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原石-01 [飯山美里-05]

私は田川美佐子、桜総合学園芸能部という所謂芸能事務所で働いています。
私が飯山美里と初めて会ったのは一月、過疎の問題と正面から向き合うという親会社の広報からの要請で山の中の町を訪れた時のことです、この時は青白い感じの可愛い子という程度で、強い印象は有りませんでした。
ただその後何度か会う内と言いますか会う度に表情が輝を増す様に感じられまして、あっ、そろそろリポーターとして初めての仕事が始まります、もしもの備えに一人付けて貰ってますから大丈夫だと思いますが…。

『夏休み特別小学生リポーターの美里さん、こんにちは自己紹介して貰えますか。』
「はい、こんにちは、飯山美里小学六年生です、これから夏休みの間、週一回、山間の町での暮らしをリポートさせていただきますので、よろしくお願いします。」
『美里ちゃんは都会からそちらに引っ越したって聞いてるけど大変じゃなかったの?』
「全然大変じゃないです、友達もすぐ出来ましたし、町の人達も良くしてしてくれます、そんな様子をビデオで紹介させていただきますので、どうぞご覧ください。」

出だしは快調、ビデオが終わった後のスタジオからの質問が問題ね。

『美里ちゃん頑張ってるんだね』
「はい、あ…。」

えっ、なんで幼児が美里にくっついているのよ、周りの大人達何してるの…、最悪じゃない…。

「はい、この子は隆くん、私の弟の一人です。」
『美里ちゃんは妹が一人ってさっきのビデオで言ってなかった?』
「ふふ、ここの子達はみ~んな私の妹や弟なんです、隆くん、はいカメラに向かって手を振って。」

す、すごい、初めてなのにアクシデントを軽くかわした…、だけでなく、あの笑顔は…。
カメラを見つめる表情も良かったけど、幼児を見つめる表情はまた優しさに満ち溢れていて…、演技ではなく自然に…。

『隆くんの登場は予定になかったと思うのですが。』
「はい、ごめんなさい、隆くんごめんね、お姉ちゃん今お仕事中なの、ほらお母さんも呼んでるからまた後でね。」

今頃大人達が動き始めたのか…、でもこれは行けるかも…。

『美里ちゃん、有難うね、じゃあまた来週。』
「はい有難う御座いました。」

頭の良い子だとは思っていましたが、予定に無かったことに対する対応力、そして自然な笑顔、私は大変な原石に出会ったのかもしません。
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原石-02 [飯山美里-05]

初仕事の後、すぐにブログの更新をして貰いました。
反響は予想通り、書き込みが増える早さとその内容が人々に与えたインパクトの大きさを示しています。
夜は飯山さんのお宅に集まってのミーティングです。

「横山社長、良いスタートでしたね。」
「ええ、美里ちゃんの笑顔に心を射貫かれた人が続出ですよ、予定外の隆くん登場にも慌てる事なく対応出来る能力の高さ、スポンサー企業からも、お褒めのメールを頂きました、えっと、本日の主役は?」
「夏休みの宿題に取り組んでます、その後は発声などのトレーニング、今日の反省は録画を繰り返し見て済ませて有ります。」
「あんなに上手だったのに反省ですか?」
「美里ちゃんは、子どもにしては上手というのではなく、大人のプロと同じレベルを目指していますからね、でもさすがに今日は先生から沢山褒めて頂けたみたいで、実際、進歩の早さに先生方も驚いてみえます、通信教育でも力の有る子なら伸びるという事の証明になりそうですね。」
「美里ちゃんプロジェクトが次のステップへ行けるという事ですか?」
「ええ、もちろんです、テレビ局もスポンサーも乗り気ですからね、今日の放送を見てテレビCMの打診も来ました。」
「えっ、早過ぎませんか?」
「すでに、先日撮影した映像を編集してあちこちに送っておきましたからね、それと今日の放送を見たら早い者勝ちだと思う人がいても全く不思議では有りません、今なら撮影の条件がここに限る、美里ちゃんを撮りたかったらここまで来て下さい、でも行けると思いますし、それもまた話題性があって面白いと思います、当分の間、美里ちゃんを仕事で都会に行かせない方向性は本社広報部も賛成してくれてます。」
「効率を考えたら、また美里ちゃんがそういった世界で活躍する事を考えたら東京へとなるのでしょうが…。」
「彼女自身はアイドルになるとかスターになるとかはそんなに考えてないみたいです、それより過疎の問題を考えていて、それに取り組むお父さん達の役に立てればと。」
「なんて良い子なんだろう、そんな心のまま育って欲しいですが…。」
「皆そう思っています、だから撮影スタッフをここへ呼びつける事が可能になってるのですよ。」
「ここの広告塔として美里ちゃんを売り出しスポンサーを集めるという話は、初めて聞いた時違和感が有りましたが、こんなに簡単に実現するとは田川チーフマネージャーのお力はさすがです。」
「いえ、このスピードは当初考えていませんでした、すべて彼女の力ですよ。」

