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纐纈榛香-02 [F組三国志-07]

 十二月、定期テストが終わり私達は解放感に浸っている。

「榛香、例の動画、まだ再生数が伸びてるみたいね。」
「ええ、文化祭関連の動画を少しずつ上げているのが注目度を維持することに繋がってるみたい。
 淳一くんと亜美の演奏も再生回数が伸びてるでしょ、理沙はCD買ったの?」
「親が一早くね、少し高くなる代わりにハンディの有る人達の作品がおまけで付いて来る限定版を手に入れたわ。」
「おまけ製作費の他、売り上げの一部が作業所に寄付されるものね、うちは巾着袋にしたけど理沙の家は何にしたの?」
「水彩画、トイレに飾って有るのだけど、お母さんが気に入って違う作品を発注して有るのよ。
 工房プロジェクトが、社会福祉にも目を向けるとは思いもしなかったな、福祉作業所におまけを発注とはね。」
「割高でもおまけ付きが良く売れてるのでしょ、チーム赤澤の趣旨が広く理解されてる証拠だわ。」
「うん、作業所の人達も喜んでいたわよ。」
「行ったの?」
「お母さんが社会見学のつもりでって、絵をお願いする時にね。」
「どんな感じだった?」
「ハンディが有ると言っても事情は様々、近寄り難い人もいたけど。
 所員の人はCD制作チームからの、材料費込みで二百円で買い取るという依頼が有り難かったと話してみえて、おまけとして通用しそうな物を大学生スタッフと検討し、作業する人達が楽しんで取り組める物に出来たのだとか。
 その延長でね、工房の下請けとして業務提携も始めてるのよ。」
「業務提携?」
「例えば、榛香が選んだ巾着袋は、コンスタントに需要が見込めると判断して、作業所に他からの依頼が少ない時にどんどん作って貰う、材料は工房が古着とかの寄付を募ってね。
 数は多く無かったそうだけど、クリスマスの飾りを作って貰ったりとかも。」
「クリスマス飾りなら作るの楽しいだろうな。」
「工房が仲介したのだけど、多めに作ったとかで作業所にも飾って有ってね、これは私が作ったと話す人は、随分誇らしげだったわ。」
「へ~。」
「普段は、それ程楽しく無い作業が多いそうでね、でも仕事だから頑張っているのだとか。」
「そっか、一般の会社には就職しにくい事情が有っても出来る仕事が有るのね。」
「お母さんも工房プロジェクトのメンバーだから、手芸を教えたりして作業の幅を増やせないか相談して来たのよ、工房と福祉作業所が手を組めば今まで出来なかったことが出来るかも知れないでしょ。」
「理沙も手伝うの?」
「勿論よ、大地さんも賛成してくれてね、プロジェクト嶋の関係者にも声を掛けてくれてるの。
 障害者雇用にまで繋げられるかどうかは分からないけど、まずは作業所の運営が安定する様に、作業所名から名をとった、ひまわりプロジェクトがもうすぐ始動するからね。」
「どんなプロジェクトになるの?」
「経営学部の学生が運営状態を確認中、工房プロジェクトは何を発注するのが作業所の経営にプラスになるのか、実際に発注しながら検討中、プロジェクトFからも作業者達のスキルアップを考える人達が参加、勿論福祉系の学生も加わって、ひまわり作業所を日本一の作業所にするプロジェクト、一つを充実させる事に成功したら、そのスタイルを広げて行き、障害者雇用の問題と向き合って行くという事になるのかな。」
「現状には問題が有るということなのかしら。」
「プロジェクトが頑張っても簡単には解決出来そうにない問題は多いのよ。」
「そうなんだ。」
「障害者と一口に言っても、自立出来てる人もいれば親に頼り切っている人もいる訳でさ。
 結婚の問題もね。」
「そうか…、軽視したら真由美に怒られそう。」
「真由美?」
「真由美はね…、性の問題と真面目に向き合ってると話してたけど、ホストクラブに通えるだけの収入を得る為には、なんて話もしてて、理沙には嶋くんがいて無関係だろうけど。」
「そうね、でも、私達は真面目に向き合ってるわよ、妊娠にはまだ早いでしょ。
 付き合い始めてから、男の子の事情を教えて貰ったし、私も女の子の事情を話して来た。」
「エッチな話しも?」
「一般的に言えばそういうことかな、でも、子どもを産み育てるという事は大切なこと、人として自然な欲求でも有るけど、時にはコントロールが必要な訳で。
 榛香はどうなの、彼氏は出来たの?」
「前は外見だけで男の子を見ていたと、それではいけないと夏休みに気付いてさ。
 憧れてる人はいないでもないけど、理沙みたいに積極的にはね、まだ…。」
「ダンスで目立って、慎重になってるとか?」
「最近、この人は無いなとか、違うなって人ばかりが声を掛けて来るのよ。」
「そう言うものなのか…。」
「ねえ、理沙は嶋くんと付き合い始めて良かったと思ってる?」
「当たり前でしょ、大好きな大地さん、付き合い始めたら、それまで知らなかった良い面ばかりが目について。」
「嫌な所とか無いの?」
「全然、そりゃあ榛香の眼には欠点として映る所が有るかも知れないけど、完璧な人間なんて怖いわよ、省吾さまだって美咲さまに甘えてる時も有るでしょ。」
「そうよね…。」
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