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三学期-331 [花鈴-34]

 土曜日の午前…。

「大賢者は数学に関しては抜きん出た才能を持っているかも知れないけど、分野によっては普通の小学生よね。
 私達も普通の小学生だけど、結構稼いでる所が大賢者との違いかな。」
「絵梨は、そんなに稼いでるのか?」
「ええ、小学五年生にしてはね。
 YouTubeチャンネルへの貢献度に合わせてお小遣いを貰ってるのよ。」
「稼いでどうするのかな?」
「そりゃあ欲しい物を買ったり将来に対しての投資とか…。
 大賢者は欲しい物とかないの?」
「欲しい物はお父さんが買ってくれる、絵梨のお父さんは買ってくれないのか?」
「買ってくれなくも無いけど、自分で稼いで自分で使う、それが大人らしくて恰好良いと思わない?」
「その感覚が、絵梨から子どもっぽさを感じさせられない理由なのよね。」
「そう言う姫は、お金に対する感覚が経営者のそれだから、私とは次元が違うと思うわ。
 姫の資産がどれほど有るのか見当も付かないけど。」
「でしょうね、借金も有るから単純な話では無いのだけど。」
「お金持ちなのに借りているのですか?」
「資産が有るから借りられるのよ。」

 それから、会社を大きくして行く為には資金が必要なことを説明し株式会社の概要を説明した。
 この日、私の教え子となったピーマンの会メンバーは理解が早いので説明も楽、お昼ご飯を食べる頃には基本的なことを理解して貰え、私の家族を交えた昼食会は株式会社の話で盛り上がった。
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三学期-332 [花鈴-34]

 三月十五日が私達の新店舗オープン日。
 私がオープンに向けての作業を手伝うことはないのだけど、学校帰りに準備の様子を見に行ったりはしている。
 オープニングスタッフには合宿所を利用している大学生達がいて、彼らと話すのも楽しいのだ。

「里中さん、養子の話はどう?」
「順調に進んでいます、養父は少ない親戚に対して話を通すのに大した手間は掛からなかったそうで。
 休耕田などをブルーベリー農園に造り変える計画も進んでいますからね。
 義理の父母になる人達は出会った頃より元気なのですよ。
 体の動く内は少しでも手伝いたいと、それが長生きに繋がる気がしてると話しています。」
「そっか、新しい事業に取り組むことはお年寄りにとって良い刺激になっているんだ。」
「ええ、この店で売ってみてはと蔵から色々出して来てもいまして、まあ蔵の片付けが目的でも有るのですが、花鈴姫の助けになれば嬉しいそうです。」
「聞いたわ、鑑定して貰い価格決定して売るより、競売形式で売る方が面白いのだとか。
 ネットでのそれは現物を見ない売買なので失敗するが人が居るそうだけど、ここで展示した上での競売なら、本気の人は現物を見に来ることが出来、その経済効果も僅かながらも期待出来るのよね。」
「ええ、その積み重ねがこの地の活性化に繋がると言うのが田中社長のお考えで、皆さんそれに賛同されています。
 古い道具から、それを使っていた人々の暮らしぶりを想像してみたりとか、そんな気持ちも分かりますし、高値で売れなかったとしても、それはそれで買い手の方に喜んで貰えるのですから。」
「そして里中さんの物になる蔵がすっきりするのね。
 蔵を店にする計画は?」
「全て、この店次第です。
 ここが繁盛すれば、その流れからカフェにしてもやって行けるのかも知れません。
 ブルーベリー農園は大社長の関連企業が福利厚生の一環として利用して下さる方向で進んでいても、カフェとなると話しは違って来ますので。」
「そうね、私達のグループとは関係の無い人達が普通に利用してくれる店に出来ないと、先行きが怪しくなってしまうのものね。」
「姫的に勝算はどうなのです?」
「まあサポートしてくれてる大学生次第かしら、里中さん達が鍵を握ってるのよ。」
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三学期-333 [花鈴-34]

