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子猫組-21 [化け猫亭-19]

「松田さん、お久しぶりです、猫桜学園の最新情報を教えて下さい。」
「はは、せっかちですね、化け猫組にはいち早く情報を流す様、指示して有りますよ。」
「私も松田さんの顔を見ると猫桜総合学園の事が気になって…、もう、しっかり紐付されてしまいましたから仕方ないです。」
「皆さん、私は大した事をしてる訳では無いのですよ、え~っと、最新情報としては職業訓練校の一期生が全員就職したという事ですね。」
「現場実習先から他の職種を推薦されてた子もですか?」
「ええ、現場の人達は適材適所となるかどうか、結構大勢で今も見守ってるそうですよ。」
「それって業務外?」
「かも知れないですが若者を見守って行くのは大人の役割でも有りますし、有能な子と触れ合うのは喜びでも有る、受け入れた現場からの情報は送り出した側にとって楽しみだそうで、それだけ魅力的な子なのでしょうね。」
「やはり身の上話とかが関係しているのかな。」
「有るかも知れません、多くの大人達が幸せになって欲しいと願っているそうです。
でも、私達が目を向けなければならないのは、そこそこ不幸な子ども時代を過ごし、さほど有能でも無く上手く立ち回れない子達、職業訓練校の二期生や三期生には時間の掛かりそうな子が何人もいます。」
「ですよね、有能な子は自力でも何とか出来るが、ドロップアウト候補もいるのでしょ。」
「時間を掛けるしかないです、訓練校スタッフによる研修、現場実習、指導を繰り返す事になりますが、成長が見込めず評価の低い訓練生は現場を変えています、そんな中には、農業実習が気に入ったという子もいるのですよ。」
「そのまま、農業を続けられそうですか?」
「まだ分かりません、彼には選択肢を幾つか用意していますので。」
「幾つかと言いますと?」
「ニュータウン周辺には色々な職場が有りますので、スタッフと相談しながら体験しています。
例えば、土日は飲食店、平日の三日は農業でも構わないのです、理想は自分で収穫した作物を自分の働く飲食店で提供する形ですね。」
「受け入れ側は理解者ばかりなのですか?」
「そこは訓練校のスタッフがフォローしています、実習先の人達に能力の低い人達の就職を考えて頂く機会にしようと。」
「必要な事ですよね、自分達も以前は優秀な人材にばかり目が行ってましたが、適材適所で有れば必ずしも高い能力を必要としません。
我が子が能力的に問題が有るとしたら、そんな子でも受け入れてくれる会社には感謝しかないです。
社内の程よい競争には勝てなくても生きては行けますからね。
そして、子猫組の子等は私達の子どもです。」
「今の猫桜会傘下はどこも驚くほど右肩上がりで、給与水準は高く福利厚生も猫桜会全体で包括的に行っていて充実、結局人を大切にする企業は健全に成長出来るという事ではないでしょうか。」
「松田さん、単なる能力より真面目さが必要では有ませんか?」
「はい、子猫組には真面目な子が多いです、猫桜会との係わりが短い子には不真面目な子もいるようですが、拾われて生活が激変し落ち着いた子達は、女神さまに守られているからと口にします。
大谷組長から聞いた話では、多くの子が加奈お嬢さまの写真を大切にし、女神さまに救って頂いたのだから真面目に生きなくてはと考えてるそうです。
布教活動は子猫組幹部が中心に始めたそうですが、その活動に関係なく、猫田組には女神さま崇拝者が多数存在している様です。」
「うちでも額に入れて飾って有る、特に意識していなかったが…、家族五人、信者なのかもな。」
「私も、何時でも見られるようにして有ります、猫桜会の一員として、化け猫組の一員として間違えない様にと。」
「女神である加奈お嬢さまが猫桜会のトップにいらっしゃる事が、我々の強みなのでしょうか。」
「そんな気がするよな、目に見える救いを実践して下さってるだけでなく、猫桜会の成長は神ががってとしか言い様がないだろ。」
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子猫組-22 [化け猫亭-19]

「あっ、子猫組の大谷組長でしょ。」
「ホントだ、大谷さんとは二度目だね、今日は?」
「はい、今日から化け猫亭スタッフになりましたので、よろしくお願いします。」
「そうか、ならば…、千沙ちゃん、皆さんとの場をセッティングしてくれるか?」
「はい、スーパー新人のお披露目ですね、すぐに準備します。」

