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F組~省吾と美咲 ブログトップ

五月の休日 1 [F組~省吾と美咲]

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「美咲。」
「あ、おはよう。」
「おはよう。」
「うふ、休みの日にも省吾と簡単に会えるなんて、家が近くて良かった。」
「はは、そうだな。」
「麻里子もあやかも由香もね、私のこと羨ましがっているのよ。
ほら、由香なんて省吾さんって呼んでたでしょ。」
「ああ。」
「みんなね、省吾のこと、他の男子とはちょっと違うって誉めてたから…。
ふふ、私の省吾だからね、って言っちゃった。」
「えっ、え、ほんと?
か、片想いの、片想いだった人にそう言ってもらえるなんて思ってもみなかった。」
「私は…、こんな気持ち初めてで…。」
「う、うん…、あ、そうそう、哲平も俺たちの話しにのってくれたから、F組のこと色々考えてみたんだけどさ。」
「ええ。」

「まず、今度の遠足をきっかけにクラスをまとめたいから、そのための企画としてね、グループでの出会いの場っていうか、グループで動きながら、クラスの今まで話すこともなかった人とも話す機会をという感じでさ…、

…、なんて企画、どう?」
「それは、面白そうね。」

「遠足がうまくいったら、クラスを三つに分けて、数学の小テストとか、定期テストとかで団体戦をやってみたいんだ。」
「団体戦?」
「ああ…、

…、てな感じなんだけどさ。」
「と、いうことは、単にF組の中で競うということだけじゃなく、他のクラスや先生方に対する宣戦布告ってこと?」
「うん、ただ、F組がどれだけ他のクラスに差をつけられるかという個人的な実験でもあるから、美咲の協力なしでは反発する人が出そうなんだけどね。」
「ふふ、二人で力を合わせてってことね。
でも、哲平くんものってくれそうだから個人的な実験ではなくなると思うな。
あっ、そうそう、数学、私も教えて欲しい、哲平くん、省吾の教え方誉めてたし。」
「もちろん、おっけいさ。」
「じゃあさ、お昼ご飯、うちで食べていかない?」
「えっ。」
「今日は母さんと二人だけだから、連絡しとけば大丈夫なんだけど。」
「俺のこと話したの?」
「もちよ、母さんも一度会いたいって言ってたから。」
「そっか、じゃあ…、そうだな数学はみっちりやるしかないな。」
「うん?」
「俺と付き合い始めて成績が落ちた、というより、成績が上がった、の方がいいだろ。」
「そ、そうよね。」
「数学だけでいいの?」
「えっ? 他の教科も自信有り? ってこと?」
「今やってるとこは、中学生の頃に一通り確認済みだから…、逆に美咲に教えることで自分の見落としに気づけるかも。」
「よろしくお願いします。」
「じゃあすぐお母さんに連絡して、俺もうちへ昼飯いらないって連絡入れるから。」
「うん。」

五月の休日 2 [F組~省吾と美咲]

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「このマンションなんだ、躑躅が綺麗だね。」
「うん、うちのマンションが一番綺麗な時期かも。」

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「美咲のお母さんに会うの、ちょっと、どきどきするな~。」
「ふふ、大丈夫よ、母さんには省吾のこと色々話しているから。
私は母さんと一緒に食事の用意すること多いの、その時に、あは、最近は省吾の事ばかり話してたかも。」
「え~。
まあ、親子のコミュニケーションがとれてるってことか。
う~ん、なんかはずかしいけど…、それはそれで安心かな。」
「?」
「この前読んだ本にね、家庭教育の基本は親子のコミュニケーションって、まあ当たり前のこととも思えるんだけどさ、うまくいってないことも多いって。」
「そういう本も読むのね。」
「親父の専門が『教えること』だからさ。」
「ふ~ん、さあ、どうぞ。
母さん、ただいま、省吾さんをお連れしたわよ。」

