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社-01 [シトワイヤン-28]

姫さまが宙に浮かびながら舞う映像とともに舞姫フレンズの名は海外でも広がりを見せている、と言っても欧米が中心。
地球市民党として目標に掲げている中東での展開は足掛かりすら作れていないのが実情だ。
姫さまも気にかけて下さって…。

「和馬さん、舞姫の社を中東にも建ててみませんか?」
「そうだな、予算に問題はないが場所がね。」
「都市の近郊に緑化事業と並行して、とイメージしているのですが。」
「う~ん、ダメ元で募集という情報を流してみましょうか、中東では姫さまの認知度が低いので難しいかも知れませんが。」

早速、スタッフに指示を出し動いて貰ったのだが反響はなかった。
だが諦めかけ他の手を考え始めていた頃、具体性の有る二件の問い合わせが相次いで寄せられた。
国の王子と実業家、どちらも、たまたま滞在していたパリで姫さまの祝福を感じた人だ。
問い合わせまでに時間が掛かったのは彼らなりに調査や準備をしていたからとのこと。
当人達が舞姫フレンズだと名乗る。
宗教と一線を画している状態なら建設は可能、費用も負担する、勿論姫さまに来て頂きたいと。
早速二か国へスタッフを送り込み調整を始める。

「姫さま、日本はキリスト教ではないので話が早いそうです。
姫さまの舞が神楽に由来していても何ら問題ない、もし、キリスト教に由来していたら協力どころか攻撃対象になっていてもおかしくないと。」
「一部のイスラム教徒は過激なのですね。
それで緑化事業込みでの建設は進みそうですか?」
「緑化は利益に繋がらないと言って来ましたが、舞姫さまの社を中心に大きな公園として整備、新たな観光地とする案を提示しました。
初期投資は海水淡水化装置関連など、かなり掛かりますが、イスラム圏に二か所の拠点が築けるのであれば安いものです。
姫さまのDVDなどグッズも売れる様になりますので。」
「勝算は有るのですね。」
「はい、キャッシーも乗り気です、ただ、結果が出て来るまでは裏方に徹すると話していました。
アメリカ資本を動かすより日本の方が絶対上手く行くだろうと。
舞姫さま専用機のテストフライトが終了したら、漠然と海外旅行とだけ決めてあったスケジュールを中東の二か国としても良いですね。
舞姫さまの社だけを小規模で建設するのなら日程的に充分間に合います。
姫さまご訪問の後、施設を拡充拡大、周辺の緑化を進め公園化という流れで如何でしょう。」
「良いですね、緑化事業は大学の研究室にも参加して貰いましょう。
予算が足りなければ私のお小遣いから出しますよ。」
「その必要はないですが、姫さまが個人的に費用を出される、ということは良いアピールになると思います。
新作DVDも勢い良く売れてますので、大きな投資も可能です。
緑化事業のコストは公園の売り上げでカバー出来るとは考えにくいですが、これを切っ掛けに中東で姫さまグッズの売り上げが伸びればトータルでカバー出来ると思います。」
「中東に足掛かりが出来るのであれば、マイナスでも構いませんね。
世界のトータルでプラスになれば良いのですから。」
「でも、愛華はCitoyenブランドの中東向け商品開発を指示してマイナスにする気はなさそうです。
清香も、ユニットハウスの中東向け仕様を考えていますし。」
「エアコンの効きを良くする工夫とかですか?」
「地下室仕様を社の地下に、地上の工事が進む前に地下迷宮を作っておきたいとか。
スタッフ達が盛り上がっていましてね。」
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社-02 [シトワイヤン-28]

舞姫さまの社、その経済効果は大きい。
DVDよりホログラムの方が姫さまを強く感じられるとの噂が広がり、苗川まで来られない人達が過疎化の進む田舎の村に足を運ぶ。
それに対応して店を増やし、道路拡張工事が始まる。
無秩序な開発にならぬ様、社を建てる際に周辺の土地を安く取得して有るので、言わば門前町が整然と形成されて行く。
現時点では五か所の過疎地で稼働中だが、全国から問い合わせが来ていて、どこに建てて行くか検討中。
ただ、姫さまが立ち寄らないと、ホログラムでもDVD程度にしか姫さまを感じられないという事情が有り簡単に量産とは行かない。
今の所、各都道府県に一か所を目標にしているのだが、欧米からも問い合わせが来始めた。