「大谷組長が化け猫亭のスタッフになってくれるのは嬉しいよ、でも子猫組組長をやりながらだと大変じゃないのか?」
「組長の座は後輩に引き継いで行き、私は今まで弱かった対外的な部門を担当する事に、ようやく二十歳になりましたので、化け猫亭へは桜さんと松田さんが推薦して下さいました。」
「はは、子猫組の事は自分達で無く君に聞けという魂胆なんだな。」
「でしょうね、化け猫亭から給料貰って子猫組の仕事をすると言われましたので。」
「無理の無い範囲で良いから、シフトは沢山入れてくれな、化け猫組のメンバーは子猫組の事が気になってしょうがないんだ。」
「何時も気に掛けて頂いて有難う御座います、子猫組白猫組一同本当に感謝しています。
金銭面の支援だけでも有り難いのに、子猫組のイベントにも参加して下さって、大人の男性との触れ合いは子ども達にとって、とてもプラスになっています。」
「たまに参加しているが、お兄さん達ほど役に立ってないと思うぞ。」
「いえ、普通に両親がいる家庭で育っても大人との付き合いは限られ、親と教師、後は親戚ぐらいだと聞きました。
子猫組の子ども達は社会的地位も有る皆さんから色々な事を感じ取っていますし、私達は皆さんが色々な形で子猫組を守っていて下さると教えています。」
「加奈お嬢さまに守られていると感じてくれればそれで良いと思うのだが、女神さまを心の拠り所にしてる子が多いと聞いているよ。」
「それは、教えるまでもなく、加奈さまが神格化されているのは事実で私も敬愛しています。
でもどうしてこんなにも皆さんに慕われているのか、学生の一人は研究対象として加奈さまを中心とした集団の分析をし始めました、今は自身の卒論を意識しての事ですが、近い内に女神さま関連の研究室が猫桜総合学園でスタートすると思います。」
「確かに社会学的に考察したい…、大谷さん、私も研究室の一員になれるのだよな?」
「勿論です、興味の有る事を共に研究する、そのスタートには何の制約も有りません。」
「言葉尻を捕らえる様だが、先々は制約が生じるという事かな?」
「研究室を構成する人数が増えたら当然組織化等が必要になります。」
「だろうな、宗教的な見方をする人がいれば集団心理学的に掘り下げる人もいそうだ。」
「猫桜総合学園は講座と研究室からと聞いていたが、研究室は増えて行きそうなのかな?」
「はい、ネット上で構築される研究室だけでなく猫桜総合学園中央研究所も動き始めますので。」
「研究室や研究所、講座が集まって大学になると考えて良いのかな?」
「ええ、猫桜総合学園はその方向で進んでいます、研究する者の集まりとして既存の大学とは一線を画す、でもハイレベルな存在にしたいです。」
「なにげに話を聞いていたが大谷さんは猫桜総合学園にも大きく係わっているの?」
「いえ、情報が入って来る立場にいるだけで大した事はしていません。」
「公式に流せるうんと前の情報に接しているみたいだが…。」
「はい。」
「ああ、うらやましいよな。」
「ふふ、それを皆さんにお話させて頂くために化け猫亭のスタッフになったのですよ。」
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子猫組-23 [化け猫亭-19]

「高等部はどう?」
「三十二人、三十二通りのカリキュラムで進行している様です。」
「きめの細かい学習が出来てるという事かな?」
「まだ始まって間が無いので、まだ評価しづらいですが、高等部では…。」

