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五年一組-21 [花鈴-03]

 五年生も一クラスだけなのだから五年一組とする必要はないと思う。
 でも大人達は二組が出来ることを夢見ているみたいで、私達の五年一組が始まった。

「伊藤さんと田中くんは纐纈さんの僕になったの?」
「竹中くん、そんな気はなかったのだけど、会社の本社移転に伴って越して来た子達だから無視出来ないのよ、頼られてるしね。」
「だからと言って命令してるのはどうかしら。」
「ふふ、絵梨は分かって無いのね。
 ほら、田中くんが戻って来たわよ。」

「花鈴お嬢様、六年生の鈴木くんは、お嬢様が話されてた通り僕と同じゲームが好きみたいです。
 いきなりでは話し掛けられなかったと思いますが、お嬢様の手紙を切っ掛けに気軽に話すことが出来、これで友達が一人増えました、有難うございます。」
「田中くんは花鈴の命令で鈴木くんに手紙を届けさせられたの?」
「いえいえ、手紙の内容は僕と趣味が合うかも知れないから話してみて欲しい、みたいな内容だったのです、六年生に同じ趣味の人が居ると知れて嬉しいです。」
「花鈴なりの心配りなのか。
 でもさ、花鈴に対してそこまで敬語でなくて良いと思うわよ。
 敬語が使えることを自慢したいのなら構わないけど。」
「自慢したい訳では、ただ、花鈴お嬢様のことは父から聞いていましたので。」
「花鈴のことを何て?」
「可愛くて聡明な子だから下僕にでもして貰って色々教えて貰えば良いと、笑いながらでしたが。」
「下僕と言う立場に抵抗は無いのかしら?」
「この一週間色々教えて頂いただけでなく、伊藤さんと一緒に夕食に招待して頂いたりもしました。
 今は頼れる先輩でも有り、伊藤さんがメイドとしてお仕えしたいと言い始めたので僕はナイトを目指してと三人で遊び始めたのです。」
「そのままこき使われるだけかもよ。」
「それも修行だと思って頑張ります。」
「花鈴、こんな話が広がったら下僕になりたいって子が増えそうだけど大丈夫?」
「敬語に慣れて無い子が多いから問題ないでしょ。」
「う~ん、お嬢様にメイドとナイトか、僕はどうしようかな?」
「竹中くんは花鈴お嬢様の婚約者とかを狙ってるの?」
「小栗さんはすぐその方向へ行くんだね。
 僕はまだここに馴染めてないから、旅の怪しげな魔術師とかかな?」
「確かに怪しいけど魔術は使えるの?」
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五年一組-22 [花鈴-03]

「魔術は使えないけど理科の実験を手伝って欲しいって、先生がね。」
「先生も動き始めてるんだ。」
「花鈴は何か聞いてるの?」
「皆が理科に興味を持てる様な実験をしたいと話してた。
 一般的な小学生には、それぞれの教科に興味を持たせることが大切だとかでね。
 興味のない事には学習意欲が湧かないでしょ。
 興味が湧けば教えられなくても学習に取り組むのだから、後はその学習環境を充実させれば良いなんて、目をキラキラさせながら話してわよ。」
「そんなに甘くはないのよね~、でも興味を持てないよりはマシか。
 ねえ、竹中くんには嫌いな教科、苦手な教科ってないの?」
「嫌いなのは算数かな、簡単過ぎて、苦手なのは体育や図工、音楽。」
「それなら私の方が上じゃない、バランス良く評価されてるから親は学習に関して何も言わないのよ。」
「でも、竹中くんは数学や理科に関して中学生以上なのでしょ、興味が有るから。」
「まあね、でも、前の学校の先生はそんな偏った子は気に入らなかったみたいなんだ。」
「で、どんな嫌がらせをしたの?」
「う~ん、授業妨害かな、妨害してれば自分の興味に合わせた何かをしてくれると思ったのだけど無駄だった、結局学校へはあまり行って無いんだ。」
「でしょうね、それで兎沢小学校ではどうするの?」
「算数の時間はパソコンでの自習時間にして貰えたから妨害何て考えてない、でも小栗さんや纐纈さんは授業を受けてると言うより教える側になってるのだね。」
「それが私達のテーマなの、もう少ししたら大学の教育学部から学生がやって来るのだけど、その時に意見交換出来る様にね。」
「そうだった、大学生と学べる学習環境と言われていたし、入学式の日には大学の先生からも声を掛けられたのだけど、自分が教えると言う発想は無かった、理科の実験はそのつもりで考えないと駄目なのかな?」
「そこで先生を喜ばせておけば竹中くんのここでの自由度が更に上がると思うわよ。
 私達は先生の手伝いをして来たことで自由度が上がってるの。」
「自由度?」
「授業に飽きたら低学年のクラスに行ってとかね。」
「それに対して先生は?」
「学ぶこと、経験することに関して、花鈴に論破された先生方は始めの内は面白く無さそうで抵抗して来る人もいたけど、私達は皆がより楽しく学べる様にと考えてるからね。
 花鈴に教えられて算数が得意になった子もいるのよ。」

