SSブログ
高校生バトル-59 ブログトップ

近衛予備隊-161 [高校生バトル-59]

「でも、日本語ってジョン達の国ではあまり役に立たなかったりしません?」
「そうだね、うちの村は元々観光地では無かったから日本人が来ることはなかった、国の治安も悪かったからな。
 でも、公園としての整備が進み、戒厳令を経て治安が良くなってることが国外の人にも伝わり、日本からの観光客は増えつつ有るよ。」
「観光客相手には言葉が通じた方が良いのですね。」
「勿論さ、だから近衛予備隊の隊員は母国語、英語ともう一つみたいな感じで取り組んでいるんだ。」
「ジョン達は母国語の他に英語と日本語、凄く大変だと思うのですが学習のコツとか有るのですか?」
「そうだね、間違いを恐れず積極的に使うことと…、英語で話す時は英語で考え、日本語で話す時は日本語で考える様にして来たことが良かったみたいだよ。」
「そっか、日本語で考え英語に直すなんてしてる内はダメなのですね。」
「英語で考えようとして行き詰ったら調べたり先生に訊ねたりすれば良いのではないかな、自分には日本語で考え事をしていて表現の分からない時、訊ける人が何人もいたから。」
「単語を沢山覚える必要が有りそうだけど、折角英語の学習をするのだから使える様になりたいのです。
 英語で考えるか…。」
「使えなかったら学習する意味ないよな。」
「ねえ、ジョン、自分は将来も英語を使う仕事に就くつもりは無いから、英語を学習する必要は無いと言ってまともに学習しない子がいるのだけど、どう思います?」
「良いと思うよ、例えその子が英語を使わざる得ないことになったとしても本人の意思だろ、英語よりポルトガル語やスワヒリ語が必要になるかも知れないし。」
「う~ん、色んな言語が使われているって不便ですよね。」
「だよな、村では情報伝達手段として絵や動画の利用を進めてはいるが難しいよ。」
「絵や動画?」
「観光客向けに言語を使わない案内システムを試しているのだけど、それぞれの生まれ育った環境が違うから、同じ絵を見ても出身国によって解釈が違ってね。」
「へ~、そんなに違うものなのですか?」
「暑い国があれば寒い国もある、宗教的な背景も様々だろ。」
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-162 [高校生バトル-59]

「それでも95%以上の人には伝わっていると思うの、理解に問題が有るのは僅かな人達なのだけど、その人達にもトラブルなく村での滞在を楽しんで貰いたくてね。」
「色んな人がいますもの、日本人だけでもそう感じるのですから、海外からの観光客が来てるとなると大変でしょうね、宗教上のトラブルも有るのですか?」
「ええ、経験の積み重ねも有り随分減って来たけど、店がオープンした頃は色々有ったわ。
 でもね、大人のスタッフが相手をしてもなかなか納得してくれない人でも、ジョンが対応すると大人しくなってくれたのよ。」
「へ~、さすがです。」
「女性客ならジョンと仲良くしたいと思うし、男性客は女性の視線が気になったみたい。」
「ジョンは容姿の良さで随分得をして来たのですね。」
「単に容姿の問題だけではなく、相手の心理を考えてたのよね、ジョン。」
「香菜も研究してみたら良いよ、大人に可愛がって貰え、敵を最低限に抑えることが出来るスタンス。
 香菜がリーダーとして仕事することになった時にも役立つと思う。」
「人の心理ですか、心理学?」
「いや、そんな大層なものではない、香菜だって上から目線で偉そうに話されて気分を害した経験、有るだろ。」
「有りますね、人として尊敬に値しない人に限ってそんな態度を取りたがると言いますか。」
「ジョンはそんな人相手でも、その人の話を受け止める所から始めてね、で、気付いたらジョンのペースになってるの。
 話を受け止めるまでは何とか真似出来ても…、その先はジョンの特技ね。」
「容姿だけで村長になったとは思っていませんでしたが…、その能力、どうやって身に着けたのですか?」
「大勢で暮らす中、平和に過ごしたくて考えたのさ。」
「学校の授業では得られないことなのですね。」
「そうだね、同じ授業を受けていても取り組む姿勢で学べる内容は大きく違って来るだろ、学校の授業何て学問の入り口に過ぎないと、お世話になってるマネージャーが話してくれたよ。
 本当に学ぶべきだと思ったら授業に関係なく堀り進める、然程興味のないことは目次だと思って把握だけしておき、必要になった時に備えると言う感じかな。」
「目次か、父も中学で学習する歴史なんて目次に過ぎないと話していましたが…、私も目次として把握しておき明日への備えにしたいと思います。」
「日本の学生は入学試験やテストの為に学習してると聞いていたが、香菜は違うみたいだね。」
「勿論です、テストはゲーム感覚で楽しんでいますが、テストと言うゲームに勝つことが学習の目的では有りませんから。」
nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-163 [高校生バトル-59]

