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35-株 [岩崎雄太-04]

岩崎村の小さな集落跡を整備して豪邸が建てられた、有名作曲家の為だ。
そこへの道路入口には門が作られた、門から建物までは一キロほど。
周辺の森も彼が一括で買い取ったが、管理はすべて株式会社岩崎が請け負う。
会社設立以来始めて社有地を減らしたが、その対価は大きなものとなり次への投資に充てられた。
落ち着いた所で雄太が訪問。

「ここでの生活は如何ですか?」
「ああ、越して来て良かったよ、会いたくもない連中はここまで来る労力を惜しんでか来ないからね。
仕事はネット環境が有るから問題ないし、お宅の社員もきっちり仕事をしてくれて家内も喜んでるよ。」
「しかし、遊びの幅が限られてとか有りませんか?」
「いや、むしろ余計な付き合いから解放されてのんびり出来てる。」
「うちとしても、ここを高く購入して頂いたお陰で、第二の拠点の整備が進んでいます、有難う御座いました。」
「いや~、使い方が良く分からずに金を貯めていたが、お金を回さないと社会が停滞する、との岩崎さんの言葉がきっかけなんだ、人が普通に生きて行くのに必要な金額を大きく超えて稼ぎ、贅沢して来たが、これからは社会の事も考えるよ。
しかし、岩崎さんは私などが足元にも及ばない様な資産家でしょ、その割に派手な生活はされてないそうで。」
「確かに株は沢山持っています、グループ企業の株がほとんどですが、これは立場上売る訳には行きません、配当も基本的にグループ企業の株購入に充てています。
私が親父の会社で大きな顔が出来るのは、この株のおかげです、親父もお爺さまも私の考えに賛成して下さっていますから荒療治が出来ました、三人の持ち株を合わせれば株主総会で反対出来る人はいませんからね。
半面、自分の報酬は極端に低くしました、ですから使えるお金は大した事ないのですよ、妻も贅沢を好む人ではないので何の問題も有りません。」
「そうですか、創業家一族というと贅沢できらびやかな生活を送っていると思っていましたが。」
「他の親族はそうです、だからお爺さまは遺産を私にと考えて下さっています。
今の所は、お持ちの資金を配当を出さない株式会社岩崎の株に変えるという形ですが。」
「それで、岩崎村はここまでになったのですね。」
「まだこれからです、全国の過疎地、廃村で土地を安くても良いから手放したいという人から、買い求めて再生して行くプランを検討しています、資金が無限に有る訳では有りませんので、ある程度まとった土地へ集中投資しての再生と考えています。
都市部への人口集中の流れを止めないと、この国の歪は大きくなるばかりですからね。」
「私も協力して行くよ。」
「ここを高く購入して頂いただけでも有難いですが…、都会暮らしをやめて田舎暮らしをしたくなるような歌とかどうでしょう?」
「そうだな、知り合いの作詞家や歌手にも打診してみるかな…。
う~ん…、それならもっと幅広い形で若者たちに問いかける、そんな企画を知り合いにちょっと振ってみようか、岩崎さんの所に費用負担が無いように、ロケ地としてや作品の舞台となるような形でアピール、ここはまだ人を増やしているよね。」
「はい、林業、農業、観光以外の職種も増やしています、今開発中の集落はすべて住宅にする予定です。」
「上手く行けば、若年層の意識改革が出来るかもしれない、過密の都会を選ぶか過疎の村を選ぶか、実際若者全員が都会志向でもないからな。」
「田舎に良い職場が有れば問題ないですよね、協力お願いします。」
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