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学校設立-1 [権じいの村-8]

「真帆さん、本部が学校に戻るって本当なんですか?」
「ええ、来年の春からね、建設中の本部施設や宿泊施設へ、今の本部機能を移してね。
校舎の補修もずいぶん進んでいるし。」
「プロジェクトの一環ということは、普通の学校ではないのでしょうね?」
「ふふ、香織ちゃんの頃とは全く違う学校になるわね。」
「違うって?」
「どこかの大学の付属ということになるけど、幼稚園、小学校、中学校、高校、各学年十名程度を定員として学校教育法からはずれた教育をしていく予定なの。」
「そんなこと可能なのですか?」
「すでに不登校の子たちのためのスクールとかもあって色々裏技があるのよ。
まあ、文部省とも色々交渉はしてるけどね。」
「そうすると、ここへも不登校の子たちが?」
「特にそういう形にはしないけど、応募があれば受け入れる予定。
でも、大学関係者の子だけで定員になってしまうかもしれないわ。」
「そうなんですか…。」
「プロジェクト関連の人たちには、子どもを自然の中で育てたいって考えている人も少なからずいてね。
仕事にも支障がなさそうというより、こちらに住んだ方が仕事が楽になる人もいるから、ここか、この周辺の村に住む予定。
そんな人たちは夏休みを利用して家族を見学に連れて来てたり…、キャンプに参加した子もいるのよ。」

「入学試験とかあるのですか?」
「そうね、健康面のチェックだけは必要ね、病院まで遠いから。
後は早い者勝ち。」
「えっ? 早い者勝ちなんですか。」
「条件は中学生までは家族揃って生活すること、高校生は家族と離れても、この村のどなたかのお宅で生活するのならオーケー。」
「女の子だったら、うちでもいいと思うな、じいちゃんも喜ぶだろうし、私も妹ができたら嬉しいな。」
「今度の説明会の時にでも話してもらいましょうか、希望が出たらお願いね。」
「はい、すぐにおじいちゃんの了解も得ておきます。」

「そうそう香織ちゃんにはまだ話してなかったな。」
「何です?」
「妹の恵がね、来年の三月、終わり頃から小春ばあちゃんちで暮らすことになるの。」
「へ~、大学進学とかはどうなるのですか?」
「慶次の大学へ入ってね、ちょっとした実験的な立場になってね。」
「えっ? 慶次さんの大学って国立の…。」
「恵って一見おばかだけど実は結構頭がよくてね。」
「そうなのですか。」
「慶次の発案でね、特別総合学部みたいなのを作って最初は学部生1人だけど…。」
「え~、そんなこと有りなんですか?」
「普通、絶対無理なんだけど、それを通しちゃう所が、慶次の政治力ってとこかな。」
「私、なんかすごい人と知り合いになったのですね…。」
「うん、大学では卒業必修の単位とかある訳なんだけど、全部レポートが通ればオッケイって感じになってね。
恵、喜んでたわ、中学生の頃なんか教科書読めば解ることを、くどくど説明する先生の授業に飽き飽きしてたそうでね。」
「頭の良い人はそういうものなのですか…、ここではどんな勉強を?」
「このプロジェクトに参加してる研究室全部を見る予定。」
「えっ? すごく色々な分野の研究が…、ここでは…。」
「特に興味を持ったこと以外は深く掘り下げないだろうけど…、あの子のキャパ、私も掴みきれてないから…、まあ恵の役割は異なる分野の研究の接点を見つけて繋ぐということになるの。」
「繋ぐですか…。」
「今までもなかった訳じゃないけど、専門分野の研究に集中してると気付かないことも、別の視点で捉えたら発見できるかもしれないでしょ。」
「そういうものなのですか…。」
「香織ちゃんちへも遊びに行くと思うからよろしくね。」
「はい。」

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学校設立-2 [権じいの村-8]

「古い部分と新しい部分があるけど、まあ落ち着いた校舎になったな、城山。」
「ああ、予算かけて新築するより余程いい、古い部分と新しい部分の融合なんて、ほんとにこの村そのものだからな。」
「耐震補強を中心にずいぶん補修したけど安く上げることができたから良かったよ。」
「うん、それでもな、この前の日曜日に見学に来た子がいてさ。」
「入学予定の子か。」
「たぶんな、中学生ぐらいだったけど、なんか暖かくていい、とか言ってたぞ。」
「都会の校舎はコンクリートばかりだからな、俺はあまり好きじゃなかった。」
「だよな、俺も冷たいって感じてたから…、ここには絶対木造校舎が似合うし。」