「先生、やはり日本国と遠江王国とでは教育に対する考え方が違うのですか?」
「ええ、遠江王国では大学入試に縛られない人が多いです。
 日本では有名大学へ進学することが一流企業へ就職する近道だと思われて来ましたが、その辺りのこともこの国での実験項目に入っていましてね。
 王家の詩織さまも雅さまもその優秀さは誰もが知る所、お二方とも遠江大学に籍を置いておられますが勿論学歴の為では有りません。
 彼女達は日本の法律上その最終学歴が高校卒業となるのですが、日本ではそれだけで大卒より下に見られ就職で不利になります。
 ですが詩織さまは大企業のトップ、雅さまは子育てに関する啓蒙活動を始め多方面で活躍されておられ多くの人に影響を与えています。
 結果、偏差値の高い高校から就職に有利な大学への進学と言う道筋に変化をもたらしつつ有り、若者にとって選択肢を増やすことに繋がっています。」
「選択肢ですか。」
「企業がより良い人材育成を考え、動いていましてね。
 遠江王国では企業主体の職業教育に対する取り組みが増えています。
 企業単体で運営される専門教育機関としての小規模校から、多くの分野を集めた全校生徒三百名規模の学校まで様々な取り組みがなされています。
 近衛予備隊での実績も参考にさせて頂いてるのですよ。」
「確かに近衛予備隊には職業訓練校の意味合いも有ります。
 でも、企業サイドがその必要性を考えていたとしたら、日本国で展開していても良かったのでは有りませんか?」
「日本では学歴で人物を判断する人が少なからずいましてね、何を学んだかでは無く何処の大学、高校を卒業したかに目が行きます。
 底辺の高校では、ほとんど学びと言えることをしなくても卒業出来、卒業する為だけに通ってる生徒もいるのですよ。」
「それは…。」
「高校を卒業してないと就職先が限られてしまうからなのですがね。
 ただ、その高校で学習すると定められている内容は、就職後、大いに役立つかと言えば微妙で、企業は新入社員として迎えた子達に対し、会社として教育しなくてはならないこと以上の教育をする必要が有るのです。」
「その辺りは同じですね、マーケットの社員教育では、商品を勝手に食べては行けません、と言うことから教える必要が有るなんて話を聞いていますので…。」
nice!(12)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-164 [高校生バトル-59]

「遠江王国で行われている教育システムの実験では、近衛予備隊での学習実践を参考にさせて貰っていたのですよ。」
「参考になりましたか?」
「ええ、特に第三部隊は三つの部隊の中で最も教育環境の悪い所と認識されていたので実験的職業訓練プログラムを導入し易かったと聞いています。
 個人を尊重し、それぞれが何をどの様に学び体験して行くのか、その子の将来をより明るく出来る様にと考えての取り組みで、近衛隊のメアリーはほんとによくやってくれましたし、当初は思ってもいなかった優秀なリーダーの存在には色々な意味で注目が集まったのです。」
「色々?」
「とてつもなく恰好良い男の子がいると盛り上がりましてね。
 メアリーから中古で良いからパソコンをもっと送って欲しいとの依頼が有った時も、直ぐに必要数以上の台数が集まったそうですよ。」
「う~ん、メアリーが大変な思いをしてお願いしていたのでは無く、単にジョンの功績だったと言うことかしら?」
「はは、ジョンには人を動かす魅力が色々な意味で有ると思う、メアリーも心を動された一人なのではないのかな。」
「予備隊を参考にしたと言っても随分環境が違いますよね。」
「だからスタート時は小規模で。
 今でも、高校に相当する学校には日本と大きく異なる学習内容に対する反発する声もある、でも関係している企業は自社の従業員の幸せを考えて行こうとしているので、自分達の価値観と違うからと言って強くは出られないのですよ。
 就職やそこに至る学校生活で失敗してしまい、その後の人生を不幸なものにしてしまった例は幾らでも有ってね。」
「うちでは、予備隊の隊員数に対して多過ぎると思える人達の協力を頂いていたのですが、ここでもそうなのですか?」
「勿論さ、それこそがプログラムの目的でも有るのだけど、そこでも、ジョン達の暮らしぶりを参考にと言うか…、日本の子ども達が接する大人と言うのは極めて限られたものでね。
 極端な子だと両親以外に接する大人は学校の教師だけとか。」
「えっ?」
「親戚がいても年に数える程しか会わないと言うのは普通のこと、ジョン達の様に親戚も含めた大家族で部落を形成してる訳ではないからね。
 大人と接する機会の少ないまま成長し就職して大人と共に働くことになった子が、職場の大人達と良好な人間関係を築くことが出来なかったとして、その子に問題が有ると言えるのかな?」
nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-165 [高校生バトル-59]