寮の朝、高等部の男子生徒が事務窓口へ来て…。

「はい、遅刻、自分で決めた登校時間ぐらい守りなさいよ。
「いや~、寝坊しちゃってさ。」
「登校に一分しか掛からないという恵まれた環境がいけないのかしら、デートにも遅刻する様だと君の場合はやばいわよ。」
「俺の場合?」
「翔太くんなら待たされてもぜんぜん気にならないけどけど、君の遅刻は待てて五分だわ。」
「翔太と比べられてもね、で、奴は?」
「大学へ行ったわよ、メールで助言を求めたら、面倒だから来なさいだってさ、大学生じゃないのだから目立つとまずいのにね。」
「翔太なら普通に目立つでしょ、服はお姉さま方からのプレゼントで普通に似合ってるし、で、他の連中は?」
「企業面接や農業実習、図書館での自習といったところかな。」
「企業面接は初耳だね。」
「君は一般的高校生の学習内容を検討するのが今のテーマだから連絡事項に入れて無かったの。
今回の企業面接は訓練校の面接とはレベルが違ってね、何年か先にその企業で働く事を前提としてるの。」
「うへっ、早過ぎでしょ。」
「そうかな、成功すれば無駄をかなり減らせるし、他の企業に就職するにしても猫桜会傘下なら許して貰えるでしょ。」
「就職内定の大幅な前倒しに意味は有るの?」
「高校一年の段階で自分が将来就職する企業の事を知り、そこで働く為に必要な知識を優先的に学び、職場体験バイトを通して社員とのコミュニケーションを取りつつ経験を多く積む事が出来る、場合によっては必要な資格を取っておけるわ、正規雇用される頃には就職に対する不安のない状態になってるだけでなく、他の新人と違って即戦力でしょうね。」
「面接に行った連中は納得してた?」
「ええ、自分の力量に合った職場を候補にして臨んでいるけど、正規雇用までに先方と多くの時間を共有出来アドバイスを貰える、どの企業も猫桜会傘下だから安心なのよ。」
「そっか、企業が必要としている人材を猫桜総合学園と協力して育てるという事なんだね。」
「真面目な子達だから、無駄は無いでしょ。」
「そこまで実験的な取り組みをするとは思ってなかったな。」
「で、今日の学習計画、君はどうするの?」
「今週は予定通り古文の続き、来週辺りにコーチをお願いして有ったけど、大丈夫?」
「ええ、教えたがりさんが来て下さるから、とことん質問して良いわよ。
どう、高校レベルの古文を極めた上で、それが社会に出てからどれだけ役に立つのか見極める事は出来そう?」
「まあ、答えはすでに出ていますよ、でも、きちんと学習した上でないと自分の意見に重みが有りませんからね、日本の文化を大切に思う気持ちも有ります。」
「なら大丈夫ね、どこまで踏み込むのか楽しみにしてるわ。」
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子猫組-24 [化け猫亭-19]

「おはようございます。」
「おはよう、有紀ちゃん、今日は出かけるの早いわね。」
「はい、新メニュー開発スタッフの手伝いをさせて頂く事になりましたので、終了後は図書館での自習ですが、書道の時間までには帰ってきます。」
「和食に絵画と書道だけではないのだから、やる事が多くて大変じゃない?」
「いえ、やりたい事ばかりですし、専門分野以外は必要な部分に特化して学習していますので楽ですよ。」
「何でもやれて器用なのね。」
「でも、器用貧乏に終わるのか、多才な料理長となれるのか、師匠はあせる必要無いと話して下さいますが。」
「ふふ、そんな有紀ちゃんにメッセージが届いているのよ、はい。」
「えっ、あっ、本当に学園の理事長からなのですか?」
「勿論よ、私も手紙の内容を知りたいな。」
「は、はい…。」

『有紀さん、書と絵画は見させて頂きました、機会が有れば君の料理を食べてみたいです。
折角の才能、今は、好きな様に自分の才能を磨いて下さい、臆する事無く少しぐらい我儘になって良いと思います、希望が有れば違うジャンルの絵の先生を用意しますし、違う分野に挑戦するのも有りです。
修行年数は気にせず、芸術家滝川有紀として自分を磨いて下さい。
P.S. 私の部屋に君の作品を飾らせて欲しいのですが如何でしょう、お返事を待っています。』

