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原石-10 [飯山美里-05]

夕方の情報番組では週に一回の企画として美里を前面に出して過疎問題を掘り下げて行く事になりました。
その企画会議に彼女を参加させる事には賛否が有りましたが、反対しても上からの指示には逆らえない訳です。

「流れとしては、この先消滅するであろう限界集落の現状を悲しげに紹介すると言う方向でいいですよね。」
「そうね、絵的にも寂しげな雰囲気をかもしだして同情を引けば良い企画になりますね、あっ、美里ちゃんどうぞ。」
「はい、私は限界集落で暮らしてる方と直接お話しさせていただいた事は有りません、でも悲しげにというのはどうでしょう、そこで暮らしてる方々には私達には分からない想いが有るかもしれません、それは悲しさ寂しさだけではないと思うのです、その地で暮らしていらっしゃるのですから。
それと限界集落、廃村になるかもしれないという事ばかりを前面に出してしまっては田舎暮らしの良さが都会の人に伝わらないと思うのです。
私達が気付いてない楽しみが有るかもしれません、それを見つけてお伝えさせていただくのが私達の役目ではないでしょうか、過疎地には交通渋滞でイライラしてる人はいないのです。」
「はは、間違いないな、私達はほとんど消えかかっている過疎地の希望を、美里ちゃんと一緒に作り出そうとしている訳だから、光の部分を探す必要が有るということなんだね。」
「はい、もちろん寂しさもお伝えしなくては行けませんが、バランスよくお伝えさせていただければと思うのです。」
「先入観なしでの取材が大切ね、その結果として光の部分が少なかったとしたら探さないとだめかも。」
「そうだよな、どうしてこんな不便な所に住んでるんだろうと思う事有るけど、住めば都なのか引っ越すあてがないのか我々には分からないもんな、美里ちゃんはどう思う?」
「住み慣れた所から離れたくない人も多いみたいです、先祖代々受け継いで来た土地を守って行きたいと考えているお年寄りの中には、逆に便利な都会暮らしのお子さん方と暮らしたら自分のやる事がなくなってボケてしまうと考えておられる方もみえます。
田舎だから畑仕事も出来る、うちでは良く野菜を頂きますが、下さる方々は皆さん嬉しそうに、おいしいいトマトが実ったから食べてね、という感じで…、そうですね誇らしげというか。」
「美里ちゃんに食べて貰えたら嬉しいだろうな。」
「取材先まで美里ちゃんに同行して貰う事は難しいけど、テレビ電話で対話して頂くってどうかしら、これからは放送エリア外ばかりでの取材になるから美里ちゃんの事知ってる人はいないけど、美里ちゃんとの対話なら、違った表情を引き出せる気がするのよ。」
「あっ、面白いかも、美里ちゃん、どう?」
「時間が合えばやりたいです、解説や紹介をする時の参考にもなりますから。」
「ではその方向でスケジュール調整もしていきます。」

ほんとに期待を裏切らない子です、でもまだ小学生、中学高校と経験を重ねたらどれだけ光輝く事か、その輝きが過疎地の希望の光となってくれる事を願うばかりです。
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