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近衛予備隊-01 [高校生バトル-43]

 俺はジョン、七人兄弟の四番目で田舎の村に住んでいる、学校へ通い、家の手伝いをする普通の十四歳だ。
 そんな俺は今、少し緊張している、いや少しでは無い。
 学校の授業が終わった所で集められたのは俺と同年代の六十人。
 その前に登場したのは軍服を来た五人の人達。
 軍服姿だが普通の国軍と明らかに違うのは制服が違うだけでなく、五人の男女全員が恰好良いこと、もし彼らが国軍だとしたら若くてもかなりのエリートだろう。
 誰かが間違ったことを口走らないか心配になるが…、いやその前に彼らがこんなみすぼらしい学校へ何をしに来たのか分からない。
 緊張しているのは自分だけでは無い様で静まり返ってる俺達に対して…。

「こんにちは、私達は詩織近衛隊のメンバーです。
 今日は皆さんにお願いが有って来ました。」

 詩織近衛隊って何だ?
 自分はそう思ったのだが、少しだけ上がった声からは嬉しさが感じられた、知る人ぞ知る存在なのだろうか?

「私達のことを知ってる人はいますか?」

 手を上げたのは一人だけ。

「どんな形で知ったのか教えてくれる?」
「はい、プリンセス詩織のことは姉が教えてくれました。
 美しいだけでなく生活に困ってる人の味方、女神さまだと。
 詩織近衛隊の皆さんはプリンセス詩織の護衛だけではなく、それぞれが特技を活かして様々な活動をしていると聞いていました。
 この国へも近い内に来て下さると聞いていましたが、まさか私達の学校に来て下さるとは思ってなくて、ドキドキしています。」
「有難う嬉しいわ。
 今から色々説明させて貰うのだけど、みんなが理解するには時間が掛かると思うの、みんながプリンセス詩織の活動について理解する手伝いをしてくれたら嬉しいのだけどどうかしら?」
「はい、喜んで。」
「さて、皆さん、プリンセス詩織は彼女が話してくれた通り弱者の味方で、詩織近衛隊はそのお手伝いをさせて貰っています。
 今日は私達と共に活動してくれる詩織近衛予備隊へのお誘いで来ました。
 用の有る人、興味の無い人は何時でも帰ってくれて構いません。
 ただ、興味は有るけど用が有って帰らなくてはならない人は、うちのメンバーに声を掛けてから帰って下さいね。」

 話をしてる人は村にはいないタイプの美人でこの国の人では無いのかも知れない。
 話はまだ全く分かってないが、彼女の話を聞かずに帰るなんて考えられなかった。
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近衛予備隊-02 [高校生バトル-43]

 皆がどう思ったのかは分からないが、直ぐに帰る奴はいなかった。
 メアリーと名乗った女性兵士は、持参して来た道具を使い大きく映し出された写真を見せながら説明してくれた。
 それによると、近衛隊はプリンセス詩織の護衛をするが軍人では無く武器は持たないとのこと、ただ近衛兵と呼ばれることは普通、銃を持たず戦わない兵士と考えれば良いそうだ。
 そう言われても良く分からなかったが、良く分からない兵士だと言うことだけは分かった。
 説明は三十分程で一旦終わり、取り敢えず、詩織近衛予備隊は制服を着て儀式で行進などのパフォーマンスを披露すること、その為の訓練と学習に取り組むこと、訓練時から給料が貰えることなどが分かった。

「短い時間では説明しきれないから、この後質問に応えるし、明日以降も来ます。
 現時点で詩織近衛予備隊への入隊を希望する人は案内を持ち帰り家の人に見て貰って、明日にでも入隊申込書を提出して下さい。
 面接をした後、入隊の決定をしますが能力が低いと自覚してる人でも真面目で有れば入隊出来ますので遠慮せずに申し込んで下さいね。」

 まだ良く分かって無かったが、みんな入隊を考えていると思う、何と言っても給料が貰えることが大きい。
 この村で採れる農作物は高値では売れず、若者は町へ働きに出るのが普通。
 自分も来年か…、でも、シャルロットと離れるのは…。
 給料…、十四歳にとっては充分な額だと思うが…、それだけ訓練が厳しいのだろうか…。

