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近衛予備隊-351 [高校生バトル-78]

 俺達はジェシカが多言語に接すると言っても幼児期のお遊びに過ぎないと判断した…。

「ジェシカに自分の母国語を教えようしてる連中はどうだ?」
「それぞれ彼女との話題に工夫を凝らしてるわよ、母国の代表になったかの様に緊張してる人もいるけど。」
「ジェシカは?」
「覚えた単語について私達に話す時は英語と紐付けられているし、ベビーシッターと話してる時は日本語と、今は知らない言葉に接するのが楽しいみたいで遊びの範疇ね。」
「彼女なりに整理出来ているのかな?」
「多分彼女なりのペースでね。
 一つの言語で教えられた単語が他の言語に置き換えられないと、英語で何と言うのか訊いてから日本語で確認してるのだけど、その後は気分次第みたいなの。
 言語間の単語に生じる微妙な違いを幼児に解こうとした愚か者がいたけど、ジェシカに冷たくあしらわれていたわ。」
「はは、女王様の貫禄か。」
「そうね、このところ取り巻きが増えてるでしょ、何とか自分達の言語を理解して貰おうと下手に出てる大人が悪い影響を与えなければ良いのだけど。」
「言語に関しては流石に多過ぎるし、ジェシカが王家の一員では無いことを忘れてる人もいるのなら、そろそろ介入すべきかもな。」
「大統領から命令するの?」
「英語、日本語以外に六つの言語だろ、そろそろ飽きて来たり面倒に感じてる言語はないのか?」
「そうね、教えてくれる人に彼女が魅力を感じなかった言語は、すでに敗退しかけてるわ。
 何を話してるのか分からなくても見てて分かるのよ、教える側に余裕が無いことをジェシカが感じてることとかね。」
「う~ん…、そう言う状況なら判断はジェシカに任せてみるか?」
「判断?」
「理由はどうであれ、合計八つの言語と向き合って行くのか減らして行くのかは我々が判断すべきでは無いと思う、彼らは言語学習だけでなく算数や理科の基礎を教えてくれているのだろ。」
「ええ、少なくともジェシカの知的好奇心を満たしてくれてると思うわ。」
「一度ジェシカと話し合ってみるよ。」
「それは嬉しいけど、まだ幼児なのは日頃の触れ合いで分かっているよね?」
「勿論さ。」
「話し合うとなると、王立高等学校の生徒と同じな質問をしそうだけど、父親と幼児なのだからね。」
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近衛予備隊-352 [高校生バトル-78]

 シャルロットが心配したのは相手が子どもであっても、つい論理的な難しい話をしてしまう自分の癖を知っているから。
 さすがに我が子は幼児で今まで難しい話はして来なかったつもりだが、話の流れから自分がジェシカを戸惑わせる様な話をしないかと危惧したのだ。
 そんなことを意識して我が子と向き合う。

