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鈴木正信-01 [F組三国志-07]

 チーム赤澤の取り組みは、それなりに理解していたつもりだったが、一つ一つの内容を短く簡単にまとめないと全部を紹介しきれないレベルにまでなっているとは思ってなかった。
 このチーム赤澤設立総会に合わせ、皆さんは準備を頑張って来たのだろう。

「正信は、何に興味を持った?」
「そう言われてもな、いずれは大学の全学部を巻き込みそうな勢いだろ、徹はどうなんだ?」
「俺は、取り敢えず工房のプログラムに参加して先輩方と交流出来たらと考えてる。」
「そうか、今は取り敢えずってのが正解なのかもな。」
「おっと、我らが美咲さまだ…。」

「ここまでの締めくくりとして省吾リーダーから話しが有ります。」
「皆さん有難う御座いました。
 さて、ここまでの話しで我々の目指していることの大きさが分かって頂けたと思います。
 各プロジェクトから簡単に説明をして貰いましたが、すでに活動の輪が広がり始めています。
 さて、チームの組織は、現時点で大きく三つに分かれます。
 株式会社を中心とした経済部門、大学の研究を中心とした教育研究部門、そして明日の政治を考える政治、法律部門です。
 もちろん、この三つは色々な形で関連して行きます。
 政治、経済部門の拡充には教育部門の力が必要ですし、我々の活動資金は経済部門中心にと考えています。
 その関係は複雑になりそうですが、組織構築プロジェクトが中心となり、極力分かり易い組織作りを検討して貰っています。
 経済部門では、株式会社を立ち上げますので社長、部長、課長といった形で組織を構築して行きますが、それは会社組織を学び、そこからより良い組織形態を模索して行く事を考えての事です。
 現在のプロジェクトチーフ達も、形式上この組織の中に入って頂けたらと思っていますが、社長を含め、現時点ではほとんどが空席ですので、プロジェクトの進行にともなって具体的な募集を始めます。
 営利目的の企業ですが、学生の実習研究の場という意味合いも有りますので、社長より平社員の方が給料が良いということになるかも知れません。
 教育研究部門の組織は極力簡素にしたいと思っています。
 事務局を置き情報交換の拠点として機能させたいのですが、メインはデータベースの整理、サーバー管理が中心になるでしょう。
 後は参加して下さる方々からの要望に沿ってシステムを構築して行きたいと考えています。
 政治、法律部門では政党を立ち上げることを念頭に置いています。
 自分を総理大臣にという話しも有りましたが、それはちょっとかんべんして下さい。
 でも我々の仲間がこの国を動かすことになれば、もう少し世界に誇れる国に出来るのではないかと思っています。
 飯山チーフ中心に影の内閣が組織されて行きますが、それは政治部門の一部でしか有りません。
 教育研究部門でも、より良い政策を研究して頂きますし、国会に提出される法案もすべてチェックして行く体制を目指します。
 現在の政治体制は、総理大臣の周りがひど過ぎて、大臣や官僚が総理大臣の足を引っ張る場面をしばしば目にします、つまり総理大臣が交代しても良くなる可能性は低いと考えられます。
 現在の政権与党と官僚制度の在り方から見直して行くべきだと思います。
 勿論、大きく変えて行くのは簡単な事では有りません。
 まずはチーム赤澤として土台を築いて行きますが、その上に何を構築出来るか、それが何時になるのかは全く分かりません、それでも動き始めないと社会は良い方向に進んで行かないと考えています。
 社会問題と向き合い、例え僅かでも改善しながら、大きな夢を持ち明日の日本を共に考え、そして…。」

 さすが省吾リーダー、自分達がF組で接して来た省吾さまとは違う雰囲気だが多くの大学生や大人達の心にも届いた様で話を終えた後は拍手や歓声がしばらく鳴りやまなかった。
 堀中瀬十郎先生は、淀んだ状態の日本、その濁った泥沼に赤澤省吾という一石を投ずる、と話しておられたが、うちの親父は若き英雄の登場を皆が待ち望んでいたからチーム赤澤が盛り上がっているのだと話していた。
 自分も、魅力的なリーダー、既存の社会にしがらみのない省吾リーダーの下に集まった人達と共に歩んで行きたいと考えている。
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鈴木正信-02 [F組三国志-07]