「人間関係は難しいものです。」
「うん、良好な人間関係を皆が築けたら良いのだけどな。
 実はこの教育システム実験には前段階が有り、子どもと子どもを取り巻く大人の関係から、これからの人間関係を考えていてね。」
「子どもを取り巻く環境と言えば、自分達の村は移住者が多いだけでなく、刑務所からの出所者も積極的に受け入れ、元々の部落社会、村社会とは人間関係が大きく変わって来ているのです。」
「でしたね、地域社会の構造が大きく変化しているので、今まで無かった問題に直面するかも知れませんよ、日本では幾つかの事件を受け子どもに防犯ブザーを携帯させる様になりまして。」
「治安は良いと聞いていましたが…。」
「発生件数は少なくても、もし子どもが事件に巻き込まれたら、と想像してしまう人は少なく無いのです、そこから知らない大人を見掛けたら良からぬ人かも知れないと思う様に、といった教育が強化され、大人も知らない子には気軽に声を掛けられなくなって。」
「東京で違和感を感じていた背景には、そんなことが有ったのですか…。」
「ジョンも感じていたのですね、でも、そんな社会は我々が理想とする社会では無いと、王国になる前、王さまが市長になられた頃から提唱されていたのが、知らない大人を減らす運動だったのです。」
「部落程度なら簡単なことでも人口の多い町では大変でしょうね。」
「いえ、大勢でなくても子どもを見守る大人、他人の子や孫にも注意を向ける大人が増えれば、それだけで地域社会の雰囲気は変わるのです。
 この地は地域住民による児童公園の再生運動や花の街作戦を通して地域社会が再構築され、子どもにとって知らない大人が随分減っただけでなく街が明るくなりました。」
「それは住民主体と言うことですか?」
「ええ、行政サイドは提唱をし多少の予算を組みましたが、税金を多く使うことなく公園整備などに関する支出を抑えることに成功、そして花の街作戦の経済効果から税収アップに繋がっています。」
「子ども達は?」
「香菜の様な素敵な子が増えてますよ。」
「はは。」
「そこから更に教育と就職に関する制度改革へと動いて来たのです。」
nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-166 [高校生バトル-59]

