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纐纈榛香-01 [F組三国志-07]

 高校に入学した頃は高校生になって何か変わるのかな、とぼんやり思っていたのだが、チーム赤澤を紹介するテレビ番組で私のダンスシーンが使われ…。

「榛香のダンスシーン、ついに百万回再生を突破したわね。」
「テレビ番組の影響は大きいと改めて感じてるわ、F組の文化祭関係では私のとこだけ切り取って使って貰えて、YouTube担当スタッフが映像を上手く編集してくれた事も有るけど。」
「芸能事務所からスカウトの話しが来てるのでしょ、榛香は高身長でスタイルが良くて、ダンスも上手いから不思議じゃないけど。」
「私のダンスなんて、人と比べられたら恥ずかしいレベルなのよ。」
「そうなの、テレビで見かけるアイドルより全然上だと思うし、ルックスだって負けてないわよ、それでどうするの?」
「ダンスは好きで続けて来たから、それを見て貰えるのは嬉しいのだけど、アイドルと言うのはちょっとね、知らないおじさんと握手するのが仕事だなんて。」
「そう言われてみれば気持ち悪いかも、ねえ、正信くんはどう思う?」
「う~ん、彼女が出来なかったら、お金払って握手して貰いに行く事になるのかな…。」
「握手ぐらいならして私がしてあげようか?」
「だ、大丈夫です。」
「ふふ、真由美と握手したら骨折しそうだものね。」
「失礼ね、そんなに握力ないわよ、まあ、お金払ってまで握手したくなる女ではないという自覚は有るけど。」
「食欲に対して正直過ぎるものね。」
「ねえ、正信くん、アイドルとの握手って性欲が関係すると思う?」
「うっ、真由美さん、そういう話しは恭太だったら喜ぶと思うけど…。」
「でも、人間の本能なのだから目を逸らしていては駄目なのよ。」
「そうか…、そりゃあ好きな女の子と手が触れ合ったらドキドキするだろうな。」
「この前ね、風俗は必要かどうかと言うテーマで大学生達と話していて、欲求のはけ口が無いと困る人がいるのかもという結論に達してさ。」
「だからと言って、榛香さんがそう言う目で見られたりするのは嫌だな、握手するだけだとしても。」
「見るだけなら問題ないのでは?」
「えっ、服を着ているのだろ。」
「あっ、今、変な想像したでしょ。」
「し、してないよ。」
「想像だけなら良いんじゃない、私だって、哲平さんと省吾さんが…。」
「真由美、腐女子的発言は正信くんを困らせるだけよ。」
「そう言う榛香はどうなの?」
「性の話は真面目に考えてるわ、真面目にね。」
「あっ、真面目にって二回言った、私が真面目じゃないとでも?」
「真面目なの?」
「真面目に避妊の知識とか学習してるわよ、ただそれを実践で活かせるかどうかは別問題、相手が誰でも良いなんてのは、人としてどうかと思うでしょ。」
「真由美は、誰でも良いと思い始めているのかと…。」
「失礼ね!」
「それでスカウトの話、榛香さんはどうするの?」
「芸能事務所関係は断ってるのだけど、省吾さまが淳一くんと亜美の為に立ち上げたマネジメント部でフォローするから、暫くユーチューバーとしてダンスを披露して行かないかって。」
「稼げるかどうかは別として趣味的にやってくのなら楽しそうだね。」
「ええ、私の動画が上げられている所に、チーム赤澤メンバーの作品を上げて行く、当分の間は収益性を意識しないで、趣味的に可能性を考えたいそうよ。」
「そうか、百万回再生だと幾らぐらいになるのかな?」
「大金にはならないでしょうね、それにテレビのお蔭で再生回数が伸びてるだけだから、次からは大して閲覧されないと思う、それでも省吾さまが可能性を考えてくれるのだから楽しみなの。」
「何か案を教えて貰った?」
「うん、今の所はチーム赤澤の活動内容を紹介とか、一つ一つの閲覧数は伸びなくても本数が増えれば、チーム赤澤の宣伝をしながら稼げるかもって。」
「少人数で頻繁にアップして行くのは大変だけど、チームで取り組むのなら個人負担が少なくて済むね、文化祭のステージも編集して上げて行くのかな。」
「本番では二十人ぐらいのアマチュアカメラマンが色んな角度から撮影していたでしょ、そのお蔭で編集に時間が掛かっているのだとか。
 まずは、チェロとピアノみたいに独立して紹介出来るパートを先にアップして行くそうだけど。」
「CDの宣伝を兼ねる訳だね、あれもテレビで紹介して欲しかったけど、費用と手間を抑えつつ最大限の演出効果を考えたダンスシーンの方が、番組で紹介するには相応しいものだったからな。
 榛香さん、あの演出は誰の案なの?」
「扇風機を使うのは嶋くん、工場で使ってるのを貸してくれてね、その風に舞う物体は理沙が準備も後片付けも楽な様に工夫して用意してくれて。」
「あっ、動画で紹介してるそのままなのか、ホントは大学生の案かと思ってた。」
「そんなズルはしないわよ、そこに当てた光線の具合は男子がかなり試した結果、少し時間が掛かったけど実験してるみたいで楽しかったわ。」
「衣装は?」
「あれは哲平さんと静さんの作品、二人で工夫したそうなのだけど、和服の着付けみたいに複雑で自分では再現不可能。
 ただの布を紐を使って衣装にしただけなのに、踊り易くてびっくりしたわ、激しく踊っても問題なかったしね。」
「へ~、どんな仕組みなのか興味が有るのだけど。」
「もし衣装がほどけ落ちたらとか期待してたのでしょ。」
「真由美さんとは違うよ。」
「もし落ちても普段使ってるレオタードを下に着てたから問題無かった、と言うより途中でレオタード姿になるという案も出たのだけどね。
 布を身に纏って行く過程は録画して有って近日中に公開、少しずつ公開して行く事で全体の再生回数を増やそうという企みなの。
 衣装がほどかれ、カーテンになり部屋の窓に付けられるまでの映像もね。」

 私達の文化祭、留美が中心になって仕上げたステージのテーマには、少ない費用、手間を掛けずに最大限の効果を生み出す工夫というものも有った。
 夏休みにはその準備活動を結構楽しんだので、手間が掛かってないとは言えないが、少ない費用と最大限の効果は実現出来たと思う。
 私のダンスパートだけでなく、ステージ全体に様々な工夫が凝らされていたが、それは自分達の持っている知識を生かし、研究しながらステージを作り上げて行こうと言う省吾さまからの提案から始まったもの。
 みんなで取り組んだ文化祭はとても楽しかったのだ。
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