「体育館の方はどうなるのかな…。」
「建築デザインコンペの結果、俺たちのグループのが選ばれると嬉しいけど。」
「ああ、就職内定もらってる会社にも喜んでもらえそうだし。」
「俺の就職先なんかが施工に係わってくれたら面白いんだけど。」
「そうか、お前、こっちで就職決めたんだったな。」
「うん、大学卒業後も色々な形でプロジェクトに係わりたかったし。
ここは今、プロジェクト関連で結構仕事が増えてるって聞いてるよ。」
「そうだよな、プロジェクト関係者も家族で移住ということになってきたから、建築関係はしばらく安泰か?」
「たぶんな。」
「う~ん、俺も休みを利用してプロジェクトに係わっていきたいとは思っていたけど…。」
「まぁ、卒業後も連絡取り合おうや。」
「おお、そうだな、俺も第二の故郷のことは忘れないよ。」
「うん。」
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学校設立-3 [権じいの村-8]

「では、学校説明会を始めます。
ある程度情報は伝わっていると思いますが、確認のため基本的なことも説明させていただきます。
お手元の資料をご覧下さい。
本学の発案者である、白川慶次先生のお考えにそって、本学運営のポイントとしましては、生きていく力を養うこと、自分の力を伸ばすこと、暗記より考える力を養う、自学自習能力を身に付ける、縦のつながりのある学校運営などを挙げておきました。

本学の取り組みは、今の学校教育の無駄をどこまで減らせるか、本当に子どものためになる教育とはどういう形か、という実験的なものでもあります。
そのため、カリキュラムはかなり自由なものとなり、基本的に能力に合わせての学習となります。
小学生でも興味があればどんどん先の内容に取り組んでもらいます、高校の範囲まで進んでも問題ないと思っています。
逆に高校生でも、例えば計算が苦手であるのならば、基礎計算に取り組んでもらいます。
基礎的な内容が理解できていない子に因数分解を教えても無駄だと考えています。
苦手な教科はあっても嫌いな教科がなくなるように、子どもたちに色々なことにに対して興味を持たせることが教師の役割となります。
場合によっては、教師が教えることなく自習だけで、どんどん先の範囲へ進む子も出てくると思っています。

小学四年生まではテストを行いません。
授業の過程で子どもたちの様子を見ていればテストをする必要はないと考えています。
5年生以上は別の付属学校と全く同じ定期テストを受けてもらいます。
これは、転校することになった時の備えと考えて下さい。
一般の学校ではどんな進み具合なのかを本人に確認してもらうことが目的です。
全く学習してない内容が出てくる可能性もありますから、点数は一切気にしない、ということが入学条件の一つです。
テストの点数が低くても、生きていける力が身に付けば良いと思っています。

基本的な躾に関しては、ご家庭で行って下さい。
学校で教えることではないと考えています。
特に老人の方と触れ合う機会も多くなると思いますので、お年寄りを敬う気持ちを持たせて下さい。
また、この学校の最大の特徴ですが、幼児から高校生まで、そして大学生も含めて縦に繋がりのあるグループを作って行きます。
この過程で能力が年齢とは逆になる可能性も多々あります。
やはり年長者を敬う気持ちを持たせていただかないとトラブルの元になりますのでよろしくお願いします。
では、ここまでで何かご質問はありますでしょうか?」
「はい。」
「あっ、どうぞ。」
「グループ分けはどんな感じになるのですか?」
「しばらくは子どもたちに任せるつもりです。
自然な形で気のあった子たちが集まるのが理想ですから。
ただ、どのグループにも属さない子が出そうだったら、こちらで…、でもたぶん子どもたちが解決してくれると思っています。
グループも固定のものではなく、遊ぶ時と学習する時では違ったものになります。
遊びの内容によって変化していくでしょうし。」
「人数もばらばらになるのですね?」
「はい。」
「学習時のグループはやはり能力別なのですか?」
「学習内容によって変わります。」
「特に能力別にする必要のないこともありますから。」
「有難うございました。」