「成程ね、お返事は私が預かるわよ。」
「う~ん、どんな作品が良いのかしら?」
「そうよね、これだけじゃ…、理事長には会う時間を作って下さる様に伝えておくわ、スケジュール調整もしておいて良いかしら?」
「お願いします、テーマを頂いて作品と向き合うのは緊張感が有って楽しいです。」
「理事長が恰好良いからと言って浮かれちゃだめよ、既婚者ですからね。」
「分かってますよ、師匠からは能力の高い人と接する時間を大切にする様に言われています。
勿論、人を差別する訳では有りませんが、どんな人と付き合うかによって料理が変わり、人間的な成長にも違いが生じます。」
「それを実感してるのかな?」
「はい、拾って頂く前は、心の狭い人に囲まれていて、自分も卑屈になっていました。
今は白猫組の暖かいお母さん達に守られ、仲間と共に成長しようと。
中学生ながら色々頑張っていたら料理の力や絵を認めて頂けて、前は暗い絵しか描けなかったのが、明るい絵も描ける様になりました。
理事長には明るい絵か力強い書を贈らせて頂けたらと思います。」
「そうね、孟母三遷の教えか…、高等部の子達って学力はともかく、みんな優しくて前向きでしょ。」
「はい、翔太先輩は自分を魅力的にしていないと、魅力的な人が近付いて来ないと教えて下さいました。」
「そういう話もしてるんだ、ねえ、翔太くんカッコ良いよね。」
「ええ、外見だけで無く内面も素敵です。」
「狙ってるとか?」
「ま、まさか私なんかじゃ駄目ですよ、釣り合いが取れなくて。」
「そうかしら、芸術家滝川有紀として実績を出せたら全然大丈夫よ。」
「も~、そんなの遠い未来の事です!」
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子猫組-25 [化け猫亭-19]

「有紀、何か嬉しそうね。」
「うん、書道の先生に褒められたの。」
「そんなの何時もの事じゃない。」
「表現を意識して書いたのがね、お習字の世界からはみ出し過ぎてて駄目出しされると思っていたのを褒めて下さって、書道の先生を目指す道が有るともね。」
「しかし驚いたよな、有紀の為に書道の先生を呼んで、ついでに初等部中等部の希望者にも習字を習って貰うって、俺たち学校外の習い事に無縁だったろ。」
「そうよね、お習字なんて興味無さそうな子も取り組み始めてさ。」
「行かなくなる子もいるけど、有紀に引っ張られて続けてる子もいるのでしょ。」
「紗希が手伝ってるからじゃないのか、優しいお姉さんとして。」
「私は…、正直言って有紀の書に感動してるの、私が書くのはお習字だけど、有紀のは違う、料理長の先生はそこまで見抜いていたのかな。」
「なあ、有紀、中三の秋だったよな、先生のテスト。」
「うん。」
「どんなテストだったんだ?」
「普通に家庭料理を食べて頂いたぐらいだけど。」
「ご本人からは話しにくいでしょ、私が解説して上げるわ。
有紀はね、小学生の頃から母親と妹にごはんを食べさせていたのよ。」
「あっ、確かにあの人、料理出来無さそうだよな。」
「そんな経験を生かした家庭料理なんだけど、彼女なりの工夫が随所に見られ盛り付けも綺麗だったの、中三にしては、という先生にスタッフが絵を見せた訳よ。」
「うん、有紀の絵は俺も好きだ。」
「それで、書道に取り組む事を条件に合格、料理長先生は高等部の、と言うより有紀の師匠になって下さったのよね。」
「おかげで調理実習の講師を紹介して頂けた訳だけど、少し厳しくない?」
「そうでも無いぞ、俺が現場見学で見て来た調理場の雰囲気からしたら全然…、講師の皆さんは紗希の可愛さに緊張感を失わない様、頑張ってると感じたがな。」
「そ、そうかな…。」
「紗希は、もう少し人の気持ちに気付けたら良いかも。」
「でも、今のままの方が周りを和ませてくれて嬉しくない?」
「ちょ、ちょっと待った~、私って…。」
「紗希、可愛いよ。」
「もお~!」
「でもさ、どうして料理の先生が書道を勧めたのかな、条件として。」
「和食って奥が深いのよ、家庭料理と違って一品一品に…、そうね趣を添えるというか。」
「あっ、聞いたぞ、この前、先生にご馳走して貰ったのだろ。」
「ええ、緊張したわ、でもしっかり味わわせて頂いて、美味しかったな~。」
「それも学習の一環なのか?」
「勿論よ、師匠と沢山語り合えたし、最高の一時だったわ。」
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子猫組-26 [化け猫亭-19]

