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三学期-321 [花鈴-33]

「大賢者は子どもっぽいけど、薫は落ち着いてるでしょ。
 既に会って見たいとか演奏を聴かせて欲しいとの声が届いていてね。
 春休みぐらいにミニ演奏会とかどう?」
「学校で?」
「音響的には物足りないかもだけど、駄目かな?」
「小規模なら問題無いと思う。
 録画してYouTubeチャンネルで使えるレベルには出来ると思うよ。」
「ねえ薫、姫がオープンさせる店のテーマ曲みたいなのは作れる?」
「そうだな、店のイメージは聞いてるから作曲してみようか、気に入って貰えるかは分からないけど。」
「私からもお願いしたいわ、楽しい曲をお願い。
 ミニ演奏会の方は四月に中学へ転校して来るギフテッドの人も招待して、ピーマンの会へお誘いしたいのよ。」
「そう言えば、お兄さまは中学を卒業するのですね。
 中学生では他に二人が加わってくれてるけど、お兄さまが抜けても大丈夫なのですか?」
「Lily、全然問題無いのよ、二人ともこの地を気に入ってくれたそうでね。
 兄は中学を卒業するけど、ここから離れる訳では無いのだから。」
「通信制の高校で決定したのですか。」
「ええ、既に通信教育を利用して幾つかの資格を取得、その延長みたいな感覚だそうよ。」
「そうか、全日制の高校に通った所で特に目標が無ければ得られるのは高校卒業と言う肩書だけ、それより資格を取っておけば何かと有利になる。」
「そう言うこと、兄は気象予報士の資格を中二の時に取ってるからね。
 まあ、翌日の天気予測をしてくれるけど当たらないことも有るわ。
 ただ、その予想が当たる確率も教えてくれて、そっちは結構正確なのよ。」
「どういうことですか?」
「気圧配置とかによって予測し易い状態と予測し難い状況が有るの、テレビの天気予報だって外れることが有るでしょ、その理由も教えてくれてね。」
「流石だわ、中学の女子全員からバレンタインのチョコを貰ったって聞いたけど…。」
「ええ、全員かどうかは分からないけど沢山貰ってたわね…。」
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三学期-322 [花鈴-33]

「羨ましい様な…。」
「悪くは無いけど私が虫歯になりそうな気分なっただけでなく、チョコレートの食べ過ぎは良く無いのよ。」
「お兄さんから貰って沢山食べたのね?」
「目の前に有るとつい…。
 山積みのチョコレートから色々学べたわ。」
「成程、普通の小学生はそこから何も学べないかもだけど、姫には学びが有ったんだ。
 女の子達は大勢の女子がお兄さんにチョコを上げると知ってただろうに、それでも贈るのか…。」
「兄はアイドルなのよ、彼女達にとって。
 だから、チョコレートを贈る事に意味が有ってそれ以上でもそれ以下でもない。
 ただ兄が沢山チョコレートを貰うと考え、チョコレートを入れて帰る為の紙袋を用意していたのは中二でピーマンの会会員でも有る香奈さん、流石だと思わない?」
「はは、お兄さんにとってはチョコレートを貰うより嬉しかったかもな。」
「ええ、更にチョコレートは沢山貰うだろうからと、別の物をプレゼントしたみたいでね。
 何かは教えて貰ってないけど、香奈さん、頭良いから論理的に考えて兄の喜びそうなものを贈っていそうなの。」
「玉の輿狙いで?」
「そんな下心が有っても良いと思うわ、香菜さんなら。」
「お兄さんは、どうなの?」
「そうね、たまに香奈さんの事を口にするから…、う~ん…、もう付き合い始めてるのかも…。」
「もし、そうだったとしたら、妹としてどうなの?」
「少し微妙な気持ちも有るけど、邪魔は出来ないわね…。」
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三学期-323 [花鈴-33]

「邪魔しちゃダメよ、それより見守らないと!
 もし恋愛が進行中だったらワクワクしない?
 テレビドラマみたいに作られたものでなく実際の恋愛を観察出来るチャンスなのだから。」
「絵梨こそ、お兄ちゃん達の邪魔だけはしないでね。
 でも、兄の恋愛事情に興味が有るのは私も同じ、もう少し情報が欲しいかな。」
「中学校の情報はあまり入って来ないです、こっちの情報は中学生達に沢山伝わってるみたいなのに。」
「仕方ないわよ、私達への注目度に比べたら…。
 ねえ、姫、お兄さまって、姫に対する注目度を高めることで、自分に対する注目度を抑えようとか考えてなかったのかな?」
「う~ん、微妙ね…、そうかもだけど、私の兄として、注目度が上がりつつ有るよね。」
「そうか、言われてみれば確かに、深く考える必要は無いか、自然体で生きてる人だものね。
 でも、恋愛事情に関しては、姫のお兄さまだからこそ知りたいのよ。
 本で知る恋愛は所詮作り話でしょ。
 大賢者がLilyのことを好きだとか、そんなレベルでは無い訳で。」
「はい?
 何故、そこで僕が出て来る?」
「えっ、大賢者はLilyのこと好きでしょ?」
「も、勿論、仲間だからな!」
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三学期-324 [花鈴-33]