「制度改革はどのように進められたのですか?」
「そうですね…、王さまが市長になられて取り組んだことに、学校の部活指導を教師から民間の指導員へ移管することが有りまして、学校の部活って分かりますか?」
「ええ、アニメに出て来ましたので日本人スタッフに教えて貰いました。」
「アニメでは裏の事情まで出て来ないと思いますが、部活指導で忙し過ぎる教師が問題になりましてね。
 それを解消すべく部活をスポーツや文化に関する市のクラブとしたのです。
 基本、大会などへの参加は学校単位になりますが、競技によってはそのまま市のクラブチームとして参加しています。
 それぞれのクラブに市として指導者を置いたのですが、同時に一般市民と合同のクラブも誕生させ、大人と子どもが同じクラブに所属することにもなりました。
 大人にとっては学校の施設が使い易くなっただけでなく、若い世代と交流出来て好評なのですが中高生にとっても大人と交流出来る場となったのです。
 それまで親以外の大人と言えば教師ぐらいだった子にとっては、視野を広げるチャンスが一気に広がったとも言えるのですが、王さまはそれも考えに入れていたのです。
 大学を卒業して直ぐ教師になった人に、一般企業で働いた経験は有りませんからね。」
「大人と子どもの能力差は問題になりませんでしたか?」
「大人でも上を目指して頑張っている人もいれば健康の為にとマイペースな人もいるのですよ。
 本来、子ども達だってその能力に合わせた活動をすべきなのですが、チーム競技の場合、所属する学校のレベルに合わさざるを得ず、スポーツを楽しめてない子もいたのです。
 クラブの中にレベルの違うチームが幾つも出来ましたので、学校や職場に関係なくそれぞれ自分に合ったチームに所属、高校生ぐらいになると並みの大人では勝てない子もいますし、大人に遊んで貰うぐらいが調度良い子もいましてね、大人としても大人同士より子ども達との練習試合の方が楽しいと言う人もいるのです。」
「レベルや希望に応じた選択肢が拡大したと考えれば良いのですね。」
「ええ、そんな活動を通して子どもと大人の距離が近くなり、子ども達が自身の進路に関してクラブの大人達に相談することも多くなったのです、親より相談し易かったと話す子もいるのですよ。」
「分かります、自分も実習でお世話になった方々に様々なことを教えて頂きました。」
「子どもから相談されると言うのは大人にとって嬉しいことで、子ども達から寄せられた問題と真正面から向き合うチームが自然発生しましてね。」
nice!(12)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-167 [高校生バトル-59]

「そのチームが改革の原動力となったのですね。」
「ええ、この地域全体を、より住み易い街にして行こう、と言う機運が高まり始めた頃でも有り、自身の所属する企業や地域活動をしている人達を巻き込んで様々な議論がなされましてね。
 例えば、何の繋がりも無かった会社に高校を卒業して就職する、そんな、それまで誰も疑問に思って無かったことにも着目し、中学高校時代からそこの社員と交流が有り、会社を体験する機会を経ての就職となれば、高校生の就職に対する不安を減らせるだけでなく、会社側も安心して迎え入れることが出来るのではないか、とか。」
「確かにそうですね、自分達も近衛予備隊に入隊していなかったら、町へ出て何も分からず仕事に就いていたと思います、運が無ければそこで酷い目に遭うと言う話を聞いていてもです。」
「それまで無かった高校生との繋がりが、学校の部活から拡大したクラブ活動によって出来始めたタイミングのこと、王家の後押しも有って市内の中小企業中心に小さな体験企画が直ぐに始まり、そんな動きが児童公園の再生運動や花の街作戦などの参加者にも広がって行ったのですよ。」
「地方行政の一環と言うより市民運動の一環として広がったのでしょうか?」
「どちらか一方では無く両者が嚙み合ったと言えば良いのかな、国王になる前から王さまは尊敬されていたし王家の皆さんもね、市民運動としてこの地の改革に取り組んで来た人達には王家の人達と関わりの有る人が多くて、でなければ王家が現代に誕生するなんて有り得なかったでしょう。」
「やはり遠江王国は特殊な存在と言うことなのですね。」
「他の地方自治体では、部活の改革にした所で指導を教師以外の大人に任せる所までは出来ても、大人達と新たなクラブを作るとなると、そのメリットが分かっていても前例が無いとか責任の所在がどうのこうのとかで簡単には実現出来ない、ましてやそこから就職に関するシステムを考え直すなんてことは難し過ぎると思う。」
「成程、遠江王国で企業が学校運営を積極的に考える様になったのも同じ様なことですか?」
「日本国では制約が多過ぎて思う様な教育が出来そうに無かった。
 若者達の限られた時間を誰も聞いて無い様な授業に充てて高卒と言う資格を取らせると言う無駄。
 学力の低い子でも興味あること、将来必要だと強く感じさせられることで有れば学習に取り組む姿勢が違って来るものですよ。
 遠江王国での国立職業訓練校の取り組みは学歴の概念を捨て去って始めて可能に、その背景として、王国では学歴が低くても実力が有りさえすれば昇進も可能な企業が増えてると言った事情が有るのです。
 また、遠江王国国立職業訓練校卒業が日本国では法的に最終学歴中学卒業で有っても、それによって軽んじられなくなる様に実績を上げて行こうと卒業生達が頑張っていて結果を出しているのです。
 高校を中退した人や中学から訓練校に入学した人達は、入学までの期間にも様々な会社を体験したり多くの大人達と話す機会を持ち、訓練校で何を学ぶのか明確な目標を持ってスタートしているので、中学での学力評価は無意味なのです。」
「企業にとって必要な人材となっての就職となっているのですか?」
「勿論です、在学中から多くの大人と触れ合うことでコミュニケーション能力も高めていますからね。
 学校でどんなに優秀な成績を収めていても、コミュニケーション能力の欠如により企業人としての成果を上げられない人もいるのです。
 卒業までに自分が就職した会社とは違う会社の社員とも交流している関係で、企業間の繋がりを深めることに貢献といった活動をしている人も。
 遠江王家が中心となって企業間の連携を促進していると言っても、知らない人とは協力しにくいものだからね。」
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-168 [高校生バトル-59]

