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31-成長 [岩崎雄太-04]

大きな初期投資の区切りと共に、株式会社岩崎の社長は佐藤に引き継がれた。
雄太は会長職に。
その後トラブルも多少有ったが、会社は順調に売り上げを伸ばしている。
初期には考えもしなかった株主配当を考えるまでに。

「会長、初期投資が実って売り上げは右肩上がりですが、株主に対する配当はどう考えれば良いのでしょうか?」
「佐藤さん、配当に回せる金が有ったら会社の規模拡大に使って下さい、そろそろ第二の拠点を、学生達が基礎を作ってくれている村にも予算を多めに回しましょう。
ここでの取り組みが企業イメージを大きく上げて、グループ企業の売り上げも伸びています、さらなる投資も可能です、立ち止まらず拡大して行きましょう。」
「はい、では林業チームを増強して二チーム体制に、向こうは独身者を中心に組みます。
生活サポートは学生達とも相談して…、婚活も進めます。」
「その方向でいきましょう、すでに世間に対してインパクトは与えていると思いますが、全国の過疎地を変えるぐらいの気持ちで進んで下さい。
都会で稼いで田舎に投資という形は、これからも続けて行きますから。」
「ほんとは、都会で再投資した方が効率が良いのでは有りませんか?」
「はは、そのレベルの事はちゃんとやってますよ、そこが上手く行ってるから田舎への投資が増やせるのです、でも佐藤さんがしっかり皆さんを引っ張って下さった事によって随分効率が良かったと思っています、これから他県に支社が出来ても社長としてお願いします。」
「はい、この会社をどこまで成長させる事が出来るかが岩崎家の挑戦でしたね。
私達社員は、石垣となり城となって殿の国を広げていきます。」
「はは、殿じゃないですよ。」
「いえ、最近皆で相談しているのは、社有地全体を領地に見立て半独立国として広さをアピール、会長を殿さまとして、国民である所の社員とその家族の人数を公表、会長関連の会社でも同意してくれたところは国民の人数に入れるという形、イメージ戦略として如何でしょう?」
「そうだな、いっそ親父を殿さまにすれば、国民は家族も含めると…、三十万人ぐらいになるかな、ここは、その内の藩の一つ面積は一番広い。」
「ではそれも検討してみます、他の財閥、お金持ちに刺激を与える事が目的の一つですから。
殿さまと国王、どちらが良いですか?」
「親父とも相談してみますが、国名はどうします?」
「それは殿の意のままに。」
「はは、酒の席の話題に調度良いかな、近い内に会議を開きましょう、案はこちらでも用意しますが、佐藤さんの方でもお願いします。」
「はい、会議の日程調整など進めさせて頂きます。」
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32-企業努力 [岩崎雄太-04]

九万人のグループ企業社員全員に、岩崎家当主を含む三代の名によるメールが届いた。
この形のメールは株式会社岩崎立ち上げ以来しばしば送られている。
給与体系改革、労働環境改善に関する事や、株式会社岩崎への思いなど。
嬉しい内容が多かった事も有って真面目に読む社員も多い。

