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高松加奈-11 [化け猫亭-09]

「加奈さん、小夜ちゃんからシングルマザーの家政婦さんを三人雇ったと聞いたがホントなのか?」
「はい、今は色々試している段階ですが、三人とも前職がきつかったそうで楽しそうに働いたり学んだりしています。」
「子ども達はどうしてるの?」
「家政婦の他、祖父や祖母、母、妹、運転手とか家にいる大人達が適度に相手をしています。」
「子どもの相手は大変だろ?」
「今は良い刺激になっているみたいです、子ども達を観察するのが楽しいそうで、祖父は車椅子生活という事も有り外出の機会が少ないですので。
五歳の女の子は何となく自分達の立場を理解していまして、大人達に気に入って貰える様に頑張っていますよ、彼女にとっては弟や妹が出来た事も嬉しいみたいです。
母親は、今まで自分に余裕が無くて子どもにつらい思いをさせていたのかもしれないと話していました。」
「そうか…、何となく君達の活動は良い事だと思っていたが、荒んだ環境で育つ子どもを減らせるのだね。」
「はい、そして、回数や時間を調整すれば老人にも良い刺激となるのです。
その辺りの加減は高校生の妹が中心になって考えてくれてます。」
「妹さんもか…、家庭環境の良さが君を素敵な女性に育てたのだね。」
「有難う御座います。」
「でも、君の会社がどうやって収益を上げるのかが、まだ見えてないのだけど。」
「今の所は人材派遣がメインになりそうです。
シングルマザー達のスキルアップを応援し生活をサポートしながら派遣します。」
「それだけでは…、経費が掛かるから利益率は低くならないか?」
「焦らずじっくり進めて行きますが、派遣先の情報で守秘義務の範囲外なら気付いた事を報告して貰い、改善すべき点が多ければ小夜が動く事も視野に入れています。
もしブラック企業、且つ小夜に依頼しない様な企業だったら、彼女がどう仕掛けるのか楽しみですね、倒産に追い込んだりして。」
「そんな事も考えてるのか…。」
「飲食店なら、もっと売れそうな店を立ち上げて、ブラック企業の従業員を引き抜くとか、さすがにブラック企業は減っていると思いますので小夜が楽しめるかどうかは不明です。」
「ああ、ブラック企業と言われていても、本当にブラックな部署は一部かもしれないし、景気にも左右されるかな。」
「坂田さんは、最低賃金ってどう思います?」
「う~ん、うちとは無関係だからな…。」
「パートやバイトとは無縁なのです?」
「繁忙期にバイトを雇う事は有るが、最低賃金レベルで働く様な人は逆にお断りだよ、自分に自信が無くてモチベーションも低いと思わないか?
うちはまともな給料を払う代わり、それに見合った仕事の質を求めるという方針なんだ。」
「そういうものですか…、どうも金銭感覚が分からないのです、最近、祖父に買って頂いた物を見て、五百時間ぐらいバイトしないと買えないと言われまして。」
「まあ、気にするなよ、お爺さんがお金を使う事で経済は回るだろ。」
「はい、ですが動き始めてみて自分が如何に恵まれた生活を送って来たのか…。」
「君はすでに大きな仕事をしてるんだよ、君が起業を考えなかったら高松家で眠ってたお金、それが動き始めたんだ、おそらくお父さんもお爺さんも分かってみえると思う。
何となく寄付をしても、それがどれだけ有効に使われているのかは分からない、でも加奈さんが真面目に社会的弱者の支援を考えているのだから、喜んで資金を出せるのじゃないかな。
君は社長令嬢として社会貢献を考えれば良いのさ、そのシンボルとして活躍してくれるのなら私も応援するよ。」
「有難う御座います、でも坂田さんにメリットは有るのですか?」
「三人の母親と五人の子ども達の生活が改善されただけでも嬉しいよ、そうだな、君が我が社のテレビCMに出てくれるってどうかな?」
「私は素人ですよ。」