「よろしいですか?」
「どうぞ。」
「カリキュラムは具体的にどんな感じになるのですか?」
「小学四年生までは自然と触れ合う機会を多くしてその中で学習していきます。
例えば算数でも外で実際の物を見ながら、足したり引いたりとか、十メートルという長さがどれぐらいなのか実際に計ったりとかします。
単位を紙の上だけの文字の表現で教える、なんて馬鹿げたことをしてる教師もいますが、ここではそんなことは有りません。
小学五年生以降は最初に自分でカリキュラムを組んでもらおうと思っています。
我々のアドバイスの下、小学校から高校までの教科書を簡単に見せながら…、例えば比例から関数までの流れを説明して、今の学校では少しずつ先へ進んでいることでも、できると思ったら一気にやっても良いという感じですね。
歴史だって、小学生がいきなり中学の教科書を使っても良い訳です。
学年という区切りはあまり関係有りませんから途中で変更しても構わないと思っています。」
「好きな教科ばかりに時間を割くことになりませんか?」
「苦手な教科も一通りはやる様にアドバイスしていきます。
また取り組み易いように、漢字検定ゲームみたいな形にしたり、ビデオを利用したりとも考えています。」
「一時限、二時限という区切りはどうなりますか?」
「特に区切りません。
自習中心の場合は自分の判断で休憩をとってもらいます。
朝の登校時間と昼の食事時間だけは決めますが、後は臨機応変に子ども達と教師の判断で、となります。
下校時間は三時以降という形です。
早く帰りたい子は三時になったら帰っていい、学校でみんなと遊んでいたかったら、まあ小中学生は暗くなる前に帰れる時間までとなります。
高校生はもっと遅くなっても構わないと思っています。
大学生たちとも色々な形で交流して欲しいですから。」
「白川先生から直接子どもたちへお話しをいただける、ということも有るのでしょうか?」
「あると思います、これからもっと、お忙しくなりそうですが、白川先生でなくてもできることは極力スタッフの方でカバーしてお時間を作っていく方向で動いています。
先生自身は自分が校長になりたいぐらいのお気持ちですから…、ただ、先生の夢の大きさから考えると限られた時間になるとは思いますけど。」
「でしょうね…。」

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学校設立-4 [権じいの村-8]

「へ~、今度はこんなとこに引っ越すの、父さん。」
「ああ、今回はちょっと長めに住もうかと思ってるけどな…。」
「父さんの仕事の関係? ずいぶん不便そうな所だよね。」
「まあな、でもイギリスよりはましじゃないか?」
「ぼくは、イギリスにも友達いるから向こうでも問題なかったけどね。」
「そうだな、お前の方が英会話に慣れるの早かったもんな。」
「まあ、父さんの事情も解ってるし…、でも今度の学校ってちょっと変わってるって聞いたけど…。」
「今の学校はどうなんだ?」
「中学生を子ども扱いしすぎるなよって感じ、でも、そんなレベルの連中も結構いるから仕方ないのかな…。」
「たぶん省吾が自分の力をきちんと表現できたら、ここの学校では、そんなことはないと思うぞ。」
「ふ~ん。」
「さ~、着いた、ここが学校だよ。」
「木造なんだ。」
「不満か?」
「まさか、コンクリートの校舎に嫌気がさしていたからね。」
「はは、あっ、白川先生が…。」
「白川先生って…。」

「こんにちは、白川先生。」
「ああ、安江さん、こんにちは、今日は息子さんとドライブですか?」
「ええ、まあ、移住の下見という感じです。」
「あっ、じゃあ、彼は権じい学園の生徒候補なんですね?」
「はい、省吾です。」
「こんにちは。」
「省吾くん、ここはどう?」
「今住んでる所とは、ずいぶん生活が変わりそうです。」
「だろうね、やはり不安もあるのかな?」
「まあ今まで転校も何度か経験してきましたから、それ程でもありません。」
「省吾くんは今、通ってる学校に不満はありませんか?」
「不満だらけです。」
「はは、そうなんだ。」
「下らない校則、無駄の多い授業…。」
「そうか、省吾くんは権じい学園向きかもしれないな。」
「えっ?」
「う~ん、そうだな、この学校の生徒になって、何か問題があったら、俺に直接連絡してくれないかな、はい名刺、安江省吾くんだね。」
「は、はい、有難うございます、でも僕なんかが電話していいんですか?」
「構わないよ、っていうより色々教えて欲しいかな、時間に余裕があったらずっと権じい学園に居たいんだけどね、色々動いているからそんな訳にもいかなくてさ、長電話は難しいけど、がんがん報告してくれないかな。」
「は、はい。」
「じゃあ、頼むな。」
「はい。」