「ねえ、メール読んだ? 岩崎家からの。」
「ああ、ただのお遊びだけど目的が明確だから応援するしかないな。」
「基幹企業の社長がお殿さまなら、うちの社長は藩主ってとこかしら。」
「そこまで踏み込んだ話ではなかったけど…、会社のイメージアップに繋げたい。
岩崎村の発展にはグループ企業全社が協力している、村へ遊びに行った時思ったのは、企業が本気を出せば廃村が簡単に蘇るという事、次の拠点は日帰り出来るくらいの所だから楽しみだよ。」
「イメージアップなら、新商品のパッケージにイケメン若殿様がらみのデザインとか使えないかしら。」
「そうだな、うちだけでなくグループ企業統一キャラが有っても良いな。」
「すぐに提案メール送るわ。」
「それでうちの企業グループにさらなる注目が集まると良いが。」
「この前の番組では下請けに優しくなったと特集を組んでたわね。」
「俺も見たよ、過去にはかなり無理強いしてたのを、従業員の給与アップを条件に単価を上げた、その分高級品中心に商品価格を値上げしたけど、殿と若殿が労働環境改善と内需拡大を目指しての値上げだと言い切ったお陰か、売上高は思った程下がらなかったのだよな。」
「下請けにも優しいという事で企業イメージは良くなってるのよね、あっ、下請けも国民の数に入れたらもっとインパクトを与える事が出来ないかしら。」
「う~ん、国民の人数より株式会社岩崎の所有する土地の広さで充分な気がする、人数は元々多い訳なんだし。」
「そうか、でも下請けにも企業グループの一員という気持ちが生まれないかしら、そしたら買い物の時にグループ企業関連の商品を優先的に購入するとか、消費行動がうちにとって有利な方向へ動かないかな。」
「それは否定出来ない、給料が上がった訳だし。」
「これも、提案しておくわ、収入が少なければ安い物にしか目が行かなくなる、でも給料が増えれば、選択肢が増えるのよね、良い物を長く使うという感覚を持って貰えればうちの売り上げがさらに伸びるかも。」
「ライバル企業がどう出るかだな、企業イメージでかなり差を付けたのは調査ではっきりしてる、日本再生を大きな目標に掲げグループ企業全体で改革を進めて来た成果だ、面白いのは改革関連で増えた出費が売り上げの増加でかなり回収出来てる事だな。
このまま他社が社員に対する企業努力を怠ったままならどうなるのかな。」
「ふふ、企業努力って、値上げせずに済む様に企業努力してますって感じだったでしょ、でもそれは社員の負担を大きくするだけだって、若殿様は断言して見えたわね。」
「そうだな…、若殿は次のグループ総裁と誰もが思っているけど、もっと大きい人なのかもしれない。」
「原点は岩崎村か、今度行ってみようかな、田舎暮らしも悪くないかも。」
「移住は我慢した方が良い、お洒落な店でのショッピングとかはしずらくなるぞ。」
「そういった事に拘りは無い方ですからご心配なく、人混みが好きな訳でも無いから人生の選択肢として有りよね。」
「いや、それはまずい、俺の仕事が増えるだろ。」
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33-客 [岩崎雄太-04]

雄太の知名度は随分上がっている。
学生時代に起業し成功させた事で名は知られていたが、株式会社岩崎関連でさらに有名になった。
イケメン青年社長はテレビ局としても使いたい存在。
有る番組では。

「岩崎さんは、今度、お父上の会社でもさらなる要職に就かれるとか。」
「はい、ここまでの改革が概ね成功していますから、次の展開に向けてです。」
「労働環境を随分改善されたのですね。」
「ええ、時間は掛かりましたが、非正規を中心に待遇改善しました。」
「人件費が増える事に反対はなかったのですか?」
「もちろん有りました、でも伊藤さん、企業にとって労働者とは何だと思いますか?」
「労働によって企業に利益をもたらす存在でしょうか。」
「そうですね、でも、労働者はお客様でも有るのですよ。
不満を抱えて仕事していたら他社の商品を購入し、うちのグループ企業の製品を避けるかもしれません。
給料が少なければ、消費が限られます。
この国の企業は今まで人件費を抑える事に夢中になるあまり、お客さんの購買力を落として来たのです。
内需が伸びない原因ですね。
派遣社員の比率を上げる事に頑張って来た人の息子が、非正規の道しかなく低収入という例も有りました。
うちでは派遣社員をなくす方向で進めています、グループ企業各社の事情も考慮しつつですが、随分進んでいます。」
「人件費が増えて会社としてどうですか?」
「一部は商品価格を上げさせて頂きましたが、十億の純利益を五億に減らしても良いとの指令を出しています。
会社は、社員の為の物でも有りますから、その為の改革をさらに推し進めるのがこれからの私の役目です。」
「利益を減らしも良いとは、今までの常識を覆す事ですが、さらにというのはどういう事ですか?」
「役員報酬を減らします。」
「それでは有能な方が他社へ流出とかになりませんか?」
「それも推奨しています、力が有っても上が詰まっていて昇進のチャンスが無かった人にも活躍して欲しいですからね。
喧嘩別れする訳では有りませんから…、役員クラスとは色々な話をしているのですよ。
高額な報酬を提示してくる会社へ転職してその会社を改善するという事を考えて欲しい、その延長でうちのグループとも良好な関係を築いて行ければ、日本経済にとってプラスになるとか。」
「その発想の大きさが、株式会社岩崎の成功に繋がったのですね。」
「いえ、まだ成功と呼べるレベルでは有りません、色々な人の協力有って形は出来て来ましたが、日本中に過疎地がどれ程有るかご存知ですか?」
「あっ、そうですね、それでも岩崎村は…、えっ、日本中の過疎地を何とかしようとお考えなのですか?」
「時間は掛かるでしょうが都市部から過疎地へのお金の流れは今後も強化して行きたいと考えています。
色々な方にご協力頂いていまして、例えば岩崎村の観光は…。」
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34-観光 [岩崎雄太-04]