「かも知れません。
 合宿所で春休みを過ごしている連中は、元々田舎に興味が有って来てたのですが、自分が移住を決意したことで、凄く人生について考えていると話す奴もいます。
 普通に大企業への就職を目指し都会で暮らす、と言う選択肢しか考えて来なかったそうで。」
「そっか、普通の大学生ならそうよね。
 余程自然が好きな人で無いと田舎暮らし何て考えもしないでしょう。」
「でも、ここには大会社の本社が有り、移住者が増えている特別な田舎ですから。
 車が無いと不便過ぎますが車の置き場には困りません。
 田舎ですが普通にネットが使えますから、ネットビジネスを考えてる奴は、ここに住むのも有りだとか。」
「在宅勤務を増やして本社施設の縮小を進めている会社も有るのよね。」
「ええ、バカ高い賃料を払って都会の一等地に大きな本社ビルなんて作るから、社員は満員電車での通勤を余儀なくされてる訳で。
 移住して来た人の中には、満員電車から解放され、信号の少ない道路で運転のストレスから解放されたと笑顔で話される人もいます。
 多少の不便は厭わないと思って移住したそうですが、何が不便なのか分からないとも。」
「そうよね、車が有れば店までの所要時間は信号が少ない分短くて済むぐらいだもの。
 大学生の人達も、その辺りの事に気付き始めてるのかしら?」
「どうですかね、合宿所はこのエリア唯一のコンビニから近い、はは、それだけの事だけでも合宿所は一等地に有ると言えるのですよ。」
「そこは父の発案なの、大学生なんて近くにコンビニが有れば後は何もいらないと言ってね。」
「確かに、ここに来るような奴らはお洒落なカフェなんて必要としてませんから。
 自炊を楽しんでる奴もいますし。」
「里中さん以外にも移住しそうな人は居るの?」
「何人かは真面目に考えていると思います。
 株式会社花鈴の事や大社長のいる本社勤務とかを調べていますので。」
「それは心強い、ならば少し背中を押す様なことを考えて見るわね。
 里中さんも、この地に若者が増えた方が安心でしょ?」
「ですね、特に合宿所で暮らしてる連中は仲間ですから。」
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三学期-334 [花鈴-34]

「里中さん、皆さんが合宿所生活を通して価値観が変わったと感じる事は有りませんか?」
「全員とは言えませんが、変わっていると思います。
 自分だって、ここへの移住何て全く考えもせずに来たのですから。
 不便だろうと思って来てみたら何の不便も無く、新たな人間関係を築くことが出来、勿論養子の話なんて考えてもいなかったことです。」
「でしょうね、里中さんだからこそ話がトントンと進んだ訳で。」
「はは、まあ性格の良い連中は、自分と同じ様な形を目論んでいる人達から狙われているみたいですよ。
 実の子が遠く離れた都会で落ち着いた暮らしをしていたら、家やお墓を守って欲しいとは言えないそうで。
 実際、廃村となった所も有る訳です。
 自分達の死後、荒れ果てた状態になる我が家を残念がる人も人もいまして。」
「ある程度は父が買い取ったりしてるのですが、今、住んでる人の家まではね。
 お墓の管理までは出来ないし。」
「う~ん…、出来なくも無いと思いますよ。
 お墓に対する考え方は変わって来ていますから。
 姫の所なら立派な墓石が設置された先祖代々のお墓が有ったりするのでしょうが、墓じまいをする人も増えているのです。」
「墓じまい?」
「お墓に納められている遺骨を簡素な施設に移動させたりして、お墓を撤去してしまうのです。
 跡地には他の方がお墓を設置とか。」
「良く分からないけど…、う~ん…、お墓参りには行くけど、お墓はシンボルに過ぎないのよね。」
「ですね、でもそんなシンボルを大切にしたいと思う心が人々には有るのです。
 ただ、それが立派な墓石で有る必要は無いと考える人が増え、樹木葬とかシンプルなお墓が増えています。
 株式会社花鈴で、そんな事業展開を考えてみるのも有りかもですね。」
「全く考えて無かった事業だけど収益性はどうなのかしら?」
「様々な価格帯の施設を有する霊園を作り、近所の寺の名を冠する、需要は有ると思います。」
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三学期-335 [花鈴-34]