「ジェシカは色々な言葉を学んでいるが、減らしても良いんだぞ。」
「減らす?」
「英語と日本語は外せないが、他の言葉は覚えなくても困らないだろ。
 逆に色々な言葉を学ぶことで、英語と日本語が上手にならかったら残念かも。」
「大丈夫よ、英語と日本語は本を読める様になって来たし書く練習も始めたの、今度パパにお手紙書くけど、パパには日本語でも良いのでしょ?」
「ああ、構わない、今まではジェシカが混乱しない様に英語だけで話し掛けていたのだからな。
 ジェシカが弟や妹と話す時はどうしてるんだ?」
「近くにいる大人に合わせてるわ、急に言葉が変わってもそんなに困らないと思うけど、日本語の分からないスタッフもいるから。」
「気にしてくれてるのだな。」
「大統領の子どもだからそれぐらいはね。」
「えっ、大統領の子どもだからなんて話は誰がするんだ?」
「大人達はみんなしてるよ。」
「そんなことは気にしなくて良いのだがな。」
「お話の中のお姫様は王様の娘でしょ、でもパパが詩織さまの跡を継いで王様になっても私はお姫さまにはなれないの。
 でも王家に相応しい人に成れたら、パパが王子でも私がお姫様になれるのでしょ。」
「そこまで教えられているのか、でも大変だぞ。」
「知ってる、パパが尊敬されてるのは沢山学んで沢山お仕事したから、でも、私にも出来るよね?」
「そうだな、それで色々な国の言葉を覚えようと思ったのか?」
「ううん、面白かったからだけ。」
「そうなのか、スペイン語はどの程度理解出来てるんだ?」
「まだ四歳児レベルだと言われてるけど、始めたのが五歳だから上出来でしょ。」
「そうか、実を言うと普通の子どもが覚える言葉は一つだけなんだって知ってたか?」
「でも、この国の子ども達は親から教えられる言葉の他に英語を覚えるのでしょ?」
「ああ、確かにそうだな…。」
「でも、国の言葉は簡単で、冷蔵庫やエアコンとかは英語をそのまま使っている、多くを学ぶには適さない言葉だから、私達は英語と日本語だったのよね?」
「はは、ジェシカは適さないなんて言葉も使えてしまうんだ。
 少し安心したが、困ってることとか無いのか?」
「そうね、困ってはいないけど、宮殿エリアの外に行ってみたいかな。」
「そうだな、そろそろ…、大統領の娘は悪い人に狙われ易くてな、警備の人と相談してみるよ。」
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近衛予備隊-353 [高校生バトル-78]

 警備の問題も有り、子ども達が宮殿エリア外に興味を持つまでは極力外へ出さないと言うのが我々の方針、宮殿エリア内だけで何の問題も無く暮らせるからだ。
 だが、いずれは外の世界を知らねばならない。
 ジェシカが外の世界に興味を持ってくれたのは正常に成長しているからで好ましくもある。

「シャルロット、ジェシカには車で周辺を見せようと思う。
 ドライブだけで満足してくれるかどうかは分からないが、先のことは何度かドライブを経験してから考えれば良いだろう。」
「そうね、案内は誰に?」
「彼女の反応に興味があるから俺が行くよ。」
「大統領が外に出ると目立ち過ぎるのだけど。」
「お忍び用の車で行くさ。
 ジェシカの顔は世間に知られてないままにしておきたいからな。」
「時間は短めにね、一応トイレの場所は確認しておいてよ。」
「分かった。」

 ジェシカは宮殿内の病院で生まれ、そのまま宮殿内で育った。
 森の散歩道も整備され、それなりに広さの有る宮殿だが、もう直ぐ七歳ともなると塀の外に興味を持つのは当たり前だろう。
 育児に関しては妻達とベビーシッターに任せっきりで自分はあまり関わって来なかったが、幼児教育とは無関係の加藤先生と話してから、意識的にジェシカと話す機会を増やして来た。
 だが、私と話す彼女からは緊張を感じられる。
 考えてみると親子関係について自分は何も学んで来なかったと思う。
 ジェシカが生まれた時に抱き上げた記憶が有るが、それ以降は全てお任せ、父親として子ども達が成長するのを見守ってはいたが、それだけだった。
 そんな事情も有ってジェシカとのドライブは新鮮なものに。

「ジョン、お疲れ様、ドライブはどうだった?」
「ずっと質問攻めだったよ、子どもの好奇心を分かっていたつもりだったが、思わぬ視点からの質問に答えるのは楽しかったな。」
「幼児の理解を超える様な答え方はしなかったの?」
「そんな時は妖精さんの登場だろ、発電所へ行って来たが、目に見えない電力は妖精さんの仕事で間違ってないと思うよ。
 どんな妖精さんなのかを、これから学んで行けば良い。」
「彼女からの質問に答える時は妖精さんに活躍して貰ったけど、そこまでは考えて無かったわ、ジェシカはこれから電力について学ぶのかしら?」
「理解の範囲になるだろうが、彼女がどう学んで行くかには興味があるな。」
「ドイツ語で接してる女性が、一番電力に関して詳しそうなのだけど…。」
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近衛予備隊-354 [高校生バトル-78]