実際、他の仕事をしながらと考えてたのが美里のマネージメントに掛かりっきりになってます、スタッフも増やす方向で、これじゃあ私の婚活に影響しかねませんが…、今日はおいしいお酒を頂けましたから良しとします。
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原石-03 [飯山美里-05]

「美里ちゃん、明日は朝から写真撮影、昼食後はイベントに顔を出した後ボイストレーニングと日曜日のイベントの打ち合わせってとこかしら、御免ね、仕事が一気に増えちゃったけど夏休み中じゃないと時間がね。」
「はい大丈夫です、明日のイベントの事はあまり聞いてませんが私は何をすれば良いのですか?」
「受付でにこにこしながら資料を渡してくれればいいわ。」
「それだけですか?」
「ええ、受付だけで充分喜んで頂けると思うの、あまり長時間でない方が貴重な思い出になるのよ。
写真は撮られても平気よね。」
「はい。」
「ボイストレーニングはプロの先生の個人レッスンだから真剣に、練習風景も全部撮影するけど、カメラは一切気にしないで集中して取り組んでね、歌は今でも上手だけどワンランク上げるわよ。」
「はい、個人レッスンして貰えるなんて楽しみです、でもここまで来ていただくなんて先生に悪いですね。」
「それは気にしないで、彼女の方が美里ちゃんに会いたいって、私の知り合いという特権を利用しただけだから、ここは山の中だけど一時間半ぐらいで来れるし、時間が合えばこれからも来て貰うからね。」
「ほんとですか、歌は大好きだから嬉しいです。」
「その内CDデビューかな。」
「そこまでは上手じゃないですよ。」
「あら、アイドルなんて歌がめちゃ下手でもCD出してるのよ、うんそうね、ちょっと相談してみるけど良いわよね、歌手デビュー、もちろんここのイメージソング的なものになると思うけど。」
「良いですけど、CDが全然売れなくても知りませんよ。」
「赤字にはならないと思うし、売り上げの一部はここの為に使いましょう。」
「そう言われても、私はどうすれば…。」
「上手に歌ってくれるだけで良いの、他の事は全部私達に任せてね。」
「はい…。」

もう曲を作る話は進んでいるからボイストレーナーを呼んでる訳ですが、彼女には少しづつ、プレッシャーになり過ぎない様にと考えています。
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原石-04 [飯山美里-05]

二回目の生放送も滑り出し順調、初回よりさらに落ち着いた感じで安心して見ていられます。
ビデオも終わってここからは植林地の間伐についてとなります。

『ところで美里ちゃんは学校生活楽しいですか?』
「はい、とっても、友達は優しいし、皆良い子ばかりなんですよ。」
『そうするとその中には好きな男の子もいたりして。』
「みんな大好きです、鈴木さんが考えてる好きとは違うかもしれませんけど。」
『はは、そうきましたか、ちなみにどんな男性がタイプなの?』
「心が恰好良い人です、それから台本通りに番組を進めてくれる人かな。」
『あ~、まいったな…、美里ちゃん御免ね、ここからは間伐の話だったね。』
「はい、うちの父は慣れない間伐作業を体験して植林地を守る大変さを教えてくれました。」