【この作り話にもギフテッドの子が登場していますが、こちらが現実のギフテッドです。】

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五年一組-23 [花鈴-03]

「結局、花鈴が先生を手懐けたのだけど、それには合併したばかりの小学校に、他にはない特色をと考えてた大人達が協力してくれたの。」
「君達も僕と同じ様に同学年と差が有り過ぎる子なのだね。」
「そこまでの差は無いと思うけど、四年生の花鈴に六年生が算数を教えて貰ってたわ。」
「小栗さんは?」
「花鈴と一緒に学習してるから教えられるのだけど、性格的に年上を教えるのには無理、私は彼らのプライドを傷つけてしまうのよ。」
「分かる気がする、それで纐纈さんがこの学校を支配してるんだ。」
「支配なんてしてないわよ、田中くんは信じちゃダメよ。」
「ですが妹は花鈴お嬢様から手紙を頂いで喜んでいました。」
「そんな手紙も田中くんが届けたの?」
「いえ、手渡したのは伊藤さんです、それを切っ掛けに妹は伊藤さんと仲良く成れそうで、転校の不安がどんどん解消されてるみたいです。」
「纐纈さん、それも考えてのことなのですね?」
「転校して来た子達が仲間を作る切っ掛けは多い方が良いでしょ。」
「そして花鈴の好感度が上がる、策士なのよね花鈴は。」
「手紙を利用して人を繋いで行けたら面白いでしょ、私が渡したら私と田中里奈ちゃんとの結びつきが出来るだけ、でも転校生の伊藤さんが手渡せば、そこから違った人間関係が発生するの。」
「自分は数学が出来て頭が良いと思ってたけど、そんなこと、考えた事も無かったよ。」
「簡単過ぎて算数が嫌いな竹中くんには無理かもね、基本は単純な足し算なのだけど、そこに転校生や兄妹、親同士の関係と言った要素が関係するのよ。」
「う~ん、僕は同年代との人間関係を考えて来なかったから、纐纈さんと小栗さんに出会って考えることが増えてるのだけど、友達もそうやって出来て行くものなのかな?」
「竹中くんは花鈴と友達になりたいの?」
「多分そうだと思う、ただ、今まで友達と言える人と出会って来なかったから…。」
「まずは花鈴の下僕からスタートしてみる?
 君は同年代で能力の近い子と接する機会がなかったことで大切なものを失い掛けてた、それを花鈴の下僕として取り戻すの。
 あなたならきっと人として大切なものを花鈴の下で得られるわ。」
「う、うん。」
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五年一組-24 [花鈴-03]

 絵梨は随分乱暴な話をしたのだけど、絵梨みたいなタイプに免疫が無いと言うか、そもそも人付き合いが限られていたであろう竹中くんは、あっさり私達の仲間になった。
 もっとも転校して来てから話し相手になっていたのは私達ぐらいだったが、絵梨は竹中くんの仲間内での立場を少し下に設定しようと考えたみたい。

