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高松加奈-17 [化け猫亭-09]

「伊藤さん、桜さんからの情報はご覧頂けましたか?」
「はい、加奈お嬢さま、市の人口が四万人にも満たない上に、宿泊施設建設予定地は市の中心部から離れた場所、近くの小学校を調べてみましたが、一学年十名程度の小規模校でした。」
「ホントに過疎地なのね、他には?」
「地図で分かるのは近くにゴルフ場が有る事と少し店が有る事ぐらいです。」
「観光スポットとかはないのですか?」
「車で移動するのなら多少有りますが、お嬢さまが楽しめるかどうかは微妙で…、映像を見る限りでは観光資源の乏しい普通の田舎です。」
「そういう土地だから桜さんは選んだのね…。
伊藤さんは住みたいと思う?」
「田舎の小規模校を娘に体験させてみたいと思います。
田舎と言っても車を使えばスーパーまで何時間も掛かる訳では有りません。
今はお嬢さまの事業を軌道に乗せるお手伝いをしていたいですが、施設が完成した時点の状況によっては、私が担当させて頂く事に何の問題も有りません。」
「もっと抵抗感が有ると思っていました。」
「凄い山奥だったり、車が使えなかったらきついですが、桜さまは庭の有るゆったりとした一戸建ての画像を現地スタッフの住まいとして添えて下さいました。
私は一戸建てに住んだ経験が有りませんので、共同生活だとしても体験してみたいのです。」
「ふふ、お庭はう~んと広いのですよ、変な所有権さえ主張しなければ、地球は私の為の庭なのです。」
「お嬢さま、どういう事ですか?」
「私の庭と言ってしまっては図々しいでしょ、でも、私の為の庭、勿論私が立ち入る事の出来ない所も有りますが、地球が私の為に存在すると考えたら大切にしなきゃって思いませんか?」
「それは…、私の為の地球でも有るという事ですか?」
「勿論です、本来、地球は誰の物でも無いじゃないですか。
皆の地球、ビルが建っていない田舎の方がそれを実感出来るかも知れません。
所有権に関係なく、目の前に広がる森や田んぼに畑、全部が自分の為の庭なのに、地元の人が管理して下さっていると考えたら楽しくないですか?」
「はは、楽し過ぎます。」
「でも、目に入る部分ぐらいは綺麗にして置きたいでしょ。」
「さすがに、地球全部を綺麗にするのは難しいですものね。」
「桜さんなりに色々考えておられる事業なのですが、私も私なりに係わって行きたいと考えているのですよ。」
「私も私なりに考えてみます、私の為の野山を。」
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