夏休み-141

「お兄さんのことを随分心配されているのですね。」
「絵梨が色々言うのですよ、シスコンではないかとかロリコンだとか。」
「普通に優しいお兄さんだと思いますよ。」
「ですよね、でも、千春さんとどうなるのか気になっていまして…。」
「大学の女子達も気になってるみたいで、男子達は面白がってくっつくかどうかで賭けをしてます。」
「賭け事って法に触れないのですか？」
「まあ、勝ったら奢れぐらいですから問題ないです。
　今の所、普通の中学生なら恋愛に発展してもおかしくないと見てる奴が多いですが、千春さんが告白してフラれるパターンを想定してる奴もいましてシスコン説を唱えてました。」
「う～ん、私にブラコン説とかは出ていませんか？」
「それは無いですね、姫は初対面の人を苦手としていますが、馴染めた人とはお兄さんと同様に接していると感じています。」
「そうなのか…、私も観察されてるのね。」
「勿論ですよ、かなり特殊な存在ですから。」

夏休み-142

「う～ん、その自覚は有るし私も観察者だから文句は言えないけど微妙な気分だわ。」
「親や教師は皆子どもを見ている訳で当たり前のことですよ。
　ただ、大賢者や花鈴姫は他の子と明らかな能力差が有りますからね。
　特に姫は物事を見る視野が大人以上だと感じられる時が有ります。」
「それは両親の影響かと、同じ様に育てられたら誰でもこうなるのかは分からないけど。」
「遺伝的要因プラス教育環境でしょう。
　姫が教えてる子達はどうです？」
「それぞれの能力差は感じるけど普通の子達、大賢者レベルの子はいないわよ。
　頑張ればひろっちレベルになれそうな子はいるけど。」
「ひろっちか、田中君のことはどう評価してるの？」
「普通に頭の良い真面目な子よ、将来は私の会社の重役になったりして。」
「信頼出来るのですね。」

夏休み-143

「ええ、彼なりにピーマンの会の一員になってから将来のことも考える様になったそうで。
　五年生ぐらいだとプロサッカー選手になりたいとかってレベルが一般的だと思うのだけど、もう少し現実的なのですよ。」
「彼の父親は株式会社花鈴の社長ですよね？」
「ええ、うちは社会貢献を第一に考えている会社なので田中社長は誇りを持って仕事に取り組んでいる。
　そんな姿を見て彼は仕事を意識し始めたみたいなの。」
「父の跡を継ぐみたいな？」
「社長の世襲は考えてないけど、我が社は社会貢献と企業としての利益追求を考えてるから大変なの。
　将来そこに参加してくれたら嬉しいわ。」

夏休み-144

「彼は優しく真面目ですから、世襲とか気にせず社長になる為の教育プログラムを考えてみるのは有りだと思います、帝王学と言う言葉は御存じですか？」
「えっと…、王様になるための教育ってことかしら？」
「そんな感じです、姫のお兄さんが社長になる準備を進めて来た様に、田中君も…、今の彼は姫の言いなりですが、帝王学を学ぶ中で自信を持つようになれば、良きリーダーになれると思うのです。」
「リーダーを育てると言う感覚かしら？」
「ええ、国には様々なリーダーが居る訳ですが、目先の金儲けばかりに目が行きがちな小者ばかりだと姫と話していて思ったのです。
　広い視野を持つ有能なリーダーは意識的に育てて行かないと増え無いのではないかと思いまして。」
「そうね…、お金儲けだけに偏らずバランス感覚に優れたリーダーを増やさないと…。
　残念な政治家ばかりだと聞いたことが有ります。
　政治のことは全く分からないのですが、反社会的な活動をしていた宗教団体関連に政治家が関与していたそうで、お金の為なら社会問題を起こした宗教団体の為にでも動く政治家にがっかりしたと話す人がいたのですよ。」
「それが現実なのです、まともな政治家を育てるシステムが無くて、偏った思想に基づく政治団体でも議席を獲得出来てしまうのですから。」

夏休み-145

「私も政治のことをもっと学ぶべきなのかしら？」
「多くのことを学び考えている姫に余裕が有るのなら学んで頂きたいとは思いますが、焦る必要は無いと思います、民主主義は様々な問題を抱えていますので。」
「どんな問題が有るのです？」
「能力が低くても人気が有れば当選してしまうとかです、時には投票した有権者ががっかりすることを仕出かす議員もいるのですよ。」
「そっか、でも投票する時にそこまでは分からないのでしょ?」
「ええ、投票時に得られる情報は限られますし…、色々調べた上で投票した人の一票と、何となくのイメージだけで投票した人の一票、その価値は同じなのですが、得られる情報から真面目に考えたら投票すべきではない人に面白がって一票を投じてしまう人がいたりしまして。」
「そこは子どもと同じなのですね、大人でも真面目では無い人がいることは知っていますけど。」
「有権者全員が一票の重みを考えて投票する選挙が民主主義の理想だと思うのですが、投票に行かない人もいますからね。」