「海外に建てる社は宗教性を弱める意味でも日本のもの以上に娯楽施設を併設したいですね。」
「なあ、智里、だからと言って中東の地下迷宮計画はやり過ぎじゃないだろうか。」
「中途半端なものを作るより良いと思いますよ、拡大を続け絶対完成させないという方針は工事関係者に安定した雇用の場を提供し、その変化がリピーターを呼び込むでしょう。」
「ただ、その規模がな、こっちのスタッフが盛り上がっていた規模を遥かに超えているだろ。」
「二か国同時進行の効果でしょうね、仲の良い国ではないのでライバル心が働いて。
両方へ行って比べる人もいるでしょうから相乗効果が見込めますね。
国の為に観光で雇用を生み出すとか、お二方とも色々考えておられるのでしょう。
建設計画の発表が有ってからDVDが売れ始めて、社が完成する頃には万里の知名度が現地でも上がってると思います。」
「そうだな、その社も地下だから外観のデザインを気にしなくて良いのは助かったよ、モスクっぽいのは建てたくなかっただろ。」
「大きく掘って完成したら土を被せて地上は緑化、換気口は植物で隠すとか、水道関係が大変そうですが。」
「自前の海水淡水化装置が稼働を始めるまでは、本格的な緑化は出来ないみたいだよ。」
「暑そうですが工事は大丈夫なのでしょうか?」
「重機も大型ダンプカーも冷房が効いているだろう。
現場でユニットを組み立てるのも涼しい時間帯に一気に出来る様、簡単にしたと聞いている。
暑い時間帯は冷房の効いた屋内で、姫さまがアラビア語っぽく歌ってるCDを聴きながら内装工事という事らしいから大丈夫さ。」
「万里がひたすら聴いて真似してみたというCDですね。
取り敢えず発売したけど、売れるのかしら?」
「現地の人でも違和感はないそうだから、姫さまの訪問に合わせて、簡単に品切れとならない量は送っておきたいね。
王子が姫さまを国賓として招くと発表したから、実業家の方も国に働き掛けているそうだよ。
向こうでは皇室とは別で、日本の姫さまという扱いになってるらしくてね、皇室が続いていても幕府が実権を握っていた歴史が紹介されているとのことだ。」
「そこから、どう話を大規模娯楽施設に結び付けて行くのか見ものですね。
しかも地下。
巨大ホールの天井を地上に出して自然光を取り入れるとか、地上から地下五階までの吹き抜けとかも有って地下施設の暗いイメージを出さない反面、迷宮エリアではドキドキの体験が出来るアトラクションを満載、プールも地下に、迷宮エリアが有る程度出来上がってから行きたいですね。」
「私達が行く時は、社と数軒の飲食店だけだからな。
その後は、大きな施設が完成する度にイベントを開催して、リピーターを飽きさせない工夫をして行くそうだから、その度に呼ばれるかも知れないよ。
ヨーロッパで舞姫さまの祝福を感じた人達の新たな聖地となるのだから集客に問題は無いと思うのだがね。」
「う~ん、聖地を巡る争いは起きないですよね。」
「たぶんな。」
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社-03 [シトワイヤン-28]

宗教とは一線を画すと言いながら、舞姫さまの社や賽銭箱は門前町も含めて神社のビジネスモデルをそのまま模している。
社の管理スタッフからお祭りの提案が有ったのも自然な流れだ。
そもそも清香村で新たに作られたお祭り、そこで舞を披露したのが舞姫さまという芸名の始まりでもある。