 小規模ながら水力発電所と火力発電所を見てジェシカは電気に興味を持った。
 だが、幼児が理解するにはハードルが高過ぎる。
 彼女は電気について周りの大人達に聞きまくったのだが、電気に付いて問われても妖精さんレベルで誤魔化す人ばかりだったのは仕方ないだろう。
 そんな中でジェシカを満足させられたのはシャルロットが話してたドイツ語を教えるエミリア。

「エミリア、最近ジェシカとの時間が長くなったと聞いてるがどんな感じ?」
「詩織さまから振られた勝負にドイツ語が勝利したのです、彼女の知的欲求に一番応えられていると言うことですね。」
「電気のことを切っ掛けにしたのかな?」
「ええ、目に見えないことを幼児に教えるのは難しいですが、彼女が知りたいと思った事ととことん付き合った結果です。」
「どんなだったのかな?」
「非公開の記録映像が有りますのでそれを見て頂けたらと、ジェシカが如何に賢い子なのかも分かります。」
「幼児期でも既に能力差が有ると?」
「ええ、彼女は大統領の血筋を引き、多くの大人に囲まれて成長しましたが、知的好奇心の塊なのです。
 能力の高い子に対してどの様な教育をして行くのがベストなのか、それによってどんな結果が得られるのか、詩織さまとも話し合っているのですよ。」
「その実験的存在としてジェシカを?」
「今後も普通に学校に通う子達とは異なる道を歩むことになります。」
「王国の学校はレベルが上がって来てるから、普通に通わせられたらと思っていたのだが。」
「周りの子達が普通には受け入れられないと思います。
 彼女が読んでる英語の本も日本語の本も既に十歳レベルです。
 早熟な子に対する特別な環境が必用でしょう。」
「宮殿で暮らしてる子ども達はどうしてるのかな?」
「学校ではどんどん先に進んでいますが、ここの子達とは幼児期の環境が異なりますので物足りなさを感じる子もいるようです。
 パソコンで学習出来る環境を整えている親も多いのですよ。」
「近衛隊のメンバーは優秀な人が多いからな。
 ジェシカを学校に通わせるとなると警備の問題も有る、宮殿内に学校を作るのはどうだろう?」
「近衛隊や大統領親衛隊の子どもだけでそれなりの人数になっています。
 宮殿エリアが今のペースで拡大して行くのであれば学校が有っても悪く無いでしょう。
 彼らが通ってる学校との交流は残したいですが。」
「それは必用だな、学校の方は詩織さまと相談してみるよ。
 それで、ジェシカは理科について学び考える時はドイツ語になるのか?」
「ドイツ語から英語に訳せそうな人が居ませんから、彼女がパソコンを使いこなせる様になるまではそうなるでしょう。
 私は勝者の余韻に浸りながら、ドイツ語だけでジェシカとの時間を楽しむことになりそうです。」
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近衛予備隊-355 [高校生バトル-78]

 子どもを学校に通わせている幾人かの近衛隊メンバーに訊ねたところ、エミリアが話していた通り学校ではどんどん先へ進んでいるそうで、それが楽しそうだと、ただ、理数系に強い教師が少なく、そこがこの先の気掛かりだとも。
 詩織さまは…。