「まあ、ようこそ、美咲の母です。」
「始めまして、赤澤省吾です。」
「ふふ、美咲から聞いてたけどなかなかの男前じゃない。」
「えっ、そんなことないですよ。」
「私は、軽い感じの、そうね、ジャニーズ系ってあまり好きじゃないの。」
「あっ。」
「どうしたの? 省吾。」
「美咲が、哲平のことタイプじゃないって言ってたこと思い出した。」
「はは、親子で好きな男の子のタイプは一緒なのよ。」
「今日はゆっくりしていってね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「お飲み物は?」
「省吾さんには冷たい緑茶をお願い。」
「はいはい。」
「じゃあ、私の部屋はこっちよ。」
「うん。」

「さあ、どうぞ。」
「へ~、落ち着いた感じの部屋だね。」
「派手なのはあまり好きじゃないから。
あっ、飲み物、冷たい緑茶で良かった?」
「ああ、コーヒーとか飲まないって知ってたの?」
「カフェでもオレンジジュース頼んでたし、学校ではいつもお茶だったからさ。」
「やっぱ、美咲は最高だ、ちゃんと見てて気を配ってくれる。」
「ふふ、そりゃ私の省吾のことだもの…、へへ、私、前から省吾のこと気になってたみたい…。」
「?」
「だって、他の男の子が何飲んでるかなんて全然知らないもの。」
「はは、じゃあお昼までに数学を済ませようか。」
「うん。」

「美咲~、そろそろご飯にしない~。」
「は~い。」

「いただきます。」

「美咲、勉強はどうだった?」
「楽しかった。」
「ふふ、楽しくて頭に入ってるのかしら。」
「へへ、微妙なとこはちゃんとメモしてありますからね~。
でもね、哲平くんも言ってたけど、数学の先生より、ずっとわかり易くて、すごく難しく感じてた数学が簡単なことに思えてきたのは事実よ。」
「へ~。」
「うちの父は教えることのプロなんで、自分も小学生の頃から教える時のポイントとか、まあ親父直伝ってとこなんです。」
「そっか、それなら私も教えて欲しいな。」
「はは、母さんたら…、そうねパソコンのこととか教えてもらったらどう?」
「ほんとお願いしたいわね、最近ちょっと時間ができて使い始めたけど…、なかなかね。」
「パソコンで何をしたいかですが。」
「そうね、色々な情報を手に入れたいとは思っているけど。」
「そうすると、検索ですね、検索のコツは…、食後にでも簡単に説明させて下さい。」
「何かはずかしいわね機械オンチって。」
「別に、そんなことないですよ、父の教え子の大学生でもネットを使いこなせていない人、結構いますから。」
「あら、そう言えばお父さまは国立大学の…。」
「ええ、それなりに難しい入試をクリアしてきた人の筈なんですけどね。」
「省吾さんは大学の学生さんたちとも接してるの?」
「はい、父が人を自宅に招くことの好きな人なので。」
「じゃあ学生さんたちから色々教えてもらってる訳なのね。」
「う~ん…、確かに小学生の頃は教えてもらってたかな…。」
「じゃあ、今は?」
「一緒に討論したり…。
教授さんたちにはかわいがってもらってます。
父の大学に入るとしたら、どの学部のどのゼミにするかが問題なんです。
皆さん、うちに来いって…、自分的には既存の研究室とは違った分野にも興味があるのですが。」
「えっ? 美咲、あなたの彼氏って、とても優秀?」
「そうみたいね、うちの先生も赤澤は飛び級制度があったら、いつでも大学生になれるって言ってたわ。」
「あなた、そんな人を彼氏にして大丈夫?」
「はは、よして下さい、自分は普通の高校生ですから。」
「普通…、なの? 美咲?」
「まさか普通な訳ないでしょ、特別な人よ、私にとってね、でなかったらうちに招待しないわよ。」
「はいはい、美咲の口からお惚気話しが出るとはね~。」

梅の実 [F組~省吾と美咲]