 午前のプログラムが終わり、高校生メンバーやその家族はプロジェクトFの学生達と集まって食事。
 
「おっ、森も来てたのか。」
「ああ、俺だってチームの一員だからな。」
「今日の感想は?」
「改めて自分の幼さを感じたよ、でも、児童養護施設でのボランティアで知り合った人達と一緒に、施設の子ども達へ今日の事を伝えたいと思ってる、夢の持てる社会と言うのをね。」
「お前って本当に変わったな。」
「はは、よく言われるよ。」
「由香さんから聞いたけど、施設の小学生と遊んだり、中学生の学習を手伝ったりしてからか?」
「うん、始めは気付かなかったが、施設の子たちはそれぞれ闇を抱えていて、相手をするのがやっかいな子もいるんだ。
 でさ、うちの親がもっと暴力的だったら自分もその仲間になっていたと思うと…、実際に成りかけていたのだけどね。」
「そうだったな、最近はどうなんだ?」
「親父が女を作って出て行ってくれたおかげで楽になったよ。
 親父なりに後ろめたさが有るのか小遣いは貰ってる。」
「それは良かったな、と言って良いのか?」
「ああ、お袋とも離れて一人暮らししたいがさすがにそれは難しい。」
「それで、生活が充実?」
「チーム赤澤に入ってから色々考えてる、まあ、入ってなかったらガキのままだったと思う。」
「色々教えて貰ったとか?」
「教えて貰うと言うよりは、考える切っ掛けや環境を作って貰ったってことかな。
 施設の子と遊びながら自分のことを振り返ったり、以前は皆無だった、人の気持ちを考えるとか。」
「今なら岡崎の気持ちも分かるのか?」
「生理的に無理なのは藤本や谷口も同意してくれたよ。」
「彼女達と仲良くなったのだな。」
「藤本が中学生と親しくなる切っ掛けを作り、俺の好感度を上げてくれたんだ。
 正信、大きな声では言えないが今が人生最大のモテ期かも知れない。」
「相手は女子中学生?」
「まあな、藤本に助言して貰いながら彼女達の兄として振舞っているんだ。」
「彼女にするとかではなく?」
「しばらくの間、特定の彼女は作らずに…、そうだな、彼女達が若くして妊娠出産、経済的に困窮というシングルマザーにならない様に、寂しさから変な男に引っ掛からない為にどうするか、大学生を交えて真剣に話し合ったり、色々難しい子もいるのだけど、共に成長しようを俺たちの合言葉にしてる。
 その中で真面目に付き合える子を見つけられたらと思うよ。」
「そういう事なら手助けしたいが、恵まれた環境に有る俺では難しいのかな?」
「いや、藤本も谷口も家庭環境に問題はないだろ、まあ、藤本は彼女達の前では兄貴自慢を封印してるし、谷口もそれなりに気を使ってるけどね。」
「なら、俺に手伝える事が有ったら声を掛けてくれよ、チーム赤澤と向き合って見て、自分に何が出来るのかまだ見えてなくてさ。」
「そうだな、クラスの連中とは全く違う環境で育って来た子ばかりだから戸惑う事が有るとは思う、でも視野を広げる事には繋がると思うよ。」

 森はすっかり変わった。
 自分は…、視野を広げ考えて行かないと、ただの面白くもない真面目な高校生のままだ、前は何となく進学して無難に就職して、というぐらいにしか考えていなかったのだが。
 社会の一員としては森の方が自分より恰好良くなっているのかも知れない。
 まずは自分に出来る事を考えてみるか…。
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鈴木正信-03 [F組三国志-07]

 チーム赤澤設立総会、午後は興味の有るプロジェクトの詳しい説明を聞く時間では有ったが、自分はF組三国志のリーダーと言うことで、マスコミ向けの会見に同席。
 自分に質問が来る可能性は低いが緊張している。
 型通りの挨拶の後、予想していた質問に対し、主に省吾リーダーが応えていたのだが…。

「まだ、お若いのにリーダーが自信たっぷりな裏には何が有るのでしょうか?」
「そうですね、自分は中学生の頃から小さな少年団での活動を通してリーダー論に興味が有ったのですが、それを学ぶ過程で武田信玄の『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』という言葉に触れまして、何か納得というか心に残っています。
 このチーム赤澤の結成には色々な人からの言葉が有りまして、今まで大人達が作ってきた枠組みに囚われない心で、明日の日本を考えて行けたら、と話した時に。
 それなら、その中心はしがらみだらけの大人より、高校一年生ぐらいが丁度良いとか話しながら、自分がリーダーとなるのなら、城にも石垣にも堀にもなるという様なことを言って下さる方が少なからず、そこから盛り上がりましてね。
 自分一人の力では何も出来ませんが、大勢集まったからと言って烏合の衆ではどうにもなりません。
 集まって下さったみなさんが大きな目標を見失うことなく、それぞれの分野で力を貸して下されば、この国の将来にプラスになることが実現出来ると思いまして、生意気な存在では有りますがリーダーとして恥ずかしくない行動をと考え、少し偉そうなことも話させて貰っています。」
「それでは、お父さまの赤澤教授にお伺いしたいのですが、省吾くんがこの様な組織のリーダーになるという事に関してどの様に考えておられるのでしょうか?」
「そうですね、今は年齢によるアドバンテージが使えると考えています。
 省吾と同じ事を普通の大人が話しても大して興味を持って貰えないでしょう、でも普通の高校一年生の言葉なら、高校一年生なのに、となるのでは有りませんか、このアドバンテージが使える内に組織を大きくし確固たるものに出来れば、日本の社会に影響力を与える存在になると考えています。
 省吾が語る事は、彼を取り巻く大人達が賛同している事です。
 省吾では、まだ若くて頼りないと思われる方もおられるでしょうが、チームメンバーが石垣となり城となって支えるのですから、そうですね、大臣や官僚に足を引っ張られている総理大臣よりは余程良い形になりつつ有りますよ。
 国政の手本となる組織を省吾中心に作り上げたいと、堀中瀬十郎先生始めチームメンバーは考えているのです。」
「赤澤教授や堀中教授はチームの顧問と考えれば良いのですか?」
「いえいえ、ただのメンバーです、大人が顧問では、今まで大人達が作ってきた枠組みに囚われない心で、とはならなくなってしまいます。
 我々も省吾からの問い掛けに対して考えているのですよ。」
「省吾くんからの問い掛けと言いますと?」
「例えば国会の在り方。
 私達は現在の形を当たり前のものだと思いがちですが、昔からの慣習のままに無駄な時間と無駄なお金を使い、働き方改革とか言いながら官僚に負担を強いていても、それを国会議員は何とも思わない、野党のくだらない質問の為に大きな無駄が発生していてもです。
 私なりに改善案を考えたのですが、省吾からは小手先の変更ではなく、政党政治そのものから見直す抜本的な改革をしないと意味が無いと言われましてね。」
「省吾リーダーはどの様にお考えで?」
「まずは教育です、現在の知力重視の学校教育の場では、個人と社会の関係を正しく理解することが出来ません。
 日本人は民度が高いと話す人がいますが、本当に民度が高かったら、今思い浮かぶ社会問題はとっくに解決しているでしょう。
 知識も必要ですが、それ以上に人として在り方を、宗教を通してではなく論理的に学術的に研究し、より良い社会を形成して行く、簡単に言えばネット上に誹謗中傷が溢れない社会を自然に構築して行けたら良いですね。」
「政治については?」
「政治家や官僚の民度を上げないと政治改革は不可能だと思いませんか?」
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鈴木正信-04 [F組三国志-07]