岩崎村に於ける観光拠点の一つは洋蘭やブーゲンビリアなどを中心とした大温室、一年中綺麗な花が咲き誇る。
生産施設で花を咲かせた洋蘭などの販売も。
併設のレストランでは一流シェフの料理が堪能できる。
ヘリで村まで来る様な富裕層の客もいるから成り立つ事だ。
そんな客の宿泊は森の中のコテージ、一般客が入れない立ち入り制限エリアを設け、客と従業員以外は入れない。
最上級のコテージは他の宿泊客と顔を合わせる事無く自然の風景を堪能できる。
有名人向けに隠れ家的な環境を整えた訳だ。
ヘリポートから送迎の車に乗り込んでコテージまで直行し、そのまま何日か過ごすという著名人もいる。

「明香、隠れ家コテージはうまく行ってる様だな。」
「ええ、一旦制限エリアへ入れば、お世話係以外の人と会う事もないし、口コミで広がって予約で一杯よ。
一昨日は蘭を五十鉢ぐらいまとめ買いして知り合いへの宅配を依頼して下さった方がみえたわ。
宿泊その他を合わせれば、売り上げはご夫婦で百万を越したみたい。」
「そんな方々のプライバシーが守られる体制は大丈夫かな。」
「そこは厳しくトレーニングして貰ったけど、実際の所、担当者達は売り上げの大きさに気合いを入れ直していて、会社に貢献できる喜びを語って下さったわ。」
「そういう人なら、お客様に失礼もないだろうね、他のコテージはどう?」
「予約で一杯とまでは行かないけど充分黒字にはなってるわ。」
「じゃあもう少し宣伝して来るよ。」
「隠れ家コテージもだけど、どういう宣伝してるの?」
「取引先関係の人と話しをしてると岩崎村の話題になる事が多くてね、その話の中で自分は大した金持ちでは無いから、過疎地へ貢献なんて出来ないって言う人が多いんだ。
それで、村のコテージに泊まって下さるだけで過疎地への貢献になります、と話しているのさ。」
「社会貢献のつもりで…、だから高い蘭も良く売れてるのね。」
「ああ、そうだと思う、我々はそれで得た利益を拡大へ向けての投資に回せば良い。」
「そうね、でも隠れ家コテージは利益率高いけど、増やすだけの需要は微妙よね。」
「次に宿泊関係を作るとしたら町に近い所にホテルかな、そうそう、隠れ家コテージを体験した作曲家からここに別荘を建てる事は可能かと聞かれた。」
「どうするの?」
「たまにしか使わない別荘は建てられないと答えたら、住民票を移して住むのならとか、佐藤社長とも相談して貰っているよ。」
「土地付きで家を建てて売るの?」
「そうだね社員じゃないが村民になるのかな、住民票を移してくれたらこの地の税収が増える、うちとしても建物の代金だけでなく、色々売り上げに貢献して貰えるだろう。」
「別荘は今後も建てない方向?」
「別荘は祐樹達の所だけだ、あそこは祐樹達のいない時もフルに活用しているからね。
たまにしか使われない様な別荘が有っても、売り上げには大して貢献しないだろ。」
「そうね、空き家同然の建物を増やしても一時的な収入にしかならない、欲しいのは継続的な収入源よね。」
「その意味では、あの作曲家が移住してくれればそれなりに、ヒット曲も多いからかなりのお金持ち、良いお客さんになって下さるだろうな。」
「良い形でまとまって欲しいわね。」
「ああ。」
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35-株 [岩崎雄太-04]

岩崎村の小さな集落跡を整備して豪邸が建てられた、有名作曲家の為だ。
そこへの道路入口には門が作られた、門から建物までは一キロほど。
周辺の森も彼が一括で買い取ったが、管理はすべて株式会社岩崎が請け負う。
会社設立以来始めて社有地を減らしたが、その対価は大きなものとなり次への投資に充てられた。
落ち着いた所で雄太が訪問。