「そうね、小規模なものをお寺と相談して…、一度調べてみるわ。
 で、この店はどう?
 上手く行くと思う?」
「上手く行かせますよ、ブルーベリー事業もこの店が繁盛してくれないと相乗効果が期待出来ません。
 国道を素通りしてた人達がここでお金を落として行ってくれる様になれば、ここの活性化に繋がります。
 春休み期間限定のオープニングスタッフも色々な案を出してくれてまして。
 オープン当日にテレビ局の取材予定が三件入っているのも、大学生が情報をテレビ局に伝えた結果なのです、姫も出演するのですよね?」
「ええ、会長としての仕事を理由に学校を休む予定なの。
 里中さんは台本とか用意して置いた方が良いと思う?」
「今の姫なら、台本無しでも大丈夫だと思います。
 最近は人見知りでは無いと感じてますよ。」
「そうね、前よりは誰とでも話せてるかしら、でもテレビの人とは経験が多い訳で無く…、打ち合わせをしてからの撮影になるのかしら?」
「だと思います、自分も移住する予定の有る大学生と言うことで、少なくとも一本には出演すると思います、出演しなかったとしても姫の側にいます、姫をお守りするナイトですからね。」
「それは心強いわ。」
「株式会社花鈴の学生社員ですので当たり前のことですよ。」
「養子になる話やブルーベリー農園の事、結婚予定のことを含めてアピールしたら取材予定の情報番組だけでなく、他の番組でも取り上げてくれるかも。」
「はは、少し恥ずかしいですが、そんなことを目論んでるスタッフもいます。」
「イケメン大学生テレビデビュー、芸能事務所からスカウトが来たりして。」
「そんな時は株式会社花鈴に所属してると話してお断りします。
 今までも何度かスカウトされたことが有るのですが、学業に専念したいとお断りして来まして。」
「株式会社花鈴所属、農業青年として売り出すのはどう?
 YouTubeチャンネルからになるけど。」
「それなら有かもですね、ブルベリー農園の宣伝はしなくてはなりませんので。」
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三学期-336 [花鈴-34]

「休耕田をブルーベリー畑として整備する、その過程を里中さんの解説で紹介したら視聴者が増えるだけでなく、農業を志す若者が増えるかもね。」
「う~ん…、そこまでの影響力は考えにくいですが、少なくとも農園の宣伝には成ると思います。
 実際の工事はこれからですので…、カメラとか用意しないとですね。」
「そこは、慣れた人に任せれば良いの、里中さんは解説のことを考えながら自身をアピールして欲しいかな。
 婚約のことも早目に発表した方が良いわね。
 アイドルでは無いのだから変に妄想をする人を作る必要はないのよ。」
「はは、彼女はトークも出来ますので二人で解説しても良いです。」
「うん、イチャイチャしてる所も見せて上げれば…、都会に住む大学生が田舎に養子として移住し農業に取り組む、ドキュメンタリー番組として面白くきちんと仕上げられたらチャンネル登録者数は増えそう。
 テレビ局が動いてくれたら嬉しいのだけど、YouTubeチャンネルにもそれなりの面白さが有ってね。」
「YouTubeチャンネルからの収益は充分に有るのですか?」
「あっ、知らなかったの?
 小枝子さん達が手掛けていたチャンネルは、株式会社花鈴が運営する形に変更、スタッフを増やして安定した配信を、そうしたことによって登録者が増え、視聴回数も格段に伸びたの。
 収益も、スタッフの給料以上に増えてるのよ。
 そこへ里中さんメインのチャンネルを増やせば更に、里中さんの収入増にも繋がると思うわ。」
「自分で何もかもやるのがYouTubeと言うイメージでしたが…。」
「そっち方面は疎いのね。
 チームを組んで効率的にやらないときつくなるのよ。
 一人で頑張って大金を稼ぎたいなんて考えてる人達が色々失敗をしていて。
 私達には企画や編集を任せられるスタッフがいるから、無理無く収益を伸ばせているの。
 彼らも、その利益がここの活性化事業に充てられてる事を知っているから熱心、だから安心してね。
 我が社のYouTube部門担当者を紹介するから相談して欲しいわ。
 ブルーベリー農園のWebサイトも我が社の社員が行いますから、デザインなどの希望が有ればそうだんして下さい。」
「そんなことも当然自分でするのだと思ってました。」
「ふふ、そんなの効率が悪いでしょ、それぞれの場面で専門家に任せるのが一番なの、初期費用が少しばかり高くなってもね。」
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三学期-337 [花鈴-34]