「じゃあ五年一組の女王を花鈴として。」
「絵梨、ちょっと待って、私は女王なの?」
「女王よね、竹中くん?」
「姫さまの方が相応しいかと、ね、田中くん?」
「お嬢様が女王様では…、伊藤さんの意見も聞きたいです。」
「そっか、花鈴が『女王様とお呼び』ってのはイメージと違うか…、竹中くんは花鈴に仕える大臣と考えたのだけど魔法使い路線の方が良いのかな…。」
「その前に小栗さんはどう言う役職なのですか?」
「私は花鈴の友達。」
「なんかずるいです、ここは魔女とかだよね、竹中くん。」
「うん、言われてみればしっくりする、花鈴姫をお守りする田中くんと僕、メイドの伊藤さんに魔女の小栗さんだな。」
「ね、大岩くんは姫さまをお守りする親衛隊って、どう?」
「えっ、僕?」

 他愛のないお遊びに、すぐ隣にいた大岩くんから付き合わせ五年一組全員を巻き込んだ。
 皆仲間外れにされたくないから簡単なこと。
 ただ、男の子がみんな親衛隊、女の子がみんなメイドでは面白くないと、今も全員の立場が決まった訳ではない。
 そんな中で竹中くんは賢者の称号を手に入れたのだが、日頃の行いからか絵梨は魔女に、それでも白銀の魔女となったのは皆が頼りにしてるからだと思う。
 そして、伊藤さんは…。
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五年一組-25 [花鈴-03]

「花鈴お嬢様は花鈴姫になるのですか?」
「なんかそんな流れになってるけど伊藤さんには何か考えが有る?」
「英語の別名を持つのはどうかと思いまして。」
「別名か、例えば?」
「花鈴お嬢様はPrincess Karinでも良いのですが、Princess Bellflowerなんてのも有です。
 Flowerbellよりしっくりするし日本名をホタルブクロと言う花の名でも有って、調べてみたらこんな風にベルの形をした花なのですよ。
「へ~。」

 伊藤さんに見せられた図鑑のホタルブクロにはピンと来なかったが、花鈴から導き出された名前で、クレオパトラよりはよほど良い。
 伊藤さんは所謂帰国子女で英語が得意なのだ。

「じゃあ絵梨は?」
「絵に描いた梨では寂しいですが、梨は英語でPyrus pyrifoliaみたいです。」
「調べてくれたの?」
「ええ、ついでにですが。」
「皆に発音出来るかしら?」
「Bellflowerだって英語を話す人に理解して貰える発音は難しいかも知れません、でも皆が英語に馴染む切っ掛けになれば良いと思いませんか?」
「そうね面白いかも、白銀の魔女は英語だとどうなるのかしら?」
「魔女はwitchですが白銀はそのままwhite silverとはしたくないです。」
「うん、私もそう思う。
 クラス全員に名付けるのは大変かもだけど翔馬はそのままペガサスで良いよね。」
「ですね、日本人の名前としてペガサスが不自然なことは私でも分かりますが、ニックネームなら。
 前の学校にはペガサスと言う名前をからかう人が居たのでしょうが、ここにはいない様です。」
「ニックネームと言うか、英語教室ではWilliamの通称がBillやBillyになると講師のBillから教えて貰ったのだけど、そんなパターンが色々有るのよね。」
「みたいです、先生は本名では固いからBillって呼んでくれみたいな感じだったのでしょう。
 MargaretがPeggyになるとか訳が分からないのですが、本名が聖書由来の人が多くて堅いから愛称を使うと聞いたことがあります。」
「そっか、じゃあ英語の名前が付けにくかったらその線で、え~っと…、Johnとかよく耳にする名前を付ければ良いわね。」
「自分に付けられたニックネームの由来とか気になりませんか?」
「気にする子のはトコトン考える、何でも良いみたいな子なら取り合ずTomとかでどう?」
「Thomasと言う本名が有るので問題ないですね、きかんしゃトーマスは日本でも知られていますから。」
「そっか、私はあの顔が苦手なのだけど。」
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五年一組-26 [花鈴-03]