「企業間の連携と言うのは?」
「例えば、同じ原材料を仕入れている複数の企業が有ったら調整して一括仕入れをする。
 数がまとまった方が割安になるし、トラックの配送効率が良くなる様に調整出来るだけでなく、急ぎの受注が入った時、資本的にも全く関係の無い他社に原料を融通して貰ったと言う話を聞いてるよ。」
「別会社で有っても遠江王国の仲間なのですね。」
「先生、ジョン達は教育キャンプに興味を持たれての視察なのだから、その話もした方が良いんじゃない?」
「そうだな、香菜はどう理解してる?」
「う~ん、今までの話からだと、大人と子どもがキャンプの火を囲んで語り合ったりすることは、共に作業することと同じぐらい素敵なことだと思うかな。
 ジョン、キャンプって日常とは少し違うからか、より印象的な話になるのですよ。」
「あっ、今日は中学生だけのデイキャンプだけど、大人と子どもが一緒に宿泊するキャンプも有ると言うことなんだね。」
「ええ、先生が話してたコミュニケーション能力は様々な経験を通して鍛えられるものだと思うのです。
 始めて出会った大人と話すのは緊張しますが、夏のキャンプでは同じ班になった人から遠江王国が誕生した頃のことなど興味深い話を沢山聞かせて貰いました。
 私達は他の街を知りませんから遠江王国が普通だと思っていたのですが、それからは遠江王国をより誇りに思う様になったのです。」
「普段の生活で、そう言った機会はあまり無いのだね。」
「ええ、キャンプの雰囲気は独特で普段話さない話題が出て来るのです。」
「教育キャンプと聞いてグループ作業を通しての教育をイメージしていたのだけど、それだけではないのかな…、キャンプ中はどんなことをして過ごしてるの?」
「それぞれのキャンプによって目的は様々で、していることも色々違いますが、野鳥と戯れる詩織さまの映像が流れてからは野鳥観察が流行っています。
 まあ、子どもは自然観察や工作、野山を使ったゲームで、大人達は山を守る作業に時間を使っているという感じですね。」
「その作業は仕事ではないのだよね?」
「リーダー曰く、庭の手入れしているだけだそうですよ、自分達の。」
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-169 [高校生バトル-59]

 香菜達から話を聞くまで教育キャンプは普段近衛予備隊が訓練していることと然程違わないと思っていたのだが、キャンプ場と言う普段とは違う環境下で共に宿泊することは、参加者の精神的な結びつきを強めるようだ。
 ホテルに戻り…。