どういうことだったのかしら、小学生相手にアドリブを入れるなんて、美里だからうまくかわしてるけど、下手したらボロボロになるじゃないの。

『美里ちゃん今日も有難うね、実はこの後のコーナーも美里ちゃんが主役だから見てね。』
「は、はい、有難う御座いました、来週もよろしくお願いします。」

聞いてないんですけど…。

「美里ちゃんお疲れさま。」
「田川さん、ちょっと生意気だったかな、台本通りにって。」
「全然大丈夫よ、上手に乗り切れたと思うわ、まあ、鈴木さんがあんな事言ってたからテレビ見ましょうか。」
「はい。」

『実は先週の美里ちゃんの放送に大きな反響を頂きまして、その一部に幼児の登場は演出なのでは、というのが有りまして、え~、先週見逃した方の為に、このシーンです。』

そうか、大きな反響は聞いてたけど疑う人もいるわけね。

『このシーンは全くのハプニングで、周りの大人達全員が凍り付いたそうです、ちなみに今日の放送も、ビデオの後から、台本通りのくだりまでは全く台本になかった事で、現場スタッフやマネージャーにも知らせてない状態だったのです。
それであの返しですからね、この企画を考えたディレクターのおかげで私が美里ちゃんに嫌われてしまったら土下座じゃすみません、ということで…。』

思い切ったことしたわね、まあ、あのディレクターは美里とも結構話していたから大丈夫という確信があったのでしょうが。
という事はあの映像は今日使うのね。

『本日は美里ちゃん特集という事で次は秘蔵映像です、普段の美里ちゃんの姿をマネージャー協力の元隠し撮りさせて頂きました、どうぞ。』

なかなか上手く自然な感じに編集して有るじゃない、ちっちゃい子の面倒を見る時の顔がめちゃ良いのよこの子、さあ今見てるあなた、惚れて良いわよ。

『如何でしたでしょうか、飯山美里さんは局として全面的に応援させて頂きます、企画としましては…。』

「田川さん何時の間に撮ったのですか?」
「御免ね黙ってて、あなたが普段も素敵な女の子だって事を皆さんに知って頂きたかったの、幼児に向ける最高の笑顔もね、それを何時でも出来る様になると良いのだけど。」
「そうですか…、作り笑いは得意じゃないです。」

美里は少し戸惑っています、それはそうでしょう、虚構の部分は子どもには馴染みにくいとは思います、でも、そういった事も呑み込めたら、この子が望めばですが芸能界でもやっていける素質が有ると思っています。
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原石-05 [飯山美里-05]

放送局はよくやってくれています、少しの反則技も有りましたが、うちの新人リポーターと題して動画サイトにも一連の映像を上げてくれました。
それがじわじわと放送エリア外でも知られる様になってきました。

「田川さん、今の感じなら東京へ出てアイドルとしてやってけるんじゃないですか?」
「そうね、多分あなたが期待する以上の成果を上げるでしょうね。
でも、それは当初の目標からそれてしまうし多分美里も望んでないと思う、周りが無理に押し付けても、彼女を悩ませ苦しめる事にしかならないでしょうね。」
「残念な気もします、あれだけ華の有る子はアイドルを名乗ってる子達の中にもそんなにいませんから。」
「だからここで輝かせるのよ普通とは違った道筋で、あの子がやりたいと思ってる事をしながらね、そう過疎の問題としっかり向き合って社会貢献しながら…、お金の為だけにあの子を消耗させたりしたら私は即クビなんじゃないかしら、うちのお偉いさん方も美里ちゃん大好きだから。」
「それで仕事は原則この地でという事ですか。」
「田舎暮らしでも、こういった仕事が出来るかどうかの実験でもある訳だけど。」
「なるほど、その実験的ドラマの撮影はどうなってるんです?」
「ふふ、実はもう随分撮り終えてるの、自然な演技じゃなく、普段のそのままをさりげなく撮影してるでしょ、彼女の日常が一つのテーマだから、ポイントになる演技力が試される部分は残ってるけど、セリフを少なくしてナレーション中心で行くから撮影自体は無理なく終わると思うわ。
ナレーターも、出来れば本人にやって欲しいけど、完成度が低かったらプロに任せれば良い訳だからね。
無駄な芸人とかを登場させない分撮影クルーに予算を回してるそうだから、良い絵が撮れてるんじゃないかしら。
美里ちゃんの様子を見て、大丈夫そうだったら、ナレーターの練習を始める相談もするけど。」
「彼女なら大丈夫だと思いますよ何でもこなせるタイプの子だから、完成は何時頃ですか?」
「夏休み中に撮影を終わらせて、九月の終わり頃放送の予定。」
「そうすると生出演最終回で宣伝という形ですか。」
「どうかしらね、テレビ局側からは九月以降も何らかの形で番組に係わって欲しいと打診が来てるの、みんなで相談してとなるけど。」
「スーパーローカルアイドルの道を着実に歩き始めてる訳ですね。」
「ふふ、まあね。」