「仲間内でも特に、でしょ?」
「そりゃ絵梨みたいに、からかう様な事は言わないからな。
 優しく英語を教えてくれるし、当然僕の中では絵梨より遥かに上の存在だよ。」
「う~ん、そう来たか、お主も逞しくなったな。」
「はは、絵梨に鍛えられのよ、絵梨と口喧嘩したら今でも叶わないだろうけど、大賢者も学習してる。
 大賢者自身、成長を感じてたりしないの?」
「より良い人間関係を構築するコツを姫に教えて貰ってから、色々考えてはいる。
 それで成長出来ていたら嬉しいのだけど。」
「ふふ、大賢者は私が初めて会った頃より常識的な人に成長してるよ。
 他人の事を考える余裕が出て来て。」
「よね、ここへ来た頃は天上天下唯我独尊みたいな感じだったから。」
「何、それ?」
「まあ本来の意味では無く、あの頃の大賢者は自分が誰よりも頭が良いと思ってるって感じだったの。」
「言われてみると…、数学に関して周りの子達と差が付き過ぎてた状態でここに来て姫と出会い…。
 数学とは違う分野の存在に気付かされて…。」
「今に至るのでしょ?」
「だな、僕等みたいに普通の子以上の能力を持ってると、変に視野が狭くなってしまうと教えられて…、姫と出会わなかった自分を考えると怖いよ。」
「まあ、大賢者はLilyと花鈴姫のことは好きで、絵梨のことはどうでも良いってとこなんだな。」
「ああ。」
「ちょっと、薫、そんな風にまとめないでよ。」
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三学期-325 [花鈴-33]

「薫はどうなの?」
「そうだな、ここは居心地が良いよ。
 レベルの高い個性派が揃っているし、大学生とも話せるからね。
 大賢者への当たりがきつめの絵梨も僕には優しいから。」
「だよな、絵梨は薫のことが好きなのか?」
「勿論よ、仲間だからね。」
「僕も仲間だよな?」
「大賢者のことは何故か揶揄いたくなってしまうけど、仲間だからついって感じかしら。
 仲間で無い子だったら揶揄う気にもならないわ。」
「そう言う感覚は分かる気がする、絵梨にとっては仲間の証として揶揄っているのだろ。」
「薫は普通に絵梨の味方なんだよな。」
「私は大賢者の味方よ。」
「Lilyは優しいね。」
「ここに来て出来た仲間で、男の子の友達第二号だから。」
「第一号は?」
「勿論ひろっちよ、薫。
 姫とひろっちが親切にしてくれて嬉しかったの。」
「絵梨は?」
「普通に優しくしてくれたけど、忙しい人だったから。」
「弟達の面倒を見たりとかやることが多かったのよ。
 今は両親が落ち着いて来て全然余裕なのだけどね。」
「あっ、YouTubeチャンネルで稼げてると言ってたな。」
「そう言う事、四月頃はお父さんが一人で撮影や編集作業をやっていたのだけど、今は手伝ってくれる人がいてね。
 金銭面で余裕が出来たからなのだけど、それも姫のお蔭なの。」
「絵梨も貢献してるのだろ?」
「いやいや、コメントを見てると姫ばかりが人気で。」
「絵梨、それは絵梨が敢えて私の引き立て役と言う立場を選択したからでしょ?」
「うん、でも、ここまで上手く行くとは思って無かったわ。」
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三学期-326 [花鈴-33]