「姫さまは提案の有りました、社でのお祭り、どう思われます?」
「管理スタッフの仕事に変化が出来て良いのでは有りませんか。
乱暴な祭りでなければ、来客数の落ちる時期を狙っての開催に問題は無いと思います。」
「それぞれの社で独自にやって貰うか統一した何かを提示するかですが。」
「独自で良いでしょう、海外も含め観光業としてのメリットが有れば良いのです。
お賽銭収入からの寄付額が高止まりしていますので自治体も協力してくれるのでは有りませんか。
門前町含めかなりの収益です、税収の伸びも期待されているでしょう。」
「はい、舞姫さまの社を展開し始めて、改めて神社という存在を見直しました。
伊勢神宮とか、昔から多くの人が参拝に訪れる所は地元経済を支えて来たのですね。
人を集める力、姫さまは神様に負けてないです、舞姫さまの社も過疎地の経済を支える存在になり始めていると思います。」
「周辺の開発まで進めて行けそうなのですか?」
「ええ、店の利益が大きいので、それぞれの地元に新たな観光資源を作って行く事で還元し、来客数を維持して行く方針です。
観光地としての魅力を高め安定した集客を目指して行く、お祭りもその柱の一つになればと。」
「お祭りで何をするか具体的な案は有るのですか?」
「3Dプロジェクションマッピングを使う案が出て来たのですが、それならお祭り限定でなくとも良い訳で、でも映像をお祭りバージョンにするという手も有ります。」
「見て楽しむのですね、参加型のは如何でしょう?」
「盆踊り的なものですか?」
「う~ん、プロジェクションマッピングの映像に合わせて踊るとか、踊りも年齢層に関係なく踊れるものと、それぞれの年齢層に合わせたものとか…、海外の社でも作って貰って教え合うとか。
何の伝承も謂れもないのですから自由に楽しめたら良いですね。」
「確かにそうです、祭りに関係なく3Dプロジェクションマッピングは社を盛り立てるべく使って行こうと考えていますので、上手く使えないか検討して貰います。」
「楽しいお祭りになりそうなら、私も行きたいです。」
「う~ん、スケジュールが合えば…、姫さま、ヘリコプターという選択肢は如何ですか?」
「ヘリコプターってヘリポートが必要なのではありませんか?」
「それぐらい簡単に出来ます。
災害時の備えを兼ねて社の近くに作ります、ヘリも購入して…。」
「それなら普段は観光用にしても良いですね。」
「はい、調べて検討して見ます。」
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社-04 [シトワイヤン-28]

ヘリコプター利用の話は、キャッシーが新たに作っている町MAIHIMEまで、空港からの交通手段として検討していると聞いていて思い浮かんだ。
MAIHIME TOWN、新たな町作りに関しては舞姫さま関連の英語版サイトで公開している。
それは本当に何も無い原野に、水道などのインフラ整備と並行して道路を作る所から始まった。
作業員の宿舎用ユニットハウスは道路工事の進捗に合わせ移動したが、今は町に落ち着いた。
食堂など作業員の生活に必要な建物に続いて学校など家族の為の施設が建てられていく。
初期工事のユニットハウスはほぼ完成した物を日本から送ったが、今送っているのは一部の部材のみ。
現場に完成した組み立て工場が稼働を始めている。
もちろん舞姫さまの社は町の中央に建設中。
キャッシーは町建設に際し教会やモスクなど宗教施設は建てないと宣言していて、その条件を呑み地球市民党の理念に賛同した人達が雇われている。
町の産業としては舞姫さまグッズの工場をメインに進めているが、舞姫さまの社を中心とした観光も検討中。