「では皆の質問に答えていくわね、ここまでの話を聞いて、どう?」
「メアリー、この子みたいに足が悪くて行進の出来ない子の入隊はダメなのですか?」
「問題無いと言うか是非入隊して欲しいわ。
 プリンセス詩織はハンディを持つ人でも健康で文化的な生活を送られることを願っていらしてね。
 彼女に出来ることを見つけることは難しく無いでしょう。
 成績に関係なく学習に対して真面目に取り組んでくれる人なら給料も普通に支払われますよ。」
「ルーシーは真面目で努力家だから俺からもお願いしたいが…、その…、俺達が金になるかどうか分からないのに給料をくれると言うのは?」
「勿論みんなには色々な形で働いて貰うわよ、行進などのパフォーマンスで観光客を増やして貰うことを考えているのだけど、それだけでなくね。
 ルーシーだって座って出来る作業なら出来るでしょ。」
「勿論さ、足の悪いことを気にして人一倍努力してるからな。」
「あなたはルーシーの手助けをすることも有るの?」
「勿論さ、俺だけじゃないよ。」
「あら、あなた達って素敵なのね、皆さんが詩織近衛予備隊の仲間になってくれたらプリンセス詩織も喜んで下さると思うわ。」
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近衛予備隊-03 [高校生バトル-43]

 メアリー達が学校に来てから俺達の生活は一変した。
 まず入隊手続き。
 親に対する説明会も開かれたが、これは単に詩織近衛予備隊の話だけでなく親たちが隣村に出来る施設で働く場合の説明会でも有る。
 プリンセス詩織はこの一帯の生活水準を向上させること考えていて、その一環だそうだ。
 隣村は大改造され観光地にするそうで、工事をしてることは知っていたが店が出来、農地が改良され村全体が公園として整備されるとは思いもしていなかった。
 子どもの入隊に迷う親もいたが、結局六十人全員が入隊することになり、俺達は詩織近衛予備隊第三部隊となった。
 因みに第一と第二は他国の村に有り、それぞれ訓練をしていると言う。
 予備隊への入隊はそのまま近衛隊付属学校への転校となったのだが、これは第三部隊が始めてと言うことだ。
 学校制度の兼ね合いなど大人の事情で第一部隊と第二部隊は地元の学校に通いながら訓練を受けているのだが、俺にはどちらが良いのかなんて分からない。
 転校とはなったが、特別な施設が有る訳では無く今までの学校の教室で学ぶことも。
 ただ学習内容は大きく変わった、何から話せば良いのか分からないぐらいに。

「ルーシーは行進をどうするか決めたの?」
「まだ決めかねてる、車椅子を新しくしてくれる話が有って問題は無いのだけど、見ている人が楽しめる様なパフォーマンスは無理かなって、ジョンはどう思う?」
「そうだな、みんな一緒が良いけど、行進練習の時間を学習時間に充てるのならルーシーにとってプラスになる、無理して行進に参加する必要はないと思うよ。」
「そうね、一緒に行進しなくてもみんなが仲間で良かったって充分思えてるから。」
「今まで学習を頑張って来て良かったな。」
「うん、足が悪いからではなく英語の成績が良いから皆より先にパソコンの使い方を教えると言われて気持ちが楽になったわ。
 ジョンは英語、どうなの?」
「猛特訓を始めたよ、元々親や兄達から英語と算数だけは将来役に立つから手を抜かずにしっかりやれと言われていたのだけどね。
 メアリー達には英語でしか話し掛けないって決めたんだ。」
「ふふ、単に美人のメアリーに話し掛けたいだけなのでしょ、シャルロットに教えちゃおうかな。」
「はは、シャルロットから同じことを言われたよ。」
「シャルロットに色々話してるんだ。」
「彼女は年齢の関係で予備隊に入れなかっただろ、だから近衛予備隊について興味深々でね。」
「もしかしてデートの話題に困らなくなったとか?」
「それは有るかも。」
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近衛予備隊-04 [高校生バトル-43]