「宮殿内に学校を作る話が出てるそうね。」
「はい、近くの学校も子どもが増えて手狭になって来ています。
 増築しても良いのですが、宮殿内で暮らす子も増えていますので。」
「ジェシカ達の警護を考えたら宮殿内で完結しておきたい所だけど、外に出られなくて残念に思うかもよ。」
「それは、もう少し大きくなってからで、今はドライブに連れ出して満足させています。」
「ドライブか、ジェシカの反応は?」
「始めて目にする全てを質問して来ます。」
「ジョンが答えてるの?」
「ええ、少しずつ難しい話を入れて、どこまで理解出来るのか試しています。
 今は、質問に対して答えて貰えることが嬉しいみたいで、熱心な生徒ですよ。」
「ジェシカのことは聞いていたけど、そろそろ私も話してみたいわね、ジョンの子がどう成長しているのか見てみたいわ。」
「電気を中心とした理科に関する話はドイツ語でしか話せないのですが。」
「エミリアがジェシカの好奇心を一番満足させられたのよね、彼女が担当してる仕事は新人に引き継いで貰い、宮殿に作る学校で理科の教師をお願いしてみる?
 勿論、英語でだけど。」
「兎に角、理数系に強い教師を増やしたいですね。
 留学生達は語学が中心ですので。」
「それなら、大学の研究施設を増強して海外からの研究者を受け入れてみようか?」
「問題は予算だけですが。」
「彼らには研究面で優遇する代わりに、週に一日だけでも子ども達に理科を教えて貰う…、理科の教育者を育てて貰うのも有りかな。」
「先々を考えたら、教育者を育てて貰えるのは大きいですね。」
「王立高等学校の生徒に学んで貰い、そのまま実習として子ども達に理科を教えて貰うのはどう?
 日本の大学では若い研究者の待遇が良くないと聞いたことが有ってね、遠江大学のメンバーに持ち掛ければ検討してくれると思うの。
 ただ…。」
「ただ?」
「研究と教育は別物でしょ、研究の能力が高いからと言って教えることが上手だとは限らないのよ。」
「でしょうね。」
「大学教授でも、研究中心の人と学生に対する教育中心の人が居るみたいでね。」
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近衛予備隊-356 [高校生バトル-78]

 教師の話は兎も角、新たな学校建設の話は直ぐに決まった。

「学校は北側の丘を造成して、広い運動場を備えたものにしましょう。」
「宮殿エリアの拡大には問題無いのですが、もっと近くて良いかと。」
「通学が良い運動になると思うの、日本の田舎では学校が丘の上にあることが多いのよ。」
「生徒を鍛える為ですか?」
「それも有るかもだけど、田舎の平地は田畑の為に貴重だったの、今は水害時の避難場所として使ってもいるのだけどね。」
「王宮自体が水害を考えて建てられていますので問題はないですが、王宮エリアの拡大を考えたら良い場所かも知れません。」
「体力も必要でしょ、歩いて通える様になったら入学出来るとかどう?」
「それなら、急な坂を一気に上がるルートとなだらかにゆっくり上がるルートを作りたいですね、子ども達が選べる様に。」
「ジェシカはどちらを選ぶのかしら?」
「せっかちだから急な坂を選ぶけど、途中で挫折し少し休んでから、なだらかだけど長い道を、でも経験を重ねる内になだらかな道を走って上るとか考えるかも知れません。」
「選べる通学路は魅力的かもね、ビオトープを通る道や花の咲き乱れる道とか作ったら楽しそう、学校の行き帰りに色々な体験が出来たらね。
 ここが村だった頃は子ども達が普通に楽しめていたのかもだけど。」
「そうですね、王宮で暮らす子達には管理された森の散歩道ぐらいで…、子どもの冒険心は満たされていないのかも知れません。」
「子どもの冒険心と大人が事故を心配する気持ちとは、どちらも強くて悩ましい問題なのよね。
 通学路を複雑にして子どもの冒険心を満たしつつ、登下校時間を中心に大人達が維持管理作業をしながら見守れるとか、そんな感じにしてみる?」
「良いですね、居住エリアから学校まで子どもにとって刺激的な通学路を目指しましょう。」
「迷子になったりして。」
「登校時は登れば学校に、下校時は下れば居住エリアにたどり着く、それぐらいの設計は難しくないと思います。」
「う~ん、迷路にしても悪くないと思うのだけど、子ども達は直ぐに慣れてしまうでしょうね。」
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近衛予備隊-357 [高校生バトル-78]