「和馬、中東二か国の後、アメリカのMAIHIME TOWNだけど、姫さまの友達となる様な鳥や小動物はいるのかしら、どちらも緑の少ない土地みたいだから少し心配だわ。」
「そうだな、向こうでペットを用意して貰うか、姫さまとも相談しておこう。
特に中東は言葉の問題も有るから姫さまのストレスに気をつけないとな。」
「三か所とも社のオープンに合わせての訪問だけど、お祭りの話はどう?」
「ああ、それぞれオープニングイベントを企画しているよ、近い内に概要が届くのではないかな。」
「姫さまの衣装をベストにしたいのよね、イベントの概要だけではデザイナーもイメージが湧かないでしょう、取り敢えずデザイナーを送り込んでおいた方が無難よね。」
「だろうな、特に中東は気を遣うべきだろう。
まだ時間は有るから、しっかり準備をしておきたいところだ。」
「そうねスタッフをもう少し送り込んで向こうの雰囲気とか報告して貰うだけでも安心かしら、私達もイスラム圏の人達とは付き合いが無かったから。」
「中東二か国を乗り切り、MAIHIME TOWNで寛げたら良いのだけどな。」
「MAIHIME TOWNと言えばキャッシーも宗教としっかり向き合ってるみたいね。
不慮の事故で亡くなった場合の葬式についてもMAIHIME TOWNの住人となった時点で本人に確認しているのでしょ。
連絡すべき親族なども強制ではないけど住民として登録の際に。
でも、教会やモスクを建てないという条件を呑んだ人達だからと言って葬式とかを考えるとどうなのかしら、微妙じゃない?」
「それについては住民たちが話し合ってるそうでね、舞姫さまの社に冠婚葬祭の施設を併設という話が来ている。
墓についてもいずれ必要になると言う事で検討を始めたそうだ。
自分達の死とも向き合っているのだな。」
「こうなってくると宗教とは一線を画しながらも、ほとんど宗教組織を兼ねているようなものになってしまったわね。
教えは地球市民党の理念、信仰の象徴は舞姫さま。
誰も見た事のない、天国とか地獄の話が出ないのが大きな違いだけど。」
「MAIHIME TOWNの住人たちは、今まで所属して来た宗教での葬式となると聖職者が必要になるが、聖職者の居場所がないということで、新たな葬式の形を考え始めているそうだよ。
姫さまのホログラム映像を利用出来ないか打診して来た。」
「死にそうな人はいないのでしょ、随分気が早いわね。」
「葬式の為だけに宗教、という人もいるのだろう、ならば、そこさえ解決しておけば心の中には舞姫さまがいらっしゃる、既存の宗教抜きで安心出来るのさ。」
「う~ん…、舞姫教とか名乗る?」
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社-05 [シトワイヤン-28]

「姫さまは舞を舞われる時、どの様な事を考えていらっしゃるのですか?」
「皆さんの幸福を漠然と祈念しながらです。」
「DVDではタイトルの代わりに舞われた時と場所を記していますが、タイトルを付けるとかは?」
「特に何かを表現しようとしている訳では有りませんので付けようがないのです。」
「例えば、死者の為に鎮魂の舞というのは難しいのでしょうか?」
「鎮魂ですか、結局残された者の為なのですよね、亡くなった方を偲び死後の安らぎをイメージして…。
他の舞との違いを出せるかはやってみないと分かりませんが、何か訳が有るのですか?」
「MAIHIME TOWNの住人たちが既存の宗教に因らない新しいお葬式をイメージしていまして。
姫さまのホログラム映像を使えないか、という問い合わせだったのですが、お葬式や法事用に鎮魂の舞をDVDにしたら需要が有ると思うのです。
今は葬儀を執り行わない人もいますが、そんな人でも最期に姫さまの舞で送られたいと思っても不思議は有りません。」
「いよいよ宗教団体になりそうですね、少し考えてみます。」
「姫さまはどなたかのお葬式を経験された事は有りますか?」
「祖父が高齢で他界した時に。
亡くなる一週間ほど前、お見舞いに行ったら凄く喜んでくれて、ねえお姉ちゃん。」
「だったわね、舞姫さまになる前だったけど、天女が迎えに来てくれたのか、とか話して。
伯父さん達は万里のお蔭で苦しまず安らかな最期を迎えられたと話してた。
苦しんで亡くなったり、若くして亡くなった人を送るのではないだけに、ひどく悲しいお葬式とはならなかったわね。」
「だろうな、高校生の時事故死した同級生がいてね、ホントに悲しいお葬式だった。
お母さんになんて、誰もなんて声をかけたら良いか分からないという感じでね。」
「そうでしたか、私は身近にそういった経験が無くて…、鎮魂について考えてみます。」
「和馬さん、MAIHIME TOWNの住人たちは火葬を考えているのでしょうか。
何かの映像で星条旗を掛けられて運ばれた棺を埋めるシーンが印象に残っていまして、お墓だらけになりそうですよね。」
「日本と違って土地に余裕が有るのだろう。」
「でも、増え続けるお墓って…。」
「どうなのかな、日本だと火葬して先祖代々の墓ならそんなに増えないし、ロッカー式納骨堂とか…、墓じまいする人もいれば、散骨とか樹木葬とか、調べてみたら随分多様化してるみたいだけどね。」
「お姉ちゃん、うちは先祖代々のお墓だよね。」
「お墓参りには行くものね、でもさ、大きな声では言えないけど、ただの石で出来たお墓、中に人骨の欠片が入ってると言っても、そんなに拝むほどのものでも無いのよね、本当は。」
「まあ、気持ちの問題だからな、智里みたいに唯物的に考える人には滑稽かも知れないが。」
「お墓がなくてもお爺ちゃんのことは忘れないですよ。
和馬さん、私達の祖父は、老い先短い年寄りの為に無駄金使わず、これからの子どもたちの為に使いなさいと日頃から話していた人です。
少しお転婆だった私のことを心配しつつも、私達姉妹をとても可愛がってくれて。
こうして思い出す事には墓参りと同じ意味が有ると思いませんか?」
「ああ、そうだな、気持ちの問題であり、宗教的な形式に囚われる必要はない。
葬儀やお墓が多様化してるのも価値観が形式に拘らない方向に動いているからかも知れないね。」
「将来はもっと変わりますよ。
友達と見たSF映画に、地球から遠く離れた所で事故死した人を宇宙葬と称し、カプセルに入れて宇宙空間へというシーンが有りましてね。
友達は、その宇宙旅行の設定を考えたら、貴重な動物性たんぱく質を、貴重なカプセルに入れて捨て、宇宙のゴミにするなんて馬鹿げてると話してました。」
「死んでしまえば、か、大学の友人に火葬なんて燃料の無駄だから、死んだら適当に埋めてそこに桜の木でも植えてくれと言ってる奴がいるがね。」
「実行して上げるのですか?」
「法的な制約が有って結構大変みたいなんだ、まあ、今の所は殺しても死なないぐらい元気なのだがね。」
「はは、殺されたら死ななきゃダメですよ。」
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社-06 [シトワイヤン-28]