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「あっ。」
「どうしたの、省吾?」
「ほら、実がなってる。」
「ほんとだ、何の実かな?」
「え~っと、梅じゃないか。」
「あっ、そうだ、二月だったかな、このあたりで梅の花が咲いてた。
あの頃は他に花なんて見当たらなかったから、この辺りだけ、ちょっと春だったかも…、でも風が強くて震えてたな、私…、あの頃は、受験前だったし。」
「そっか。」
「ふふ、何か不思議よね、かわいかった花が、知らない間に実を結んで…、梅の実がこんなに綺麗だとは知らなかった。」
「うん。」

六月になって [F組~省吾と美咲]

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「ねえ、省吾、高山さんたち真剣なのね。」
「ああ、プロジェクトF、高山さんには直接関係しないけど、矢野さんや早川さんたちは卒業研究を意識してのことだから、いい加減な気持ちではないと思う、美咲も協力してあげてね。」
「ふふ、もちろんよ、でも大学生の人からお願いされるなんて思ってもみなかった、そのリーダーが省吾ってことにはもっと驚かされたけど。」
「でも数学小テスト団体戦を通して、他のクラスに圧勝できたのは、美咲の力でもあるからさ。」
「ほとんど省吾の力だと思うけどな~。」
「いや、美咲とじゃなかったら、思いっきりやれなかったし、やろうとも思わなかった。」
「ふふ。
いかにしてF組が結果を出したのか。
そしてこれからの取り組みはどうなって行くのか、それと平行して進学校の生徒の意識調査…。
大学生の研究ってこんな感じなのね。」
「まあ、色々なんだけど。
教育学部と言っても、そうだな、幼児教育を考えてる人もいれば、生涯教育に取り組んでいる人、もちろん学校教育、他にもね。
そして、それぞれが幅広い分野に分かれてたりするから、同じ教育学部に所属していても、接点が少ないってこともよくあることなんだよ。」
「そっか、そうよね、幼児と大学生では全然違うからね。」
「でも、大学生も幼児期を過ごしてきてる、生まれてから大学生になるまでの環境は、当然大学生の人格とかに反映していると思わないか。」
「う~ん、ずいぶん難しいことなのね。」
「確かに難しい、幼児期の英才教育ってあるでしょ。」
「うん。」
「他の子より早く字が書けるようになったとか、九九を幼稚園で覚えたとかさ。
親ががんばり過ぎちゃうことも有るらしい。
でもね、小学校に入学してから、英才教育を受けなかった子との差はどんどんなくなっていくみたいなんだ。
もちろん個人差はあるそうなんだけど。」
「ふ~ん、ね、省吾はどうだったの?」
「はは、特別なことはしなかったって、親父は言ってるけどね。
実際には、きっかけを作ることをしたんだってさ、本の読み聞かせの合間に、字を書いてみせて、字を書くことに興味を持ったらそれを大切に、興味を持たなかったら、しばらく静観って感じでね。
一番の目的は本を好きになって、小さいころから沢山の本を読んで欲しかったって言ってた。」
「うん、結果は?」
「親父はプロなんだよ。
小さい頃から、色々な本を読んできたし。
気がついたら、小学生の内に、人に教える時のポイントなんてことまで叩き込まれていた。」
「それにしても、幼児期の英才教育なんてことにも省吾は興味を持つのね。」
「はは、実は三日ほど前に、叔父さんが来てね、その時、親父が美咲のこと口にしてさ。」
「あらま。」
「叔父さんったら、今度紹介しろだとか、結婚まで考えているのか、結婚したら子どもは何人、なんてことを聞いてきてさ、もう、まいったよ。」
「ふふ。」
「親父も母さんも調子に乗って色々話し出すし、まあそんな話しの延長みたいな感じで、生まれてから幼児期の頃の教育について色々話してくれたってことなんだ。」
「そんな話し、ちょっと早すぎない?」
「うん、でもね、そんな話しを聞きながら、美咲のこと考えてた。
美咲も、小さい頃から愛情たっぷりに育てられてきたんだろうなって。
とても大切なことなんだ。」
「そうか…、そうかも…。
ね、省吾、高校卒業したら結婚だけど、赤ちゃんはいつ頃にする?」
「えっ、美咲、早すぎない…。」
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