「ここでの生活は如何ですか?」
「ああ、越して来て良かったよ、会いたくもない連中はここまで来る労力を惜しんでか来ないからね。
仕事はネット環境が有るから問題ないし、お宅の社員もきっちり仕事をしてくれて家内も喜んでるよ。」
「しかし、遊びの幅が限られてとか有りませんか?」
「いや、むしろ余計な付き合いから解放されてのんびり出来てる。」
「うちとしても、ここを高く購入して頂いたお陰で、第二の拠点の整備が進んでいます、有難う御座いました。」
「いや~、使い方が良く分からずに金を貯めていたが、お金を回さないと社会が停滞する、との岩崎さんの言葉がきっかけなんだ、人が普通に生きて行くのに必要な金額を大きく超えて稼ぎ、贅沢して来たが、これからは社会の事も考えるよ。
しかし、岩崎さんは私などが足元にも及ばない様な資産家でしょ、その割に派手な生活はされてないそうで。」
「確かに株は沢山持っています、グループ企業の株がほとんどですが、これは立場上売る訳には行きません、配当も基本的にグループ企業の株購入に充てています。
私が親父の会社で大きな顔が出来るのは、この株のおかげです、親父もお爺さまも私の考えに賛成して下さっていますから荒療治が出来ました、三人の持ち株を合わせれば株主総会で反対出来る人はいませんからね。
半面、自分の報酬は極端に低くしました、ですから使えるお金は大した事ないのですよ、妻も贅沢を好む人ではないので何の問題も有りません。」
「そうですか、創業家一族というと贅沢できらびやかな生活を送っていると思っていましたが。」
「他の親族はそうです、だからお爺さまは遺産を私にと考えて下さっています。
今の所は、お持ちの資金を配当を出さない株式会社岩崎の株に変えるという形ですが。」
「それで、岩崎村はここまでになったのですね。」
「まだこれからです、全国の過疎地、廃村で土地を安くても良いから手放したいという人から、買い求めて再生して行くプランを検討しています、資金が無限に有る訳では有りませんので、ある程度まとった土地へ集中投資しての再生と考えています。
都市部への人口集中の流れを止めないと、この国の歪は大きくなるばかりですからね。」
「私も協力して行くよ。」
「ここを高く購入して頂いただけでも有難いですが…、都会暮らしをやめて田舎暮らしをしたくなるような歌とかどうでしょう?」
「そうだな、知り合いの作詞家や歌手にも打診してみるかな…。
う~ん…、それならもっと幅広い形で若者たちに問いかける、そんな企画を知り合いにちょっと振ってみようか、岩崎さんの所に費用負担が無いように、ロケ地としてや作品の舞台となるような形でアピール、ここはまだ人を増やしているよね。」
「はい、林業、農業、観光以外の職種も増やしています、今開発中の集落はすべて住宅にする予定です。」
「上手く行けば、若年層の意識改革が出来るかもしれない、過密の都会を選ぶか過疎の村を選ぶか、実際若者全員が都会志向でもないからな。」
「田舎に良い職場が有れば問題ないですよね、協力お願いします。」
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36-企画 [岩崎雄太-04]

しばらくして立ち上がったプロジェクトの中心メンバーになったのは冬坂浩二だ。
彼は岩崎村に関心は有ったものの、自分が直接関わる事は考えてなかった。
きっかけを作ったのは岩崎村に移住した作曲家。
誘われて岩崎村を訪問し、雄太とも話をした。
さらに自分で調べて行く内に、雄太が本当にこの国を変えようと考えている事を確信する。
その手助けをする事はエンターテイメントの世界で成功した自分の次なるステップとして面白い挑戦と思えた。

「冬坂さん、お世話になります。」
「いえ、こちらこそです岩崎さん、田舎を盛り上げましょう。
それで、色々考えたのですが、まずは過疎地に人の注目を集める、特に若年層をターゲットにしたいと思います。」
「若年層ですか、岩崎村はどちらかと言うと中高年にターゲットを絞って来ましたが。」
「それでは若い住人を増やすパワーが弱く有りませんか。」
「ええ、ただ多くの若者にとって魅力的な環境ではないと思っています、観光地としては。」
「それは否定しませんが、少数ながら自然の中で遊んでいる若者もいます。
岩崎村と学生村以外に手に入れた土地は有りますか?」
「六ケ所有りますが、どう開発して行くか検討している段階です、北海道から九州までバラバラですので。」
「では、そこの開発はテレビの番組企画として始めませんか、タレントが村を作る番組は有りますが、一歩踏み込んで視聴者の参加も考えています。
若者が参加したくなる様な芸能人を六グループ組んで競い合って貰えば面白くなりますよ。
どのグループがどんな工夫をして村を開拓して行くか、時には人気アイドルが差し入れに行ったりとか企画は色々考えています。
芸能人のギャラと基本的な費用は番組制作費から出させますが、その他の費用を集める事も番組の一部として競わせます。
地道に寄付活動を行うかスポンサーを見つけることが出来るかどうか、何にしても岩崎家だけが過疎地にお金を回している現状から広げる事が出来るかもしれません。
サブタイトルは目指せ岩崎村にします、岩崎さんも奥さんと出演して下さいね。」
「は、はぃ…、上手く行ったら面白いですが、岐阜県の土地以外は通うのも大変な所ばかりですよ。」
「売れない芸人でも常駐させますから、なんとかなります。
それと並行して違った企画も進行させますが…、岐阜の土地は…、この地図のどの辺りです。」
「ここです、町から比較的近いのでホテルから現地へ通う事も容易です。」
「なるほど、観光スポットも色々有りますね。」
「三つ目の拠点に出来ると考えています。」
「良いですね、番組のメインにしますよ。」
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37-番組 [岩崎雄太-04]