「そうそう、店のレジをセミセルフ形式にしたのも専門家の判断なのですか?」
「ええ、一番間違いが無いそうでね。
 フルセルフレジでは誤魔化す気が無くても間違えてしまう可能性が有るの。」
「あまり考えたこと、有りませんでした。」
「例えばビールの六缶パックって有るでしょ、あれはパックのバーコードを読んだつもりが、単品のバーコードを読んでしまう可能性が指摘されていてね。
 悪意の有る人達なら色々胡麻かし方を考えているのでは無いかしら。
 まあ、大きな店はフルセルフレジで多少の損失が出ても従業員を増やすより、トータルで考えるとプラスになるのかもしれないけど。
 うちは観光客も相手にする店だからフルセルフレジと言うのは似合わないでしょ。
 セミセルフレジでも当然お釣りの計算をする必要はないし、色々有り過ぎるカードやスマホ決済にも対応、従業員の負担は少なくて済むのよ。」
「そんな考えが有ってのことでしたか。
 セミセルフレジに慣れないお年寄りに対する対応の仕方を教えられましたので、何故セミセルフと感じたのです。」
「フルセルフレジやセミセルフレジが随分普及したと言っても、慣れてても普段利用してる店と手順が違ってる可能性が有るし、本当に初めての方や認知症のお客さんにも対応する必要が有るのだから、そう言ったお客さんには従来の有人レジと同様の対応をして欲しいの。
 多少時間が掛かっても気持ち良く買い物を済ませて貰える様にね。」
「ですね、レジ業務のトレーニングを受け、お客様目線を考えた店員の姿勢を学ばせて貰いました。
 ブルーベリー観光農園はお客様に満足して頂けないと成り立たないので、色々参考になっています。」
「まだ先の話では有るけど、観光農園では様々な決済に対応出来るチケットの券売機を導入すると良いと思うわ。」
「ですね、人が算盤を弾いて計算してた時代とは違いますから。」
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三学期-338 [花鈴-34]

「里中さんは開店準備作業を通して他に気付いたことは有りますか?」
「そうですね、客として店に行くことは有っても店員の経験は有りませんでしたので色々面白いです。
 商品の並べ方一つとっても工夫が有ると教えられました。
 ブルーベリー農園もただ木を植えれば良いのではなく、全体のデザインを考えるべきだと気付かされ、平地だけでなく傾斜地も有効利用して見栄えの良い農園にしたいと考え始めています。
 ブルーベリー以外の植物を植える事にも拘りたいですね。」
「うん、その場所の環境に合って手間の掛からないのを選び、ブルーベリーの収穫期以外にも花や実を楽しめる農園に出来たら、農園の可能性を広げられるかも。
 それを楽しめるのが我が社の従業員限定で有っても良いのよ。」
「福利厚生の一環と考えれば良いのですか?」
「ええ、キャンプ場にバーベキュー施設は完成してるけど、農園にも有って良いと思うわ。」
「う~ん…、蔵を小さなカフェにする計画を進めていますが、身内が集まる場所にと考えればあまり収益を気にしないで運営出来るのかも知れません。」
「そうね、店の休憩室やカフェでだべったり、農園の片隅でバーベキューをしたり、そんなことを通して社員の絆を強められたら…、少なくともブラック企業には成りにくいかな。」
「はは、株式会社花鈴がブラック企業と言うのは全くイメージ出来ませんが、社員達が仕事時間以外の時も共有したいと思える仲間となってくれたら安心です。」
「濃密な人間関係を好まない人に田舎暮らしは向かないと思わない?」
「向かない人は来ないし、来ても長続きしないのかも知れません、ここに来た学生達を見て思ったことですが、積極的に関わってくれてる連中はお年寄り達とも普通に話をしているのですよ。」
「ええ、我が社で採用、若しくは採用予定の人達は皆さん、お年寄りの話を聞く姿勢の持ち主ばかりで…、同じ話を何度も何度も聞かされても適度に聞き流せる大人な人ばかりなのです。」
「成程、納得ですが社の採用基準にそんな要件が有ったとは知りませんでした。」
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三学期-339 [花鈴-34]