上からは、美里を派手でなくとも、長く過疎の問題をアピールし続けてくれる存在にして欲しいと言われてマネージャーになりましたが、世間の方が地味な活動では許してくれなくなって来てる様です。
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原石-06 [飯山美里-05]

今日は親会社の安藤社長がいらしています。
休みの日には度々婚約者の佐紀さんと飯山家を訪問されてきたそうで、美里とも親しく話しています。

「美里ちゃん、仕事で辛い事とかない?」
「大丈夫です、試練は与えられてますが…。」
「試練って、台本と違うって一件とか?」
「はい、ひどいですよね、こっちは緊張で押しつぶされそうなのに。」
「そうか…、ちょっと裏で手を回しておこうか、俺達の宝物を壊されてはたまらんからな。」
「ふふ、大丈夫です楽しくやってますからご安心を、皆さんが見守っていて下さいますから、でも作り笑いしたり、ちょっと大袈裟に話さないといけないみたいなのです。
だから、全然平気ですより、緊張で押しつぶされそうです、と言った方が良いのかななんて…、気持ち的には嘘ついてるみたいで微妙なのですが。」
「まあ、それは嘘というより冗談だと思えば良いよ、とても緊張してる様には見えなかったからね。
でも、絶対無理はしないでな。」
「はい、心配しないで下さい、もっと忙しくても大丈夫なぐらいです、毎日が充実してますから、この前はボイストレーニングを受けさせていただいて、お仕事させて貰ってなかったら経験できなかったと思います。
後で録画したのを見せて頂いたのですが、自分の声が変わって行くのが良く分かって嬉しかったです、その後も毎日練習していますよ。」
「それは良かった、大人達は欲張りでね、美里ちゃんに色んな事をさせようとしてるだろ。」
「ええ、将来は女優という選択肢も有るって言われてますけど、隆二さんはどう思います?」
「女優か…、良いかもな、美里ちゃんがどんな道を選んでも俺達は応援するからね、な、佐紀。」
「もちろんよ、大変な役目を引き受けて貰ってますからね、ここにホール付きの合宿所が完成したら、演技も歌もダンスも何でも練習出来るわよ、美里ちゃん、ダンスはどう?」
「ダンスはだめです、飛んだり跳ねたりは得意じゃないので。」
「そうね、このままのおしとやかなイメージが良いかもね、うんそうしよう。」
「えっ?」
「美里ちゃんのイメージをね、さっき嘘ついてるみたいでって言ってたけど、より本当の自分に近い形で美里ちゃんの事を見て貰った方が楽でしょ。」
「はい。」
「女優さんになると自分とは全く違う人を演じることも有るけど、今は変に作る必要ないからね、テレビに出る時も。」
「でも、普段の自分よりもっと良い子に見られたいと…、少し演技してます。」
「当たり前でしょ私だって隆二に良く思われたくて頑張ったんだから、その気持ちが成長に繋がるのよ。」
「あっ、結婚式の準備は進んでるのですか、佐紀さんの花嫁姿見たいなぁ~。」
「ええ、色々とね、で、私の晴れ舞台ほんとに見たい?」
「もちろんです。」
「私も美里ちゃんが披露宴に来てくれたら嬉しいのだけど、一つ問題が有ってね。」
「ふふ、無理にお願いはしませんよ、親戚でもないですから。」
「ほんとに来て欲しいの、ただね美里ちゃんにとっては、お仕事みたいな事になってしまいそうなのよ。
私達の披露宴はその映像をね、遠藤っていう私達の仲間が…、色々仕事でも使おうって考えてるのよ、美里ちゃんが来てくれたら嬉しいけど、注目の的になってしまっても良い?」
「ブログでは、もっと活躍して下さいってコメントも沢山いただいてますから、それなりの覚悟は出来てます、でも一人だと心細いかも。」
「一人にする訳ないでしょ、衣装も私が選ぶからお願いして良いかな。」
「はい、父と相談してからですけど。」
「佐紀より輝いても良いからね。」
「ふふ、隆二さん、それは無理ですよ、佐紀さんただでさえお綺麗なんだから。」
「う~ん、佐紀、美里ちゃんはもう大人の気遣いまで覚えてしまった様だな。」
「そのようね。」
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原石-07 [飯山美里-05]