冬坂が企画した番組、その初回。

「さて、この新番組、本格スタートは特番を二つ挟んで来月からになります。
今回は番組の概要を紹介させて頂きます。」
「はたして廃村を蘇らせる事が出来るのかという重めのテーマですので軽めの芸能人明るいアイドルの皆さんに集まって貰いました。」
「それでは、復活させ隊の皆さんですどうぞ~。」
三十名が入場。
「まずは六チーム有りますので、チームごとに紹介して行きます…。」
ベテラン司会者の軽妙なトークで紹介が進む。
「この誰も知らない様な芸人が村長となってしばらくの間村に常駐します、他の四人はスケジュールを調整して交代で時々村へ行きます。
では、このチームが取り組む廃村の様子をVTRにまとめて有りますのでどうぞ。」
VTRでは、いかに不便な所かを紹介していく。
寂れた田舎の風景とともに六チームの紹介が終わった所でルール説明。
映像は岩崎村の風景に変わる。
「各チームには自分達の担当する廃村を復活させて貰います。
目標は、ご存知の方も多い岩崎村、廃屋ばかりだった所を美しい村に作り変えた成功例です。
こうして映像を見ていると、日本とは思えませんね。
岩崎家の財力を使って作られた村ですが、復活させ隊の皆さんに資金は有りません、ギャラや交通費は出しますが、それ以外は自力でお願いします、こちらが各チームの所持金。
ご覧の通り零円ですが、個人的に麗香ちゃんファンなので私から一万円援助しますね。」
「え~、たった一万円ですか、しっかり稼いでるのに。」
「いやいや、頑張る姿を見せて貰えたら追加しますよ、あっ、岩崎会長どうぞ。」
「私から各チームに百万ずつどうぞ。」
「おお~さすが太っ腹、有難う御座います、各チームの所持金はこうなりました。
一番上が集めた金額、もちろん合法的に集めて下さいね、次が使った額、下が残高になります。
お金の管理はこちらで行います、廃村復活の為のお金ですからそれにふさわしくない支出はNGですよ。」
「各チームの皆さんには事前に打ち合わせをして頂きました、今の意気込みなど聞かせて頂きたいと思います。
まずはチーム島根の皆さんからどうぞ。」
「これはもう五人では無理でしょう、という事でサポーター大募集です。
金銭面、労働力で応援お願いします、私達は頻繁には行けませんが私達に代わって行ってくれるアイドルもチームサポーターになってくれそうです。
村作りは、まず売れない芸人さんの家を建てる所から始めたいと考えています。」
「売れない、言うな! まあほんまの事やけど。」
「詳しくはネットでお願いします。」
「次はチーム岩手の皆さん。」
「私達の拠点は隣村を考えていて交渉を始めています。
私達も島根同様サポーターを募集中ですが、岩手の山間部でどんな作物を栽培すれば良いのか教えてくれる人を探しています。
出来れば、農業高校とか大学の農学部の人、先生役のプロの方が手伝って下さったらと考えています、詳しくはネットでね。」
「チーム岐阜、どうぞ。」
「自分は大学の経済学部を卒業していますので、岩崎村の様に経済的にも自立出来る環境までと考えています。
株式会社はどうやったら作れるのかといった事も実際にやってみて紹介していきます。
田舎とはいえ、大きな町から比較的近い分、成功出来なかったら恥という気持ちで取り組みます。
観光地も近いですから、遊びのついでに立ち寄って少し作業体験をといった企画も考えています。
うちの売れない芸人はポンコツなので村長や企画運営スタッフも一般の方から募集させて頂きます。
時給千円からのスタートです。
募集要項はネットでどうぞ。
まだ発表出来ない話も進めていますので岐阜県、地元の皆さん楽しみにしてて下さい。」

