再生-461

「しかし、私利私欲を捨てた人を守って行くと言う我々の考えがどこまで理解されるかは微妙だよな。」
「うん、単純な話ではないもの。
　塾生の生活レベルを低く抑える為に言ってる訳ではないのだから、勘違いする人もいるでしょうね。
　人それぞれ価値基準が違うから、収入が同じでも満足出来る人と満足出来ない人がいて、その辺りは今後の検討課題かな。
　取り敢えず、三人の塾生一期生は納得してるそうだけど。」
「同年代の大手企業社員と同程度の年収を保障した上で、実績に応じたボーナス。
　塾生と言っても我々の活動に貢献してくれることが前提だが、彼らは既に実績を上げ始めてる。
　こちらで負担する給料分は充分働いてくれると思うよ。」
「私利私欲に対する考え方をはっきりさせてるつもりだけど、理解して貰えてると思う？」
「そこは微妙かもな、私利私欲を考えるのは当たり前のこと、でも、普通に暮らせてるのに違法行為を行ってでも金を稼ごうと考える人に問題が有る。
　他人に迷惑を掛けず、むしろ喜んで貰える事業でお金を稼いでる人は社会にとって必要。
　そのお金をどう使うかにもよるが…。」
「塾生候補達も沢山考えてくれてる感じだから大丈夫だとは思うけど、お金に困って無い私達が、どうお金を投資して行くかにも気を付けないとね。」
「社長の子どもだから庶民感情が理解出来ないとは言われたが、この地では貧困対策にお金を使ってる。
　労働力の確保を考えての展開も有るが、こちらには全くメリットが無いこともしているのだろ？」
「そこは会社のイメージアップに繋がるのだから、全くメリットが無い訳でも無いのよ。」

再生-460

　私達が依頼した調査会社の報告だけでなく、実際に現地に行って調査してくれた塾生候補も問題無いと判断。
　私達は、とある市の市議会議員選挙に候補者を擁立することにした。
　それと前後して塾生候補から三名を政経塾夜明け前の正式な塾生とすることに。

「いよいよ政経塾夜明け前が動き始め、新たな政党の立ち上げが始まるのね。
　入塾式みたいなことは必要かしら？」
「必要だと思う、私利私欲を捨て社会の為に働く企業人や政治家になると誓って貰えば、これから彼らに投資して行く根拠が強くなるだろ。」
「誓いか…。」
「裏切る人が出て来るかもだけど、誓いの映像をしっかり残しておけば、それを最低限に抑えられると思うし、次に塾生となる人達への程良いプレッシャーになると思わないか？」
「そうなると少しばかり仰々しい演出が有った方が良いわね。
　う～ん…、三国志に出て来る桃園の誓いみたいに義兄弟的な感じのはどうかしら？」
「桃園結義か…、皆と相談だな。
　水滸伝の梁山泊みたいに志の有る人々が集まってくれたら、この国の再生に向けて光が見えて来る。
　梁山泊を政治団体の名称には使いたくないが、一つのイメージとして梁山泊を考えて貰うことは有りだろ？」
「それなら私利私欲を捨て社会の為に、と言う私達の大前提をアピールし易くなるかもね。」

再生-459

「私達にとって初めての選挙が落選では楽しく無いわ…。
　でも、地元出身、国立大学を卒業後は国家公務員だから、マイナス要素が無ければ大丈夫よね…、でないと塾生候補達の力を信じられなくなる。」
「地元出身でも人脈が弱いとな。」
「中学と高校では生徒会長、今は同窓会の幹事をしてるそうだから、人柄さえ良ければ問題無さそうだけど…。」
「その辺りはこちらで調べ、確認してみるか？」
「そうね、調査会社に依頼して問題が見つからなかったら当選させられるよね、数千票で当選出来るのだから。
　ただ…、田舎だと私達の活動を知らないお年寄りが多そうで、YouTubeチャンネルの効果は限られるかも。」
「それでも、同窓会が積極的に動いてくれる原動力には成るだろう。
　我々としては政経塾夜明け前を世の中にアピールして行く良い機会だと思う。
　我々の活動が選挙違反になることのない様、弁護士を雇って確認して貰う必要は有るけどな…。」

再生-458

　塾生候補達の話し合いは熱気を帯びて来ている。
　新党結成を目指しているのだからそうでないと困るのだが…。

「まずは今の自分達に出来る事として、市議会議員選挙に候補者を擁立する方向で話が進んでいるが、まだ塾生にもなっていない人を推すことになるのだよな。」
「推される人が自身の事を徹底的に晒す覚悟を決めてるのだから、問題は能力面かしら。
　でも、思っていた程能力が高く無かったとしても、サポートに政経塾夜明け前の塾生が就き、カバーして行くことに成功すれば今後の活動が楽になると思うわ。
　スタッフが優秀で有れば、必ずしも高い能力を持つ人を議員にする必要は無いでしょ。
　限り有る人材を有効に活かすことで実績に繋げないとね。
　私達には実績が必要だと思うの。」
「良い実績となれば良いが…、まあ落選したとしても…、それも経験だな。
　選挙戦を通して今後の糧となるだけの活動が出来れば…、今は結果に拘る必要も無いのかも。
　ただ、選挙の結果次第で、今後の進行が大きく違って来るのだよな。」