「有紀は料理と絵画や書道が中心なんだろ、普通の高校生が学習している内容は全部パスなのか?」
「まさか、信くんは実習が多いから知らないのだろうけど、結構多くの科目を履修してるのよ、ね、有紀。」
「うん、国語、英会話、日本史、古文、化学、日本料理店の料理長として身に着けて置きたい内容を中心に、新聞や本を読む事も心掛けているわ。」
「へ~、思っていたほど偏ってないのだね。」
「数学の代わりに経理関係を学ぶべきか考えてる段階、師匠からは自分が店のトップとなった時に必要な事を考えなさいと言われてね。」
「国語や英語も必要なんだ。」
「当たり前でしょ、お客様に英語しか話せない方がいらしたらどう?」
「そこは英語担当を置くとか。」
「料理長としてお持て成しする事を考えられなくてはだめなのよ。」
「日本史は役に立つのか?」
「知識豊富なお客様を相手にすると考えてみたらどう、歴史上の出来事や人物ぐらいは知って無いとね。」
「その流れで古文か、でも化学って?」
「ふふ、調理場には調味料だけでなく洗剤や消毒薬も有るでしょ、混ぜるな危険は問題外だけどね。
化学は調理に直接関係する部分だけでなく色々面白いのよ。」
「そうか…、新聞や本というのは?」
「お客様とのコミュニケーションの為よ、私がただの馬鹿だったらハイレベルなお客様は興味を失うでしょ。」
「有紀はかなり上を目指しているのだね。」
「ええ、上を目指していれば例え挫折したとしても、色々な道が有るわ、師匠は挫折する事を否定しないで指導して下さっているの。」
「君なら、どの分野でもそれなりにやれそうだもんな。
俺達は就職に直接繋がるスキルや知識をと考えていたが考え直すべきかな?」
「想像してみたらどうかしら、仕事に対して間接的に役立つ知識とか、結婚して子どもを育てる時に知ってたら良い事とか。
単に就職するだけだったら職業訓練校で良い訳じゃない、高等部に所属し時間に余裕が有る生活の中で学習して行く、人間的により成長出来る場を与えて頂いたと考えたらどう?」
「そうね、私は訓練校に毛の生えた程度の事しか考えてなかったわ、結構真面目に考えたつもりだったけど。」
「カリキュラムの見直しかな。」
「ああ、俺は三学年終了時に就職という事で、就職内定先と相談して来たが、次回は自分なりに考えた上で有紀の話をしてみるよ、今ままで考えてた内容なら二学年終了時に就職しても良い様なレベルだったんだ。」
「しかし、本当に同じ学校の生徒かってぐらいやってる事はバラバラだよな。」
「贅沢すぎるよ、俺は専門知識を企業の視点で高一から学ばせるという、まあ被験者第一号だからね、二年ぐらいかけて資質を測られ大学生と比べて貰い、認めて貰えたらより高度な学習、更に研究職も目指せるんだ、大学入試に無駄な時間を使う事なくね。」
「力が足りないと判断されたらみじめじゃないのか?」
「それは無さそうだし、もしそうなったとしても就職には問題ないからね。
大勢の大人達が自分に合った職場に導いてくれると信じているよ。」
「そうか、健一のバックアップは多そうだもんな。」
「見守る人数に対して生徒数が少な過ぎるそうだけどね。」
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子猫組-27 [化け猫亭-19]

「…、といった感じで、高等部の子達は皆前向きに頑張っているのですよ。」
「大谷さん、それを高校と呼ぶのは無理が有りそうだね。」
「ですが、対外的に中卒者を受け入れる教育機関としては高等部が分かり易いかと。」
「だろうな、それでテレビの方は何時ぐらいになるの?」
「後三か月ぐらい取材してから、加奈さまや桜さんにも出演して頂いて番組を完成させる方向です。」
「生徒各自の生い立ちにも触れると思うが大丈夫なのか?」
「一応、入学を決定する段階で了解して貰っていますが、取材が原因でナーバスになる生徒が出ない様、配慮を求めていますし、生徒の側で取材対象の生徒を選んで貰っています。
食事しながらの雑談、なんて光景も撮影を前提に彼等が席を決めているのですよ。
最近はカメラに慣れて、自然な会話になって来たそうです。」
「ねえ、絵画や書道という、有紀さんだったかな、彼女の作品を見る事は出来ないのかな?」
「写真なら直ぐお見せ出来るのですが、スマホでは画面が小さくて…。」
「それなら…、おーい、留美ちゃん出番だよ…。」

「へ~、このモニターでスマホの画像が見られるとは思いませんでした。」
「はは、簡単だよな、留美ちゃん。」
「ですね、はい、真樹さん、後はスマホの画面がそのままモニターに映し出されます、くれぐれも操作を誤って見られたくない写真を披露しないで下さいね。」
「は、はい。」
「やらかした奴がいるんだ、慎重にな。」
「人に見せられない様な写真は有りませんよ。」
「う~ん…、これは、孤独を感じさせる作品だね。」
「はい、彼女が子猫組メンバーになる前の作品です、過去の作品から最近のまで順にお見せして行きます。」