 民度か、省吾さまは学校の成績が悪くても、人として素晴らしい人がいるし、その逆もと話してた。
 高学歴で地位や名誉の有る人でも違法行為をするし、社会の為に働く事が前提の国会議員が党利党略私利私欲の為に頑張っているのはどうかとも…。

「省吾リーダー、ここから人の民度を上げるのは、今の世の中を見回すと難しい事の様に思えるのですが。」
「それでも、人を育てる教育を推し進めて行けば変わって行くと考えています。
 より良い社会を形成する為には、まず集団と個人の関係を学習して行く必要が有ります。
 いじめで自己の優位性を確認している子がいるとしたら、それはその様な環境を大人が作り出しているからです。
 教育と言えば知力を重視しがちですが、より良い社会人を目指して人間性を伸ばす教育をしていれば、いじめは起こりにくくなる筈、いじめが起きていると言う事はそれが出来ていないのです。
 いじめる側に寄り添ってその子の環境を考えてあげるとか出来れば、でも今の教師は無駄な評価作業などに時間を取られ、人を育てるという観点に立ててない人が少なく無いみたいです。」
「チーム赤澤として、教育改革を考えておられるという事でしょうか?」
「そうですね、人が変わらないと社会は良い方向へ向かって行かないと考えています。
 ここで学力は関係有りません。
 人として、内面の恰好良さを重視する教育システムを構築したいですね。」
「学力を軽視しても大丈夫ですか?」
「軽視はしませんが、学ぶことに対してもっと自由で良いと思います、学校のカリキュラムに合わない子が大勢いるのですから。
 今のカリキュラムは、どんな職業を選択しても問題ないようにと組まれているのでしょうが、中学高校生ぐらいになれば色々見えて来ます。
 将来の職業を意識している人もいるでしょう。
 大学への進学を考えて無い人に対して、なぜこのカリキュラムなのかを論理的に説明出来る教師はどれ程いるのでしょう。
 今までがそうだったから、では全く論理的では有りません…。」

 省吾リーダーの話は初めて聞いた内容ではなく…。
 自分は親や教師に言われるがまま真面目に学習と向き合って来た、だが学校の成績は良くても実際には何も考えて来なかったのではないかと思い始めている。
 大人になる、社会人となって責任ある立場になって行く、例え会社で出世が出来なかったとしても、結婚し子どもが出来れば責任ある立場になる訳で。
 社会の中で自分はどんな仕事をし、どんな立場で…、自分には何が出来るのか。
 F組の仲間とも話し合う中で、自分の中の価値観が変わり始め、大人しくて真面目なだけの自分、大した目標を持っていなかった自分に気付かされて…。
 高校生の自分にも出来ることが有るのではと思い始めてはいるが、考える事が多過ぎ、尚且つ学校の学習とは違い明確な答えの無い問題も多い。
 由香さんは、児童養護施設でのボランティアを通して学校だけが学ぶ場ではないと痛感したそうだが。
 やはり自分も森と一緒に…、う~ん、由香さんもボランティアを続けるのかな…。
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鈴木正信-05 [F組三国志-07]

 記者会見では、少しだけ質問を振られたが答えに窮する様な質問では無く無難に答えられた。
 終了後はプロジェクトF関係者が集まっている所へ…。

「正信、記者会見はどうだった?」
「まあ、省吾さまだからな、無難に終わったよ。
 美咲さまとの話を振られても堂々と応えていて、結婚や子作りは高校を卒業してからだそうだ。」
「記者からの反応は?」
「早過ぎないかという声が出たが、高齢出産で苦労させたくないし、早ければ両家の親が子育てを手伝ってくれると言う話を交え、家族の在り方を語ってくれたよ。」
「そっか、高校一年生であそこまで結婚や出産の事を考えてるカップルは少ないよね。」
「由香さんは考えてないの?」
「まだ無理だわ。」
「はは、藤本はお兄さま一筋だもんな。」
「仕方ないでしょ、兄貴以外では省吾さまぐらいしか思い浮かばないもの。」
「その二人と比べられてもな、藤本、適当に妥協しろよ。」
「まだ、焦ってないわ、あやかとは違うからね。」
「あっ、省吾さまと美咲さま。」