 行進を中心としたパフォーマンスの練習は思っていたより厳しくなかった。
 全員が揃うことより見ていて楽しいことが重視されているからだ。
 ポールは不器用でワンテンポずれることが多いのだが、それも面白いからそのままで良いと言われたぐらい、但し彼には自信なさげでおどおどした表情やしぐさではなく、堂々とずれてた方がより面白いから研究するようにとの課題が出された。
 その指導はポールに自信を付けさせたいと言う意図が明白で、俺達の指導教官に対する信頼を強めさせることにもなった。
 この課題と言うのは宿題とは少し違い一人一人の目標でも有る。
 俺はメアリーと相談して英語力アップをメインの課題とし、環境が整ったらルーシーの次にパソコン学習を始めることにして貰えた。

 今まで学校で学習して来なかったこととしては社会が有る。
 一応社会科として歴史とかの学習はして来たが内容が全く異なり、難しくは有るが興味深い。
 この授業は自分達の置かれてる状況を考えることから始まった。
 村での生活は悪くなかったが、生活の為、近い将来村を出て行く事は皆が覚悟していたことだ。
 そこから、人としての幸せ、村と都市部の格差、犯罪、差別など社会問題とされることを教えられ考えさせられているのだが、そこに答えはない。
 担当教官は、自分で考え自分なりの答えを見つけ出すことが大切だと言う。
 ただ、それと並行してプリンセス詩織の功績を学んでいるのだから、そこから答えを見つけて欲しいと言う思惑は丸見え、それを指摘しようかとも思ったが、俺達はプリンセス詩織の軌跡を知るにつれ彼女は特別な存在だと思うようになっているので…、まあプリンセスの写真や動画を見せられただけで誰しもが好きになってしまうのだから余計なことを言う必要はない。

「プリンセス詩織は日本の遠江王国を出られ、一つ目の滞在地、お金持ち王国に入られたそうよ。」
「それもお姉さんからの情報なの?」
「ええ、同時に隣村は四つ目の滞在地として正式発表されたの。」
「プリンセスだからお金持ち王国は分かるけど、改造中とは言えあんな村で良いのかしら?」
「大人の事情が無かったら王国へは行かなかったと思うわ、プリンセス詩織は社会的弱者の生活環境改善を考えて下さってるからね。
 私達がどれだけ頑張ろうとルーシーの将来を何とも出来そうに無かったのを、近衛達は解決しようとしてるでしょ。」
「お金持ちって自分達のことしか考えてないと思ってたな。」
「多分そうなのだろうけどプリンセスは違うし、プリンセスの影響でお金持ち王国の国王も動いたのだからね。」
「大きな公園を整備運営することで安定した職の確保、プリンセスは同じことを規模を小さくして隣村でも、利益を出してこの国の社会的弱者救済に充てて行くのだったな。」
「村長が言ってたわよ、今までこの国に工場を建てる海外の会社は有っても、それは自社の利益を考え、単に安い労働力が得られるから進出して来ただけのこと、この国のことなんて何も考えてなく、酷い企業だと平気で環境破壊をしているのだとか。
 でもプリンセス詩織は本当に我々のことを考えて下さっているのだと。」
「超絶美人で弱者の味方なのよね、本物の女神さまだわ。」
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近衛予備隊-05 [高校生バトル-43]

 近衛予備隊に入隊してから二か月ほど過ぎた。
 最近、シャルロットに予備隊の話をしていて、ふと気付いたことが有る。
 それは、入隊するまで自分は何も考えてなかったのではないかと言うことだ。
 学校の学習でも一応考えていたとは思う、でもその考えるは今より遥かに低レベルで…、上手く言えないが、予備隊では難しいテーマを提示される割に多くを説明されないからか考えることが増えた気がする。
 教官達は授業を始めるに当たり無駄な暗記を求めないと話したが、それは嘘ではなく今までペーパーテストの類は行われていないし、これからも予定は無い。
 暗記することと考えることは全く違う作業だが、俺達の能力を計るのならペーパーテストは有効だろう、だが教官達はテストを行わなくても色々分かるそうで。
 いや実際に分かっているのだと思う、それはこの二か月で人により取り組む内容が大きく変わったことに表れている。
 隣村での農作業実習が増えた奴は、算数も英語もまるでダメだが体を動かす農作業は嫌いで無く一緒に作業している大人達に可愛がられていると聞いた。
 パソコンの使い方を教えられているのは英語学習に対する取り組みを認められた俺を含めた十二人だけ、今は三台のパソコンを交代で使っているが、今後パソコンは増やして貰えることになっている。
 インターネットの回線が敷設されたばかりと言うことも有って、村でパソコンを使ってるのは俺達ぐらいのもので、俺はささやかな優越感に浸っているのだ。