「なに、素人レベルのアイドルでもテレビに出てる時代だから大丈夫、有名人が出てるCMで売るのではなく誰も知らない知的美女の登場というのもインパクトが有ると思っていてね。
君が承諾してくれたら話を進めたいのだがどうかな?」
「お返事は、少し相談してからで構いませんか?」
「ああ、勿論さ。」
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高松加奈-12 [化け猫亭-09]

「加奈さん、君のお爺さま、今日は見知らぬ女性が付き添っているね。」
「はい、家政婦の伊藤さんです。」
「あっ、三人雇ったと小夜ちゃんが話していた人か。」
「ええ、今日は他の二人が子どもの面倒を見てくれています。」
「もう三人でチームみたいに?」
「はい、採用時の条件ですし、私達が何をしようとしているのか理解して下さっています。
しばらくの間、お爺さまの付き添いは三人が交代でとなります。
お爺さまは女子大生とお話ししたり、将棋を指す事が目的ですので、彼女が暇そうにしていたら話し掛けても構いませんよ。」
「そうか…、高松会長は将棋を指される様だから、ご挨拶してから話をさせて貰うよ。」

「初めまして、安川と申します、伊藤さんが暇そうにしていたら話し掛けても良いと加奈さんに言われたのですが、よろしいですか?」
「はい、こんなお店は始めてなので…、でも女の子がお客様にくっついたりしないのですね。」
「はは、ここはそういうお店じゃないんだよ、知性派女子大生との会話を楽しむ場なんだ、勿論美女を見て楽しんではいるが。
ちなみに私達は高松家の家政婦事情にとても興味があるんだ。」
「加奈お嬢さまの起業関連ですね。」
「ああ、家政婦になってみてどうだい?」
「経験が無いにも関わず好条件で採用して頂いて、今は三人とも人生をやり直せると…、ご存知だと思いますが、離婚に至るまでの経緯、離婚、子育てをしながらの仕事と、ずっと疲れていましたので、ようやく落ち着けたという感じなのです。」
「成程…、加奈さんから、三人が協力し合う事を採用時の条件にしたと聞いたけど、どう?」
「はい、食事や洗濯を三人で分担する事によって随分楽になりました。
子ども同士で遊んでいてくれますし、うちの子は新しく出来た弟や妹達の面倒をみようと頑張っているのですよ。」
「やはり、シェアハウスの構想は間違ってないという事なのかな?」
「はい、集団が形成されればそれなりにトラブルは発生するでしょうが、加奈お嬢さまに救って頂いた者同士になりますので、プラスの要素がとても大きいと思います。」
「将来的な事は考えてるの?」
「そうですね、加奈お嬢さまやお嬢さまのお友達と意見交換をしていますが、私達のスキルを活かせる職場を考えて下っていまして。
私達も言われた事をこなすだけのレベルから脱却する事を考え始めています、家政婦という仕事は自分で考えないと良い仕事は出来ません、今までの自分が甘かったと先輩から教えられました。
今後の事は加奈お嬢さまに恥をかかせる事の無い様にと真面目に考えています。
でも、高松家の方々は、暫くゆっくり生活してみなさいと話して下さるのです。
そう言われると、余裕の無い状態を自分で作っていたのかもと、反省しつつ再スタートというのが今の私なんです。」
「そうか…、高松さんは余裕で三人の大人を養えるという事なのかな。」
「はい、もっと多くても大丈夫だそうで…、加奈お嬢さまは私と同じ様な境遇の人達のお母さんになって下さると思います。」
「えっ、君よりうんと年下だろ。」
「でも、本当に私達の事を真剣に考えて下さっているのですよ、私の親なんて…、あっ、御免なさい変な話をしてしまうところでした。」
「う~ん、私は加奈さんの事を知的美女として高く評価して来たつもりだったが、それでも過小評価だったのかな。」
「私にとっては女神さまなのです。」
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高松加奈-13 [化け猫亭-09]