各チームは個性を出した、いや出さざるを得なかったのは立地条件の差による。
チーム岐阜の土地からは車で二十分も走れば旅館が有るが、チーム北海道の土地は行くだけで大変な所に有る。
実際に点数を付け競うという事でもなく六チームの頑張りを視聴者は楽しむという娯楽番組で過疎の問題と向かい合う。
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38-一点集中 [岩崎雄太-04]

各チームが資金集めをする様子は番組の要でも有る。
あるチームは事務所の先輩にお願いして回りサポーターを集めた。
後々ゲストとしての番組出演も考え五万、十万といった寄付を得るが、そんなお願いする光景は番組でも使われている。
ギャラも発生しているので先輩方にとっては大した負担にはなっていない。
寄付について掘り下げたチームは、寄付金の使われ方の実態を紹介しながら、自分達への寄付によってどんな村にしたいか訴えた。
資金を得る為のチャリティーコンサートを企画したチームは、開催までの費用で行き詰まり、苦労する様が放送される。
岐阜チームは株式会社設立までの様子をチームリーダーが解説した。
売り出し中の俳優、その知的な面が強調され彼の評価を上げる事にもなり番組の顔となった。

「冬坂さん、番組面白いですね、チーム間の差は有りますが、お金もそれなりに集まり始めて都会から田舎へお金の流れが出来ましたね。」
「ええ、視聴率も悪くないですよ、岩崎さん。
芸能人にも評判が良くて芸能人サポーターが増えそうです。
それなりに勉強してくれた子が各チームにいて頑張ってくれてるのに応えたい、と話して下さる方も見えてギャラはゲスト参加したチームへ寄付して下さる方も少なく有りません。」
「ですが、北海道は厳しそうですね、改めて過疎の問題を考えさせられました。
それでも観光地にしようという試みは、何年掛かるか分からなくても楽しそうですね。」
「半分遊び、半分作業、あのチームに入れた売れない芸人はあそこに居た方が輝いているでしょう。
その事に本人が気づけば、村長として立派にやって行けると思っています。」
「彼のギャラはテレビ局からですか?」
「ええ、番組が続く限りは、ただ人気が出ないとギャラは上がりませんからね。」
「なるほど…、覚えておきます。」
「初期段階で視聴率が取れてますから、後は企画力で継続出来るかどうかです、特にチーム岐阜は一般サポーターも多く獲得していますから、色々な意味で番組のメインにします。」
「チームリーダーをやってる若い俳優とも話をしましたが、彼は地元出身なのですね、生まれ故郷の役に立ちたいとも話してくれましたが。」
「ええ、岐阜チームのリーダーはしっかりした人物にしようと考えまして探しました。
地元出身で勢いの有る若手俳優、真面目さ、岩崎さんの事も知っていて尊敬していると話してくれた事が決め手で、このまま地元の観光大使にという話も進めています。
さらに、映画やドラマであのエリアを舞台にした作品の主演がとりあえず三本決まりそうです。
東京のマンションは一度引き払って実家暮らしも良いかなと話してくれました。
地元への経済効果も彼の頭には有りますし、地元に居れば廃村の再開発に係わる事も楽ではないかと。」
「心強いですが、作品の舞台が集中してしまうとファンが広がらないとか弊害はないのですか?」
「それは気にしていないと思います、故郷を大切にする人というプラスイメージが付きますから、番宣では生まれ育った環境での隠れた逸話を少しづつ出して行くとも話していました。
彼のファンだけでなく、映画やドラマを見た人達はきっと行きたくなります、それだけの力を持った監督達が、どんな作品にするか検討してくれています。
それも、バラバラではなく違う作品で場面を共有したりとか考えていて、別監督作品のカットを違った角度から見せる…。
二本の映画は全く違うお話なのですが、一人二役という形にして二作の主役同士が町ですれ違う場面とか色々な仕掛けを盛り込むそうです。
そんな仕掛けは知り合いの漫画家、アニメーター、ゲーム作成者などにも声を掛けて有ります。
岩崎さんが一点に集中投資されたのと同じ様に、あのエリアに人の目を集中させます。
多くの作品を見た人には大まかな地理が頭に入ってしまうかもしれません。」
「面白いですね、過疎化が進むのもその地の中核が経済的に弱くなっての事、町が活気づけば大都市への就職を考えない若者も増えるでしょう。
そこまで動いて下さっているのなら、私も計画を早めます。
彼が立ち上げた株式会社はきちんとした事業計画に基づいてますから普通に出資出来るレベルですが…、冬坂さんはあのチームに頭の良い子を集めましたね、人気度は六チーム同じようなレベルにしつつ。」
「やはりばれましたか、単純な学歴でなくそれぞれの資質を考慮しています。
チームリーダーが忙しくなったら、アイドルとしては伸びしろの少ない子が論理的に考えてチームを引っ張ってくれるでしょう、本人も分かってる様でアイドルイベントに参加するより村での活動に時間を取りたいと、元々それを見越しての起用したのですが。」
「適材適所ですね。」
「はい。」
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39-イベント [岩崎雄太-04]