「みんな、今日は有難うね。」
「省吾さま、来て良かったで~す。」
「省吾さまも美咲さまもかっこよかった。」
「はは。」
「ぜんぜん緊張してなかったみたい。」
「まあ、美咲との打ち合わせはきちんとしておいたからね。」
「記者会見では答えにくそうな質問が出たのでしょ。」
「それも想定の範囲内、変に言葉を濁したりするより、はっきり話した方が良いと思ってたからな。」
「これでチーム赤澤は大きく動き出すのね、リーダーとして大変じゃないの?」
「トップリーダーが雑用で忙しくなる様な組織にはしないから、それ程でもないさ。」
「チームには優秀な人の参加が多いとか?」
「ああ、プロジェクトをお任せ出来る人が集まって来ているよ。」
「考え方や価値観に相違が有ったりしないのかな。」
「そう言ったことは歓迎してるんだ、一つの物事に対して違った角度から掘り下げ行く、全く違う結論に至るのかも知れないが、似た様な結論に行きつく可能性も否定出来ない。
 全く異なる主張を一つの組織内で吟味出来る環境が有る事は理想だと思ってね、見落としや勘違いを減らせると思うんだ。」
「組織内に分裂の火種を抱え込むなんてことにはならないのかな?」
「そこが重要だと考えている、他者の考えを尊重して検討出来るだけの度量を、チーム赤澤のメンバーには持って欲しいと考えてはいるが、人の心理を考えると簡単なことではないだろ。」
「それでも、省吾リーダーの下に集まった仲間なのだから、と考えてくれたら何とかなると言うことだね。」
「これから色々なことが起こると思ってる、そんな問題に対して上手く対処出来るかどうか、リーダーとしての資質が問われるのだろうな。」
「そんな時にはリーダーを支える人達の力量も試されるのでしょ?」
「そうだね。」
「リーダーを取り巻く石垣の強度はどうなんだ?」
「う~ん、美咲はどう思う?」
「勿論全然心配してないわよ、皆にはあまり話して来なかったけど、夏休みから今日まで…、そうねチームの石垣や城を強固なものにする為に私達は随分時間を使って来たのよ。」
「嶋社長や堀中先生を通して経営者や学者と話し合って来たと、記者会見で話していたわね。」
「ええ、皆さんからは省吾に対する期待感がひしひしと伝わって来たわ、創業社長の人達からは、企業の次期リーダー候補でさえ、事なかれ主義の人が少なく無いとか、省吾はそんな話にも丁寧に応えてきたの。」
「それが、今日の総会に繋がっているという事なのか…。」
「あっ、社長さん達との会には美咲さまもご一緒だったのね。」
「勿論よ、特別な用がない限り私達が何時でもどこでも一緒に動くってことを、高山さん達もOKして下さったから。」
「好きな人といつも一緒なんてうらやましいな~。」
「でもね、リーダーの妻として立ち居振る舞いに気を付けなければいけないし、大人の人たちの席は結構疲れるものなのよ。」
「はは、リーダーの妻なんて平気な顔で、まだ婚約中でしょ。」
「大学生のお姉さま方の中には、省吾のことを狙ってる人が何人かいるみたいで油断出来ないの。」
「美咲さま、そんなに大変なら代わって差し上げましょうか?」
「却下~!」
「ははは。」

 大学生のお姉さんだってお二人の間には入れないと思うのだけど、美咲さまはそんな事を楽しんでる節が有る。
 カップル成立の頃は真っ赤になってた二人が今では夫婦みたいな会話もしてるし。
 二人とも大好きだからこのまま幸せでいて欲しいものだ。
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鈴木正信-06 [F組三国志-07]

「ねえ、私達が記者会見に出てる間、プロジェクトFはどんなだったの?」
「私はF組三国志からの拡大に関するグループに参加してたのだけど、F組での取り組みが学年全体に上手く広がるかどうか検討というか、ね、淳一くん。」
「学年の大半が参加するとの予測は有るが、まだ制限してるし不確定要素も有る。
 人の心理をどう読むか、素直に省吾さまと共に歩こうと思わない人がいても不思議ではないとか。
 まあ、番組制作スタッフがチーム赤澤の紹介番組をどう作り上げてくれるかによって変わるだろうから、拡大作業を続けながら次のステージへの準備を進めておくしかない。
 今日は、それを効率良く進めて行く作戦を練ってたという感じかな。」
「二年生になってから形を固めて行けば良いのだから焦る必要はないさ。」
「でも学校側としては来年の一年生も視野に入れているのでしょ。」