「お母さんで女神さまか、まあ、私等にとっても女神さまの一人だからな、聡明な女性と話をするのは楽しい、私は、彼女の役に立てればと思っているよ。」
「安川さんも社長さんなのですか?」
「いや、それなりの収入は有るが、高松さんと比べたら全然。
でも、加奈さんの会社が家政婦の派遣を考えるのなら週一ぐらいでお願いしたいと話して有る、慣れて無い人でも大丈夫だとね。」
「奥さんは化け猫亭の事、ご存知なのですか?」
「ご存知も何も、たまに来ているよ、加奈さんとも二度ほど会って話をしている。」
「へ~、女性でも?」
「宝塚のお客さんは女性が中心だろ、それと似た様な感覚なのかも知れないね、すでに夫婦揃って彼女のファンだよ。」
「週一で家政婦というのはどの様な形を想定しておられるのですか?」
「二人ペアで来て貰い、一人は固定、一人は新人が交代で、家事をしながら妻と情報交換。
来週、加奈さんと具体的な話をさせて貰う事になってる、三人でね。」
「金額的には?」
「具体的には検討中だが、貧富の差は我々が物を購入して経済を回したとしても全然解決しないし、むしろ拡大させるだけ、だからサービスの価値を見直し今の相場を無視した額にすべきだと思っている。」
「働く側もそれなりに自分の質を高めなくてはいけないのですね。」
「うん、ただね、てきぱきと高密度の労働だけが評価されるのではいけないと思うんだ、のんびりとした作業でも楽しかったり美味しかったりを与えてくれると嬉しい、妻もそう考えている。」
「人間関係に対する気遣いですか?」
「良い人間関係が構築出来ていれば、子連れで家事を手伝いに来るという感覚も有りではないのかな。」
「あっ、高松家は特別だと思っていましたが…。」
「この店の客は、加奈さんの事業に興味の有る人が多いんだ、高松家の家政婦事情にもね、客同士情報交換や意見交換をしているよ。
加奈さんは今、三人の男性と談笑しているだろ、彼等はシェアハウス建設に対しての支援を考えているんだ。」
「お嬢さまは…。」
「我らが女神さまは、シングルマザーの苦労や子ども達の寂しさを…、そうだね情報としては知っていても踏み込んで向き合う事の無かった我々に、一つの答えを示して下さったのさ。
それに対して、この店の客は自分に出来る事を考えている。
我々の力でより多くの子ども達に安らぎの場を与えたいと考えている人もいたりしてね。」
「下心なしでですか?」
「下心は大ありさ、でも、加奈さんに喜んで貰いたい、他のスタッフに恰好の良い所を見せたいというレベル、君達も、真面目な交際なら構わないが不倫だけは気を付けてくれよ。」
「はい、加奈お嬢さまからも言われましたが、再婚願望が有るのなら出会いの機会を作って下さるとも。」
「本当に至れり尽くせりなんだな。」
「はい。」
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高松加奈-14 [化け猫亭-09]

「加奈さんは家政婦さん達に至れり尽くせりだと伝え聞いたが、実のところはどうなの?」
「そこまでの事はさせて貰っていません。
ただ、彼女達は環境を整えれば自立出来る人達です、今まで悪循環に陥っていた訳ですが、しっかりとした支援をすれば、独り立ちし健康で文化的な生活を送る事が出来る様になると考えています。」
「小さい支援では抜け出せないという事か。」
「はい、その場しのぎでは、子どもの将来を考えた時に不安しか残らないと思うのです。」
「そうかもな、それで事業規模の拡大は考えているの?」
「ええ、古い社員寮の空きが有りますので、まずは十名まで増員します。
その後は高松家で何人まで養えるかを検討して貰っています。
さすがに大勢の子どもをうちで面倒を見る事は出来ませんので、保育士資格をお持ちの方を雇い認可保育園設立の検討を進めて貰っています。」
「見ず知らずの人を養うという感じなのかな?」
「状況は異なりますが、昔の大店は貧乏人の子どもを養っていた一面が有ると思いませんか?