「うん、確かに才能を感じさせられるね、最近の作品は明るくて、何だろう…、こうして続けて見せて貰うと彼女の中の変化が…、何か嬉しいね…。」
「子猫組を応援して来て良かったな。」
「ああ、自分の闇を描いてたのが、人の気持ちを暖かくしてくれる作品に変わった事が分かる。」
「では、次に書をお見せします、こちらは最近の作品です。」

「文字が躍動してるな…。」
「凄いね、留めや払いに大きな意味が有る…。」
「えっ、赤色…、そうか黒白に拘っていないのか。」
「赤で情熱、薄い色で儚さを際立たせている…、書の世界では邪道かも知れないけど、これは有りだね。」
「私がお願いして書いて貰う事は有りなのかな?」
「勿論大丈夫です、特に書は絵画程時間が掛かりませんので、そうですね、高級料理店でご馳走して上げれば喜ぶと思いますよ。」
「それが料理人としての経験に繋がるという事なんだね。」
「はい、高等部の事務所が窓口になっていますので問い合わせ等はそちらへお願いします。」
「高一女子だから、妻も同伴が良いのだろうな。」
「息子達も同席させたら刺激し合ってくれるかね…。」
「早い物勝ちと言うか、すぐにスケジュールが埋まりそうじゃないか、もしかして我々を優先してくれたのか?」
「ふふ、まだ目立つ活動はしてませんので、今がチャンス、彼女にとっても、大きなプラスになると信じています。」
「確かにそうだな、上を目指すには、その世界を知る事が必要だ。」
「保護されなかったら埋もれてしまったかも知れない才能です、絵も、暗い感情を抱かせる作風のままだったかも知れません。
彼女が仲間になって直ぐその才能に気付いてくれた人達には感謝しか有りません。」
「う~ん、いきなりでは事務所も困るだろう、化け猫組で取りまとめてから相談しようか?」
「そうですね、有紀さんを餌付けするにしても、始めは店が被らない方が良いですね。」
「ああ、和食なら覚王山の…。」
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子猫組-28 [化け猫亭-19]

「なあ、大谷さんも、そういうお店に行ったりするのか?」
「猫桜会のパーティー前に、マナー研修を兼ねて連れて行って頂きました。」
「う~ん、君も…、子猫組組長の座を降りたとしても、幹部、大谷真樹なのだろ、今後は化け猫組以外の人とも繋がりを持って欲しいと思うのだがどうだろう?」
「えっ、正直そこまでは考えていませんでした。」
「化け猫亭で働くのと違って給料は出ない、その代わり、君の頑張りによって社会福祉法人猫桜会への寄付が増えるかもしれないんだ。」
「付け加えるなら、良い人脈を持つ事は君とっての財産になると思うよ。」
「あっ、はい、有難う御座います。」
「なに、化け猫亭の仕事は何とでもなる、服装はうちの妻が何とかするよ、今日の服は地味過ぎるからな。」
「私はそんな…。」
「地味過ぎると、なんか恵んでやってるという気持ちになってしまう、綺麗にしていてくれたら自慢の娘を紹介するって気持ちにもなるのさ。」
「はぁ…、そういうものですか…。」
「子猫組は私達の子どもだからね、普通の女子大生っぽい恰好をして欲しいよ。
化け猫亭のスタッフはトークだけでなく可愛い衣装で私達を楽しませてくれているんだ。」
「でも、何か申し訳なくて…。」
「一人だけだと気が引けるだろうね、なあ化け猫組として子猫組で真面目にやってる子中心に…、イライザプロジェクトってどうだ?」
「面白いな、猫じゃらし隊とは別で選びたいね、単に容姿が良いという理由ではなく真面目に頑張ってる子にしたいな。」
「まずは有紀さんと真樹さんでスタートか。」
「あの~、イライザって?」
「My Fair Ladyって、さすがに知らない世代か、今度DVDを貸すよ。
深く考えなくて良いのだが、イライザってだけで、おじさんやおばさんの多くは直ぐ理解してくれるのさ、踊りを強要したりはしないから安心してね。」
「はあ…。」
「なあ留美ちゃんも大谷組長、地味すぎると思うだろ?」
「いえ、それ以前に組長では無く真樹さんと呼んで上げて下さい。」
「あっ、そうだな、組長としての実績が大きくて…、でも普通の女子大生なんだ。」
「イライザプロジェクトには私も参加させて下さいね。」
「おう、そうだ留美ちゃん、I Could Have Danced All Night 歌ってよ。」
「はい、イライザプロジェクトのスタートを記念して、今日はピアノ伴奏バージョンです、打ち合わせして来ますね。」
「留美さんって…?」
「真樹さん、彼女は音大生で我々のリクエストに応えてくれるんだ、後で歌ってくれる曲も我々の為に覚え練習してくれたのだよ。」
「そういう人もスタッフにいらっしゃるのですね。」
「何か思う所が有るの?」
「中学生の頃、音大に憧れてた友がいまして、まあ技術的に無理だったのですが、金銭的に絶対無理だよねって寂しそうにしてたのを思い出しまして。」
「う~ん、才能が無いのに音大に入れてしまっても、後が大変だと聞いてるよ。」
「あっ、そういう視点も有るのですか、そうですよね…。」
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子猫組-29 [化け猫亭-19]