「なんか、そんな話ばかり嫌だな。」
「あっ、姫さま御免なさい。」
「和馬さん、もっと楽しい話題はないの?」
「有ります有ります、姫さまの縁で知り合ったカップルから、舞姫さまの社で結婚式を挙げられないかとの問い合わせが有りましてね。」
「結婚式か…。」
「智里にも予定有るの?」
「いえいえ、言い寄って来る人は少なからずいますが、何か違う気がしまして。
そう言う和馬さんはどうされるのです、清香さんと愛華さん、日本で重婚は違法ですよ。」
「事実婚で通す事になりそうだよ、想定される問題を、お金で解決出来るだけの余裕は有るからね。
清香と愛華の同性婚という選択肢も考えてはいるが。」
「和馬さんが仲間外れなのですか?」
「生まれて来る子達は私の子だからね。
けじめとして結婚式や披露宴はしたいと考えている。
入籍するのでなければ結婚式を挙げてはならないという法律はないだろ。」
「やはり舞姫さまの社でですか?」
「ああ、結婚式を挙げたいという問い合わせが有ってから、彼女達がその気になってね。
高齢出産は絶対避けたいから早めにとは話し合って来た、清香は苗川の社に結婚式場の併設を指示し、愛華は結婚式の基本プログラムを検討させてるよ。
二人とも社に於ける結婚式の形を、既存のものと違うオリジナルなものに出来ないかとね。」
「万里に祝福の舞を舞わせるとかは駄目ですよ。」
「そんな贅沢は許されないだろうが、二人には是非参列して頂きたいものだな。」
「話はもうそこまで進んでいるのですか。」
「出会ってから長いからね、二人と付き合っていることは、ずっと公言して来たから世間の反発は少なくなっているよ、多分。」
「でしょうね、相手に隠す形の二股ではないですし。」
「問題はだな。」
「問題が有るのですか?」
「舞姫さまの社を冠婚葬祭で使うと、いよいよ宗教団体みたいになってしまうということなのだが。」
「はは、万里も諦めてるのでしょ?」
「そうね、でも、あくまでも株式会社、宗教法人は立ち上げません。」
「税制面で優遇されるみたいだけど。」
「沢山稼いで沢山税金を納めれば良いのです。
節税だなんて小さいことを言い出すスタッフはいないでしょ?」
「かなりの投資をしてる筈なのに常に収入が上回ってますからね。
万里のお小遣いで買った潰れかけの店が直ぐに持ち直して利益を生み出すといった具合に。」
「株式会社舞姫はスタート時こそ苗川銘菓舞姫の商品化に時間が掛かったけど、後は順調に巨大化してるね、従業員も増えたのだろ。」
「はい、労働環境、労働条件を良くして来ましたので入社希望が多いのです。
今はその希望を叶えてあげる為に事業拡大という面が有るのですよ。
新しい事業所は分散させ苗川に集中させない様にしています。
観光客が増え過ぎていますからね。」
「姫さまが苗川に滞在中は特にな、でも姫さまが旅行中でもそれなりに観光客は来ていたみたいだね。
何でも聖地をゆっくり散策出来るチャンスなのだとか、リピーターの方々は初めて舞姫さまの祝福を感じた日のことを思い出しながらのんびりしていかれるそうだよ。」
「あっ、そうだったのですか、売り上げが落ちるから旅行に行かないで欲しいと言われない理由はそれだったのですね。」
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社-07 [シトワイヤン-28]