ここまでの各イベントは概ね成功と言えるでしょう。
どれも規模は大きく有りませんがショー的なイベントだけでなく、体験型、学習型とどのイベントに参加された方にも喜んで頂けたようです。
ただ美里は結果に若干の不安も有る様です。

「田川さん、ちゃんと過疎の問題、来て下さった方に伝わってますか。」
「そうね、美里ちゃんの気持ちはちゃんと伝わってると思うわよ、程度は人それぞれだろうけど、ですよね、横山社長。」
「そうだね、美里ちゃん焦らないでな、まずはこの地に親しみを覚えてくれる人が増える事が大切なんだ、そんな人達の中から間伐を経験してみたいとか、素人の手で家を建てる、とかの企画に参加したいという人が少しづつ出始めてるからね。」
「簡単ではないですよね、越して来るとしたら、お仕事の問題もあるし。」
「でも越して来なくても支援は出来るんだよ、ここで物を買ったり、食事をしたりという事だけでも、ここで暮らす人の収入を増やす事になるからね、美里ちゃんも頂いたギャラはここで使ってね。」
「でも私は欲しい物余りないし、最近やたらプレゼントを頂いてますし…。」
「美里ちゃんへのプレゼントは感謝の表れというのも多いからね。
番組で着てくれた服は、うちのグループ会社の商品でね、お店では美里ちゃんが着てた服に興味の有るお客さんも増えてるそうだよ、番組で紹介してくれた商品も通販での売り上げが伸びて来てる。
美里ちゃんの普段の姿に感動したという声も沢山頂いてる。
そんな人達が美里ちゃんを通して過疎の問題に触れてくれたら、すばらしい第一歩なのさ。」
「でも限界集落とか廃村の事は…、調べて行く中で出会ったけど、ここはまだ恵まれているのかなって…。」
「ああ、その通りだね、これからは他の過疎地にも目を向けて頂く様に考えているよ。
確かに色々な問題が有るけど、都会で高い家賃を払って暮らして、満員電車で通勤してる人の中には別の選択肢を求めている人も、少ないながらもいるからね。
だから番組でも、今後も田舎の色々な現状を取り上げてくれる事になってる。」
「そうですか、でも私の担当は後二回で内容も決まってるから…。」
「その予定だったけど、局からは九月以降も続けて欲しいという打診が有ったの、形は少し変わるわ、他の過疎地の紹介を入れたりとかね、美里ちゃんどうかな、続けてくれる?」
「田川さん、私で良ければやります。」
「ただね、大人達は美里に過疎化を考えるシンボルになって欲しいと考えているの、今まではこの地のスーパーローカルアイドルになって貰おうって感覚だったのが、少し守備範囲が広がるって事かしら。」
「それは…、私がお役に立てるのなら…、今までも過疎地の中でここだけを目だ立たせてる事が、他の土地の方に申し訳ない気もしてましたから。」
「いかんなあ、美里ちゃんちょっと真面目に考えすぎだよ、もっと肩の力を抜いてな。」
「そうよ、それじゃあテレビ見てる人達も楽しく無いわ、楽しくなかったら魅力は半減してしまうの、美里も田舎もね、そんな訳でCDデビューに向けても頑張ってね、決まったから。」
「え~、でも私が歌っても…。」
「CDの売り上げなんて気にしなくて良いのよ、それより話題性ね、とっても素敵な女の子が過疎の問題を語りながら…、歌手としてかアイドルとしてかは今後の相談だけど、とにかく美里ちゃんが目立てば過疎の田舎に人の目が行くって事になるのよ。」
「そうなのですか…。」
「美里ちゃんは目標とする所をきちんと考えてくれているから、美里ちゃんが大人達を動かしたのよ、お願いね。」
「はい。」
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原石-08 [飯山美里-05]