夏休み-146

「確かに、一票を投じたくなる政党も人もいないと嘆いておられる方がみえましたが、藤井さんはどう思います。」
「その人の気持は分かります、選挙権を得てから調べてみたのですが魅力的な政党も魅力的な候補者もいなくて、結局この政党の人にだけは当選して欲しくないと言う感覚で投票する候補者を選びました。
　積極的に支持したいと思える人がいなかったのです、立候補者は良く知らない人ばかりですからね。」
「そっか～。」

夏休み-147

「国会議員から地方議会議員まで、多くいる議員の極一部とは言え違法行為に走る人もいるのですよ。」
「やはり選挙にお金が掛かるからなのかしら？」
「どうですかね、立法府で有る国会議員が違法行為なんて有ってはならないことだと思うのですが、バレなければ良いと考えるのか…。
　議員の不祥事がニュースになる度に残念な気持ちになり民主主義って何だろうって思っています。」
「藤井さんが総理大臣になったら良いのに。」
「はは、無理無理、人を平気で騙せるくらいの狡猾さが必要だと思えて、自分みたいな平凡な一般人に政治家は務まりません。
　むしろ花鈴姫の方が向いてるかも。」
「え～、人を騙したりなんて私には出来ませんよ～。」
「特殊な資質が求められる役職で簡単だとは思いませんが、姫なら。
　被選挙権を得られる頃に姫がどうなっているのかは想像できませんが。」

夏休み-148

「さすがにそんな先のことはね。」
「将来について何か思い描いてることは無いのですか？」
「将来と言うか、株式会社花鈴がスタートしたでしょ。
　大きい会社にならなくて良いから素敵な会社にしたいとは考えてるの。」
「素敵な会社か、移動販売の担当者は待遇が良くなったと喜んでましたよ。
　給料が良くなったとか。」
「前が安過ぎたのよ、お客さん達に協力して頂くことで収入が増え始め安定経営が見えて来てるの、お客さん達も移動販売が無くなると困るでしょ。」
「みたいですね、今まで自分達が食べる分だけと思って野菜を栽培してた人が、会社に寄付する分を考え種を蒔いたと話していました。
　それを切っ掛けに考えることが増えボケ防止にも繋がってと話して下さった方もおられます。」
「健康寿命を延ばすことに繋がってるのかしら？」
「そう思います、畑仕事が少し増え、収穫に訪れる人と会話するでしょうから良い刺激になってると思います。
　何より花鈴姫に喜んで貰いたいと話す人が結構いるみたいですよ。」
「そこまでの交流はしてないのですが…。」
「情報は口コミで広がっていますから姫はここのアイドルですよ、自分達のことを忘れがちな孫より余程有難い存在なのだとか。
　お年寄りばかりでは有りませんから、YouTubeの映像に触れることも有るそうで。」
「そっか、再生回数が伸びなくても、登録者数が増えなくても続けて行く意味は有るのね、小枝子さんにも伝えておくわ。」

夏休み-149

「お年寄りでもスマホを使いこなしている人はいますし、自分でYouTubeを見られなくても周りの人に見せて貰う人もいるのです。
　素敵な会社にしたいと言う姫の想いは積極的に発信して良いと思いますよ。」
「そうね、それも会長の役割よね、今後のことは小枝子さんと相談かな。」
「小枝子さんはスポークスマン的存在なのですね。」
「ええ、父が進めている活動に欠かせない存在ですし、株式会社花鈴にとっても。」
「田舎への移住や過疎の問題について、ご自身が実際に田舎への移住を体験中のことなので説得力が有ります、文章や動画を利用し田舎の現状を伝える手腕には憧れを感じます。」
「姫だって…、動画での姫や姫の書かれた文章を拝見させて頂いてますが小学生離れしていて、姫のファンは着実に増えていますよ、自信を持ってご自身の考えをアピールして良いかと。」
「そうね、炎上する様なネタを提供して注目を集めるのはどうです？」

夏休み-150

「いえ、炎上で稼いでる人はいる様ですがイメージが悪くなります。
　後で納得して貰えるネタで有っても避けるべきだと思いますよ。」
「でも最近登録者数が伸び悩んでいるそうで何か手を打ちたいのだけど。」
「マスコミにアピールして行くのは如何です。
　学生による竹林の再生はテレビ局が取り上げてくれるかも知れません。
　なんなら我々が動きましょうか？」
「テレビ局に働き掛けてくれるのですか？」
「ええ、本社移転関連で何度か取り上げられていたのですから、今一度小学生が会長職を務める株式会社花鈴をアピールしてみるのは有りだと思います。」
「ついでに移住希望者募集とかは？」
「従業員を増やせる目途が立ったのですか？」