「父さん、名刺貰っちゃった。」
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学校設立-5 [権じいの村-8]

「ねえ真一、権じい学園どう?」
「はは、いつの間にか、権じい学園って通称が広まっちゃったな…。
きっとうまくいくよ、久美。
都会で暮らしてた、この村出身の人からも、学校ができるなら帰って農業したいという声が上がっているくらいさ。
当初考えてた募集枠も、この村の人に合わせて増やすことになったよ。
やっぱ学校の存在は大きいよな。」
「そうね、開校に合わせて給食センター兼食堂も出来るから、雇用の場も増えるしね。」
「先生たちも移住してくるから、その子どもたちも学校へ通うことになる。
相乗効果って言うのかな、学校ができることで、この村の人口もずいぶん増えそうだ。
ねえ、食堂の方ははどんな感じなの?」
「お弁当を持ってこない子のスクールランチ、学生やプロジェクト関係者の食事、席に限りがあるからお弁当販売、お年寄り向けの給食サービス、食堂には畳の部屋も作って昼間はお茶とか出して、夜は居酒屋も兼ねる予定だからかなりの売り上げになりそう。
材料は権じいの店から仕入れる形にするから、店の売り上げもまた増えることになるわ。」
「株式会社なんだよね。」
「ええ、権じいの店と権じい食堂と合わせて一つの会社にすることになりそう。」
「全部、権じいなんだな。」
「ふふ、解り易くていいじゃない。」
「じゃあ、株式会社権じいだな、社長とかは?」
「社長は経営学部から派遣してもらう予定、役員には高校生や大学生にも実習の形で参加してもらうの。
管理栄養士はもう決まっていて、こちらに家族で移住してくる予定。
社員やパートの募集はこれからだけど、すぐ決まりそうよ。
今、本部で食事の手伝いをしていただいてる方々も、皆さん食堂で働きたいって。」
「朝から晩までだと人数も多くなるんだろ?」
「うん、今、大学の方で色々計算してもらってる、その結果を元にシフト表を作って、パートさんに埋めてもらうことになるわね。」
「俺の知らない内にずいぶん進んだな。」
「動く時は一気に動くのがこのプロジェクトの特徴よ。」
「そして見直す、という訳か。」
「今動いてることは試行錯誤しやすいことだからね。」
「まあ、俺の方も似たようなことだな、学園だって最初は試行錯誤の連続になるかも。
でも、たぶん、そんな試行錯誤を皆で楽しんで行くんじゃないかな。」
「ふふ、解る気がするわ。」
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学校設立-6 [権じいの村-8]

「では、権じい学園職員会議を始めます。」
「はは、権じい学園で通しちゃいますか?」
「まあ正式名称は忘れた方が親しみやすいでしょうから。」
「それもそうですね。」
「すでに、お互い色々な形で話し合う場を持ってこられた訳ですから、自己紹介とかは必要ないですよね。
もし初対面の方がおられましたら…。」
「もうチームとして何時でも動けるんじゃないのかな。」
「はい、そうですね、それでは現時点での入学予定者の確認作業を始めます。
開校まで、まだずいぶん時間がありますが、事前に顔合わせの場を設けますのでよろしくお願いします。
前もって資料を見ていただいてるとは思うのですが、特に気になる子とかいましたら、どうぞ。」
「現時点で不登校の子がいますね。」
「あっ、うちの子なんです、少し説明させていただいてもよろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
「遺伝的なものが有るみたいで鬱病傾向なんです、私自身もそういう傾向が有りまして、今回は親子で転地療養を兼ねての参加という気持ちもあります。
うちの子は能力が低い訳ではないのですが、心の状態に波がありまして、調子の悪い時は何もできなくなるみたいです。
自分も経験してることなので…、解る分、甘やかしてしまったかもしれませんが…。」
「はは、じゃあ私がメインコーチになりましょうか。」
「あっ、神部先生の専門分野でしたね、お願いできますか。」
「もちろんです、内藤先生御自身のケアも並行してやりましょうか?」
「よろしいのですか? できればお願いしたいです。」

「高校二年生で進学校からの転校という生徒はどうなんでしょう、大学受験の関係とか。」
「その子は私の知り合いです、このプロジェクトに興味があるそうです、優秀な子ですよ。」
「すると山神先生の妹さんの後輩候補ですな。」
「ですね。」