貴族がメイドを雇っていたのも同様だと思うのです。
それぞれの考えによって雇われていた側の環境や気持ちは随分違っていたとは思いますが…。
待遇が良ければ、ずっと主の為に働こうと思うでしょうし、悪ければ、何時か恨みを晴らしてとか。」
「そうか、高松家には必要以上の家政婦を雇う財力が有る、それを活かして加奈お嬢さまを女神と仰ぐ家来を増やす事が出来るのか。」
「永井さん、表現がおかしいですよ。」
「又聞きだから…、う~ん、好条件で加奈お嬢さまに救って貰った人が増えたら、大きな力になるだろうし、そうなって行かないと事業の拡大は出来ないのかな。」
「まだ準備段階です、どんな人でも受け入れるというレベルには程遠いですよ。」
「従業員が子育てしながら余裕を持って収益を上げる体制作りか…。」
「何時になるかはこれから仲間になって下さる方次第ですね。」

「永井さん、少し加奈さんと話がしたいのだが、だめかな。」
「どうぞ、私は席を外した方がよろしいですか?」
「いや、永井さんも加奈さんの事業に興味が有るのでしょ。」
「はい。」
「田中さん、どんなお話しなのです?」
「私の姪にも所謂シングルマザーがいてね、楽では無さそうだが自力で何とかやっているんだ。
それで、加奈さんの話をしたら、仲間が協力し合ってという事に興味を示してね。
余裕が出来れば貯金も早く貯められると、彼女は自分の店を持ちたいと考えているのだよ。」
「頼もしい方なのですね、一度お会いしたいのですが、出来れば店の事業計画を簡単で良いですから教えて頂きたいです。」
「了解した。」
「では、こちらの名刺を、化け猫亭の会員と話して下されば仮の秘書が受け付けますので、姪御さんとの橋渡しをお願いします。」
「おお、着実に進んでいるのだね。」
「はい、焦らずじっくりと進めています。」
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高松加奈-15 [化け猫亭-09]

「小夜、田中洋子さんの案件は見てくれた?」
「ええ、あのままでは色々難しいと思う、で、どうするの。」
「あの案をベースに店をオープンさせて、そこで働いて貰う、自分の店に拘るのなら、田中さんにはいずれの独立を提案して置けば良いでしょ?」
「修行の場を提供する訳ね。」
「場所を選んで朝食や昼食も提供し夜は居酒屋、ターゲットも従業員も朝昼晩と変えてとかどうかしら、土日と平日でメニューを変えても良いかな。」
「悪くはないけど問題は場所とメニューね、朝食の需要ってどうなのかな?」
「朝食の売り上げが伸びない様なら、昼と夜に絞るか…、逆に単身者の需要を掘り起こす事に挑戦。
あっ、場所によっては子ども達の朝食を提供するとか、客が増えるまではうちのスタッフに食事を提供する事で流行ってる感を演出するとか、どう?」
「そうね、まずは小規模店を運営しながらスタッフのスキルアップやメニューを充実させる事にして、社員寮の近くで開業しても良いのかな、客が少なかったらお弁当を作ってCAT'S TAILで売って貰うのも有りね。
取り敢えず桜さんとも相談してCAT'S TAILスタッフにも情報を流してみようか…、でも開業資金は幾らぐらいを想定してるの?」
「そうね、五千万ぐらいでどうかしら。」
「そんなに?」
「シェアハウスの建設はスポンサーの方々にお任せなのよ、お父さまが用意して下さる一億の使い道って、今の所あまりないでしょ。
店が成功すれば回収出来るし、店で店舗スタッフの再婚相手が見つかったらおめでたいじゃない。」
「加奈って思ってたより楽天家なのね。」
「そうじゃなかったら、取り敢えず大赤字から始まりそうな事業を始めてないわよ、でも、いざ始めてみたら多くの方々の支援が有って、私が間違わなければ大丈夫、私が間違えそうになっても小夜や桜さんがいるしね。」
「貴女を楽天家にしてしまったのは化け猫亭なの?」
「ふふ、そうかも。」
近くに保育所を併設するのなら、父子家庭のお子さんを積極的に受け入れるのも有りね。