美里をすべての過疎地のシンボル的存在にというのは難しい側面が有ります。
交通の不便な他の過疎地まで彼女に行って貰うというのは負担が多すぎて無理が有ります。
より深刻な土地ほどここから遠いですし。

「九月からは、遠くの過疎地の事も積極的に取り上げて行く事になったわ、美里ちゃんは資料を見て解説したり、感想を話したりという形で基本録画になるけど、どうかな。」
「録画ならじっくり出来ますね、平日の昼間は時間が限られると思いますけど撮影は大丈夫ですか?」
「台本と、画像を先に見ておいてとなるかな、一度に何週分も撮るから覚悟しといてね。」
「はい。」
「後、比較的近い所はドライブ気分で現地へ出かけても良いけどどうかしら?」
「そうですね、ここに越して来てから色々有って遠くに出かけてないから悪くないです。」
「じゃあ、お父さまとも相談してみるわね。」
「ねえ田川さん、ふと思ったのだけど過疎の問題とかを紹介するのって普通大人でしょ、子どもの私でほんとに良いのかな。」
「ふふ、深刻な問題を暗い顔したおじさんが話してても楽しくないでしょ。
楽しくない話題だから人は見ない、ならばせめて解説は可愛い小学生にしてみようとなったのよ。
しかも美里ちゃんは、過疎の問題を随分調べていて知識も有るから、大人としても楽なのよ。
おバカキャラを探すのは簡単だけど、知性派は簡単に見つからないと思うしね。」
「知性派って言っても私は、田舎の小学校の優等生ってだけだから、大した事ないですよ。」
「もっと自信持ちなさい、あなたはここに越して来てから大勢の人達と交流して来たでしょ、町の人だけでなく大学生や会社関係テレビ局関係とか、うちの大社長とも親交が有るし、そんな優等生は都会でもそんなにいないわよ。
単なるガリ勉の優等生なんて私は興味ないわ、美里ちゃんだからチーフマネージャーやってるのよ。」
「う~ん、ここで良い経験をさせて頂いてると父が話していたのは、そういう事だったのかしら。」
「そうよ、そして素敵な女性になってね。」
「はい。」

もうすでに素敵な女の子、この子がこれからどう成長して行くのか楽しみで仕方有りません。
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原石-09 [飯山美里-05]

夏休みの終わり頃は少しハードな事になってしまいました。
九月以降の展開に向けて撮影などの作業も増えましたし、学校の授業が始まると時間的制約が大きくなりますからそれまでに進めておきたい訳で。
そんな関係も有って、今回は美里にとっては久しぶりの都会となりました、スタジオできちんと撮影や録音をしたいという要請を受けての事ですが目的は他にも有ります。

「美里ちゃん、久しぶりの都会はどう?」
「相変わらず車が多過ぎて走ってる時間より信号待ちの時間の方が長いくらいですね。」
「こっちに住んでた頃は買い物とかでこの辺りに来てたの?」
「たまにです、妹は人込みを嫌がってましたから。」
「そっか、詩織ちゃんは元々都会に馴染めてなかったのかな。」
「でも住んでた所は住宅街だったので、う~ん引っ越してからの方が明るくなったから田舎暮らしが合ってるのか、あっ、私もかな…。」
「そうね、初めて会った時とは比べ物にならないくらい成長したわね。」
「でも、まだまだですよね、もっと頑張らなくちゃ。」
「無理はしないでね、今日はナレーションの録音がメインだけど練習通りに出来たら問題ないからね。
後は色んな人と会って話す事になると思うけど普段通りでお願いね、相手が誰であろうと安藤社長より下の立場の人ばかりだから気楽に、美里ちゃんの気に入らない人がいたら安藤社長に報告する様に言われてるから教えてね。」
「そんな告げ口みたいな事嫌です。」
「そうね、じゃあ相手が大人でも間違ってると思ったらはっきり言ってあげてね、それに対して反論して頂けたらまた勉強にもなるし、大人だからって必ずしも正しい理解が出来ているとも限らないと考えて欲しいかな。」
「新たな課題ですか?」
「そうよ、でも例え今日あなたが判断ミスしてもすぐフォロー出来る体制に有るから心配しないで。
というより、今の内に沢山のミスをしておいて欲しいかな、ほんとは小学生に経験させる様な事じゃ無いのだけど、美里ちゃんの事が大好きな大人達が相談しての結論。
ふふ、安藤社長は何か企んでるみたいだから、今度会った時には欲しい物おねだりしても…、って、欲しがらないか。」
「特に欲しいものが有ったら父が買ってくれますから、隆二さん何かお考えが有るのですね、おねだりは、そのお考えを教えていただく事かな、でも結婚式も控えてるからなかなか、お会い出来ないでしょうね。」
「会社も随分安定して来たから、そうでもないかもよ。」