 以前はあまり自分が考えて無かったことに気付いた俺なのだが、その切っ掛けとして気付く力について考える授業が有ったことが関係していると思う。

「ねえジョン、気付く力って観察力と思いやりの心だと思わない?」
「ふむ、ルーシーがそれに気付いたのは考える力も関係しているのかな。」
「そうね、近衛予備隊に入隊する前は気付く力や考える力なんて考えもせず、脳をくだらないことに使ってた気がするわ。」
「学習に前向きだったルーシーでもか?」
「だって、足の事も有って私の現実は暗かったでしょ、その現実から逃げたくて学習に取り組み、何の為の学習なのか、その教科を学習する意味は、なんて全く考えて無かったもの。
 今考えると、大切な部分の抜け落ちた学習では例えペーパーテストで好成績を上げられていても、無意味だったとさえ思えるわ。」
「そうだな、ペーパーテストは表面的に暗記していれば点は取れるけど、教官達はそんなことを俺達に求めて無いものな。
 今役立つ知識、近い将来役立つ知識、考える力や気付く力、そして心を豊かにする教養、それを明確に示し学習の場を用意するが強要はせず、それぞれの能力や興味関心を重視してくれてる。
 トラブルに対しての対応も、学校の先生とは全く違うものな。」
「スーザンの妊娠が分かった時なんて、去年先輩が妊娠した時は全く違ってたものね。」
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近衛予備隊-06 [高校生バトル-43]

「先輩が妊娠した話は噂程度だったが…。」
「男子はそうだったみたいね、でも、私達は無関係なのに説教されたのよ貧乏なのに若くして子どもを産んだら大変なことになるとね。」
「それは間違いないが、教官の話は説教ではなく論理的だったな。」
「おばさん先生から説教されてないジョンには分からないかもだけど全然違ったの、ジョンは教官の話を聞いてシャルロットを大切にしなきゃって思ったでしょ?」
「ああ、今まで妊娠や出産の話を学校で聞かされることは無かったが、子どもを産み育てることを考えたら男子だって知っておかなければならないことが沢山有ると分かったよ。」
「ジョンは男子の中でも紳士的だものね。
 それでも女子の事情を教えられて無くて…、全然知らなかったの?」
「小さな妹は一人いるが後は男ばかりの兄弟だからな、女子の事情をシャルロットに聞かされることも無かったし。
 でも教官の話を聞いてからシャルロットとも男女の踏み込んだ話をし始めているんだ。」
「もしかして結婚を意識してるとか?」
「小さい頃からの仲で自然だろ、でも、生活を考えると俺が村を離れる時に一緒にとは行かず簡単なことではないと思ってた。
 それが隣村の開発で…、メアリーに聞いたら俺達が近衛予備隊を除隊する頃には隣村を中心に仕事は増えていて、特に英語の出来る人は必要だろうとね。」
「私も仕事の心配はしなくて良いと言われて、みんなが行進の訓練をしてる時間は会社組織について学んでるのよ、勿論全部英語だから簡単ではないのだけど。」
「そうか、安心したよ、この村で働くとしたら農作業ぐらいしかなくて、それを頑張った所で大した収入にはならないからな。」
「ジョンは家の手伝い、続けてるの?」
「給料を貰える様になったから手伝いを減らして学習時間に充ててるよ、手伝いを減らすことで家の収入が減っても、給料の方がそれより多い、ならば将来の収入を増やす為にも学習に時間を使いたいじゃないか。」
「そうよね、私も家では大した手伝いが出来なくて肩身の狭い思いをして来たのだけど、給料を貰える様になってからは落ち着いて学習に取り組めてるわ。
 まあ、キーボードの配列を厚紙に書いてブラインドタッチの練習してたら、何をしてるのか聞かれて説明に苦労する、何てことは有ったけどね。」
「はは、俺もさ、でも、英文でメールを送れる様になったらプリンセス詩織の脳と繋がれるのだから。
 えっと、どっちが早く打てる様になるか勝負だったな、でも何でも手伝うから俺を頼ってくれて構わないよ。」
「ええ、一緒に上を目指しましょ、シャルロットに怒られない程度に手伝ってね。」
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近衛予備隊-07 [高校生バトル-43]