お父さんが子どもと朝ご飯を食べてから、保育所に子どもを預けて出社なんて、新たな出会いが期待出来そうじゃない?」
「バツイチ子持ち同士の再婚ってイメージ出来ないのですけど。」
「私達、まだバツイチまでは遠いものね。」
「結婚する前から離婚願望が有るの?」
「勿論幸せな結婚をして、家族仲良く暮らして行きたいと思っているわ、でも離婚率の高さがね…。」
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高松加奈-16 [化け猫亭-09]

「桜さん、CAT'S TAILスタッフに色々お願いしていますが大丈夫ですか?」
「問題ないわ、皆、新たなクエストを待ち望んでいたのよ、今は一号店メンバー、二号店オープニングメンバー、加奈お嬢さまサポートメンバーに分かれつつ有るのよ。
少しスタッフを増やし過ぎたかな~、というタイミングだったから助かったわ。
まだ先の事だとは思うけど、店のオープンやシェアハウス関連で学生の力を借りたくなったら遠慮せずに言ってね。」
「有難う御座います。」
「それで、私の方は化け猫亭のお客様向け宿泊施設建設計画を進めていてね。」
「ホテルですか?」
「別荘とホテルの中間、老後は田舎暮らしをしたいという人に体験して頂く場であり、近くに菜園やお花畑をと考えているの、管理の大変な部分は地元の方にお願いしてね。
田舎と言っても遠くないから気軽に行き来出来るのよ。」
「規模にもよりますが、かなりの費用が掛かりそうですね。」
「加奈の事業ばかりが注目を集めている訳ではないの。」
「あっ、私は、お客様方に大きな負担を強いていませんでしょうか?」
「大丈夫、宿泊施設建設はお客様個人の負担と化け猫亭で、加奈の事業は主に企業の資金を使うのだから、つまり、同じ人を通していても、お金の出所が違うのよ。
私の方の事業はちょっとだけ田舎を元気にするという目的も有るのだけど、もし、加奈のスタッフに田舎暮らしを体験してみたいという人がいたら、施設の管理運営をお願いしたいと考えていてね。」
「環境的にはどうなのです?」
「一度遊びに行きましょう、小学校は近いのだけど、取り立てて魅力が有るかと言うとそうでもない、だから、お客様方の社員も巻き込んでエリアを整備して行く事も考えていてね、その過程で企業の枠を越えた社員同士の交流が有っても良いでしょ、そういう社員向けの部屋も用意するけど、名古屋は通勤圏内、日帰り出来る田舎なのよ。」
「すごい僻地ではないのですね。」
「ええ、お客様の中にはゴルフ帰りにそのまま帰宅出来るところを、そこで飲み会を開いて一泊してから帰宅というパターンを想定いていらっしゃる方も。
加奈の方で人が集らなかったら、地元の人に声を掛けて貰うけど、一応、古いけど家の用意は出来そうなの、決まったら綺麗に改装するからね。」
「分かりました、ただ、改装は子どもが住む上で危険の無い程度で充分です。
スタッフに提供している古い社員寮ですが、改装の提案に対して、子どもが傷つけたりする事を考えたら古いままでと言われましたので、その代わりリフォームは自由としました。
子どもと一緒に壁に紙を貼って落書きとかしているそうです。」
「壁に落書きなんて、私が幼い頃は考えられなかった…、でも、そうね成長すれば普通の子なら落書きして良い場所とそうでない場所の判断ぐらいはつくよね。」
「何の裏付けも有りませんが、町中で落書きしている連中は幼い頃から家庭環境に問題が有ったのでは無いかと思うのです、そうで無かったらただ単に頭の悪い人達ですね。」
「一応、育った環境というのを考慮して上げてるんだ。」
「そこは本人の責任と言い切れないです、親の責任だとしても、その親の生活環境も考慮した時、まずは、子育てを落ち着いて出来る環境を整える事が犯罪を減らす事に繋がると思いませんか?」
「そうね、貴女の子ども達を大切に育てましょう。
でも、良い環境で育てられた筈のお偉いさんが収賄で逮捕されたりするのだから、犯罪は無くならないわね。」
