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近衛予備隊-141 [高校生バトル-57]

 自分達の村で公共交通機関と言えばバスぐらいなので、リニアモーターカーの存在自体に驚かされたのだが、この路線にバス路線を絡ませることで便利な交通網を生み出しているのは日本人らしいと言えば良いのだろうか。
 南に有る高速鉄道の駅から北へ向かうリニアモーターカーの路線に対し、バス路線はそれを中心にして縫う様に東西の客を駅へと運ぶ、ずっとバスに乗っていても南北の終点まで行くことは出来るが、随分遠回りになるのでバスとリニアを組み合わせて利用する人が多いと言う。
 そんな王国内の交通網に加え、周辺自治体からのバス路線も有り公共交通機関の利用者は多いそうだが…。

「結衣、自転車も使われているのですね。」
「ええ、リニア路線に沿って歩道だけでなく自転車専用道路も有ります、どちらも二階部分に有りますので自動車とすれ違うことは有りません。」
「結衣は自転車に乗れますか?」
「ええ、勿論です。」
「最近まで村の道路事情が悪かったことも有って、私は自転車に乗ったことが無いのです。」
「乗ってみますか、レンタサイクルが有りますから。」
「う~ん、ルーシーに乗れるだろうか…。」
「大丈夫ですよ、時間を作って自転車練習場へ行きましょう。」
「ルーシーは長い間車椅子で生活していたので運動能力に少し問題が有るのです。」
「もう歩くことに慣れたし走ることも出来る様になったので、多分大丈夫。」
「多分ね~、走れると言っても速度は私が歩くのと変わらないのだけど。」
「シャルロット、やってみないと分からないでしょ。」
「えっと…、明日にでも時間を取れそうですが、ジョンとシャルロットはどうします?」
「自転車を村に導入することを考えていますので、自分も試してみたいです。」
「では三人一緒で宜しいですか?」
「ええ、YouTubeのネタとしても面白いと思います。
 それにしても窓からの景色は変化が有って楽しいですね、ビルばかりが目に付いた東京とは随分違います。」
「はい、畑も有れば果樹園も、あそこに広がっているのは茶畑です。
 土地区画整理事業が進んで住宅地も綺麗になりました。」
「工場は有りますか?」
「有りますよ、都市景観条例に賛同した企業が外装に工夫を凝らしていますので、一見工場に見えない、そんな工場が増えています。
 木材に難燃処理を施して外装材として使ってる工場が多いのです。」
「なんねんしょり?」
「木は燃え易いので、燃えにくくなるよう加工するのです、そんな木材はこのリニア路線でも多く使われています。」
「そうか、建物の雰囲気が東京と随分違うのは、その高さだけでなく木材を多く利用しているからなのですね。」
「ええ、むやみに高い建築物を建てる必要は有りませんし、木材を外装に使うことで暖か味の有る街並みを実現させています。
 今は新しい外装の建物が多く、新しさが一つの売りになっていますが、時が経つにつれ落ち着いた雰囲気になって行く様に考えられているのです。」
「外観に対してこだわりが有るのですね。」
「ええ、綺麗な街並みは心を豊かにしてくれます。」

 と、結衣に言われたが、正直、この時の俺は良く分かっていなかった。
 建物は建物本来の役目を果たしてくれればそれで良いと。
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近衛予備隊-142 [高校生バトル-57]