六つのチームはそれぞれ広く支援を求めた。
それに対して北海道チーム以外は大学生の協力を得る事にも成功、大学のサークルとして継続的に参加してくれている。
彼等が考えたのは一般ボランティアをバスで送迎、人海戦術で畑を耕し種を蒔く、といった形の企画、そこにアイドルも参加する事も有って参加希望が殺到するイベントも多かった。
各チームが地道な作業をイベントとして展開して行く中で岐阜チームは違う展開をしていた。
番組上では、株式会社設立、役割分担、村の設計と基本的に岩崎村を作り上げた過程を追いながら、そこに笑いも入れるという形で進めている。
その中でチームメンバーと雄太との会議風景が放送された。

「君達のチームは事業計画もしっかりしていて資金も順調に集まってる様だね。」
「はい、お陰様で着工にこぎ着けました。
今までは測量や設計といった準備段階を番組でお見せして来ましたがこれからが本場になります。
岩崎村に倣って一番町に近い集落の造成工事から始めます。」
「どんな形にするのか視聴者の方にも紹介して下さい。」
「まずはイベント広場とお店を作ります、何と言っても通えるのが私達の強みですから住居は後回しです。
各種イベントとお店で資金を調達して、次の集落の造成資金に充てるのが目的です、イベント広場が有れば集客力が上がります。
造成工事はネットの募集に安く応じて下さった方々にお願いしましたが、一つ目のイベントとして工事見学会を開きます。
アイドルが案内する時は一人千円程度、地元スタッフが案内する時は百円程度に設定していますが、もちろん寄付や株の購入大歓迎です。」
「安全面は大丈夫?」
「はい、作業者とも話し合っています、見学会の時はスタッフも動員して安全に留意、また極力色々な重機を入れて、作業に関係の無い重機によるパフォーマンスも披露という、お子さんにも楽しんで頂けるプログラムになっています。
毎週末の開催を予定していますので、継続して来て下さると工事の進み具合が分かって面白いかもしれません。」
「うん、それは楽しいだろうね、私も岩崎村に常駐ではなかったから、行く度に綺麗になっていく村を見るのは楽しかったよ。」
「それでですね、岩崎さん、株式会社岩崎の林業チームに協力をお願いする事は難しいでしょうか?」
「植林地の手入れだね、林業チーム三っつ目の拠点は君達のエリアの近くに作る目途も立ってるから大丈夫だよ、岐阜チームが頑張ってくれてるお陰で話が早かったそうだ。」
「では植林地で切り倒した木の売り上げで作業に掛かる費用は確保出来そうですか?」
「それは何とかなると思うけど、折角だから間伐材の使い道とか視聴者の皆さんからアイデアを貰えないだろうか。」
「あっ、そうですね、岐阜チームのテーマに加えさせて頂きます。」
「君の映画制作はどうなってるの?」
「はい、自分の生まれ故郷を舞台に二本の映画制作が決まりました。
東京のマンションを引き払ってしばらくは実家から撮影現場に向かう事になります。」
「それは楽しみだね。」

そこで映画制作発表の場面に映像が変わる。
同じ町を舞台に同じ役者が主演を務め全く違う映画を二人の名監督が制作するというという事は大きな話題となった。
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40-拠点 [岩崎雄太-04]

株式会社岩崎が岩崎村に続いての拠点とした村は学生村と呼ばれている。
ボランティア学生が中心になって開発計画を立て、工事も実習の形で学生達が行って来た事による。
小さいながらも村が形作られた段階で、株式会社岩崎二つ目の林業チームが独身社員中心に立ち上がり、学生村は彼等の拠点となった。
今の所規模は小さく林業が中心。
それに対して三つ目の拠点はテレビ番組の一環として開発が始まったが全く違う展開となりつつある。