「私は気にしていませんでした。」
「不気味だと感じてたのは私だけなのかしら?」
「そう言われて見ると、お世辞でしか可愛いとは言えません。」
「だから英語教材としては断固拒否したの。
 ところで、交流会で私達の歌ったDo Re Miは正直なところどうだった?」
「花鈴お嬢様が素敵でドキドキしました、他の子も良かったです。」
「英語を日常的に使って来た人にとって、おかしな所が気になったりはしなかったの?」
「細かいことは気にしません、カナダで暮らしてた頃は色々癖の有る英語を耳にしていましたから。」
「そうなんだ、伊藤さんはカナダで暮らした後、四年生から日本の学校に通い始めたのでしょ、日本の学校で苦労は無かったの?」
「両親とは日本語で会話していましたし、向こうでは日本語のラジオ放送を聞いていましたので日本語に自信が有ったのですが、四年生の話す日本語が良く分からなくて学校に馴染めなかったです、話題も合いませんでしたので。」
「成程、子ども同士が話してるのは大人が話してるのとは違うしラジオとも、大変だったのね。」
「事情が有っての帰国、急いで借りたアパートに問題が有り、父は転職と、家族揃ってストレスを抱えてる時に、父が本社従業員の社内募集を知ったのです。」
「そうなんだ、どう、今の家は大丈夫?」
「はい、家族向けの寮に入っていますが、東京のアパートよりうんと快適で、父は通勤がとても楽になったと喜んでいます。
 私は社長令嬢と同じクラスになれて、うんと楽しんでいるのですよ。」
「社長の娘なんてことは気にしないでってうちの父が話してたでしょ。」
「社長令嬢がツンツンして威張っていても面白いかと思ってたのですが、私がここに馴染めるようにして下さる優しい方で嬉しいのです。
 慣れない土地ですが、え~と…、寄らば大樹の陰です。」
「私は大樹なのか、日本語の学習は問題ないみたいね。」
「どうでしょう、クラスの子と話すのは方言も有り難しいです。
 それでも、日本語の本をもっと読んでみようかと思っています。」
「じゃあ、今日は図書室で伊藤さんに合った本を探そうか?」
「お願いします、ただ、そろそろ伊藤さんでは無く佑理かLilyと呼んで下さいませんか。」
「分かったわ、カナダではLilyと呼ばれていたのね。
 私のことは?」
「Princess Bellflowerが皆に馴染んで貰えなかったらPrincess Karinですが、普段は花鈴お嬢さまです。
 私としてはクラスの子達が色んな名で呼び合う…、え~っと混沌とした状態が面白そうで。」
「そうね、それには協力させて貰うわよ。」
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五年一組-27 [花鈴-03]

 五年一組では全員に、狩人のJames通称Jimなど新たな肩書と名前が付けられた。
 それぞれに本名が有りニックネームも有るのだから、直ぐに飽きられるかも知れない。
 でも、この肩書と名前を付ける過程で転校生を含め皆がより親しくなれたと思う。
 第一印象で平凡だと思ってしまった伊藤さんには御免なさいだ。
 彼女からは帰国子女の苦労を教えられたし、竹中くんとは違った才能の持ち主だと気付かされている。
 何と言っても英語で学習して来た訳で、それには絵梨や竹中くん、田中くんも興味津々なのだ。

「Lilyは考える時、英語で考えてるの?」
「カナダに住んでた頃は殆ど英語で考えていましたが、ここに越して来てからは日本語で考えることが多くなりました、親は日本語ばかりの生活で英語を忘れてしまうのは残念だからとDVDを借りて来てくれます。」
「そっか、英語教室の先生も英語に接し英語を使うことが大切だと話していたのだけど、正直英語を使う機会なんてないのよね。」
「私には英語で話してくれて構いませんよ。」
「でも、間違えそうで…。」
「父はミスを許さない日本の英語教育のおかげで、日本人は英語が苦手だと話していました。
 私は英語と日本語を同時に学んでいましたが、言葉に対して間違えることを気にする様になったのは日本に来てからです。」
「そうよね、外国の人が変な日本語を話していても気にならないのだから、う~ん、Lilyと英語で話そうと思うと知ってる単語が少な過ぎるのだけど。」
「そこだけ日本語でも構いません、私が花鈴お嬢様に覚えて欲しいと思う単語は少しずつお教えして行きますので。」
「少しずつか…、そうよね、全部教えて欲しかったりするのだけど、それだと話が進みそうにないし、Lilyが大変だもの。
 良かったら私が覚えるべき単語は、一日に何個かずつ紙に書いて渡してくれると嬉しいのだけど。
 それを自分で調べ発音を確認するけどパソコンの音声だから、Lilyと英語で話す時に発音がおかしかったら教えて欲しいかな。」
「お嬢様は学習に前向きなのですね。」
「どうせ学習するなら英語を普通に使える様になりたいもの。」
「ですよね、私は漢字の練習をがんばります。」
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五年一組-28 [花鈴-03]

