理的に説明出来ない人がいるからな。」
「そんな人は大学生達との学習会で行き詰っていたそうよ。」
「花鈴達が裏で動いたのか?」
「まあね、論理的な話を期待している小学生に対して、子どもなのだからと舐めた話をしていた人には大学生の前で恥をかいて貰う、そんなレベルのことでね。」
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三学期-358 [花鈴-36]

「生意気な小学生を実践している訳だ。」
「まあね、元々先生達には良く思われて無かったのだから、その延長。
 でも、生意気を通すには言葉で相手に勝てるだけの根拠が必要で、私達はそれなりに学習して来たの。
 教師の中には学習意欲の薄い人もいて、その人には絶対知識で勝とうと。」
「五分で理解出来ることを一時間掛けて学習して来た人達に負ける訳には行かないか。」
「まあね、勝ち負けの問題は本筋では無いけど、子どもだからと舐められたら面白くない。
 絵梨とはそんな話をしてるの。」
「教師サイドも、子どもに舐められたく無いだろうから勝負になる訳だ。
 ただ、学習能力は花鈴達の方が遥かに勝っていそうだから手加減はして差し上げろよ。」
「長幼の序は弁えてるから、最初は下手に出てたわ。
 でもね…、視野の狭い先生がいるのよ。
 小学校と言う限られた空間、自分のペースで学級運営して来た人にとって、私や絵梨の存在は邪魔でしかない、大賢者みたいにギフテッドの子として転校して来た訳でも無い私達をどう扱って良いのか分からなかった、そんな所かしら。」
「色々動いてくれる大人が居なかったら、居心地の悪い小学校だったのか?」
「かも、でもね、教頭先生が私達のことを理解してくれていたから、先生方との勝負が楽しかったのも事実なの。
 小学校の抱える問題を考えることに繋がったしね。」
「社会学の中でも花鈴にとっては得意分野と考えて良いのか?」
「うん、現役の小学生なのだから当然でしょ。」
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三学期-359 [花鈴-36]

「花鈴は今の小学校で何が問題だと思ってる?」
「そうね…、タブレットの活用が先生によって温度差が有ることかな。
 先生自身がタブレット端末の有用性を理解し切れて無かったりするのよ。
 随分教えてマシにはなったけど、そんな話を大学生にしたら教師はボケ易い職業なのだとか。」
「へ~、どうして?」
「簡単なことを毎年同じ様に教えてるだけでしょ、そこで考える必要は無いの。
 逆にずるいことを考え、少しでもお金を稼ぎたいと考えてる政治家はボケにくいそうでね。」
「成程な、小学生に対して教えることでも常に創意工夫をしていればボケないだろうが、そんな人ばかりでは無いのだろう。」
「私達にとって簡単なことが理解出来ない先生もいてね。
 教師の待遇が悪いから質が落ちてるのかもだけど。」
「そんなに待遇が悪いのか?」
「待遇が悪いから、臨時的任用教職員を採用しないと先生の人数が足りない学校が増えてるみたい。
 そして臨時の人達は臨時採用だから採用されても色々微妙だとか。
 正規採用されて無い時点で能力に問題が有るのかもしれないし、臨時だから生活が安定しないまま。
 お父さんの会社はパートで働きたい人の枠を残して非正規社員を最低限にと考えてるけど、地方自治体では人件費節約の為、不安定な労働者を少なからず抱えているのでしょ?」
「みたいだな、公務員は安定した職として必要だと思うのだが…、国の中枢を担う国家公務員の労働環境が悪過ぎるなんてことは知ってるか?」
「国会のシステムに問題が有るのよね。
 頭の良い人達が国を動かしてる筈なのに、頭が悪過ぎなレベルで労働環境が悪過ぎとか。
 立法府である国会議員がお金の問題で逮捕されてたり。」
「生意気な小学生としては、政治に対する発言もして行くのか?」
「そう仕向けたのはお父さんでしょ。
 来週は小学生が考える政治の問題、何てのをYouTubeチャンネル向けに収録するのよ。」
「そうか、大人達が反論出来ないレベルでの生意気小学生発言に期待してるのだがどうだ?」
「日本中から反発されても、この地の人達が私の味方になってくれると信じて、この地の姫となったからには悪目立ちでも構わないから、ここへの注目度を上げて行きたいと思ってる、それが店の売り上げに直結すると信じてね。」
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三学期-360 [花鈴-36]

「無理はするなよ。」
「勿論よ、これからも生意気な発言をして行くことになるのだろうけど、様々なことを学んでいる最中ですから色々教えて下さいともアピールして行くつもりなの。
 上から目線での下らないご意見は適当にかわすけどね。」
「まあ、それが正解だろうな。
 姫として広く認知され始めてるみたいだが、その辺りはどうなんだ?」
「良く分からないけど、少々お転婆な姫と言う方向性は悪くないみたい。
 私のファンも少しづつ増えているのよ。」
「ならば会社のイベントとして株式会社花鈴を目立たせる企画を立ち上げる案が出ているのだが、どうだ?」
「それでこの地への注目度が上がるのなら何の問題も無いわ。
 大企業が過疎地の再開発に取り組んでいるとアピールするのは必要なことなのでしょ?」
「まあな、で、我が社のCMに出たりとかは可能か?」
「えっ…、社長の娘がCMにって微妙じゃない?」
「まあな、だが、多額のギャラを払って著名人にお願いするより、花鈴はそれなりに知られているからと打診が有ってな。」
「う~ん…、ギャラ次第かしら。」
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