 ホテルに到着した俺達は、暫く休憩した後、レストランの個室に案内され久しぶりにプリンセス詩織との夕食。

「ジョン、東京はどうだった?」
「驚きの連続でしたが、日本の良いとこだけでなく抱えている問題も教えて貰いました。」
「平和そうに見えて意外と社会問題が多いでしょ、何とかしたいと思ってもお金が上手く回らなくて難しいのよ。」
「貧富の差ですか、自分の場合は周りも似た様な暮らしをしていましたので、貧乏は気にならなかったのですが、この国にはお金持ちが沢山いて贅沢な暮らしをしてるのを目にする機会が多いですから辛さが違うと思います。」
「その日本国の一部でも有る遠江王国は、少しマシになって来たのだけどね。」
「ここまで来る途中、色々教えて貰いましたが、王国では最先端の交通システムを導入しているそうで。」
「最先端と言うほどのものばかりでは無いのよ、信号機の集中制御なんて何年も前の技術で出来たこと、遠江王国では随分前からやっていることなのだけど、日本国では最近になってようやく警察庁が集中制御化についての通達を出したと言うレベルでね。
 大きな組織の上層部は頭の良い人が多い筈なのだけど、無駄に信号待ちをさせて無駄なエネルギーを消費させ無駄な時間をドライバーに使わせていたのことに、ようやく気付いたのか動く気になったのかと言う感じなの。」
「東京は交通量が多いから信号機も多かったです、遠江王国の実際はよく分かっていませんが。」
「赤信号と青信号の長さを交通量の実情に合わせてコントロールしたり、青になるタイミングを信号機間で調整することにより、例えばここの国道を時速六十キロで走っていたら、信号機で止められる回数は必要最低限の回数に抑えられるのよ。
 交通量が多過ぎると赤信号で止まる回数は増えるけど、それなりの効果は有って、どちらもやろうと思えばどこでも出来ることなのだけどね。」
「うちの村には関係無さそうです…。」
「車は少ないし村までの広い道路は一本だけ、村の中心部の交差点はラウンドアバウト、環状交差点を導入しているものね。」
「東京の交通量ではラウンドアバウト、無理そうです。」
「東京に色々集中させ過ぎた弊害の一つが交通量の問題なのだけど、地方の小都市でも道路事情が悪いと渋滞が慢性的に発生する、個人所有の土地ばかりだから思う様な都市設計が出来ないの。
 その点、村の店や王宮を建てたエリアは好きな様に道路を造れて気に入っているのよ。」
「廃村になりそうな地区でしたものね。」
「気候も悪くないのに道路事情が悪すぎたおかげかな、それと大統領が好きに造り変えて良いからと認めてくれて。」
「大統領に改革で協力したのは、そのお返しだったのですか?」
「ええ、本当の改革はまだこれからだけどね。」
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近衛予備隊-143 [高校生バトル-57]

「詩織、遠江王国と東京では建物の雰囲気が随分違うと感じました。」
「シャルロットはどちらが好み?」
「遠江王国についたばかりで多くを見た訳では有りませんが、結衣に建物の装飾としても木が使われていると教えられ、注目していた限りでは断然遠江王国ですね、東京はコンクリートばかりで冷たい感じがしましたので。」
「それは遠江王国国民の多くが王家の提案に賛同して下さった結果でね、日本の伝統と文化を守りたいとの意思表示でも有るの。」
「花が多く植えられているのもですか?」
「それは新しい文化かな、花で一杯の街にしようと言う想いが広がったのは、ここに住む人達がより素敵な街にしようと考えてくれたからなの。
 木材を使おうと呼び掛けたのには、元々日本人が木と共に生きて来た背景が有ってね。
 日本はその国土の三分の二が森林と言うことも有って、昔の建物はほとんどが木造だったの。」
「木造と言っても自分達が住んでいたような粗末な物では無かったのですよね。」
「ええ、冬は寒いので昔から様々な工夫を凝らす必要が有ったわ。
 また、山で暮らしてた人達は限られた平地をほとんど田畑にし、傾斜地では建築資材用の木を植林しての林業、そして里山として人々に恵みを与えてくれる森と共存してたの。」
「共存ですか…。」
「人の手が入ることによって森のバランスが保たれもしてね。
 ただ長きに渡って人間の生活を支えてくれてた森も、人の生活様式が変わることによって人との距離が遠ざかってしまって。
 人は薪を必要としなくなったし、木材も安価な輸入木材におされたりして林業が衰退、それによって荒れた山が崩れたりして、人と森との関係が壊れて…。」
「村の森を整備することは防災面の価値も有ると聞きましたが…。」
「その通りなのだけど、日本人はお金にならないことに手間やお金を掛けたくないみたいでね。」
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近衛予備隊-144 [高校生バトル-57]