「その頃までにはチーム赤澤の考えが広まってる様にするさ、プロジェクトFメンバーが何とかしてくれるよ。」
「テレビ番組の宣伝効果に期待するのね…、ねえ、本の発売日は確定したの?」
「テレビ放送のタイミングに合わせるそうだ、番組を見てすぐ注文出来たり本屋で買えるのが理想だろ。
 ただ、どれぐらい売れるかは予測不能、チーム赤澤のメンバー増加率を見て初版は少し多めにするとは聞いているけどね。」
「二冊目や三冊目も進んでいるって聞いたけど。」
「ああ、三冊目が校閲に入った所だよ。」
「そんなに簡単に書けるものなの、本って。」
「中学生の頃から、親父に見て貰って大学の卒業論文を書くつもりで考えをまとめて来たからね。
 早めに作っておけば大学四年になって焦らなくて済むだろ。」
「早めにね…」
「論文として書いて来たものを、出版社の編集と相談しながら表現を柔らかくし、まとめ直すのに時間は掛からなかったよ、校閲が入るという安心感も有ったのだが、美咲と麻里子にチェックして貰ったからか校閲も簡単に済んでね。」
「チェックと言っても私が直す所なんてほとんど無かった、でも出版社の見学をさせて貰えてラッキーだったわ。
 高校生目線ということで雑誌に関わらせて貰う事にもなったし。」
「へ~、麻里子は夢に向かって一歩前進したのか。」
「参考資料と言うことでF組通信や遠足のまとめとかも編集部に渡したからね。
 因みに本の表紙とかには静の絵を採用して貰った、表紙のモデルは美咲なんだ。」
「身内で固めたのか。」
「チーム赤澤メンバーに喜んで貰えるし、静はその報酬で新会社の株主になってくれるからね。」
「沢山売れると良いけど、美咲さまの感触はどう?」
「高校一年生が真面目な大学生達のリーダーになった、と言うのが一つのキャッチコピーなのだけど、一冊目は大学生がチーム赤澤に参加したくなる様な内容なの、チーム赤澤が目指していることを大まかに紹介しつつ、大学生に何が出来るのか、という問い掛けもなされていてね。
 うちの両親にも目を通して貰ったけど、改めて省吾のファンになったと話してたわ。」
「二冊目以降は?」
「一冊目で問題提起した各項目について踏み込んで行く形、一冊目よりは難しいけど、高校生にも読んで欲しいかな。」
「本が売れたらチーム赤澤はメンバーを増やすことになるだろうし、メンバーが増えれば本は売れる。
 省吾さま、これは儲かりそうですね。」
「捕らぬ狸の皮算用とならなければ良いが、半分はチーム赤澤に半分は美咲との結婚費用にと考えている、まあ、どちらも直ぐに大金が必要という訳ではないから、売れなくても困らないけどね。」
「いやいや沢山売って、そうだな十万冊突破記念パーティーとかやりましょうよ、費用は出版社持ちで。」
「十万部か…、二冊目以降は兎も角、一冊目が何冊売れるかでチーム赤澤の勢いが分かると考えていてさ、それは大学生達も意識しているみたいだから、口コミで広げてくれると思う、本は知人をチーム赤澤に誘う手段でも有るからね、でも、十万部までは難しいかも。」
「省吾、弱気じゃだめよ、みんな、省吾と私の家は友人を呼べる広さにしたいから協力お願いね。」
「美咲さまに言われなくても、父さんは会社の人に広めると話していて、我が家の目標は最低二十冊、本の内容とテレビ番組の内容によってはそれに上乗せするのよ。」
「うちは取り敢えず百冊だとか、省吾リーダー、うちの父でさえ百冊なのだから、社長さん達はそれなりに期待出来るのでしょ。」
「もうすぐ中小企業の社長が百人を越えるとは言え、チーム赤澤の事を全く知らない人が手に取ってくれないとな…。」
「テレビ番組って全国放送でしょ、そうね、省吾さまと美咲さまの新居には広いリビング、ホームパーティーを開き易い様にして、静の絵を飾り…、その絵に合わせたデザインは私に考えさせてね。」
「それだけ売れると考えてるのか?」
「当たり前でしょ、チーム赤澤がこの国に一石を投じるのよ。
 ねえ、百万部売れたら大きな家だって買えるよね?」
「どうかな、考えてるエリアは結構土地が高くてさ。」
「そうなんだ、う~ん、私、土地を買って家を建てるというプロセスを研究してみようかな。」
「面白そうだな、自分には全然無関係だと思ってたけど、省吾さまの家という事なら…、それを通して社会の仕組みを知る事に繋がるね。」
「美咲さまはどの辺りに家を建てるおつもりで?」
「互いの実家から遠くない所、ほら、スープの冷めない距離って言うじゃない。」
「なるほど、それなら…。」