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高松加奈-17 [化け猫亭-09]

「伊藤さん、桜さんからの情報はご覧頂けましたか?」
「はい、加奈お嬢さま、市の人口が四万人にも満たない上に、宿泊施設建設予定地は市の中心部から離れた場所、近くの小学校を調べてみましたが、一学年十名程度の小規模校でした。」
「ホントに過疎地なのね、他には?」
「地図で分かるのは近くにゴルフ場が有る事と少し店が有る事ぐらいです。」
「観光スポットとかはないのですか?」
「車で移動するのなら多少有りますが、お嬢さまが楽しめるかどうかは微妙で…、映像を見る限りでは観光資源の乏しい普通の田舎です。」
「そういう土地だから桜さんは選んだのね…。
伊藤さんは住みたいと思う?」
「田舎の小規模校を娘に体験させてみたいと思います。
田舎と言っても車を使えばスーパーまで何時間も掛かる訳では有りません。
今はお嬢さまの事業を軌道に乗せるお手伝いをしていたいですが、施設が完成した時点の状況によっては、私が担当させて頂く事に何の問題も有りません。」
「もっと抵抗感が有ると思っていました。」
「凄い山奥だったり、車が使えなかったらきついですが、桜さまは庭の有るゆったりとした一戸建ての画像を現地スタッフの住まいとして添えて下さいました。
私は一戸建てに住んだ経験が有りませんので、共同生活だとしても体験してみたいのです。」
「ふふ、お庭はう~んと広いのですよ、変な所有権さえ主張しなければ、地球は私の為の庭なのです。」
「お嬢さま、どういう事ですか?」
「私の庭と言ってしまっては図々しいでしょ、でも、私の為の庭、勿論私が立ち入る事の出来ない所も有りますが、地球が私の為に存在すると考えたら大切にしなきゃって思いませんか?」
「それは…、私の為の地球でも有るという事ですか?」
「勿論です、本来、地球は誰の物でも無いじゃないですか。
皆の地球、ビルが建っていない田舎の方がそれを実感出来るかも知れません。
所有権に関係なく、目の前に広がる森や田んぼに畑、全部が自分の為の庭なのに、地元の人が管理して下さっていると考えたら楽しくないですか?」
「はは、楽し過ぎます。」
「でも、目に入る部分ぐらいは綺麗にして置きたいでしょ。」
「さすがに、地球全部を綺麗にするのは難しいですものね。」
「桜さんなりに色々考えておられる事業なのですが、私も私なりに係わって行きたいと考えているのですよ。」
「私も私なりに考えてみます、私の為の野山を。」
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高松加奈-18 [化け猫亭-09]

「加奈さん、桜さん達と俺達の合宿所予定地を見に行ったのだろ、どうだった?」
「宿泊施設は合宿所なのですか?」
「ああ、多目的な利用を意識しているからね。」
「普通の田舎でしたが。」
「田舎は何処も人口の減少が進んでいるだろ、減少に歯止めを掛けるには都市部に住む人が考え動かないと無理だと言うのが化け猫クラブが出した結論なんだ。」
「結論は分かりますが、化け猫クラブは、初めて聞きました。」
「化け猫亭の客の中で、桜さん主導の企画に賛同してお金を出す個人の集まりさ、加奈さんへの支援は企業だから、ちょっと違うんだよ。」
「皆さんがお金を出し合って田舎に投資する、という事ですか?」
「投資というか、自分達の手でもう一つの故郷、住み易い故郷を作ってみようという実験なんだ。
家庭菜園やお花畑の手入れを老後の楽しみに考えてる人もいてね。
隣人が化け猫亭の客なら安心だろ。
化け猫クラブのメンバーはもう五十人ぐらいになっているんだよ。」
「五十人ですか。」
「ここへはたまにしか来ない奴も、面白そうだからと乗ってくれてね。」
「桜さんからお聞きした合宿所の規模で大丈夫なのですか?」
「良い環境を整える事に成功したら拡大して行くよ。
まずは、仕事を引退した人が宿泊して菜園の維持管理、うちの親は楽しみにしているんだ。