「資料を見る限りでは優秀な子が多いですね。」
「はい、親が大学関係者とかですからね、私としては色々な子がいた方が面白いと思っていたのですが。」
「大学関係以外の方は村の関係者なのですね。」
「そうです、大学関係とグループが分かれてしまう可能性がありますから配慮が必要になります。」
「村関係の子たちもある意味移住してくる訳ですから、それほど問題にはならないかもしれませんよ。」

「障害のある子も三人いますね。
状態が安定してるから入学を許可とありますが。」
「はい、一人は車椅子です、校舎も彼に合わせて基本バリアフリーにしてもらいましたが、二階へはちょっと大変かも知れません。
まあ二階に特別な施設がある訳でも有りませんから、それ程問題はないと思っています。
聾唖者が一人、彼は健常者ばかりの学校に多少の不安があるそうです、でも頭のいい子なので周りがしっかりしてれば大丈夫だと思います。
もう一人は知的障害があります。
この子が学園生活を楽しめたら我々の取り組みは成功と言えるかもしれません。」
「彼らはある意味先生ですね。」
「はは、そうですね、我々が教えることのできないことを、他の子どもたちに教えてくれるかもしれません。」

「海外での生活経験のある子も何人かいますね。」
「はい、その時の体験談とかも聞きたいです。」

「でも新しい学校ってなんかワクワクしますよね。」
「子どもたち以上に我々がね。」
「ははは。」
「でも子どもたちもワクワクしてますよ、うちの子は休みの日にキャンプとかよく行ってますから田舎暮らしに抵抗がないどころか、毎日がキャンプみたいなものになるのかな、なんて言ってますよ。」
「うちの子は少し抵抗があるみたいです、まあ友達ができたりすれば解決すると思っていますけど…。」

「それでは、子どもたちへの説明会のことを…。」

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学校設立-7 [権じいの村-8]

「みなさん、おはようございます。」
「おはようございます。」
「説明会を始めるまで、まだ少し時間があります。
この会場にいる人たちは来年の四月から同じ学校で学ぶ仲間です。
開始までの時間を使ってお互い自己紹介とかしていてくれるとうれしいのですがどうでしょうか。」

「ここは上級生の方から声をかけてあげた方がいいよな。」
「ああ。」

「はじめまして、高校二年生の池上です。」
「はい、中学二年生の小栗です。」
「小栗くんは、この学校のこと、どう思ってるの。」
「なんか、よく解っていません。
父さんが村に学校ができるから、おじいちゃんちへ帰ろうって。」
「そうか、じゃあ村のことは俺より詳しいのかな。」
「毎年夏休みはおじいちゃんちへ行ってるから…、カブトムシやクワガタがよくいる場所とかは知ってます。」
「それはすごい、来年の夏は教えてくれよな。」
「はい。」
「趣味とかあるの?」
「サッカーしてます、村の学校ではできなくなるのかな…。」
「大丈夫さ、サッカーチーム作ろうぜ、俺はあんましうまくないけどスポーツは好きなんだ。
大学生やプロジェクト関係でもチームを作ったり、俺たちと一緒に練習したりって話しもあるんだぞ。」
「そうなんだ、ちょっとほっとしました。
でも、ここにいる子達って大学教授の息子や娘が多いんですよね。
ぼくのレベルじゃついていけなかったらって、ちょっと心配なんです。」
「はは、そんなこと気にするなよ、テストで零点でも家の人から怒られないことになってるからな。
大切なのは小栗くんが自分の力をきちんと把握して、それを伸ばしていくことなんだよ。
人それぞれだから、まあ確かに小学生でも高校ぐらいの学力の持ち主の子も入ってくるらしいけど、気にすることないよ。」
「はい。」
「そうだ、なんかあったら俺に話せよ、学園では最高学年になるから、君らの兄貴分ってとこだ。」
「はい、お願いします。」
「じゃあ別の子とも話しとけよな。」
「はい。」

「おっ、あの子かわいいな…。」
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学校設立-8 [権じいの村-8]