「そんな森林はそのまま放置なのですか?」
「対策を取っている所も有ればそうで無い所もと言う感じなのだけど、ひどい所は山の持ち主が不明になっていたり、所有者の高齢化で手入れがされなくなっていたりでね。
 遠江王国内の山林でも持ち主を特定し管理責任者を確認することが出来ず、法的な処理に時間が掛かった山があったのだけど、そんな状況に対して王家は森林を守りたいと宣言してね。
 山を手放したい人から買い取ったり、貰ったりしながら山林の管理会社を設立し、木材利用の可能性を探りつつ、自然公園としての整備も進めているの。」
「王家にはそれだけの財力が有るのですね。」
「それほどお金は掛かってないのよ。
 都会の土地と違って山林は安いし、日本国と違い遠江王国内の企業は木材利用促進に協力的でね。
 彼らは王国の皆さんに、数十年と言われている鉄筋コンクリートの寿命に対し、何百年も前に建てられた木造建築が今も健在なことや、固い素材の床より木製の床が心地よいことなどを思い出させてくれただけでなく、屋外で使うと耐久性に問題の有る木材でも、交換補修がし易ければ木材利用拡大に繋がると工夫してくれてね。」
「その結果が、木で装飾された建物と言うことなのですね。」
「ええ、今では装飾だけで無くコンクリートや鉄が使われていた所に、例え費用が余計に掛かっても木材を使う様になって来てるの。」
「どうしてそこまで?」
「山林を放置したままにしておくと綺麗だった山がどんどん荒れてしまい災害の原因となりかねないし、私達の王国を素敵な国にしたいと言う想いが強いのよ。
 皆で取り組んだことで規模が大きくなったら、思っていたより初期投資の回収が早くて、取り組みを周辺市町村にも広げつつ有るの。」
「コスト面は良く分かりませんが…。」
「木材消費の規模を拡大することに成功したと言えば良いかしら。
 木に代わる素材として使われて来たプラスチック製品を木製に戻すことで違った価値観を生み出したりとかしてね。」
「言われてみれば、このレストランもセンスの良い木製品ばかりです。」
「大量生産出来ないから割高なのだけど、その製造には所謂社会的弱者も携わっているの。
 木を使うことで森を守り弱者を支えつつ、暖か味の有る室内空間を演出してると言った所かしら。」
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近衛予備隊-145 [高校生バトル-57]

 遠江王国を案内して貰うと、この地は東京と違った驚きと発見の連続だった。
 王国は日本国の一部でも有るのだが、両者は全く違う国だと思えるぐらいに街の風景が違う。
 東京ならアスファルト舗装されてる様な駐車場の路面に木材が使われている。
 木はアスファルトに比べ耐久性は劣るが痛んだら簡単に交換出来る工夫が施されているとのこと、その形状を工夫することで雨水をより多く地面に吸い込ませるだけでなく、夏場の暑さを和らげる効果も有るそうだ。
 また、その特性を生かしたアート作品も見受けられた。
 大企業が共同で作り上げた実験都市なので自然とは無縁の未来型都市をイメージしていたのだが、実際は豊かな自然に囲まれ、木がふんだんに使われている街並み。
 リニアモーターカーが走ってはいるが、その路線は木々に覆われた丘に見え、昔の宿場町を再現した区画に面する駅が有ったり、山に近い駅の近くにはログハウス風の建物が並んでいたり。
 街中、いや国中が木をテーマにした観光施設として機能しつつ、新しい交通システムを紹介する場ともなっている。

「結衣が心を豊かにしてくれる綺麗な街並みと言っていた意味がようやく分かったよ、落ち着いた雰囲気の街並みは心を落ち着かせてくれるね。」
「そうね、単に昔の街並みを復元したのではなく人が利用し易い様にアレンジしたそうだけど。」
「ねえ、結衣、こんな街並みを維持するのはコンクリートばかりの街より手間が掛かるのでしょ?」
「かも知れないけど、頻繁に修理する必要が有る訳では無く…、街は元々生きていますからね。」
「生きてる?」
「街は人と同じで新陳代謝が必要です。
 ですから何時もどこかで工事をしています、工事の少ない街は活気を失って行くでしょう。」
「そうね…、プリンセスの事業が始まるまで私達の村で工事と言えば道路の簡単な補修ぐらいだったかしら。」
「それも道路が使えなくなりそうになった時に仕方無くだったな。」
「木材を活用する街造りを考え始めた時は木材と言う素材に対して偏見が残っていました、コンクリートやプラスチックの便利さには劣ると考えられていたのです。
 しかし、木材と真正面から向き合った時、私達はコンクリートやプラスチックには無い可能性に気付かされたのです。」
「可能性?」
「プラスチックの様に様々な形を創り出すことは出来ないかも知れませんが、例えば簡単な道具を使うことで子どもでも加工出来るのですよ。」
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近衛予備隊-146 [高校生バトル-57]