「冬坂さん、何かとんでもない事になってますね、自分が映画の撮影に時間を取られている間に。」
「岩崎さんは良いきっかけを作ってくれた君に感謝してると話してみえたよ。」
「話が広がり過ぎてついて行けてないです、都市計画の話とか…、簡単ではないですよね。」
「確かにすぐどうなるという事ではないが、そもそも都市計画なんて何年も先を見越しての事だろ。
資金を一点に投資して結果を出す手法は君も評価してたじゃないか、俺の方も始めは六ケ所の廃村を平等に扱ってと上から言われもしたが、それでは視聴者に対してインパクトが弱くなると考えた、それが君の映画連続主演に繋がったのだよ。」
「岐阜チームのリーダーとして自分はどうすれば良いのか…。」
「そんなに気にしなくて大丈夫だよ、サポートメンバー達が色々考えてるから。
市会議員や市長を仲間内から出そうという流れは良い傾向なんだ、政治は年寄りに任せておいて良いものではない。
真面目な話、市会議員には何人か当選すると思うし良い人が見つかれば市長だって、もっとも番組的には面白いが、色々制約が有って選挙が終わらないと放送しづらいけどね。」
「知らない内に話が進んでいたのでついて行けてないのですが。」
「まあな、君には映画撮影に集中して欲しかったからね。」
「他でも話は進んでいるのですよね。」
「このエリア全体の活性化、岩崎さんの言葉に唖然としたスタッフも多かったそうだけど、彼から色々な案を提示されて、皆が納得する形で進んでいるんだ。」
「ここは、観光で有名では有るものの、経済活動は大都市とは比べ物にならないレベル、就職で都会を目指す若者も多いというのが現状で、過疎化の進んだ村も少なからず抱えています。」
「君が主演した映画が公開されれば、ここの魅力と問題点がアピールされるだろう、観光客は増えると思う。
イベント広場やお店ももう直ぐ完成だからタイミング的には調度良い。
更に株式会社岩崎の林業チーム作業風景を生で見る事の出来るイベントも始まる。
そういった場で紹介されるのは、新たな岩崎さんとこの社有地開発計画、岩崎家の本気に対して廃村の所有者とかが安く譲渡する事を決意した結果、市内の山林や廃村がかなりの面積、株式会社岩崎の所有地になりそうなんだ。
規模は岩崎村の比ではない、但し、植林地の管理は林業チームの強化で何とかなっても廃村の再生は簡単ではないだろう。
でも、その部分は観光の多様化と産業構造の改革を軸に皆で考えてるよ。」
「産業構造の改革ですか…?」
「都市部に有る会社が都市部に有る理由は従業員を確保し易いという事が有るかもしれない。
田舎に住む若者が都会での暮らしにあこがれる気持ちも分からなくはない。
だが、ネット環境が整ったお陰で、必ずしも大都会でなくても成り立つ仕事も増えている。
都会の満員電車通勤をストレスに感じてる人も少なくないと思う。
地方都市でも、それなりの環境を整えて職場環境、生活環境が整っていれば住みたくなる人も増えるかもしれない。
岩崎さんは彼の関係するグループ企業とも調整して廃村を小規模ニュータウンにしたいと考えている、一部の会社移転も念頭にね。
大都市に有る社有地を売却するか貸すかしてここに投資したら、かなりの事が出来ると思わないか?」
「あっ、はい、小さな集落を岩崎村規格にするなんて簡単かもしれません。」
「それを推し進める原動力として君にはドラマの主演を、もちろんこの地を舞台にしてのをお願いしたいと考えているのだけど、どうかな?」
「断る訳ないですよ、マネージャーの方は通ってますか?」
「もちろんさ、ドラマに関しても岩崎さん関連がバックについて…、でも不祥事だけは起こすなよ。」
「は、はい、付き合ってる彼女の事は…?」
「早めに公表した方が良いと思っているが、破局とか報道されるとマイナスになる。
君の人生だけど、有名になった事によって背負う物が違って来た事は理解してるだろ。」
「はい、いっそ自分達の高校生時代を…、実話として表に出すのは恥ずかしいのですが、後輩に伝えたい事も有ります。」
「そうか高校時代からの付き合いだったね、結構有名な県立高校…、映画、ドラマ、アニメ、どんな形でも良いけどシナリオは?」
「彼女が書いたのを元にすれば良いのですが。」
「一度見せて貰おうかな。」
「はい。」
「やはり最後は卒業式かな。」
「ええ、もちろん。」
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