 校舎の完成までには時間が掛かるので、宮殿の会議室などを利用して宮殿内の学校をスタートさせることにした。
 子ども達は今までの学校と両方に籍を置く、宮殿で暮らしていない子でも特に優秀な子には在籍を許可、王立高等学校に入学出来るレベルの子達だ。

「二つの学校で調整は出来そうなの?」
「シャルロット、学校には時間的な余裕が有るんだ、新しい学校はエミリアの理科から始まるよ。」
「年齢も理解力も違う子達なのよね?」
「ああ、最初に簡単な実験をしながら子ども達のクラス分けをするそうだ。
 メンバーの能力にもよるが一クラスの人数は抑えたいそうでね。」
「そこにジェシカも?」
「ドイツ語で教えたいエミリアとしては不本意だったかも知れないが英語でね。
 で、一つの試みとして、違うクラスの子同志が教え合う取り組みを考えてくれている。」
「教え合う?」
「授業で教えられることには限りが有る、だが教えると言うことを彼らが学んでくれたら将来は理科の教師になってくれるかも知れない。
 教師以外からも情報が入ることになり全体の学習効率が上がる、教える能力のある人は会社でも重視され昇進も早いだろ。」
「王立高等学校では『教える』も教科の一つになっているものね。
 でも、間違ったことを教えられてしまうとかはどう?」
「テキストを充実させて行く、むしろ間違ってるかもと疑問を抱いて学習に取り組んでくれたら伸びるのではないかな。」
「理想は自学自習だものね、それを手助けする存在が教師だけど、色んな教師がいて良いのかな。」
「ただ、理数系には論理的に考える力が必要、エミリアなら任せて安心だと思うが。」
「そうね、ジェシカはドイツ語で理解したことを自分なりに反芻し、少しずつ英語で話してくれるのだけど、間違ってないし妖精も登場しないのよ。」
「彼女の語学力では英語に置き換えられない単語が有りそうだが。」
「そこで苦労していることが成長に繋がるのかも、一つの英単語を知っていれば簡単なことが、それを知らないが故に歯がゆい思いをしてるみたいなのだけど、自分がエミリアから学んだことを私達に伝えたくて脳を思いっきり使ってるみたいなの、頭が痛くなるぐらいに。」
「幼児期にそう言った経験をすることで思考力を伸ばすと聞いたことが有る、エミリアには感謝だな。
 ジェシカの中でドイツ語に敗れた言語はどうなんだ?」
「ジェシカが見捨てた言語も有るけど、映像作品を見て楽しむ程度には続けているの、理科をドイツ語で理解するみたいな感じにはなりそうにないけどね。」
「それなら安心かな、語学にばかり時間を取られるのもどうかと思うし。」
「ドイツ語は学習の要素が強くなっているけど、他の言語は彼女にとって娯楽みたいなの。
 宮殿の新設校で学ぶことが決まって、算数に取り組み始めたでしょ、それが面白くも有り苦しくも有るみたいでね、今はポルトガル語の歌を息抜きにしてるみたい。」
「そこで、英語や日本語を選ばないのか?」
「彼女なりに多言語を楽しめてると言うプライドがあるのかと思っていたのだけど、単純に好きみたい、ポルトガル語は彼女の中に歌を通して残って行くのではないかしら。」
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近衛予備隊-358 [高校生バトル-78]