「結衣、自分は未来型の実験都市について少し勘違いしていた様です。」
「どう思っていたのです?」
「便利なのだろうけど、もっと無機質な都市をイメージしていました。」
「将来的に人間が変わって行くのであれば、そうなる可能性は否定出来ませんが、今の人類がより幸せに暮らせる環境を考えたら木などの植物は私達にとって身近な存在で有り続けると思いませんか?」
「ですよね、東京で感じた息苦しさは人々が利便さを追い求めた結果だと思うのですが、こうして実験都市の先端技術が自然と共存している遠江王国を見せて貰ったことで、東京の様な大都市が人間にとっての理想ではないのだと気付かされました。」
「人ごみを好む人にとっては東京が理想的な場なのかも知れませんが、私達は緑豊かなこの地を理想郷にしたいと考えているのです。」
「理想郷ですか…。」
「現実的では無いと分かっているのですけどね。」
「それは…。」
「人間には満足出来る人と、満足出来ない人がいますが、人間社会が人類として進化して来たのは満足出来ない人のパワーによるものだと思います。
 どれだけの富を得ようが満足出来ない人の欲望は凄まじいものですから。」
「でも人の欲望は向上心に関わるプラス面だけではない…。
 難しいと分かっている理想郷への展開に、何か策は有るのですか?」
「精神面の充足を目指し哲学や宗教を研究するぐらいでしょうか。」
「生活環境は理想に近づきつつ有るのですよね?」
「王家が推奨する王国の国民としての在るべき姿は多くの国民に受け入れられていますのでそれなりには。」
「あるべき姿?」
「良き隣人で有ることなど市民として当たり前のことなのですが、尊敬される王家が誕生するまで人々は忘れていたのです。
 住みよい環境は心の豊かさが生み出すものなのですよ。」
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近衛予備隊-147 [高校生バトル-57]

 結衣の話に俺達は色々考えさせられることとなった。

「心の豊かさ…、私達はとかく物の豊かさに目が行ってた気がするわ。」
「そうね、良き隣人であることを考えてる人なんて村ではほんの一握りでしょ、生活水準が上がりつつある今、精神的な豊かさも考えて行かないとホントの意味で良い村にはならないよね。」
「だよな、その辺りの教育も考えて行く必要が有りそうだ。
 遠江王国で街を綺麗にしてるのは子どもを含めたボランティアだろ。
 俺達の村では生活に余裕が無かったことも有って考えられないことだが、今の村には少しづつ余裕が出来つつ有る、その余裕が人をギャンブルに向かわせるのかボランティアに向かわせるのかでは差が大き過ぎる。」
「町へ有り金全部持ってギャンブルに出かけ、結果飲まず食わずで歩いて帰って来た人がいたものね。」
「色々と反省したからなのか元受刑者の方が余程考えてる気がするわ、人は一度痛い目に遭ってみないとダメなのかもね。」
「遠江王国を紹介する映像では、その辺りを強調して貰おうか。」
「そうね、でも、上手く伝えられるかしら?」
「撮影スタッフと話し合ってみる必要が有りそうだな。」
「結衣達が理想的な社会を考えて来たことも伝えたいと思わない?」
「そもそも社会に対する意識が微妙だがな、社会集団に対する帰属意識が有る様な無い様な…。」
「集落毎の結びつきは強いのだけど村全体となるとね、転入して来た人達によって人口が増えたから前以上に村としてのまとまりがなくなって…。」
「涼子は東京のことを隣に住んでる人のことすら何も知らずに暮らしてる社会だと話していたけど、この先村が拡大して行くとそんな感じになってしまうのかしら?」
「居住地の社会集団に帰属する必要性が薄らいだらな…。」
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近衛予備隊-148 [高校生バトル-57]

「村がそんな社会になるとしても随分先のことでしょ。
 それより村の長期計画はこの先も人口が増えて行くことを見越しての宅地開発が中心だけど、個人と社会との関係をより良好な形にして行く為の教育計画を考える必要が有ると思わない?」
「そうだな、今のままでは…、子どもは親を見て育つ、お手本になるべき親世代の資質が低ければ、子も同じ道をたどりかねないよな。」
「全財産を失い腹を空かせ、とぼとぼと歩いて帰って来る様な大人にはなって欲しくないものね。
 人々が社会によって守られ、社会の為に働くと言うことを村人一人一人が理解し納得している、そんな村にしたいかな。」
「その為には学校で何を教えて行くかが問題になる。
 まず自力で生きて行く為の能力を身に着ける必要は有るけど、より良い村にして行くことを考えたら、それだけでは足りないだろ。」
「具体的に何をすれば良いのかしら?」
「難しい所だな…、今の近衛予備隊は向上心の強い子を中心に編成しているが、俺達の時は向上心の無い奴も一まとめに入隊した…、諸事情有って今の形になったが、あれはあれで助け合いながら成長出来たと思わないか?」
「そうね、メアリーや教官達には何か意図的なことが有ったのかしら?」
「個々の資質に関係なく、村としての理想的な姿を子ども達に伝えて行くべきよね。」
「う~ん…、理想的な社会って、今は生活環境が良くなってる最中だから村人達の満足度が上がっていて良い雰囲気になってると思うけど、今は便利だと有難がってる物に慣れてしまい、それが当たり前になってしまった時に村人達がどう考えるのかが問題なのかな。」
「俺達は村人達の生活環境を良くしたいと考えて来たが、その先も考える必要が有るのだな。」