 遊びの要素が強そうでは有るが、一つのプロジェクトが立ち上がりそうだ。
 チームリーダーの家が人の集まれる環境というのは理想なのかも知れない。
 広い家となると億を超えるお金が必要になりそうだが、チーム赤澤のメンバーは勢い良く増加している。
 大学生だけでなく、F組メンバーの家族からも広がり、登録メンバーはすでに一万人を越え、大学生が中心だが、社長や大学教授も参加している組織。
 うちの親父はチームのサイトを見て活動が広がって行くのを確認するのが楽しいと話していた。
 理由を聞くと、今まで政治や社会問題に閉塞感を感じていたと言う。
 親父と政治や経済の話をする様になったのはチーム赤澤のお蔭だ、身近に自分の視野を広げてくれる存在がいたのに、それを全く意識していなかったと気付いたが、親父も省吾リーダーの考えに触れるまでは考えていなかったと話してくれた。
 まあ、兎にも角にも今は自分に出来ることを見つけないと、そう自分に思わせてくれたチーム赤澤設立総会は無事に終了した。
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纐纈榛香-01 [F組三国志-07]

 高校に入学した頃は高校生になって何か変わるのかな、とぼんやり思っていたのだが、チーム赤澤を紹介するテレビ番組で私のダンスシーンが使われ…。

「榛香のダンスシーン、ついに百万回再生を突破したわね。」
「テレビ番組の影響は大きいと改めて感じてるわ、F組の文化祭関係では私のとこだけ切り取って使って貰えて、YouTube担当スタッフが映像を上手く編集してくれた事も有るけど。」
「芸能事務所からスカウトの話しが来てるのでしょ、榛香は高身長でスタイルが良くて、ダンスも上手いから不思議じゃないけど。」
「私のダンスなんて、人と比べられたら恥ずかしいレベルなのよ。」
「そうなの、テレビで見かけるアイドルより全然上だと思うし、ルックスだって負けてないわよ、それでどうするの?」
「ダンスは好きで続けて来たから、それを見て貰えるのは嬉しいのだけど、アイドルと言うのはちょっとね、知らないおじさんと握手するのが仕事だなんて。」
「そう言われてみれば気持ち悪いかも、ねえ、正信くんはどう思う?」
「う~ん、彼女が出来なかったら、お金払って握手して貰いに行く事になるのかな…。」
「握手ぐらいならして私がしてあげようか?」
「だ、大丈夫です。」
「ふふ、真由美と握手したら骨折しそうだものね。」
「失礼ね、そんなに握力ないわよ、まあ、お金払ってまで握手したくなる女ではないという自覚は有るけど。」
「食欲に対して正直過ぎるものね。」
「ねえ、正信くん、アイドルとの握手って性欲が関係すると思う?」
「うっ、真由美さん、そういう話しは恭太だったら喜ぶと思うけど…。」
「でも、人間の本能なのだから目を逸らしていては駄目なのよ。」
「そうか…、そりゃあ好きな女の子と手が触れ合ったらドキドキするだろうな。」
「この前ね、風俗は必要かどうかと言うテーマで大学生達と話していて、欲求のはけ口が無いと困る人がいるのかもという結論に達してさ。」
「だからと言って、榛香さんがそう言う目で見られたりするのは嫌だな、握手するだけだとしても。」
「見るだけなら問題ないのでは?」
「えっ、服を着ているのだろ。」
「あっ、今、変な想像したでしょ。」
「し、してないよ。」
「想像だけなら良いんじゃない、私だって、哲平さんと省吾さんが…。」
「真由美、腐女子的発言は正信くんを困らせるだけよ。」
「そう言う榛香はどうなの?」
「性の話は真面目に考えてるわ、真面目にね。」
「あっ、真面目にって二回言った、私が真面目じゃないとでも?」
「真面目なの?」
「真面目に避妊の知識とか学習してるわよ、ただそれを実践で活かせるかどうかは別問題、相手が誰でも良いなんてのは、人としてどうかと思うでしょ。」
「真由美は、誰でも良いと思い始めているのかと…。」
「失礼ね!」
「それでスカウトの話、榛香さんはどうするの?」
「芸能事務所関係は断ってるのだけど、省吾さまが淳一くんと亜美の為に立ち上げたマネジメント部でフォローするから、暫くユーチューバーとしてダンスを披露して行かないかって。」
「稼げるかどうかは別として趣味的にやってくのなら楽しそうだね。」
「ええ、私の動画が上げられている所に、チーム赤澤メンバーの作品を上げて行く、当分の間は収益性を意識しないで、趣味的に可能性を考えたいそうよ。」
「そうか、百万回再生だと幾らぐらいになるのかな?」
「大金にはならないでしょうね、それにテレビのお蔭で再生回数が伸びてるだけだから、次からは大して閲覧されないと思う、それでも省吾さまが可能性を考えてくれるのだから楽しみなの。」
「何か案を教えて貰った?」
「うん、今の所はチーム赤澤の活動内容を紹介とか、一つ一つの閲覧数は伸びなくても本数が増えれば、チーム赤澤の宣伝をしながら稼げるかもって。」
「少人数で頻繁にアップして行くのは大変だけど、チームで取り組むのなら個人負担が少なくて済むね、文化祭のステージも編集して上げて行くのかな。」
「本番では二十人ぐらいのアマチュアカメラマンが色んな角度から撮影していたでしょ、そのお蔭で編集に時間が掛かっているのだとか。
 まずは、チェロとピアノみたいに独立して紹介出来るパートを先にアップして行くそうだけど。」
「CDの宣伝を兼ねる訳だね、あれもテレビで紹介して欲しかったけど、費用と手間を抑えつつ最大限の演出効果を考えたダンスシーンの方が、番組で紹介するには相応しいものだったからな。
 榛香さん、あの演出は誰の案なの?」
「扇風機を使うのは嶋くん、工場で使ってるのを貸してくれてね、その風に舞う物体は理沙が準備も後片付けも楽な様に工夫して用意してくれて。」
「あっ、動画で紹介してるそのままなのか、ホントは大学生の案かと思ってた。」
「そんなズルはしないわよ、そこに当てた光線の具合は男子がかなり試した結果、少し時間が掛かったけど実験してるみたいで楽しかったわ。」
「衣装は?」
「あれは哲平さんと静さんの作品、二人で工夫したそうなのだけど、和服の着付けみたいに複雑で自分では再現不可能。
 ただの布を紐を使って衣装にしただけなのに、踊り易くてびっくりしたわ、激しく踊っても問題なかったしね。」
「へ~、どんな仕組みなのか興味が有るのだけど。」
「もし衣装がほどけ落ちたらとか期待してたのでしょ。」
「真由美さんとは違うよ。」
「もし落ちても普段使ってるレオタードを下に着てたから問題無かった、と言うより途中でレオタード姿になるという案も出たのだけどね。
 布を身に纏って行く過程は録画して有って近日中に公開、少しずつ公開して行く事で全体の再生回数を増やそうという企みなの。
 衣装がほどかれ、カーテンになり部屋の窓に付けられるまでの映像もね。」

 私達の文化祭、留美が中心になって仕上げたステージのテーマには、少ない費用、手間を掛けずに最大限の効果を生み出す工夫というものも有った。
 夏休みにはその準備活動を結構楽しんだので、手間が掛かってないとは言えないが、少ない費用と最大限の効果は実現出来たと思う。
 私のダンスパートだけでなく、ステージ全体に様々な工夫が凝らされていたが、それは自分達の持っている知識を生かし、研究しながらステージを作り上げて行こうと言う省吾さまからの提案から始まったもの。
 みんなで取り組んだ文化祭はとても楽しかったのだ。
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纐纈榛香-02 [F組三国志-07]