「真樹さん、初等部や中等部はどう?」
「学習塾の要素を取り入れ児童生徒を増やした事で、不登校の子達が落ち着いて来たそうです。
学校と違って大人の目が多く仲間意識が強いからかトラブルも起きて無いそうで、教室で授業を受ける形式ではなく学習方法をアドバイスして貰いながらの自習が中心、自分の力に応じた学習なのが好評みたいですね。」
「子ども達は前向きなのかな?」
「スタッフは一人一人の実力に応じた課題を出しています、中学生で基礎計算を練習している子でも、それが必要だと理解しています。
学校の授業との関係は時折面接をして確認、予習しない方が良い子と、先へ進む事で学習意欲を満足させる子などを判断しています。」
「そうか、本来学習塾なんて要らないと考えていたが、学校が画一的教育しか出来ないので有れば必要なのかもな。」
「学校の存在意義は低下しているのでしょうね、いじめや不登校の問題は今の制度下では減りそうにないですし、学習の何割かは学習塾に依存しているみたいです。」
「真樹さん、初等部中等部の拡大は意識しているの?」
「はい、子猫組以外へも不登校児の受け入れと学習塾としての取り組みを考えています。
現状のまましばらく運営して問題が無ければ、まずは不登校児からですね。」
「施設面は大丈夫なのか?」
「桜さんが多目的ホールの建設計画を進めて下さっています。」
「多目的?」
「はい、猫桜総合学園カラオケ教室や華道教室、茶道教室、料理教室を意識しての事です。
高等部の人数が増えたら、その教室としても使う事になるでしょうね。
不登校の子達には寮から出る機会を増やせるかも知れません。」
「活動は、お年寄りも対象にするのかな?」
「生涯学習という言葉が有るそうで、今はどんなニーズが有るか調査中です。」
「今までは若年層中心だったが…、そろそろ、という事か…。」
「単純に事業としてですよ、お金の有るお年寄りにサービスを提供して料金を頂く、タンスに眠っているお金を正しく使って頂く場を提供するのだそうで。」
「そうか、過疎地の再開発は俺達の老後を意識しての事だったが、猫桜会としてもう一歩踏み込んでも良いのでは無いかな。」
「う~ん、老人向けの展開もすでに有るが、更に…、何か案が有るのか?」
「市の高年大学が有るだろ、それに対抗して猫桜総合学園高年大学、学費を多めに頂いて若者向けの施設を充実させるとかどうだ?」
「その中にカラオケ教室とかを置くのか?」
「趣味を同じくする人達が集まれば健康寿命が伸びるだろうが、子ども達の成長を見守る様な活動をしても良いと思う。」
「ふむ、高年大学の活動には、正しい孫との接し方とその実習が有っても良いかもな。」
「なあ、養子縁組の機会に法的には意味のない祖父母を作って見守って貰う、血縁に依らない緩やかな親戚関係を生み出して、核家族から一人暮らしに向かってる社会の有り方に一石を投じる事は出来ないだろうか?」
「その為には素敵なお爺ちゃんお婆ちゃんになるべく学習して頂くという事ですか?」
「ああ、真樹さんはどう思う?」
「私は実の祖父母と縁が有りませんので良く分かりませんが、子ども達を見守って下さるのでしたら、児童養護施設の子達に…、何の知識も無く近付くのではなく、子ども達の事情を学習して下さってからならお願いしたいですね。」
「そうだな、私達も子猫組に係わる前に研修を受けた、それが無かったら失敗してたと思うよ、まず、金は有るが寂しい思いをしている高齢者をターゲットに桜さんと相談かな。」
「子猫組の為になるのなら最優先ですね、自分も調べてみますよ。」
「そして猫桜総合学園を拡大させて行こう。」
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子猫組-30 [化け猫亭-19]

