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原石-01 [飯山美里-05]

私は田川美佐子、桜総合学園芸能部という所謂芸能事務所で働いています。
私が飯山美里と初めて会ったのは一月、過疎の問題と正面から向き合うという親会社の広報からの要請で山の中の町を訪れた時のことです、この時は青白い感じの可愛い子という程度で、強い印象は有りませんでした。
ただその後何度か会う内と言いますか会う度に表情が輝を増す様に感じられまして、あっ、そろそろリポーターとして初めての仕事が始まります、もしもの備えに一人付けて貰ってますから大丈夫だと思いますが…。

『夏休み特別小学生リポーターの美里さん、こんにちは自己紹介して貰えますか。』
「はい、こんにちは、飯山美里小学六年生です、これから夏休みの間、週一回、山間の町での暮らしをリポートさせていただきますので、よろしくお願いします。」
『美里ちゃんは都会からそちらに引っ越したって聞いてるけど大変じゃなかったの?』
「全然大変じゃないです、友達もすぐ出来ましたし、町の人達も良くしてしてくれます、そんな様子をビデオで紹介させていただきますので、どうぞご覧ください。」

出だしは快調、ビデオが終わった後のスタジオからの質問が問題ね。

『美里ちゃん頑張ってるんだね』
「はい、あ…。」

えっ、なんで幼児が美里にくっついているのよ、周りの大人達何してるの…、最悪じゃない…。

「はい、この子は隆くん、私の弟の一人です。」
『美里ちゃんは妹が一人ってさっきのビデオで言ってなかった?』
「ふふ、ここの子達はみ~んな私の妹や弟なんです、隆くん、はいカメラに向かって手を振って。」

す、すごい、初めてなのにアクシデントを軽くかわした…、だけでなく、あの笑顔は…。
カメラを見つめる表情も良かったけど、幼児を見つめる表情はまた優しさに満ち溢れていて…、演技ではなく自然に…。

『隆くんの登場は予定になかったと思うのですが。』
「はい、ごめんなさい、隆くんごめんね、お姉ちゃん今お仕事中なの、ほらお母さんも呼んでるからまた後でね。」

今頃大人達が動き始めたのか…、でもこれは行けるかも…。

『美里ちゃん、有難うね、じゃあまた来週。』
「はい有難う御座いました。」

頭の良い子だとは思っていましたが、予定に無かったことに対する対応力、そして自然な笑顔、私は大変な原石に出会ったのかもしません。
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