「店にはお年寄りだけでなく様々なハンディをお持ちの方が来て下さる可能性が有るでしょ。
 だから年齢に関係なく大人な人を店員にしたいと考えたの。」
「そうでしたね、通路を広めにして有るのも車椅子を意識してのことと聞きました。
 駐車場から一メートル上がる為だけに利用出来る電動昇降施設なんて初めて見たのですが、水害を意識して一階を駐車場より高めにしたから設置したのだとか。
 健常者が階段で普通に上がれる高さで有ってもハンディの有る人にとっては一つのハードルになるのですよね。」
「かなりの大雨でも大丈夫な駐車場だけど、店は更に安全を考えて床を高くしたの。
 スロープだって負担に成り兼ねないから設置したのだけど、他所では見たことも無い昇降機の有る店と言うだけで宣伝にもなるのよ。」
「ですよね、オープン時に取材予定のテレビ局担当者が凄く興味を持っておられました。
 只の観光客向けの店では無く、地元の人にも利用して貰うことを前提としている店舗、他店とは色々な意味で差別化が計られていることに驚かれておられましたよ。」
「問題は宣伝が上手く行き過ぎて、混雑し過ぎる可能性なのよね。
 平日は兎も角、土日の混み具合が予想しづらくて。
 かと言って宣伝しないとお客さんは来てくれないでしょ?」
「ええ、一応オープンから暫くの土日は大学生がフォローに入れる体制を整えていますが、こればかりは蓋を開けてみないと分かりませんから。」
「フォローの体制ですか?」
「客として遊びに来て、忙しそうだったら手伝ってくれると言う仲間が結構いるのです。
 オープニングスタッフの一人が呼び掛けてくれましてね。
 皆、姫の活動に興味を持っている人達ですから、もし彼らの力を借りることになったら姫から労いの言葉を掛けて上げて下さい。」
「そうなんだ、働いて下さった方には充分な謝礼を考えないと行けませんね。
 勿論夕食会にご招待とか考えます。
 ねえ、里中さん、私達のちょっと特殊な店、大きく失敗と言う未来が全く見えないのですけど。」
「ですよね、どこに落とし穴が有るのか分からないとは言え…。」
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三学期-340 [花鈴-34]

「ですね、店がオープンして完成では無く、今後この地を農業公園として整備して行く計画が有りますので、直ぐに飽きられてしまう事は無いとは思っているのですが。」
「はい、その農業公園の一部にブルーベリー農園も含まれるのですから自分も気合を入れて取り組んで行きたいと思っています。
 それで、ホームセンターの計画は進んでいるのですか?」
「ええ、近い将来、私達の店はホームセンターの一部となる計画が有り、まずは何が売れるか探る意味合いも有っての開店でも有るのですよ。」
「成程、観光客向けの特殊な何でも屋としてのスタートにはそんな裏も有ったのですね。
 ガーデニング部門の担当者はマジで何が売れるか分からないから、感性で勝負だと話してましたが。」
「一般的な資材以外は、お客さんが自分の庭に置きたいと思える物を用意出来るかどうかがポイントになるでしょ。
 大きな店では無いから置ける数に限りが有り、彼がどんな商品を置くのかには興味が有るの。」
「確かに…、でも…、展示するだけなら店から少し離れた場所でも構わないと思いませんか?
 今ならそんな場所は幾らでも有ります。
 空き家の樹木は掘り起こして移動するのに手間が掛かりますが、それでも欲しいと思う方がおられましたら、樹木を無料にしても移植に関する費用を発生させられる訳で。」
「需要はどうかしら?
 う~ん…、微妙では有ります、都会の一等地では庭付きの一軒家を取り壊し三軒の小さな家にして売っていたりしますので。
 でも、世の中には沢山稼いでる人もいます。
 そんな人をターゲットに…、移植し易い木を見つけて写真に撮り、移植費用の見積もりを提示するぐらいなら、最近知り合った農学部の人が取り組んでくれるかも知れません。」
「結果が悪くても赤字額が膨らまらないのであれば、試してみる価値は有るかもね。
 店の商品展示スペースには限りが有るけど、店から離れた所に商品が有っても僅かな時間で見に行って頂ける…、そんな時間を気にする様な人はターゲット外と思えば良いよね?」
「ええ、家を解体し駐車場にした人からは、それなりに高価だった庭石も移動費用の関係で廃棄物にせざるを得なかったと聞いています、そんな費用を気にせず買って下さる方がいればと思いまして。」
「そっか、移設に手間が掛かるから、その物の価値より移動コストが問題に。
 里中さんは、そんなことにも詳しかったんだ。」
「はは、庭木や庭石の事情なんて、田舎の大きな家へ養子になることが決まるまで全く無縁だったのですが、決まったら色々教えて下さる方が何人もいましてね。」
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