再生-457

　私達兄妹の立場は微妙だが、まずは政経塾夜明け前、塾生候補達のネット討論会に参加。

「心配していたが概ね作戦通りに出来たな。
　想定していた質問にはそのまま答え、想定外の質問には、正直にこれからの検討課題と。
　馬鹿げた質問が少なかったことを考えると塾生候補達の質は悪く無さそうで、小学生の花鈴に対しても丁寧に接してくれた。
　そんな人でないと理想の政治家には成れないが、我々の意図を理解した上で塾生候補になって下さったのだと感じたな。」
「検討テーマは増えたけど、お兄ちゃん的には想定内？」
「ああ、もっと多いかもと思っていたぐらいだ。
　今まで政党を立ち上げることを前提に準備してことが間違って無かったのだと思う。
　ただ、焦らずじっくりも大切だがスピード感も必要と言う意見にはな…。
　その通りだと思うのだが、焦って失敗しては…。」
「市議会議員選挙に候補者を擁立する話ね。」
「花鈴は前向きに考えたいと話していたな。」
「塾生にとって、良い学習の場となるでしょ。
　過疎の問題を抱えている所だから、再生を考えてみたいし。」

再生-456

　私達は全てを公開して行くつもり。
　情報量は増えるだろうが、全てをネット上で公開するのだから取捨選択の手間が掛からないとも言える。
　その中で、特に伝えたいことが有ればYouTubeチャンネルにアップすれば良いだけのこと。
　ただ、先々を考えると政経塾候補生によるネット上での討論に対して関心を持って貰えるかどうかがカギを握る訳で…。

「花鈴、ポイントは政経塾候補生を、どうアピールして行くかだよな。」
「ただ、候補生だから、アピールした人が塾生に適さなかった場合も想定しておく必要が有るのよね。」
「だな、そんなことも候補生や、活動に関心を持ってくれてる人達に対して正直に話して行けば、信頼を得られそうな気がする。
　正式な第一回討論会の場で伝えて置くべきだけど…、そう言った話を花鈴や俺が話して大丈夫だと思うか？」
「微妙よね、私の様な幼い小学生が声を上げたことに対して、反発してる人と後押ししたいと言う人がいるのだから…。
　だからと言ってお父さんを今から前面に出すのは違うと思うし。」
「政経塾の中心に花鈴がいることで注目を集めることは出来ると思うが、世間の人達は花鈴の実力を知らないものな。」
「そうね、お飾りの株式会社会長だと思ってる人は多そうだわ。」

再生-455

　私利私欲の為でなく本当に社会のことを考えてくれる人を集め政経塾夜明け前を立ち上げ、そこから新たな政党にまで発展させる構想は、政経塾候補生によるネット上での討論から始めることに。

「花鈴、候補生が四十七人集まったが、それが多いのか少ないのか人数的には微妙だよな。」
「私達の構想を知って四十七人も集まってくれたのだと喜ぶべきではないかしら。
　これからの討論で、政治家には不向きだと判断される人がどれぐらいになるのか分からないけど。」
「理想の政治家像を追い求めて行くと言っても、理想と現実のギャップを何処まで埋められるのか…。」
「そのギャップを法律を改正してでも埋め、理想に近づけて行くのが政経塾夜明け前、焦ってはダメだけど、のんびりしていては期待してくれる人達をがっかりさせることになるのよね。
　でも地方議員が三人参加してくれることになったのは大きいと思う、現実を教えてくれそうでしょ。」
「だな、自分が直面してる問題を皆さんで検討して頂けたら幸いですと書き込んでくれた人もいる。
　ネット上の討論は全て公開しデータを残すから自分の発言には責任が発生する。
　俺達も気を付けないとな。」

再生-454

「迷惑メールが無くならない背景を考えるべきかも知れないわね。
　迷惑メールが存在する社会と存在しない社会を考えたら…。」
「メールを送るだけで簡単に稼げると騙されてる連中がいるのだから簡単ではないだろうが、社会にとってマイナスなことは一つ一つ減らして行くべきだと思わないか？」
「うん！
　それこそが政治家の仕事でしょ？
　迷惑メールを無くすのは他国との関係で簡単では無いみたいだけど…。
　本当の意味で社会をより良くする、そんな視点で動けてる政治家はいるのかしら？」

再生-453

「インターネットが普及して便利になったけど問題も有るのよね。」
「ああ、それで自分で起業する会社は迷惑メールに対応するシステム構築をメインに考えることにした。
　社会の為に成る仕事で、需要は有ると思うんだ。」
「どんな感じのを描いてるの？」
「届いた迷惑メールを分析し違法性の高い物は徹底的に調べ上げ警察に通報、その後の捜査にも協力。
　違法性の低いメールを送って来る連中には嫌がらせをしたいかな。」
「嫌がらせって、不法行為はダメよ。」
「そこはしっかり弁護士と相談する。
　はっきりと迷惑メールを減らす運動だと公表して取り組むのなら応援してくれる企業も有ると思うんだ。」

再生-452

「AIによってメール利用の違法行為を見つけ出すことが出来ても、その先が面倒では有る。
　だが思い切って資金を投入してでも、迷惑メールは減らすべきだと思うんだ。」
「どうして？」
「落書きが良い例だよ、落書きの有る所は落書きがし易くなり、そこから軽犯罪が広がり、治安の悪化に繋がって行く。
　日々迷惑メールを受け取っていれば慣れてしまい、ちょっとした切っ掛けで迷惑メールを送る側になったり、詐欺に加担、データは無いけど、ほぼ野放し状態の迷惑メールがブラックバイトに手を染める人を増やすことに繋がっているとは思わないか？」
「言われてみればそうね。」
「明らかにブラックな迷惑メールビジネスは徹底的に取り締まるべきだし、グレーなメールにも規制を掛けて行くべきだよ。」