休日は現役世代と入れ替わるから、皆が色々体験出来るだろう。
土地が安いからと近くの土地を購入しようかと考えてるメンバーもいてね、ただ、老人ばかりが増えては駄目だろ。
だから、家政婦を雇う事を考えているのさ、子持ちのね。」
「分かりました、でも再婚希望の人は送り込みにくいです。」
「それなりに出会いの機会を作って行くさ、日帰り出来る所だから、まあ、仕事ぶりが良ければの話だがな。」
「暫くは意識の高い人しか雇えないと思っていますが…、色々難しそうですね。」
「ああ、難しいと思うよ、なんせリーダーの集りでも有るからね。
五十人のリーダーが集ったらどうなると思う?」
「個々の資質が問われますね。」
「そこを議論するのが面白くてな、まあ酒を飲みながらなのだが。」
「どんな方向性なのですか?」
「互いに尊重し合うが、エリアの開発で勝負…、というより知恵と金を出し合うという感覚かな、桜さんは学生との意見交換の場を考えてくれてるし、田舎の良さを残しながら都会の人でも長期滞在したくなる様な町を目指しているんだよ。」
「住宅と自然のバランスを考えて、という事ですね。」
「ああ、地元の人とのコンタクトも桜さんが取り始めてくれてる、こういう時に美人である事や社長という肩書が役に立つんだよ。」
「ふふ、桜さんにお願いされたら断れません。」
「はは、それは加奈さんも同じだろ。」
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高松加奈-19 [化け猫亭-09]

「安川さん、今日はお一人ですか?」
「旦那は後から来るのよ、鈴江ちゃん、大学生活は変わりない?」
「はい、安川さんにご報告出来る事件も無くて残念なぐらいです。」
「彼氏も見つかってないの?」
「私は容姿が良い訳では有りませんので…。」
「何言ってんのよ、女は愛嬌、化け猫亭のスタッフになってるって事は魅力的な女性だと認められてる証拠だから自信を持ちなさい。」
「ですが、小夜さんや加奈さん桜さんの美しさは…。」
「張り合わなくて良いのよ、貴女には貴女の良さが有るでしょ。
鈴江ちゃんにとって、今ホットな話題は何?」
「そうですね、加奈さんの、あっ、安川さんのお宅で、家政婦を雇う話はどうなりましたか?」
「先日、加奈のスタッフに来て貰ったわ、家政婦としての経験は浅いけど真面目な人、一緒に家事をしながら沢山お話しが出来て楽しかった。
加奈は家政婦としてでは無く会社のメインスタッフにしようと考えてるみたいで、そういう話も沢山したのよ。」
「家政婦さんって私には良く分からないのですが。」
「そうね、小夜や加奈と出会ってから、サービスの価値を考えていてね、日本では人に何かして貰う事に対する評価が低かったと思うのよ。
特に若い女性の仕事に対して評価が低かった、介護や保育の現場は少しマシになっては来たものの、まだまだでしょ。」
「はい、職業としての社会福祉という視点で調べた事が有りますが、善意にだけ頼って来た歴史が有ります。」
「うちは贅沢して来なかったし、子ども達も独り立ちした、それで家計を見直したら加奈のスタッフに来て貰うぐらいの余裕は充分有る、ならば社会的弱者になりかねない人にまともな給料を支払って、暮らしの質を上げても良いと思ったのよ。」
「では、これからも家政婦さんをお願いするのですね。」
「ええ、話し相手がいない訳では無いけど、一応お金を払って来て貰ってるという気安さが有って、変な見栄を張る必要は無いし、今後の事はまだ調整中だけど。」
「問題点は見えていませんか?」
「そうね、世の中の高額所得者がもっと人にお金を使って欲しいと思うけど、家政婦に関しては、パワハラ、セクハラが心配、後、家政婦としての能力は経験がものをいうから、若い人のスキルアップかしら。」
「あっ、お金持ちがどうお金を使うか…、テレビ番組で高価な物を所持している事を自慢する社長さんを目にしますが…。」
「成金でお金の使い方が分かって無いのでしょうね。