「ジェシカが今まで学習して来た言語は、理科の学習と結びついてるドイツ語以外も、娯楽の形で彼女の中に残って行くのかな?」
「日常的に使っていない言語だから、残るとしたらそう言う形なのかも、忘れても構わないのよね。」
「これから沢山のことを学んで行くのだから、忘れてくれた方が安心かもな。
 でも、彼女の記憶力には驚かされるよ、前に話したことをほとんど覚えていてね。」
「私達に話すことで復習してるのよ、ジョンに教えられたことを嬉しそうに話すの。
 何時も話が長くなるから英作文担当のシッターを雇い、教えられたことを一緒に書かせてるのだけど、最近は初めてジョンとドライブに行った時のことも思い出しながら書き始めたのよ。
 慣れていないから時間が掛かるのだけど、私が止めないとずっと作文に集中していて、彼女にとってジョンとの時間は特別なものだったのでしょう、他の遊びは長く続かないからね。」
「そうか…、記憶したことを書き留めてるだけでは、優れているのは暗記力だけなのかも知れないが…、パソコンはまだ早いのかな?」
「う~ん…、英文はパソコンで日本語は手書きでとか…、ジェシカと相談してみましょうか?」
「そうだな、パソコン担当のシッターも必要か?」
「直ぐには要らなくてもいずれは必要になるでしょうね、でもシッターの希望者は留学生中心に多いから心配いらないわよ。」
「そうか、その中に算数や数学を教えられる人が居たら、理科に続いて算数教室も始められるのだがな。」
「王立高等学校の生徒はどうなの?」
「調整して貰っているのだが希望者が多くてね、算数を教えるのに問題の無い子ばかりみたいだけど、彼らを統括してくれる存在が必要なんだ。
 理科のサポートはエミリアが選んでくれて、楽しそうにやっているのだが。」
「確かにクラス分けをしてカリキュラムを組むのは難しいものね。
 理数系の留学生はいないけど、一度相談してみるわ。
 研究室で日本からの研究者を招く話はどうなの?」
「色々調整が難しいみたいでね、理数系の教育を専門に研究する研究室を新たに開くことになるかも知れない。」
「今の教育学部は英語教育が主で他が寂しいのよね。
 それが実現し研究室が増えたら大学自体が成長して行くのかしら。」
「そうだな、伝統の無い大学だから成長させて行かないと。」
「それでも留学生中心に進められている語学学習に関する研究は、思い切った英語教育をしてることで、少し注目されているみたいね。」
「ああ、国立学校に入学して英語を選択する子は多い。
 幼少期に日常使う言語が、突然大きく変化することにはマイナスの面が有ると考えられているのだが、有無を言わさず英語漬けにして英語で考える様に、親との会話が少ない子程、短期間で英語力がアップしている。
 だが、こんなこと母国語を大切にしている国では出来ないことだからな。」
「でしょうね、効率的では有るのだけど、いずれ英語が母国語になるのかしら?」
「教育の効率を考えたらな、国民がどれだけ世界を意識しているかによって速度は変わるだろうが、今まで使って来た言語に対する執着心より、観光客相手の商売に参加出来る美味しさが勝っているからな。」
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近衛予備隊-359 [高校生バトル-78]

 宮殿内でスタートした学校はその名称を王宮中等学校とした。
 ジェシカ以外は王立第一小学校と改名した王国内の学校にも籍を置く。
 王宮中等学校は小学校の選択科目で理科の成績を伸ばしている子の受け皿としつつ、宮殿内で暮らす子たちが学ぶ場として整備して行く予定だ。
 ジェシカには義務教育に沿った個人カリキュラムを用意して貰い、理科以外は個人授業でスタートしている。
 今後、徐々に同年代の子を学友として迎え入れて行く予定だが、そこにはジェシカをリーダーとして育てたいと言う大人達の思惑が有る。
 王子の娘で有り大統領の娘でも有る彼女だが、その能力が人並以下で有ったなら普通に義務教育を受けさせる方針だった。
 しかし語学で大人達の注目を集めることに。
 王子の娘でも王位に全く関係ない存在なのだが、大人達は実力で王族になることを期待している様で、それは詩織さまも…。
 