中東へはキャッシーが用意した舞姫さま専用機で。
最初に舞姫さま専用機の話を聞いた時は数人乗りのプライベートジェットをイメージしたのだが、苗川から一番近い地方空港で私達を待っていたのは、姫さまと智里専用の部屋を備えた七十人乗りの機体。
同行するスタッフのシートはファーストクラス用の物だが、姫さまのシートは、その体格に合わせて作られた特製だ。
フライト中の機内で…。

「この規模の専用機とはね、聞いていた以上の仕上がりで、アメリカの富豪はやることが違うわね。
姫さま関連で儲かってるからこれぐらいは安いものなのかしら。」
「でも利用頻度を考えると、もったいない気がします。」
「まあ、財政難に苦しむ日本の地方空港に格納庫を作り、使ってない時は見学も可能というスタッフからの提案を受け入れて貰えたから良いじゃないか、これなら見学だけでも充分客を呼べるだろ。
あまり飛ばさない方が長持ちすると言うし、姫さまに度々アメリカに来て欲しいというキャッシーの、気持ちの表れだからな。
MAIHIME TOWNの別荘も、姫さまの為に森と綺麗な水の小川や池を作ると言うし。」
「気候的にどうなのかしら、水の確保は出来ると聞いたけど。」
「不足する分は海水の淡水化装置を使うのだろう、自然のままに出来ないのは残念だが、森林火災で焼失した分には遠く及ばなくても森を広げて行きたいと話していたね。」
「雷対策や竜巻対策もしっかりして行くそうですが、そこまでして不便な所に町を作ると言う事に拘るのは何か有ったのでしょうか。」
「キャッシーは麻薬や覚せい剤、銃のない町を作りたいと話していただろ、その辺りに思いが有るのではないか。
町で働いてる人達はその考えに共感しているそうだ。
自由な社会だから町を隔離とは出来ないが、隣町からの距離が防波堤の役目を果たすだろうし…。
舞姫さまの社を目指して来る人に薬の売人はいないと信じたいね。」
「広大な私有地なのよね、行政との関係はどうして行くのかしら?」
「沢山税金を納めているだろうから上手くやって行くのではないかな。
州知事とも話し合ってるそうだよ。
日本の社みたいに観光客を呼び込むことになれば州としても嬉しいだろう。
すでに大きな投資をしている訳だからな。」
「大きいですが身内の企業でお金を回している様なもので、税金以外は舞姫さまを取り巻くグループの外へは出て行かないのです。
この事業は自分の資金が自分の枠内で移動してる感覚なのだと、キャッシーのお爺さまが話しておられました。
因みにユニットハウス関連で儲けさせて頂いてるうちの会社もその一部と認識されていて、舞姫さまグループの一員なのだとか。
メリットが有るのなら何時でも資本提携しようと話して下さいました。」
「間違いなく協力関係では有るからな、宗教法人ではなく株式会社を姫さまは望まれておられるのだから、巨大企業というのも…、世界に影響力を与えるレベルの巨大企業を誕生させることは不可能ではない…、問題は独占禁止法かな。」
「一つの企業にするのでなく、企業が姫さまの名の下に協力関係を築いて行くということなら、巨大企業以上に大きく出来ませんか?」
「そっか、キャッシーのお爺さまと清香や清香のお父さまは、資本的に全く提携していなくても、MAIHIME TOWNやこの専用機関連で協力してる、こんな関係が世界に広がれば地球市民党の理念も広がりそうね。」
「舞姫さまの名の下にか…。」
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社-08 [シトワイヤン-28]