 五年一組への転校生がクラスに馴染むのに大した時間は掛からなかった。
 私からの提案で、クラスのみんなはLilyに対して英語で挨拶してるのだが、そこから日本語でのお喋りが始まることも有る。
 転校生たちはここのことを知りたいのだから協力して欲しい、と話して有るので山田さんちで子牛が生まれたとか、神社のツツジが綺麗だとか。
 子ども同士の会話としては少し不自然かも知れないが、皆で子牛を見せて貰いに行ったり神社に連れて行って貰う内に互いの距離は縮まっていると感じる。

「子牛、可愛かったね。」
「うん、でも大きくなったら焼肉になるのかと思うと考えさせられたな。」
「賢者は肉好きなの?」
「普通に食べるよ、ピーマン以外に嫌いなものはないんだ。」
「ピーマンか、ここでも採れる?」
「う~ん、商品としてはあまり栽培してないかもだけど、自分ち用に作ってる人は少なからずいるわね、うちの家庭菜園で沢山採れたら竹中くんちへお裾分けするね。」
「え~。」
「小栗家の家庭菜園、去年は六月ぐらいに収穫が始まったかな、Lilyはどう?」
「採れ立ての野菜は味が違うと聞いたから、これから親子で色々食べてみようって話しています。
 好き嫌いを一旦リセットして、今まで苦手だったものも食べてみようって。
 賢者Bambooもピーマンに挑戦してみてはどうです?」
「うっ、それは…。」
「栽培するところから始めてみようよ、自分で種を蒔くの。
 まずは何故ピーマンが苦手なのかを考えて品種を選ぶ。
 美味しいピーマンを食べたことが無かったからかも知れないし、調理法を研究したら美味しく食べられるかも知れないでしょ。
 それでもダメだったら私はあなたにピーマンを食べなさいとは言わないわ。」
「どうしてそこまでして?」
「ピーマンが嫌いなんてお子ちゃまっぽくて、私は小学二年生で克服、今は普通に食べられるのよ。」
「竹中くん、花鈴お嬢様には逆らえませんよ、僕も手伝いますがどこの畑で栽培するのですか?」
「絵梨、小栗家の家庭菜園がベストだと思うのだけど、どう?」
「どうしてうちがベストなの?」
「記事のネタになりそうでしょ、親孝行しなよ。」
「そ、そうね、相談してみるわ。」
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五年一組-29 [花鈴-03]