「言われてみればだな。
 YouTubeチャンネルで絵梨は何時も姫を前面に出そうとしてた。
 絵梨も可愛いのだから普通に二人が目立って良いと思ってたのだけど。」
「そう言うコメントも頂いてますけど、私としても姫には目立って欲しいのよ。
 シンボルは一人で良くて、私はそのおまけ。
 その方が気楽だからね。」
「絵梨はそう言って色々私に押し付けるの。」
「でも、それが上手く行った結果、我が家に余裕が出来たのは事実、姫にとってもマイナス要素は無いでしょ?」
「そうね、株式会社花鈴の会長と言う立場も有るから。」
「株式会社花鈴は儲かってるの?」
「全然ダメ、今はね。
 もう直ぐオープンする店が成功しなかったら倒産かも。」
「はい、父も新店舗の結果次第で株式会社花鈴はどうなるか分からないと話していました。
 新店舗が成功すれば大きく伸ばせるし、失敗したら規模縮小ですか?」
「まあね、でも大学生が色々考え動いてくれてるから、大失敗の可能性は少ないと考えているの。
 仮設店舗には常連さんもいるみたいだし、ガーデニング資材などを注文販売なんてことも考え始めていてね。」
「注文販売?」
「自分の庭にこんなのを置きたいとイメージしても、ホームセンターで売ってるとは限らないでしょ。
 お客さんのイメージに合わせた品を作って上げるって感じかな。
 割高になるし、イメージと違うからとキャンセルされるリスクも有るのだけど、そんなのも質が良ければ他の人が買ってくれると信じてね。
 利益率を高めに設定出来、地元のお年寄りにとっては良い暇つぶしになるとかで。」
「通販もするの?」
「通販は考えてないわ。
 完成品を宅配便で送ることは有ってもね。
 基本的には、ここまで注文に来る人だけを対象に、そうでないとイメージと合わない商品が出来上がる可能性が高くなるでしょ。
 ただ、しっかりした図面が有り、材質などの指定がしっかりしているのであれば受注出来るかも。」
「オーダーメイドを前面に出せば、お金に余裕の有る人達が喜んで利用してくれるかもね。
 自分で作れない人にとっては、イメージに近い物を探す手間を省けるのだから。」
「ええ、そういう事なのよ。」
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三学期-327 [花鈴-33]

「安ければ良いなんて思ってる人は完全に対象外なんだね。」
「質を求める人をメインターゲットに、値切る様な人は相手にしない、受注生産で完成まで待って貰うことになるから量はこなせないかも知れないのよ。」
「薄利多売の真逆なのね、需要はどうなのかしら?」
「そこは微妙なのだけど、農業公園を作って行くのだから可能性は有ると思うの。
 菜園のテーブルやイス、ちょっとした台などは私達に合わせて作って貰った物でしょ。
 孫が世話になってるからとタダだったけど、使い勝手は悪くないよね。」
「言われてみればだな、僕らのサイズに合わせて有るんだ。」
「菜園で使ってる物は商品サンプルとして見て貰える様にするつもりなの。
 注文が入ったら、これらの製作者にも喜んで貰える形で製品の作成に携わって頂けたら素敵だと思わない?」
「お年寄りにやりがいを提供するんだ。」
「そう言うこと、負担にならない様に工夫しながらにね。」
「ここのお年寄り達は姫の家来みたいなものだから、当然利益率が上がるとか?
 家来達に対するご褒美は有るの?」
「家来は言い過ぎだけど、喜んで頂けそうな企画は考えてるわよ。
 老人会のイベントに参加とか。」
「人見知りがちな姫も、もうすっかり老人会のアイドルだものね。
 私もそれなりに貢献して来たつもりなのに、皆さんの態度が違うのよ。
 まあ、それも狙ってたことなのだけど。」
「絵梨、それはどういう事なのだ?」
「少々お転婆な私と大人しくて優しい姫、そんな構図を描いてね。
 それがお年寄り達に与える影響を考えてのことだったのだけど、成功したみたい。」
「私には親しみを込めて乱暴な言葉を投げ掛けてくれる人が、姫には優しく接してくれる。
 皆さん私達の事は孫みたいに考えて下さってるのだけど、色々な孫が居ても良いでしょ?」
「確かに、帰国子女で苦労したLilyのことを気に掛けてる人を見たことが有るよ。」
「う~ん、僕はそんな経験ないな…。」
「大賢者は何を考えてるのか分からなくて、近寄り難いのかもな。」
「ふふ、こんなに分かり易い子はそんなに居ないのにね。」
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三学期-328 [花鈴-33]