 近衛予備隊に入隊してから三か月、隊員が揃うのはパフォーマンスの訓練ぐらいになっている。
 ルーシーは行進こそしないが、英語でのアナウンスを担当することになってから、しばしば顔を出す様になった。
 この三か月で本人の希望やその適性などから六十人の隊員は様々なグループに分かれ、それぞれ学習や訓練を受けている。
 教官達は俺達の将来を考え職業訓練に重きを置いてくれ、大工を志すメンバーは村に俺達の拠点となる建物を建てることを目標に実習を始めた。
 農業チームは農地改革を学び始めているが、難しいことの苦手な連中なので…、それでも村の大人が一緒に学ぶことになり、もしかすると村の農業事情は改善されるのかも知れない。
 裁縫が得意だったり興味の有ったメンバーは、プリンセス詩織のグッズ製作に取り組んでいる。
 みんなそれぞれ、将来を見据えた学習や実習、訓練に取り組み始めている訳だ。
 そんな中、俺はパソコンと向かい合っている。
 共に学ぶメンバーは三つのチームに分かれ、互いに教え合いながら競い合っているのだが、何とか合格点を貰え、プリンセス詩織の脳にメールを送らせて貰えることとなった。

「ルーシー、文に間違いはないよね?」
「少しぐらい間違っていても問題無いからそんなに心配しなくて良いのよ、トラブルが起きてもジョンが何とかしてくれるから安心して。」
「はは、ルーシーが居るから大丈夫さ、さあ送信しようか。」
「えっと、ぽちっとな、これで良いのよね。」
「問題無いけど、送信する時に『ぽちっとな』と言わなければならないと言うのは教官の冗談だと思うぞ。」
「え~、そうなの、みんなにメールを送る時は欠かさず口にしてたわ、ジョン、早く教えてといてよ。」
「言っても言わなくても問題は無いのだから心配いらないさ。
 まあ、メールを見てくれるプリンセス詩織の脳メンバーに教えたら笑ってくれるかもな。」
「ジョンったら…。
 ねえ、返事が来たら、次はどんなメールを送る?」
「そうね、遠江王国、日本、みんなで調べてはみたものの全然分からないのよね。」
「日本は我が国とは比べ物にならないぐらい豊かな国、でも社会問題はそれなりに有る、そこを改善しようと遠江王国が…、私達は始めの内プリンセス詩織のことだけを学んでいたけれどプリンセスが一人だけで成果を上げてる訳では無くて…。」
「今送ったメールもプリンセスが目にすることはないのよね。」
「大きな組織のトップが俺達の自己紹介なんて気にしてたら何も出来なくなるだろ。
 その代わりの組織、プリンセスの脳で有るチーム詩織、その凄さに気付いてるのか?」
「な、何となく…。」
「俺達の送ったメールをプリンセスは見ることは無い。
 でも、返信はプリンセスならこう返すだろうと言う予測に基づいて送られて来るんだ。」
「その辺りが良く分からないのよね。」
「ルーシーでも分からないのなら私には理解不能だわ。」
「じゃあ、返信の内容にもよるけど、次のメールではその辺りを聞いてみようか?」
「う~ん、どう質問をすれば良いのかすら分からないわ。」
「私も…、ジョンとルーシーに頼るしかなさそうね。」
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近衛予備隊-08 [高校生バトル-43]

 俺達のチームはパソコンの学習に取り組んでいるチームの中で何かと進んでいることも有り、大き目のモニターにプリンセス達のYouTube動画を映し出し、休み時間を使って皆に見せると言う作業を担当することになった。
 モニターは日本企業からの贈り物、パソコン同様中古品だが全く問題ない。
 今はプリンセス詩織がお金持ち王国から二つ目の滞在地へ移動しての動画が連日アップされているので、プリンセスが詩織近衛予備隊第一部隊と語り合う光景や第一部隊のパフォーマンスを中心に見せている。
 どの動画を見せるかはチームメンバーで話し合って決めたのだが、ルーシーと俺の意見が合えばそれに決まってしまう、チーム内に格差が有るのは否めない。
 それぞれの資質に差が有るのだから仕方ないことだとは思うが少し残念な気もする。