「おい、聞いたか、大学を一つ猫桜会の傘下に入れるって話。」
「ああ、でも偏差値の低い大学なのだろ、メリットは有るのかな。」
「猫桜総合学園構想との兼ね合いはどうなるのだ?」
「ねえ、千沙ちゃん、真樹さんは今日のシフトに入ってないの?」
「もう直ぐ来ますよ、発表に合わせてシフトを入れたと聞きましたが、私も大学の話までは教えて貰ってません、え~っと、記者会見の準備をしておきましょうか?」
「はは、そうだな来てくれるのなら記者じゃないが会見はして頂こう…。」

「真樹さん、偏差値の低い大学を取り込んでここからはどういう展開になるのかな?」
「はい、現在定員割れを起こしている大学です。
在校生に関しては希望者以外、今まで通りの学生生活をして頂きますが、今後は文科省とも相談しつつ大幅にカリキュラムを見直して行きます。」
「文科省と相談と言うと?」
「大学の有り方に疑問を抱いている方は少なく有りません、猫桜総合学園ネットワークの参加者には力の有る方もみえます。
まずは、許される範囲で最大限に実験的な事を画策しています。」
「例えば?」
「成果型単位です、大学側が提示したカリキュラムに無い内容でも、本人が申請し研究成果をまとめられたなら、大学の単位として認めて行きます。」
「それって…、現行法で許されているのか?」
「文科省にも実験的取り組みとして認めて頂く方向で調整中です。
受け身では無く自分から取り組む姿勢を大切にしていかないと次世代が育たないという意見が多くて、まずは入試要項に盛り込まれます。」
「という事は再来年の入試からになるのかな?」
「はい、一般向けはそうなります。」
「別の流れも有るのだね。」
「猫桜総合学園として動き始めている研究室や講座を、猫桜総合学園千年大学に取り込んで行きます。」
「校名を千年大学に変えてという事か?」
「そうなります、人気の無い三流大学の中身を変え校名を変えて再生して行きます。
その過程で付属小学校なども整備し、義務教育の範囲を守りつつ柔軟な教育の出来る学校を目指します。」
「現在進めている猫桜総合学園の初等部中等部とは全くの別物になるの?」
「まだ調整中ですが、初等部中等部の活動を元に、新しい学校の有り方が検討されると思います。
公立学校で転校すべき状態になった子の受け皿としての役割も検討されています。」
「子猫組の子達も受け入れるという事かな?」
「そうですね、大きく傷ついてから保護された子達が希望すれば、しばらくは学校の有り方を研究して行くその実験的対象となる事を理解して貰った上でとなりますが、子猫組の子達を取り巻く教育環境が大きく変わるでしょう。」
「簡単に行きそうなのか?」
「公立校と実験校の狭間で戸惑う子や悩む親は出て来ると思いますが、子ども達の健やかな成長を後押しする活動を、猫桜総合学園ネットワークの人達と子猫組は考えています。
学校は多くの問題を抱えていますし、教師達が社会の変化について行けてない環境なのかも知れません。
猫桜総合学園ネットワークから生まれた教育関係の研究室は凄い勢いで拡大中、ネット上に仮想大学とも言える規模とレベルになるでしょう、すでに日本全国から集まった心有る研究者達が意見交換していますが組織としての構築も進んでいます。
この研究室が中心となって動いて下さいます。」
「そうか、実質的に大学としての建物は必要なくなりつつ有るのかな…。」
「文系の多くは通信教育に移行出来そうです、僻地に住んでいても研究出来る環境を目指してシステムの強化を進めて頂いてます。
研究室の核となって下さった方々は、各地で立ち上がって行く子猫組の子等の将来を考えて下さっています。
それは、大学入試の為の教育では無く子どもの為の教育です。」
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