うちは、今まで充分な収入が有ったから、それ以上を考えて無かったけど、加奈に触発されてね、旦那と二人で、そうね、お金儲けして貧困層の子を養うぐらいの事を考えているのよ。」
「えっ。」
「世界中の大金持ちが、何人の人を養っているか競い合ったら、貧富の差なんてあっと言う間に解消すると思わない?」
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高松加奈-20 [化け猫亭-09]

「加奈、スタッフの増員は進んでる?」
「ええ、伊藤さんに担当して貰って…、募集条件が悪くないそうで順調みたい、化け猫亭のお客様方から来ている家政婦の要望に対応して行けそうよ。」
「それで儲かりそうなの?」
「今は難しいわ、でも、大きな赤字は避けられそう、店舗の展開も計算してみたら安く済みそうだからね、もっともCAT'S TAILスタッフの存在が無かったら厳しかったでしょうが。
小夜は、安川さん達が新規事業を考えてみえるのは聞いた?」
「そんな話が有るの?」
「社会貢献を考えてみえるのよ、それで、店舗を構えるのなら近くでと話していてね。
近ければ、互いに協力出来るでしょ。」
「想定外ね。」
「そうなの? 小夜に影響されたと話して見えたけど。
弱者を養うための企業という発想が有っても良いって、小夜の言葉でしょ。」
「そんな事を言った気はする、でも、真に受けて起業まで考えて下さるとは思って無かった。」
「力は有っても、収入を増やす事に熱心で無かった人達に目標を作ったのよ。
もう一度自分の力を試したいと、安川さんの奥さんは話してたわ。
資金も力も有る人達が、弱者の為になる事業を展開、勿論CAT'S TAILスタッフやうちのスタッフも係わって、化け猫クラブも動くしね。」
「加奈は凄いな。」
「えっ?」
「私が化け猫亭のスタッフになった頃は…、そうね皆さん真面目な方ばかりでは有ったけど、そこまで社会貢献に対して積極的では無かったと思う、加奈が思い切った提案を皆さんにぶつけた事で、皆さんが考えて下さり、桜さんの事業も動き易くなったと思うの。」
「私は小夜に影響されて…、一般企業に就職するより楽しそうというぐらいなのだけど。」
「加奈はお嬢さまと言う立場を最大限に活かしている、でね。」
「あっ、私を利用するつもりなのね。」
「その、感の良さが…、おじさま方なら全然気づかないのに。
これからマスメディアにも登場して行く訳でしょ、そのついでみたいな形で手伝って欲しい。」
「何を?」
「大した事では無いのだけど、社長令嬢って肩書を持つ友人は加奈しかいないって事。
番組の中で加奈からの情報発信も出来るからね。」
「テレビ?」
「そうでは無いのだけど、ネット上に降臨して信者を増やして欲しいの。」
「それで?」
「知名度が上がれば色々メリットが有るでしょ、収入源にもなるし。」
「う~ん、知名度を上げる事は考えてなかったな。」
「これからマスコミに取り上げられる様になるのだから覚悟は出来てるでしょ。」
「そうね、分かったわ、私は何をすれば良いの?」
「お客様の商品を身に着けたりして、写真や動画に登場してくれれば良いわ、他はスタッフが全部やるから、スポンサーからの報酬が有るから、加奈の会社の一部門という事でどう?」
「真面目にやると更に利益が上がるのかな?」
「ええ。」
「スタッフの給料はこちらで持てば良いのね、組織は? 正社員も雇うの?」
「スタートはCAT'S TAILスタッフにお任せしておいて、加奈が雇うスタッフに出来そうな人がいたら順次交代で良いでしょ。
ウエブページ担当、動画担当、写真担当、SNS担当みたいな形で行くけど、文章は貴女の僕が書くから心配しないでね。」
「僕?」
「うちの大学のCAT'S TAILスタッフは喜んで僕になるそうよ、奴隷でも良いって、私達、学内では有名人みたいなの、加奈の隠れファンは少なく無いのよ。」
「う~ん、少し複雑だわ…。」
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