美里は沢山の大人と接して来たからか話し方も大人びていますが、その上に相手の意見を真面目に受け止めながら、自分の考えをきちんと話せる力も身に付けて欲しいと考えています。
私達は可愛い外見だけでこの子を世に送り出して行こうとは考えていないのです。
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原石-10 [飯山美里-05]

夕方の情報番組では週に一回の企画として美里を前面に出して過疎問題を掘り下げて行く事になりました。
その企画会議に彼女を参加させる事には賛否が有りましたが、反対しても上からの指示には逆らえない訳です。

「流れとしては、この先消滅するであろう限界集落の現状を悲しげに紹介すると言う方向でいいですよね。」
「そうね、絵的にも寂しげな雰囲気をかもしだして同情を引けば良い企画になりますね、あっ、美里ちゃんどうぞ。」
「はい、私は限界集落で暮らしてる方と直接お話しさせていただいた事は有りません、でも悲しげにというのはどうでしょう、そこで暮らしてる方々には私達には分からない想いが有るかもしれません、それは悲しさ寂しさだけではないと思うのです、その地で暮らしていらっしゃるのですから。
それと限界集落、廃村になるかもしれないという事ばかりを前面に出してしまっては田舎暮らしの良さが都会の人に伝わらないと思うのです。
私達が気付いてない楽しみが有るかもしれません、それを見つけてお伝えさせていただくのが私達の役目ではないでしょうか、過疎地には交通渋滞でイライラしてる人はいないのです。」
「はは、間違いないな、私達はほとんど消えかかっている過疎地の希望を、美里ちゃんと一緒に作り出そうとしている訳だから、光の部分を探す必要が有るということなんだね。」
「はい、もちろん寂しさもお伝えしなくては行けませんが、バランスよくお伝えさせていただければと思うのです。」
「先入観なしでの取材が大切ね、その結果として光の部分が少なかったとしたら探さないとだめかも。」
「そうだよな、どうしてこんな不便な所に住んでるんだろうと思う事有るけど、住めば都なのか引っ越すあてがないのか我々には分からないもんな、美里ちゃんはどう思う?」
「住み慣れた所から離れたくない人も多いみたいです、先祖代々受け継いで来た土地を守って行きたいと考えているお年寄りの中には、逆に便利な都会暮らしのお子さん方と暮らしたら自分のやる事がなくなってボケてしまうと考えておられる方もみえます。
田舎だから畑仕事も出来る、うちでは良く野菜を頂きますが、下さる方々は皆さん嬉しそうに、おいしいいトマトが実ったから食べてね、という感じで…、そうですね誇らしげというか。」
「美里ちゃんに食べて貰えたら嬉しいだろうな。」
「取材先まで美里ちゃんに同行して貰う事は難しいけど、テレビ電話で対話して頂くってどうかしら、これからは放送エリア外ばかりでの取材になるから美里ちゃんの事知ってる人はいないけど、美里ちゃんとの対話なら、違った表情を引き出せる気がするのよ。」
「あっ、面白いかも、美里ちゃん、どう?」
「時間が合えばやりたいです、解説や紹介をする時の参考にもなりますから。」
「ではその方向でスケジュール調整もしていきます。」

ほんとに期待を裏切らない子です、でもまだ小学生、中学高校と経験を重ねたらどれだけ光輝く事か、その輝きが過疎地の希望の光となってくれる事を願うばかりです。
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