「ジェシカは素適な子ね、純粋に知識を吸収したい気持ちが伝わって来たわ。」
「憧れの詩織さまとの時間ですから尚更でしょう、学びの時間だと理解して臨んでいたと思います。」
「でも、ジェシカが中学生になることに対して周りの子ども達はどう受け止めているのかしら?」
「王立中等学校に通い始めた子達は、素行に問題の無い子で普段から年下の面倒を見ています。
 校舎が完成したら自分達の弟や妹も、同じ様に中学生になるのですから気にして無いでしょう。」
「日本とは違う教育制度は私も推奨して来たのだけど、さすがに違和感を感じるのよね。」
「違和感ですか?」
「日本でジェシカぐらいの子は小学一年生になり六年掛けて卒業して中学生。
 中学生を名乗ってはいても学習内容は小学生程度から始まるのでしょ。
 ジェシカは理科を中心に年齢の割にはレベルの高い学習に取り組んでいるみたいだけど。」
「かなり実験的な取り組みでジェシカが嫌がったら見直すのですが、義務教育の導入部はとっつき易く設定されていますので問題なさそうです。
 彼女にとっての学習は遊びの延長で本人が楽しんでいますし、教育学部の連中が楽しく学習出来る様に工夫してくれています。
 ジェシカで試した結果を小学校のカリキュラムに反映させる方針なのです。」
「大学らしいことを出来るようになったのね。」
「ええ、教育学部は留学生が多いですから。
 義務教育の算数は簡単過ぎますので中学校の算数プログラムも検討して貰っています。
 算数教育を専門的に学んで来た人はいないのですが、エミリアの助言を受けながら、それぞれが小学校で学んだことを振り返りつつ色々調べてくれています。」
「子ども達にとって何が必要で、それをどう身に付けて行くかを見直しているのかしら?」
「はい、王宮中等学校も実験的教育を前提にしていまして、親達にも協力を要請しています。
 教育改革、次のステップは王宮中等学校からと考えています。」
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近衛予備隊-360 [高校生バトル-78]

「国の教育制度はどうして行くつもりなの?」
「今の国立学校を国立小学校に名称変更し、今まで通り義務教育を中心に行っていくことが柱で有ることに変更は有りませんが、選択科目に熱心に取り組んでいる子を中心にした中等学校を小学校内に併設して行きます。
 中学生になることで意識を高めて貰い、就職時に雇用者側の判断材料を増やす狙いも有ります。
 中等学校での優秀者は試験に合格すれば王立高等学校にも籍を置くことが出来ますが、中等学校で学べることはそのまま中等学校でと考えています。
 一応の目安として十五歳までは中等学校で、十六歳からは高等学校でと言う形を考えていますが、中等学校で学んでいても高等学校合格者は学習環境面で優遇します。」
「高校生が増えそうなの?」
「ええ、観光で潤っているエリアの学校では全員が英語で学んでいるところも有ります。
 そんなエリアでは義務教育が始まる前の幼児期から、地域の子ども達に英語を教えられていまして、大人達も協力的なのです。
 経済的な問題が減り子ども達は学習に集中出来る環境になっていますので、自然と王立高等学校を目指す子が増えています。
 能力的に今の高校合格ラインを越えられない子でも中等学校で力を伸ばして貰えたらと考えています。」
「能力の高い子は十歳でも中学生になれて、十二歳から高校生に。
 十二歳で高校生になれた子も十五歳までは中学生と共に学ぶと言う感じなのかしら?」
「そうですね、学習単元をクリアする速度の速い子はそうなるでしょう。」
「ゆっくりな子は?」
「十五歳までは小学生、十六歳になった時点で義務教育は終了ですが、本人に学習意欲が有れば小学生として学習を続けることも可能です。
「実際にいるの?」
「ええ、働き始めてから、もっと農業の知識を身に付けて来いとか英語力を高めろと言われ、夜間の教室に通ってる子も少なく無いそうです。
 働いて行く上で実際に必要なことですが、雇ってる側が能力によって給与を変えるそうで、昇給目指して頑張ってる子もいるそうです。」
「雇用状況はどう?」
「失業率が下がり、観光業中心に人手不足に成りかけています。
 海外からの出稼ぎ労働者を雇うか若年労働者を育てるかの二択になって来ていまして、観光業で働けない人達との格差が出来つつ有ります。
 この状況を利用して教育の重要性を説き、改めて英語教育を進めて行きたいです。」
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