グループ企業でなくとも、知り合いの社長達、そう市民政党若葉の立ち上げに協力してくれた社長達は互いに協力し合っている。
その形を舞姫さまの名の下、世界に広げて行くのは面白いと思う。
地球市民党の拡大に企業の経済的メリットを加味出来れば党員が増えるという話になった。

「中東の企業が参加する可能性は有るかしら?」
「そうだな、舞姫さまの社は現地の企業と共同で建てた、その辺りの繋がりを発展させれば可能だとは思う、だが問題は宗教指導者の動きだろ。」
「姫さまのことが、まだ充分伝わっていないから本格的に排除の動きまでには至ってないが、快く思ってはいないだろうという話でしたね。」
「DVDが売れ始めたからな、ヨーロッパからの情報をどう判断してるかだね。
こちらとしては、政治団体、地球市民党のシンボルで通すのだけど。」
「今向かってる先は、次期国王となりそうな王子の力で問題ないと思いますが、そこで歓迎され過ぎた場合、二つ目の訪問国がどう出るか微妙ではありませんか?」
「ああ、王子は国賓として招いてくれたが、それに負けじと歓迎してくれるのか、その逆になるのかだが、まあ結局、行ってみなくては分からないな。」

空の旅は長い、時差を調整するために仮眠を取ったりしたが、今後の様々な可能性が頭をよぎり落ち着かなかった。

空港で、にこやかに出迎えてくれた王子は、到着前から姫さまの祝福を感じていたと笑う。
出迎えの人達は一様に胸の前で手を組むという、日本で定着し始めた姫さまへの感謝スタイル、女性は姫さまグッズを身に着けているが、全ては王子の指示なのだろう。
随行のスタッフ達は全員テロに備えて緊張していたが、何事もなく王宮へ。
歓迎行事はゆったりとしたスケジュールで組まれていて、王子の姫さまに対する気遣いが随所に感じられる。
通訳の人によると、町の人達は姫さまの祝福がイスラムの教えに無い体験という事で戸惑いながらも癒されていると教えてくれた。

王子は原油に依存しない国作りを考え、改革を進めている。
ただ、王国と地球市民党とは真逆の存在だと思う。
おそらく王国を取り仕切っている人達は地球市民党の理念に賛同出来ないだろう。
それでも、姫さまの力が大きいとはいえ、我々を受け入れてくれた王子は明日を見据えるリーダーだ。
今回の交流が今後の友好関係を構築して行く足掛かりになれば良いと考える。
王子が何を何処まで考えているのかは分からないのだが。
もっとも、民主主義を名乗る政権でも、危うい政治をしている国は幾つも有る。
そんな国よりは安心して付き合える国だと私達は判断した。
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社-09 [シトワイヤン-28]