 Lilyは方言に戸惑っているし、田中くんは誰とでも話す様にしているけど私のナイト、竹中くんと話が合うのは私達ぐらいで自然と五人のグループが出来上がった。

「ねえ、大賢者、算数の時間に問題は無い?」
「今の所はね、花鈴姫が自由にしていて、それなりに刺激的、先生が姫と相談して授業を決めてるのには驚いたよ。」
「実験的な取り組みだからね、ホントは教室で無く一人で数学と向き合いたいのでしょ?」
「数学のことだけを考えたらそうだけど、みんなが算数に取り組んでるクラスの中で四人だけ数学と言うのは面白いし、姫がLilyに算数を教えつつ家来のひろっちに中学数学の基礎を教えてるなんて、普通の小学校では有り得ないから見てて楽しいよ。」
「ふふ、田中くんのことは大賢者もひろっちって呼ぶことにしたのね。」
「肩書やら英語の呼び名とか決めたけど、アーサー王伝説なんて誰も知らないだろ、彼は姫を守ってると言うより守られているのだから、ひろっちで良いのさ。」
「設定としては私を守るナイトなのだけどな。」
「みんな分かっていると思うよ、僕たち転校生が花鈴姫に守られていることをね。
 五年生だけでなく、六年生の面倒まで見てるのだろ。」
「大したことじゃないわよ、転校生全員に手紙を渡し、転校生としては先輩だから何かあったら相談してねって程度だから。」
「それで小学校を仕切ろうと考えてるとか?」
「そんなことは考えていないわよ。」
「でも五年一組のみんなが、やたら誰々くんカッコイイって褒めるのは花鈴姫の影響なのだろ?」
「そうね、三年生の終わり頃に始めたのだけど、かっこ悪いと言われる子は随分減ったの。」
「クラスが平和な理由?」
「洗脳に成功してるのかな、最初は人に迷惑を掛ける男子に対してかっこ悪いわよ、と指摘しつつ、手伝ってくれたら有難うカッコイイわよなんて感じ。
 クラスの女子で相談して始めたのだけど、男子も互いの振舞に対して、カッコイイ、かっこ悪いって言う様になってくれた結果、みんな、それなりに成長したと思うわ。」
「成長?」
「ええ、テストで点が取れなくても下級生の面倒をよく見てくれてた子はカッコイイと言われまくってから、学習への取り組み方も変わったの。
 テストの点が低くても自分的に問題無かったのが、点が低すぎるのはカッコ悪いと思うようになったみたいでね。」
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五年一組-30 [花鈴-03]

「カッコイイと褒めて育てた訳だ。」
「そんな大層なことではないわ、合併があったからクラスの子は互いに良く分かってなくてね、転校とも事情が違うから皆戸惑っていたみたい。
 上級生が出身校の違いで揉めたりとかね。」
「そっか、始めからグループに別れていたんだね。」
「上級生に影響されて喧嘩しようとする子がいたりしたのだけの、女子が仲良く成るのに時間は掛からなかったの、でないと転校生の自分は独りぼっちになってしまうでしょ。」
「取り敢えず女子をまとめたんだ。」
「まとめたと言うかみんな名古屋からの転校生に興味深々だったの。
 で、提案してみた訳、外見でなく行動のカッコ良さを褒めようって。」
「前の学校にはあまり行ってないけど、そんな雰囲気では無かったかな、今にして思えば、小学一年生には僕との差が理解出来なかったのだと思う。
 それで、算数の時間に数学と言うのは今年度からなのでしょ?」
「正式にはね、ただ以前から大賢者みたいな子の受け入れを先生と相談していて、絵梨と私は数学の学習に取り組んでみたの、それまでも結構自由にやってたのだけど。」
「読解力が有るから参考書を見ながら問題集に取り組んだとか?」
「まあね、絵梨が先生はいらないかも、なんて口にしちゃうから放置状態だったの。
 それまでも絵梨と私は授業の邪魔にならない様に五年や六年の範囲を学習しててね。」
「そんな花鈴姫は小一の授業に、ある意味ついて行けたの?」
「授業に関係なく親からの課題に取り組んでたわ。」
「課題?」
「授業は簡単過ぎるから、退屈しない様に先生や同級生の観察、誰が何を考えているのかを見極める。
 始めは難しかったけど、時間が有ったからじっくりとね。
 ただ、子どもだったから、絵梨みたいに口にしてしまい、嫌がられる子になってしまったの。」
「何を考えてるか見抜いてますみたいな?」
「うん、親が転校を考えたのはそれだけでは無いのだけどね。」
「他人が何を考えてるかなんて考えたこと無かったよ、ここでは嫌がられてないの?」
「前の学校で色々学んだから。」
「僕が何を考えてるかも分かる?」
「ある程度はね、でも、大賢者はそれを不快に感じない広い心の持ち主だから、話したのよ。」
「姫は自分にはない能力を沢山持ってるからね、魔法を使われても驚かないな。」
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