「おっ、久しぶりじゃん。」
「おお、省吾も権じい学園か。」
「はは、やっぱ啓介の父さんも権じい学園を選んだな。」
「俺たち向きらしいからな。」
「うん、どう、数学どこまで進んだ?」
「数二がもうすぐ終わるところ、省吾は?」
「数三に入ったばかりだよ。」
「ちょっと負けたか。」
「関係ないさ、でも学校が始まったら勝負だな、どう?」
「よし、受けてたつぜ。」
「やっぱライバルがいるとゲーム感覚になって面白いからな。」
「ああ。」
「理科とかでも勝負しようぜ。」
「うん、でも、英語は勝ち目がないな。」
「それは仕方ないさ、イギリスで暮らすためには、どうしても必要だったからね。
逆に、漢字では負けそう、まあ本を読むようにして、漢字検定にも挑戦してくつもりだけどね。」
「そうか。」

「はじめまして。」
「は、はい、はじめまして。」
「私は桜井翔子、中三よ、君たちは?」
ぼくは安江省吾、こっちが斉藤啓介、二人とも中二です。」
「二人はお知り合い?」
「はい、親同士が友人で、一緒にキャンプに行ったりしてるんです。」
「今日は久しぶりだったけどね。」
「ふ~ん、それは心強いわね。
私は知り合い、いないから…、ふふ、でもさっき兄貴ができたか。」
「そうなんですか…、桜井さんは、今度の学校、どう思っていますか?」
「そうね、田舎暮らしに少し抵抗があるけど、学校は自由度が高いみたいで面白そうよね。」
「はい、僕らも期待してます。」

「そうだ、二人に見せたいものがあるんだ。」
「何?」
「じゃ~ん。」
「名刺? あっ、白川先生の名刺だ、すごい、本物?」
「学校へ下見に行った時に偶然お会いして、頂いちゃったんだ。」
「へ~。」
「何か気付いたことがあったら直接連絡して欲しいって。」
「すごい、中学生に対してもそういう接し方をして下さる人なのね。」
「そんな人の発案された学校が僕らにとって悪い訳がないと思わない?」
「そうよね。」
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学校設立-9 [権じいの村-8]

「皆さんお待たせしました。
説明会を始めます、着席して下さい。」

「私は校務主任の高橋です。
開校までまだ時間がありますが、皆さんがよりスムーズに学園に馴染んでもらえる様に、今回の説明会を開きました。
今回は中学生、高校生だけですが。
学校のことは、もう色々聞いていると思います。
今日は皆さんからの質問に答えたり、開校までに可能ならやっておいて欲しいことの説明となります。
まずは、文書やメールで寄せられた質問に答えていきます。

まず、幼児の面倒もみなくちゃいけないのか、という質問と、幼児の相手もできるのですか、という質問を受けています。
これは、好きにして下さい。
小さい子の相手をしたいと思えばすればいいですし、したくなければする必要は有りません。
ただし、違う年齢の人とも付き合って欲しいです、この学園の特徴は学年に関係ない学習の場ですからね。

中学生から、大学の内容まで進んでもいいですか、という質問が来ています。
これもオーケーです、大抵のことはプロジェクトメンバーが助言できる体制にして行きます。
逆に、頭の良さそうな人ばかりで心配だという声も届いていますが、全く心配要りません。
この学園では色々な人がいるということが前提になっています、英才教育を目的としていません。
きちんと学習に取り組んでくれれば、何も問題有りません。
他人の能力を馬鹿にするなんて人は、ここにはいないと信じています。

村のご老人との付き合いは強制されるのか、という問いも有りました。
これも自由です、ただしご老人を敬う気持ちだけは忘れないで下さい。
また、長幼序有りで、年長者を立てることを忘れないで下さい、例えば学力的に自分が上だと思ってもです。
これだけは、本学にとって重要なことになりますので強くお願いしたいことです。

部活動に関する質問も色々ありましたのでまとめて答えます。
部活は基本的に自由です。
やりたい部活を作って下さい。
人数に問題がある場合は大学生やプロジェクトのメンバーが参加してくれることになっています。
ただ、あまりマニアックなものだと人数が集まらないかもしれませんが。
複数の部活参加も問題有りません。
内容によっては小学生も参加するかもしれません、その時は配慮をお願いします。
校庭の広さに限りがありますから麓の施設を利用したり、他の学校と合同練習ということも考えています。
具体的なことは実際に学校が始まってみないと解らない部分もありますが、スポーツに関しては市内のチームとの練習試合なども企画できると思っています。