「それにしてもプリンセスは美しいよね。」
「第一部隊の連中は緊張しながらも会話してる、私達もプリンセスがここへいらした時は会話させて頂けるのかしら?」
「全員とは難しいだろうから代表者になるのではないかな、第一部隊で話してるのはリーダー達だと字幕に出てたろ。」
「そこまで見て無かったわ、そうなるとジョンやルーシーがプリンセスの相手をすることになるのかな?」
「俺としてはルーシーに目立って欲しい、これまで頑張って来たのだから。」
「でも、近衛予備隊のスタートから、さりげなく皆を引っ張ってくれたのはジョンだと思うわ、教官達もジョンを隊長に任命するのではないかしら。」
「ルーシーの言う通りよ、第一部隊の人よりジョンの英語の方が聞き取り易いし。」
「それは、単に慣れてるからだよ、馴染んでると言うか。」
「第一部隊のリーダー達がプリンセスと英語で会話していることを考えても、隊長はジョンが適任だと思う、皆も納得するのではないかしら。」
「隊長にして貰えたら誇らしいことでは有るけど、リーダー論の学習が始まるのだよな。」
「勿論私も手伝うし、私達が手伝いたいと思えることこそがリーダーとしての資質だと思うわ。」
「そうよね、私ではジョンの力に成れないかもだけど。
 ねえ、シャルロットとは上手く行ってるの?」
「まあね。」
「シャルロットと別れて私と付き合うことを考えてみるとか、どう?」
「はは、そんな面倒そうなこと考えたくもないな。」
「長年の付き合いだから飽きるとかないの?」
「そう言うカップルもいるそうだけど俺達には当てはまらないよ。」

 シャルロットと別れる?
 そんなのは有り得ない、毎日会っている彼女には近衛予備隊で学んでいることを伝えている。
 英語だけで会話する日も彼女の希望で増やした。
 そう、可愛いだけでなく頭も良いのだ、俺のシャルロットは。
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近衛予備隊-09 [高校生バトル-43]

 プリンセス詩織からの返信メールは、丁寧に書かれた長文だった。
 俺達のことは近衛隊のメアリーから知らされていたそうで、俺が隊長候補だと言うことやルーシーの車椅子生活だけでなく、他の二人についても触れられていた。

「私達はこれをプリンセス詩織からのメールだと思って良いのよね?」
「ああ、プリンセスならこう返信するだろうと担当者がプリンセスに成り代わって入力してくれたとしても、プリンセスを支えてる人もプリンセスが素敵な女性だと思ってることが伝わって来るだろ。
 ここは素直にプリンセスからのメッセージを喜んでおこうよ。」
「私達が英語での接客を学んでることもメアリーは伝えてくれてたのね。」
「やる気、出た?」
「元々、頑張ってますよ、隣村で働けるのなら町へ行かなくて済むのだから。」
「町に憧れてる派ではなかったの?」
「全然、トラブルに巻き込まれ大怪我をして町から帰って来た親戚は、見舞いに行ったら相手は薬物中毒だったと話しててね、町は犯罪も多いし怖い所だと話してたわ。
 彼は怪我が有る程度治っても農作業出来るまでに回復出来なさそうだから心配なのよ。」
「そんなことが…、その話、教官か近衛の人に話した?」
「話すことでもないでしょ。」
「伝えて置くべきよね、ジョン。」
「ああ、むしろ教えて欲しいのではないかな、彼らは社会的弱者の味方で有ろうと考えてるからね。」
「社会的弱者?」
「大怪我をしたことで経済的にも困っているのだろ?」
「そうね、働いてた会社から少しばかりの見舞金を受け取っただけで、今後親戚一同で支えるにしても、どこも余裕がないからとお父さんは嘆いてた。」
「町で働いてたのなら、何か特技でも有ると良いのだけど、一度会いに行こうか。」
「みんなで?」
「近衛と一緒に村の現状を映像に収める話が出ていただろ、下調べの一環としてどうかな?」
「映像は村の良い所を見せるのだと思ってたわ。」
「いやいや村の宣伝動画ではないからね、ルーシーはどう思う?」
「豊かな国の人達に我が国の現状を知って貰うことは必要だわ、隣村が観光に成功し、この一帯の生活水準を上げることに成功した時、比べて貰う為の記録映像でも有ると教官が話してたのだから…。
 パソコンで外国の情報を得られる様になってから、如何にこの村が遅れているのか思い知らされたよね。」
「だな。」
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近衛予備隊-10 [高校生バトル-43]