 十二月、定期テストが終わり私達は解放感に浸っている。

「榛香、例の動画、まだ再生数が伸びてるみたいね。」
「ええ、文化祭関連の動画を少しずつ上げているのが注目度を維持することに繋がってるみたい。
 淳一くんと亜美の演奏も再生回数が伸びてるでしょ、理沙はCD買ったの?」
「親が一早くね、少し高くなる代わりにハンディの有る人達の作品がおまけで付いて来る限定版を手に入れたわ。」
「おまけ製作費の他、売り上げの一部が作業所に寄付されるものね、うちは巾着袋にしたけど理沙の家は何にしたの?」
「水彩画、トイレに飾って有るのだけど、お母さんが気に入って違う作品を発注して有るのよ。
 工房プロジェクトが、社会福祉にも目を向けるとは思いもしなかったな、福祉作業所におまけを発注とはね。」
「割高でもおまけ付きが良く売れてるのでしょ、チーム赤澤の趣旨が広く理解されてる証拠だわ。」
「うん、作業所の人達も喜んでいたわよ。」
「行ったの?」
「お母さんが社会見学のつもりでって、絵をお願いする時にね。」
「どんな感じだった?」
「ハンディが有ると言っても事情は様々、近寄り難い人もいたけど。
 所員の人はCD制作チームからの、材料費込みで二百円で買い取るという依頼が有り難かったと話してみえて、おまけとして通用しそうな物を大学生スタッフと検討し、作業する人達が楽しんで取り組める物に出来たのだとか。
 その延長でね、工房の下請けとして業務提携も始めてるのよ。」
「業務提携?」
「例えば、榛香が選んだ巾着袋は、コンスタントに需要が見込めると判断して、作業所に他からの依頼が少ない時にどんどん作って貰う、材料は工房が古着とかの寄付を募ってね。
 数は多く無かったそうだけど、クリスマスの飾りを作って貰ったりとかも。」
「クリスマス飾りなら作るの楽しいだろうな。」
「工房が仲介したのだけど、多めに作ったとかで作業所にも飾って有ってね、これは私が作ったと話す人は、随分誇らしげだったわ。」
「へ~。」
「普段は、それ程楽しく無い作業が多いそうでね、でも仕事だから頑張っているのだとか。」
「そっか、一般の会社には就職しにくい事情が有っても出来る仕事が有るのね。」
「お母さんも工房プロジェクトのメンバーだから、手芸を教えたりして作業の幅を増やせないか相談して来たのよ、工房と福祉作業所が手を組めば今まで出来なかったことが出来るかも知れないでしょ。」
「理沙も手伝うの?」
「勿論よ、大地さんも賛成してくれてね、プロジェクト嶋の関係者にも声を掛けてくれてるの。
 障害者雇用にまで繋げられるかどうかは分からないけど、まずは作業所の運営が安定する様に、作業所名から名をとった、ひまわりプロジェクトがもうすぐ始動するからね。」
「どんなプロジェクトになるの?」
「経営学部の学生が運営状態を確認中、工房プロジェクトは何を発注するのが作業所の経営にプラスになるのか、実際に発注しながら検討中、プロジェクトFからも作業者達のスキルアップを考える人達が参加、勿論福祉系の学生も加わって、ひまわり作業所を日本一の作業所にするプロジェクト、一つを充実させる事に成功したら、そのスタイルを広げて行き、障害者雇用の問題と向き合って行くという事になるのかな。」
「現状には問題が有るということなのかしら。」
「プロジェクトが頑張っても簡単には解決出来そうにない問題は多いのよ。」
「そうなんだ。」
「障害者と一口に言っても、自立出来てる人もいれば親に頼り切っている人もいる訳でさ。
 結婚の問題もね。」
「そうか…、軽視したら真由美に怒られそう。」
「真由美?」
「真由美はね…、性の問題と真面目に向き合ってると話してたけど、ホストクラブに通えるだけの収入を得る為には、なんて話もしてて、理沙には嶋くんがいて無関係だろうけど。」
「そうね、でも、私達は真面目に向き合ってるわよ、妊娠にはまだ早いでしょ。
 付き合い始めてから、男の子の事情を教えて貰ったし、私も女の子の事情を話して来た。」
「エッチな話しも?」
「一般的に言えばそういうことかな、でも、子どもを産み育てるという事は大切なこと、人として自然な欲求でも有るけど、時にはコントロールが必要な訳で。
 榛香はどうなの、彼氏は出来たの?」
「前は外見だけで男の子を見ていたと、それではいけないと夏休みに気付いてさ。
 憧れてる人はいないでもないけど、理沙みたいに積極的にはね、まだ…。」
「ダンスで目立って、慎重になってるとか?」
「最近、この人は無いなとか、違うなって人ばかりが声を掛けて来るのよ。」
「そう言うものなのか…。」
「ねえ、理沙は嶋くんと付き合い始めて良かったと思ってる?」
「当たり前でしょ、大好きな大地さん、付き合い始めたら、それまで知らなかった良い面ばかりが目について。」
「嫌な所とか無いの?」
「全然、そりゃあ榛香の眼には欠点として映る所が有るかも知れないけど、完璧な人間なんて怖いわよ、省吾さまだって美咲さまに甘えてる時も有るでしょ。」
「そうよね…。」
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纐纈榛香-03 [F組三国志-07]