「ジョン、予備隊で宿泊を伴う活動はやって来なかったけど、考えてみても良いかもね。」
「そうだな、ただ村のキャンプ場は観光客向けに整備され過ぎているから刑務所の奥地でも切り開いて新たに教育キャンプ場を作るか?」
「大変そうだけど…。」
「大統領親衛隊の本拠地となってるエリアの開拓は数人でテントを一張建てる所から始まったと思い出したんだ。
 あの時は訳も分からず送り込まれて来た警官と兵士の作業を手伝ったけど、そのままテントで夜を過ごして色々な話を聞かせて貰った、それは香菜が話してた様に普段とは違う環境だったからか強く印象に残っていてね。
 その時のメンバーは戒厳令に合わせて各地へ赴く前に挨拶に来てくれ、詳しく話せない状況ながら覚悟を持って出かけると言う気持ちが伝わって来たのを覚えている、長い時を共に過ごした訳では無いが心の繋がりは出来ていた気がするんだ。」
「テントでは腹を割って話し合ったの?」
「ああ、組織の腐敗ぶりも教えてくれた。」
「そっか、それならキャンプ場開拓作業も予備隊の年長者中心に、時にはテントで宿泊しながら、大人にも手伝って貰って出来たら、単なる作業以上の経験が出来るかもね。
 開拓作業こそが教育キャンプとなるのだから、ゆっくり少しずつ進めて行けば良いわ。」
「遠江王国とは条件が違うから簡単には行かないかもだけど実践してみるだけの価値は有る、ルーシーはどう思う?」
「停電しない生活が当たり前になりつつあるから、電気の有難味を忘れない為にもやってみるべきかも、設備の整い過ぎた村の観光キャンプ場を見て、がっかりしてた彼に相談してみる?」
「ああ、森を切り開くとなると大変な作業も有るだろうが、その困難さがみんなの団結を強めることになるかも知れない、連絡を入れておいてくれるか?」
「おっけい。」
「ねえ、先生がしてくれた学歴の話は少し理解しずらい所も有ったけど、差別の問題は村にも存在するのよね。」
「意識の問題だから良くないことでも当たり前になってしまっていると、大人がそれを変えるのは難しい、でも子ども達には教育キャンプを通してでも考える機会を作りたいかな。」
「大人は変えられなくても子ども達ならと言うこと?」
「ああ、この手の意識改革は長い目で見て考えていかないと無理みたいなんだ。」
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

近衛予備隊-170 [高校生バトル-59]

 新たなキャンプ場建設の話はプリンセス詩織も賛成してくれた。
 そしてプリンセスにはキャンプ場で先生から教えて貰った学歴の話もしたのだが…。

「村は基本的に学歴とは関係の無い社会にしたいのだけど、優秀な人材を育てて行きたいとも考えていてね、医師を目指す人のフォローまでは難しくても、コンピューター関係の高い能力を持った人を養成するのは可能だと思うの。」
「えっと、プログラミングとかですか?」
「ええ、ネット回線とパソコンが有れば、どこに住んでいても学習や仕事に取り組めるでしょ。
 年齢や経験を問わず、まずは英語が出来ることを条件に基礎学習を経験して貰ってから、続けて行くかどうかを判断すればいいかな。」
「年齢を問わないと言うことは子どもでも?」
「子どもの方が覚えるの早いと思うわよ、教材は揃っているからね。」
「ならば学校のカリキュラムに入れますか?」
「設備を整える必要が有るから新たにスクールを立ち上げて通って貰う、でも学校や仕事との調整は可能でしょ、日本と違って融通が利くのだから。」
「勿論です、プログラマーの絶対数が足りてないと王家の方が話されていましたので技術を身に付ければ仕事は有るのですね。」
「ええ、能力が高ければそれなりのギャラになる、村人達にとっても仕事の幅が増えるのは悪いことではないでしょ。」
「はい、そうなるとスクールへの入学試験に向けて…、英語学習に対して今まで以上に熱が入るかも知れません。」
「英語の試験に通れば誰でも入学出来るけど、基礎学習に取り組んでも理解出来ない人はそこで終了。
 でも、プログラマーには向いて無くてもパソコンをそれなりに使いこなせそうな人達の為に、それなりの学習コースを用意しておけば各自の能力を活かせるのでは無いかしら。」
「村ではパソコンを扱える人の絶対数が足りてませんからね。」
「細かい所はチームを立ち上げて検討して貰うとしてスクールの場所は何処が良いと思う?」

 プリンセスから出たプログラマー養成スクールの話は唐突にも思えたが、村の学校が落ち着き始めた今、将来を見据えて考えるべきことだと思う。
 日本に来て改めて思ったのだが、世の中には様々な職業が有るのだ。
nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー
高校生バトル-59 ブログトップ