「そうだな、大賢者は数学が得意でも普通の子ども、でも姫は大人だと感じるよ。」
「私は、そこまで大人では無いのだけど、大賢者は有る意味普通の子どもなのよ。」
「僕は子どもだけど何か問題が?」
「全然、問題無いわ。
 純真だから、少しぐらい自慢話をしても許されてるの。
 だから、特別扱いは程ほどでクラスに馴染めてるのよ。」
「人間関係の事はその大切さを姫から教えられ、前よりは相手のことを考えようとはしてる。
 ここに来てからは、それまでに興味を持って取り組んで来たこととは違う分野の事を…、う~ん…、先生では無く、大人も子どもも含めピーマンの会のメンバーから教えられて来た気がするな。」
「大賢者の言う事は私も分かります。
 たまたまなのかも知れませんが、先生より魅力的な仲間や私達を見守って助言してくれる大人達が居て、学習面でも、受け身では無く自分から取り組む学習の方が、より効率的で楽しいと気付かせてくれたのは姫ですから。」
「Lilyは努力する事をいとわなかったから結果に繋がってるのよ。
 特に国語では凄いハンディを抱えていたのにね。」
「そこは絵梨にも助けて貰いました。」
「はは、友達だから。
 私としても、帰国子女の苦労を教えられたわ。」
「僕はこんな素敵な五年生達と、ここで出会えて嬉しいよ。
 こんなハイレベルな友達集団の一員に加えて貰えるとは分かっていなかったからな。」
「薫、私も君を仲間に出来てとても嬉しいのよ、曲を作ってくれたからだけでなく色々な意味でね。」
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三学期-329 [花鈴-33]

「薫はバランスの取れた頼れる常識人だものね。
 どうしてそんな風に育って来たの?」
「絵梨もだろ、同年代と遊ぶことが無く、音楽を通して歳の離れた人達と付き合う事が多かったからで…、絵梨は両親の影響なのか?」
「そうね、長女として小さい頃から家の手伝いをしていたし。
 最近は大学生からも影響を受けてるのかな、姫もでしょ?」
「私の場合は会社の人達から学んだ事も多いかな。
 ひろっちのお父さんには本当にお世話になってるのよ。」
「ひろっち、お父さんは家でも優しいの?」
「うん、絵梨んちのお父さんと同じだよ、特にここに越して来てからは僕のことを一人の人間として認めてくれてる、子ども扱いされることなくね。
 五年生になったと言う事も関係してるのだろうけど、姫に導かれて真面目にやってるからかな。」
「ひろっちは子どもっぽい行動を取らないものね、誰かさんと違って。」
「どうせ僕は子どもですよ~。
 子どもは子どもっぽくて良いのだぞ。」
「全然問題無いけど、大賢者も、もうすぐ六年生、最上級生になるのだから、その自覚だけは持ってね。」
「はい、姫さま、心掛けまする~。」
「ここの子達って何故か姫の前だけでは良い子なんだよな。」
「ホントにそうよね、私には悪戯して来る子も姫にはしない、どうしてなのかしら?」
「私は親が言い聞かせてると聞きました、大社長の娘さんで姫さまなのだから失礼の無い様にと。
 この地が賑やかになりつつ有るのは大社長一家のお陰なのですから。」
「うんうん、Lilyが言ってることはホントだよ、僕等がこうして仲間に成れたのも大社長のお陰だものな。」
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三学期-330 [花鈴-33]

「ねえ姫、企業城下町と言う言葉を教えて貰ったけど、大社長もそれを意識してるのかな?」
「勿論よ、大規模では無いけど、この地域を活性化させることを目標にしての本社移転だったからね。
 株式会社花鈴だけで無く、子会社や下請け企業が増えつつ有るのよ。
 我が社も、農家を含め経営で苦しんでいたり迷っている人達には積極的に関わって行く方針なの。
 だから新店舗では稼ぎたくてね。」
「資金の問題か…。」
「大賢者も分かって来たじゃない、お金は大切、そしてその価値を高めるのは、その使い方。」
「使い方?」
「貯金しましょう、なんて馬鹿げたことなの。
 利息何て無いに等しいからね。
 それより投資なのだけど、分かる?」
「分かんない。」
「何に自分のお金を使うか。
 例えば自分のスキルアップにお金を掛け、将来稼げる自分にするって投資も有れば、将来に向けて株式を買ったりする投資もあるのだけど…、株式のことはまだ学習して無いかな?」
「無いね、そもそも株式会社が何なのか全く分かって無いし。」
「皆はどう?」
「父が株式会社花鈴の社長ですが、分かっていません。
 姫、この機会に教えてくれませんか?」
「そうね、興味の有る人は明日我が家に集合。
 時間は十時でどう?」
「行くしか無いでしょ。
 小学校では教えてくれない難しい事に接するチャンスだもの。
 大賢者はおやつや、お昼ご飯目当てで行きそうだけど。」
「いやいや、僕だって…、そう…、興味の幅が広がったと言えば良いのかな。
 姫、社会には複雑で難しい問題が沢山有るのだよね?」
「ふふ、難しいと言われて、それを避ける様な子じゃないものね、大賢者は。」
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