 F組での話題は真面目なものが多い。
 テレビドラマの話しで盛り上がる事も有るが、チーム赤澤関係で話題は豊富だ。

「梨乃、プロジェクト梶田関係の先輩はどう?」
「どうって?」
「カッコ良い人いた?」
「まあね、でも高一では対象外みたい、う~ん、榛香なら分からないか…。」
「ねえ、プロジェクト梶田は終了みたいな話を耳にしたのだけど。」
「そうね、立て直しの第一段階が終了して、プロジェクト梶田は解散、メンバーはそのままプロジェクト嶋の一部として活動を続けて行くの。」
「じゃあ、会社はもう安泰なのね。」
「まだ油断は出来ないのだけど、うちの社長は嶋社長の描く中小企業連合構想に協力して行く方向でね。」
「うちの社長って、お父さんなのでしょ。」
「会社の話をする時は社長よ、社員の前では絶対お父さんって呼ばない事にしてるし。」
「そっか、で、プロジェクト嶋は?
 そっち方面の事は全然分からなくてさ。」
「普通の高校一年生が興味を持つ様な話ではないからね。
 このエリアは中小企業が多いのだけど、それぞれ様々な問題を抱えているのよ。
 基本、それぞれ事情も違うから自力で解決して行かなくてはならないのだけど、嶋社長は協力し合い組織化して行く事で中小企業の安定度を増して行こうと考えてらっしゃるの。」
「えっと…。」
「F組三国志でも、チーム同士はライバルで有りながら協力してたでしょ。
 それと同じこと、どんな形で協力し合えるかは、まだ模索している段階。
 でもうちは、嶋くんが間に入ってくれて株式会社嶋製作所と社員の交流をしているの、正直言って今は嶋くんのとこにあまりメリットがないのだけど、急に人手が必要になった時とか、互いに応援し合えたらと考えていて、他の会社とも研修の形で話を進めているのよ。」
「全く違う会社なのでしょ。」
「ええ、そこなのよ、資本提携してない企業同士の交流なんてなかなか出来ないこと、そこを嶋社長は柔軟に考えておられてね。」
「う~ん、私も学んでおくべきなのかな。」
「榛香は将来に向けて考えてる事は有るの?」
「まだ、全然、アイドルは目指さないから、芸能プロダクションとかからのお誘いは全部断ると決めたぐらいでね。」
「YouTubeの収入はどう?」
「まだ具体的には分からないのよ、チームとして取り組んでいるから、役割分担と収益の配分といった事は学習させて貰ってる。
 実際にお金が動き始めたら収支報告が見られる様になるのだけどね。」
「そっか、まだお小遣いになってないのね。」
「そう言う梨乃はどうなの?」
「アルバイトではなく家の手伝いという事を学校に報告した上での見習社員。
 頂いた給料で、工場に花壇を作ったりしてるのよ。」
「社長令嬢として労働環境に気を配っているのね。
 でも、花壇の維持って大変じゃないの?」
「工房プロジェクトが協力してくれてるから大丈夫。
 メンバーは売れる物なら何だって扱うという姿勢で、花の苗も商品ラインナップに加えようと考え試行錯誤中。
 ひまわり作業場の近くに小さな畑を確保する話が進んでいて、利益より、作業所の作業バリエーションを増やす事がメインなのだけどね。」
「ひまわりプロジェクトの一環でも有るのか…。」
「社会的弱者に配慮しつつ収益を上げて行くって簡単なことではないのだけど、省吾さまは人と社会との関わり合い方に関する提言もしてるでしょ。
 その中の小さなボランティアという取り組みが、工房プロジェクト中心に広がり始めてるのよ。」
「へ~、小さなボランティアか…。」
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纐纈榛香-04 [F組三国志-07]

「榛香、うちも小さなボランティア活動に助けられた様なものでね。」
「プロジェクト梶田が?」
「ええ、学生さん達は実習や研究という気持ちで参加してくれたのだけど、実際にはそれと関係のない、倉庫の整理にも協力してくれてね。
 本当なら人件費が必要になる作業を、ささやかなお礼だけでして下さって。
 でね、一緒に作業した大学生の人が話してくれたのは、昔の村落共同体の話。」
「状況によっては運命共同体でも有ったのよね。」
「うん、今は税金を使って行われている道路の維持管理とかでも、村落共同体では村人が協力し合って行っていたのでしょ。」
「街道は事情が違うだろうけど、生活道路は自分達でするしかなかったのでしょうね。」
「地域社会と個人が密接に関わっていたのよね、でも今は、それ程密接ではない。
 隣に住んでる人が何をしてる人なのか知らないまま生活している。
 でも、それって健全な社会なのかって。
 子どもが居れば学校を通して親同士の付き合いも有るけど、ワンルームに住んでる独身者にとって地域社会との繋がりは、特に都会に於いては皆無に等しいでしょ。」
「そうね。」
「小さなボランティア活動は無理なく、少しずつでも人との交流の場を広げて行く活動でも有ってね、例え月に一度だけ社会の為に無料奉仕するとしても、その場を通して個々人の視野を広げたり出来るからと、新たなプロジェクトチームを結成して行く方向なのよ。
 チーム赤澤のメンバーが小さなボランティア活動に参加し易い様、ひまわりプロジェクトや児童養護施設などと連絡を取り合う、工房のメンバーも乗り気で理沙はお母さんと一緒にひまわり作業所に顔を出したりしてるの。」
「ええ、理沙から少し聞いたわ。
 そんな話を聞かされて…、私は何もしてないのだけど…。」
「年に一回児童養護施設の子達にダンスを教えるだけでも良い、そんなレベルで考えてみてはどう?」
「そっか、無理なく、なのよね、情報は新たなプロジェクトで整理されて発信されるという事なのかな。」
「そうなって行くと思う、でも、実際に活動してる人達に聞いてみるも良いと思う、私がしてるのは工房の掃除ぐらいで参考にはならないけど。」
「そうね、由香にも聞いてみるわ、にしても、梨乃ってお掃除、好きなの?」
「ふふ、そうね、綺麗にするのは好きみたい、でも工房では掃除や片付けの工夫もしてて面白いのよ。
 業務用掃除ロボットの開発チームが実験をしてて、うちの工場でも試験中。」
「へ~、家庭用のとは違うのかな?」
「全く違うの、大きさとかもね、今有るロボットの改良だったり、特殊なのを新規に開発とか。
 色々な工場で使えそうな汎用型だけでなく、特殊なのもね。
 将来的には工房として請け負って、設計から製造まで世界で一つだけのロボットを作りたいってチームの人達は張り切ってるのよ。」

 チーム赤澤のメンバーはそれぞれ目標を持ってる人が多い。
 だが自分にはまだ目標と言えるものが無く…。
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