言葉に関して不自由しなかったのは英語を話せる人達が世話をしてくれたからだ。
彼らは色々な事を教えてくれた。

「王子は女性差別を無くして行こうと考えておられるようです。
日本の少女を国賓として迎えるのは、どう考えても異例なことですが、今回の事を女性の地位向上の象徴にしたいとか、でも宗教指導者とは対立が有って、女性スタッフの方々は王子に頑張って欲しいと口々に話しておられました。」
「そういう事か、ならば我々も協力しないとな。」
「今でも周辺諸国に比べればマシだと話してたわね、それでも納得出来ないおかしな戒律が有るのだとか。」
「宗教指導者たちはどうしてるのだろう、姫さまの祝福は人を選ばないだろ。」
「姫さまを国賓として迎える事に反対していた人達は静かになったそうです。
明日は舞姫さまの社で舞を披露、全国放送されるそうですので色々楽しみですね。」
「パリでも舞の時は祝福の力が強まったからな、同じことが起きれば宗教指導者達も考える事が増えるだろう。」
「また宙で舞って下さったら、パリの比では無いかも。」
「姫さまの事、女性スタッフ達はどう捉えていた?」
「大きな声では言えないけど、祝福を感じて、イスラムの教えなんてどうでも良くなった、という人がいたわよ。」
「それって、国としては困ることじゃないのかな。」
「王子としては政教分離を進めたいみたい、因みに王子の支持者は多いそうで、次期国王になって改革を進めて欲しいのだとか。」
「でも、簡単ではないということか…。」
「そこを姫さまの力でということなのでしょうね。
すでに多くの人が祝福を感じ、更に今は祝福を感じられるエリア目指して人が集まって来ているとか。
でも国賓なのだから宗教指導者も止められないでしょう。
明日は巡礼の目的地が舞姫さまの社になりますが…。」
「宗教指導者にとっては、新たな異教徒の聖地が国内に出来ると感じてもおかしくない、そこへ向かう巡礼の民は異教徒では無く自分達の教えに従って来た人達、明日、何事も無く舞を披露して頂ければ良いのだが。」
「姫さまの祝福によって暴力的な衝動は抑えられていると思うけど、少し心配では有るわね。」
「王子としては宗教団体ではなく、舞姫フレンズをファンクラブとして組織化して行きたいと話していた。
舞姫さまという美しきパフォーマーのファンクラブが宗教指導者にとやかく言われる筋合いはないという事だな。」
「それを、素直に受け入れるでしょうか?」
「そこが王子の挑戦だね、彼は舞姫フレンズを通して少しずつ意識改革を進めて行きたいとも話していたよ。
何年か先に戒律を緩く出来る様に、王国で有っても国民の資質を上げて行きたいのは、地球市民党と同じだそうだ。
まあ、宗教指導者達だって何時までも生きてる訳ではないからと笑ってたよ。」
「そうね、舞姫フレンズとなれば、宗教について考えるのは自然な事だわ。
王子は姫さまの力で国を変えるつもり、だから、まず、舞姫さまの社だったのね。」
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社-10 [シトワイヤン-28]

夏は軽く四十度を超えると言うこの国でも、今の季節は過ごし易く、舞を披露するイベントは舞姫さまの社近くに造られた仮設の屋外ステージで。
王子から、この地に一大観光施設が造られるという話の後、歌や踊りが続く。
観客たちは姫さまの祝福を感じながらそれを楽しむ。
しばらく間を開けて、姫さまの出番。
人々が胸の前で手を組んでくれたのは、なんかホッとした。
王子が初めて姫さまを前にしたら、どうすれば良いか戸惑うだろうからと、苗川で始まった感謝のポーズを事前に教えさせたのだとは後で聞いた話。
すでに姫さまの祝福を感じていた人々は素直に従ったと言う事だ。
このステージには鷹狩で使われているハヤブサが連れて来られた。
前もって姫さまと対面済で、もうすっかり懐いている。
舞が始まり、姫さまが呼ぶ仕草をすると、飼い主の腕から舞い上がり姫さまの下へ、姫さまに挨拶するような仕草をした後はステージを右へ左へと、広い屋外ステージならではの演出となり舞を盛り立てる。
しばらくすると姫さまの舞は宙に浮き始める。
勿論種も仕掛けも無い。
ハヤブサは姫さまの下を何度も通り抜けた後、飼い主の腕へ。
姫さまは、舞を終え、静かに舞い降りる。
観客はこの物理法則を無視した現象を目の当たりにしても自然に受け止め、強く感じられる祝福に拍手では無く胸の前で手を組み感謝の言葉をつぶやくのみだった。
私達の心配事は全て吹き飛び、舞姫さまの社でのイベントは大成功に終わった。
その夜。

「姫さま、お疲れでは有りませんか?」
「大丈夫ですよ、少し調子に乗り過ぎて舞い上がってしまいましたが。」
「ニュートンが困惑してリンゴを丸呑みしそうな舞でしたが、やはり我々に説明する事は不可能なのです?」
「万有引力の法則に当てはまらない例外が有っても良いじゃないですか、そう何事にも例外というのが有るのですよ。」
「例外ですか…、舞は勿論好評で、テレビで見た人達も姫さまの祝福を感じたとの報告が有りました。
日本では映像を一分だけマスコミに流し、DVDの制作に入ります。
とろで、今日は社のホログラム映像を長めに見ておられましたが、何かありましたか?」
「いえ、ただ、この国の人達が戒律という呪縛から解き放たれ、王子の指導の下で有っても地球市民の一員として私達と共に有らん事を、彼女にはそれを手伝ってくれるようお願いしておきました。」
「彼女って、ご自身の映像ですか?」
「ええ、社に来て下さる人々を幸せにする、その為の社ですので。」
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