 俺達の入隊から四か月、プリンセス詩織は三つ目の滞在地で有る近衛予備隊第二部隊の担当する村で暮らし始めた、この次はここの隣村に滞在予定なので、まだ日は有るものの俺達の緊張感は徐々に高まりつつある。
 プリンセス詩織とメールのやり取りを始めてから、第一部隊、第二部隊ともメールのやり取りを始め、パソコンを利用し顔を見ながらの対話もしている。
 彼らからはプリンセスの話だけでなく、それぞれの村の話を教えて貰っているが、国は違えど似た様な生活水準、お互い英語学習を頑張ってることも有り親しくなった。
 三部隊の中では俺達が一番後発なのだが、彼らは地元の学校に通いながらの訓練なので、俺たち程予備隊での時間を過ごせては無く、分野によっては俺達の方が進んでいる。

「ジョン、さっきの話は全然分からなかったわ。」
「ルーシーは学習してない内容だからな、第一部隊の彼は俺達よりだいぶ年長で三角関数が難しいと話してたから、少し助言をさせて貰ったんだ。」
「三角関数?」
「俺は、途中からだけど大工チームの手伝いをしてるだろ。」
「日本人技師が教官に加わることになってから、その通訳だったわね。」
「彼は大工チームメンバーに色々教えたいそうで、その相談にも乗っていたのだが、結果、彼が教えたいことを俺が学び、俺から連中に伝えるのが一番効率的だと言う結論に至ってさ、その場で通訳しているより速いだろ。」
「確かにそうね、話を聞いての通訳では時間のロスが大きいし、ジョンの知らない単語が出て来たら更に面倒よね、大工メンバーの実力を知ってるジョンなら良い教官に成れると思うわ。」
「そんな事情が有って、教えて貰ったのが測量の基礎と、そこで活用されている三角関数なのさ。
 第一部隊の彼は測量と言うワードは知ってたけど、そこで三角関数が利用されてることを知らなくてね、測量に取り組んで三角関数がどんな使われ方をしてるのかを知ると、理解が深まるかもと話したのさ。」
「良く分からないけど、年長者のリーダーが難しいと言ってることを、ジョンが大工チームに教えると言うことなのね、改めてジョンのことを尊敬するわ。」
「実際に測量を教えるのは三人程度、他の連中には難し過ぎるからな。」
「それで良いの?」
「ああ、日本人技師も家を建てる時は分業制だから、全員が全部の作業をマスターすることを考えなくて良いと言ってたよ。」
「そっか、多くを求められたら投げ出しかねない人もいるものね。」
「これから先は町へ働きに出るか、隣村関連の仕事をするか、その希望によって学習内容が変わるそうで、それだけ隣村の建物は今までこの辺りで建てられていたものとは違うのだけど、隣村関連で働くので有れば当分の間、上手く行けば一生仕事には困らないし、技術を身に付ければ給料も良くなって行くと話してたよ。」
「へ~。」
「実際俺は通訳を始めてから給料が上がったし、大工チームに対して教えてることが評価され、来月から更に給料を上げて貰えることになっているんだ。」
「じゃあ、隊長になったら更に?」
「それは聞いて無いが、日本人技師は今のまま真面目に学習や作業に取り組めたら、もう少しまともな給料を貰える仕事を紹介すると話してくれたよ。」
「彼は私たちの給料をまとまな額だとは思ってないのね。」
「ああ、俺達とは生活水準が全く違うからな。」
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