ここまでで何か質問はありますか?」

「はい。」
「どうぞ。」
「弓道をやりたいのですができますか?」
「わかりました、設備を整えるようにします。
帰りにアンケート用紙を配ります、そこに希望する部活を書き込む欄が有りますから書き込んで下さい。
後からメールで連絡してくれても構いませんが、施設の関係もありますから早めにお願いします。」

「はい。」
「どうぞ。」
「ここにいるメンバーだけが閲覧できる掲示板を作りませんか。」
「それはもう出来ています。
資料の終わりの方に、学園のウエブサイトのURLをのせておきました。
権じいプロジェクトのサイトにもリンクを付けましたから一度見て下さい。
掲示板は君たち専用のと我々教職員も書き込む物と二つ作りました、マナーを守って下さいね。

では次に開校までにやっておけたらということを説明します。
本学ではカリキュラムを自分で決めることになります。
そこでみなさんには…。」

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学校設立-10 [権じいの村-8]

「…、それでは私からの説明を終わります。
この後は皆さん同士の交流を深めて下さい。
飲み物とお菓子を用意しておきましたのでどうぞ。」

「お~い、みんな聞いてくれよ。
俺たちの学園の生徒会を作らないか?
俺は高二の池上洋二、ここでは一番の年長者になるから生徒会の役員選挙とか担当してもいいんだけどどうかな?」
「反対する理由はないな。」

「じゃあ反対者がいないようなら俺の案を話すけど、どう。」
「いいよ~。」

「まず学年代表というより、年齢代表の形で同い年の子が集まって男女二人決める。」
「やっぱ男女なのか?」
「ああ、ジェンダーフリーの考え方もあるけど、はっきり言って男の子と女の子では考え方とか微妙に違うところもあるから男女が偏らない方が良いと思うんだ。」
「反対意見はある?
なければ会長とか副会長、書記、会計なんだけど、これは年齢に関係なくどの年齢の子でも立候補して欲しいと思うんだ。
俺は最年長という理由で選びたくないと思っている。
誰がなっても俺は影で支えるつもりだ。」
「でもさ、みんなのこと、まだ全然解らないから選びようがないと思わないか?」
「掲示板を使おうよ、これから皆、自己紹介や学園に対する自分の考えとかをどんどん書き込んでいくんだ。
開校まで時間があるからな。
もし掲示板に書き込める環境がない人がいたら教えてよ。
掲示板の書き込みをプリントアウトして送ったり手紙を送ってくれたら代わりにカキコするからさ。」
「役員は四名にするの?」
「とりあえず四名にしておいて、後で違った役職とか必要になったら決めればいいんじゃないかな。
年齢代表の方だって固定じゃなくて途中で交代してもいいと思うし。」
「小学生はどうする?」
「そうだな、十一歳以上みたいな区切りにするか?
今日来てない小学五六年生に対する説明会に俺も出席して話すつもりなんだ。」
「その説明会って僕たちも参加できないのですか?」
「頼んでみるか…、そうだよな、俺たちの弟や妹に早く会いたいよな。
参加できたら参加したいという人は後で連絡先を教えてくれよ。」
「掲示板に書き込めば?」
「それもそうだ、ただ人数が知りたいから、名前だけでも書いてくれるかな。」
「運動会とか学園祭とかやるのですか?」
「うん、全部、俺たちの手でやろうぜ。」
「文化祭も?」
「遠足とか修学旅行は?」
「やりたいこと、どんどん出し合っていこうよ。」
「それぞれの行事の実行委員を作ってもいいかも。」
「うん。」
「はは、もう生徒総会状態だね。」
「そうだな、世界一の学園に世界一の生徒会を作ろうぜ。」
「えっ、世界一の学園?」
「ああ、俺さ、白川先生と話したことがあるんだ。
その時な、先生が世界一の学園にしましょうって言ってみえてさ。
俺はその言葉に乗ることにしたんだ。」
「でも、世界一なんてこと誰にも判断できないじゃないですか?」
「俺たちの心の中に、権じい学園は世界一なんだって気持ちが持てるかどうかってことなんだ。
別に他と比べる必要ないけど…、俺たちがこれから作っていく学園を俺たちが誇れるものにできたら、自分にとって世界一の学園だろ。」
「世界一か…、考えたこともなかったな。」
「私も乗るわ、だってそんな考え方素敵じゃない。」
「僕も。」「俺も。」…。
「なんかワクワクしてきた。」
「最高の学園にしようぜ!」

「権じい学園世界一!」
「おう!!」
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