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近衛予備隊-149 [高校生バトル-57]

「ねえ、長期計画は帰国してからじっくり考えるとにして、まずは遠江王国の花を管理するボランティアと言う存在を近衛予備隊に教えてみない?」
「そうだな、彼らならそこから考え行動に移してくれるかも知れないね。」
「うちの部落のメンバーなら新しくなった家に合わせての庭造りを趣味の範囲でと提案し、大人と子どもが楽しく作業出来る体制を作れないかと伝えれば動いてくれると思う。
 一早く農地改革に取り組み、作物の販売体制を確立して貰ったおかげでかなり余裕が有るでしょ、家を建てる趣味に続くものを用意しないと、大人達はギャンブルに走りかねないわ。」
「予備隊の子達はジョンからのメールを心待ちにしてるだろうし善は急げよね、文は直ぐにまとめてみるからシャルロットは写真の用意をお願い出来る。」
「おっけい、リニアモーターカーの写真とかも送ってあげようかな。」

 俺達の部落に庭を作ると言う提案は、予備隊の子が企画し進めて行くには手ごろな案件だと思う。
 庭が菜園になる可能性は否定出来ないが、皆が楽しめるので有ればそれでも構わない。
 大人達と共に考えをまとめ、家の建て替えで荒れ気味になってる土地を綺麗にしてくれるだろう。
 俺達の部落には、こういった作業を楽しめる人が少なからずいるのだ。

「ねえ、今後の村造りについて遠江王国をお手本にしたいとは思うのだけど、親戚がバラバラに暮らしているのはどう思う?」
「国民性の違いでしょ、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?
 離れて暮らしていてもそれなりに協力し合ってるそうだから。」
「村を出た人達は町で一人暮らししてるだろ。」
「それもそうか、私にとっては部落での生活が当たり前で違和感を感じたけど、日本だからと言う訳でも無いのね。」
「むしろ世界的に見たら大家族で暮らす部落の方が少数派みたいだぞ。」
「村へ転入して来た人達も大家族ではないものね…。」
「家族や親戚で無くても協力し合って暮らして行ける社会が理想じゃないのか?」
「う~ん…、でも他人の集まりである社会だから、涼子が話してた様な社会問題が出てくるのかもね。」
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近衛予備隊-150 [高校生バトル-57]

「社会問題と言えば、結衣がルールについて話してくれた煙草の話が興味深かったわね、大統領は麻薬取締強化と並行して煙草に関してもルールを厳しくしたでしょ。」
「えっ、俺には結衣から煙草の話を聞いた記憶が無いのだが。」
「そうね、ジョンが単独取材で綺麗なお姉さんにデレデレしてた時だったかも。」
「ルーシー、デレデレはしてないよ、それで?」
「日本では昔から子どもの喫煙が問題になっていたそうで、補導の対象だとか。
 ただね、喫煙が許されてるのは二十歳からなのだけど、普通に考えて二十歳になってから煙草を吸い始める人がどれだけいるのか疑問だそうでね。」
「どういうこと?」
「二十歳にもなれば喫煙のマイナス面について充分理解出来ている筈、それまでに喫煙習慣の無い人が、二十歳になったからと言って吸い始めるのだろうかと。」
「そうだな健康に良くないこととか、俺達は子どもの頃から知ってた。」
「でね、許されない頃から喫煙していたとして、そのルール違反が成人してからの犯罪に結びつくとは言い切れないのよ。」
「興味本位や大人への憧れ、恰好を付けてみたいとか、隠れて煙草を吸ってる奴なんてそんな理由で吸い始めるのだろうからな。」
「喫煙習慣の有る警察官に何時から吸い始めたのか聞いてみたいとか。」
「警察官になったからと言って全くルール違反をして来なかった人ばかりではないだろう。
 ルールに拘り過ぎるのは窮屈だと思うよ。」
「そのルール、作られた経緯が納得出来るもので有れば良いのだけど喫煙って微妙でしょ、吸わない人へのマナーは守って欲しいけど自身の健康に関しては自己責任の範疇、そこを判断出来ない子どもだから禁止されてるのだろうけど。」
「子どもにとって、大人は許されてるのにってことになるのかな、まあ、あんな煙たいだけのものをわざわざ吸う人の気持ちは理解出来ないが。」
「煙草を吸ってるからと言って問題行動を起こす大人になる訳ではないのだろうけど、禁止されてる喫煙をしてる子は禁止薬物へも手を出し易くなるかもと、データが有る訳では無いのだけど。」
「そんな事も結衣が話してたのか?」
「ええ、日本でも違法薬物が静かに広がっているそうで…。」
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