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近衛予備隊-301 [高校生バトル-73]

 近衛予備隊にマーチングバンドを作る話は今までにも有ったのだが、楽器だけでなく指導の問題が有り立ち消えになっていた。
 今回は女王陛下からの指示と言うことで、国軍の軍楽隊を動かすことにした。
 軍楽隊としての職務は多くなく、隊員達はそれぞれ別の現場で仕事をしている時間が長いのだが、そこを調整し指導役に。
 ただ彼らの演奏レベルは素人の自分でも高くないと分かるので、ある程度力の有る指導者を探したいと思っている。
 詩織さまも子ども達は指導者の力量で大きく変わるから、力の有る指導者を見つけられたら報酬をケチってはならないと。

「シャルロット、音楽教育に関する事業計画案は見た?」
「ええ、国からのも会社からのも。
 近衛予備隊でマーチングバンドを結成するのは楽しみだわ。」
「まともな演奏が出来るまでには時間が掛かりそうだけどな。」
「それは仕方ないわよ、近衛隊のバンドメンバーに楽器を触らせて貰ったことが有るけど、打楽器はともかく金管楽器や木管楽器はまともに音を出せなかったわ。」
「そう考えるとピアノはお手軽なのかな?」
「だから国立学校に導入するのでしょ?」
「歌の伴奏に使ってるオルガンの話をしたから、詩織さまが気を効かせてくれたのだと思うよ、女王陛下からのプレゼントだから子ども達も喜ぶだろう。」
「まずは、来週船便でストリートピアノ用のが一台届くのね。」
「店の広場に置いてみるが、どの程度演奏して貰えるものなのか分からないな。」
「先進国では子どもにピアノを習わせたりしてるみたいね。」
「詩織さまから、うちの子ども達にもピアノを…、無理強いせず興味を持ったら続けさせたら良いと言われたけど、身近にピアノを教えられる人はいないよな?」
「その辺りも民度の低さと言うことなのかしら。」
「かもな、詩織さまは音楽に溢れる国にと話されていたのだが。」
「でも、日本へ行った時は店で流れてる音楽がうるさ過ぎると感じることが有ったわ。」
「ああ、日本人スタッフから学生時代のバイトで苦痛だったこととして聞かされたことが有るよ。
 一日中つまらない宣伝やそれに付随する同じ音楽を聴かされ続け、給料が安かったから気が狂う前にやめたとか。
 王国の店では静かな音楽、それも同じ曲が繰り返されることがないから快適だとも。」
「王国で店を立ち上げたスタッフはその辺りのことも分かっていたのでしょうね。」
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近衛予備隊-302 [高校生バトル-73]

 王国の店前に有る大広場、その一角に雨と日差し対策の屋根を広めに作りピアノを置いた。
 詩織さまは日本から調律師を呼んで下さっただけで無く、ピアノを輸送するトラックやその担当者の手配まで指示、国立学校へ中古ピアノの搬入も始まっている。
 大広場のピアノは、海外のストリートピアノを参考にしたのだが…。

「ストリートピアノで演奏している動画を見ると、ピアノが屋根の無い所に置かれてるよね。」
「気候が違うのだろうな、過ごし易いと言われている王国の店付近でも屋根は必用不可欠、でも広い屋根の有るエリアはピアノに関係なく好評みたいだな。」
「大統領が直々にテープカットしてのオープン、その宣伝効果で人が集まってるものね。」
「時間帯を区切って子ども達の合唱発表も有り、ピアノ演奏だけではないからな。」
「合唱の伴奏は店とかのスタッフが交代で担当してくれているのよね。」
「ああ、日本から来ているスタッフを中心に、子ども達の練習にも付き合ってくれてるそうだ。
 ピアノを弾ける人があんなにいたとは思わなかったよ。
 ただピアノを自由に演奏して貰う時間帯は待つ人が多いそうなので、今後は予約制に、一度演奏をしてレベルの高かさをアピールした人には優先的に演奏して貰えるシステムにするそうだ。
 観客の心を動かしたかどうか判定しにくくは有るが、とてもひどい演奏をした人の演奏を何度も聴きたいとは思わないだろ。」
「でも、そんな演奏でもOKなのでしょ?」
「演奏する楽しさを伝えてくれるのならな。
 観光客の皆さんが思っていたより大勢演奏してくれ、それが思っていたより聴けるレベルなのには考えさせられたな、我が国の国民は演奏出来る人がほとんどいなくてさ。」
「国民でピアノを習っていたとなると、親が不正蓄財で逮捕されたとか勘ぐられてしまいそうだもの。
 今後は貧富に関わらず音楽を楽しめる国にしたいわね。」
「遠江王国が動き始めてくれたのだから、そして行かないとな。
 王家の人達は二社の大手楽器メーカーにも知り合いが多いそうでね。
 メーカーの販路拡大を意識しながら、我が国を音楽溢れる国に出来ないかと考えてるそうだよ。」
「音楽溢れるか、ラジオから流れる曲ではなく生で演奏される音楽と言うことなのよね。
 騒音にならず、国を盛り上げてくれれば良いのだけど。」
「近衛予備隊のマーチングバンドは、しばらく騒音でしかないだろうな。」
「騒音では無い所までレベルを上げてくれる指導者は見つかりそうなの?」
「どうかな、出来立てのバンド、その練習風景を公開して指導者募集中とアピールはしているが、さすがにリモートでは無理、今は国軍の軍楽隊メンバー頼りだな。」
「まずは指導者の為にそれなりの住まいを用意しないと駄目かもね。」
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近衛予備隊-303 [高校生バトル-73]

 広場に置いたピアノは面白いことになっていて詩織さまに報告…。

「国境なき合唱団?」
「始めは、子ども達の合唱発表後に伴奏をしてくれたスタッフが一緒に歌いましょうと聴衆に呼び掛けてくれたことからで、歌詞が分からなかったらラララで良いからと。
 簡単な曲をその場で教えたり、世界中の人が知っていそうな曲をと手探りだったのですが、多国籍の観光客が一緒に歌ってくれることが度々有ったそうです。
 それを面白がった連中がスケジュールを組み歌う曲の告知を始めたところ、練習してから時間に合わせて来てくれる観光客がいましてね。
 調子に乗った連中が混成四部合唱の曲を告知し、国境なき合唱団を名乗ろうとなったのです。」
「広場に来るまで全く知らなかった人と合唱するってことなの?」
「ええ、完成度は期待出来ませんが面白いと思いません?」
「良いわね、私も参加しようかしら。」
「是非お願いします、自分達も練習を始めた所なのです。」
「ピアノを弾きたい人との調整は出来てるの?」
「ピアノは予約で一杯、ピアノの周りには何時も人が集まっていて、さすがに窮屈みたいです。」
「台数を増やすしかないわね…、ホテルのロビーに置くピアノはピアノの演奏にある程度自信のある人限定、宮殿前広場に置くのは国境なき合唱団を中心に皆で歌いたい人達の伴奏用にするとかどう?」
「良いですね、それなら子ども達が歌声を披露する機会を増やせます。」
「国境なき合唱団の選曲は?」
「著作権的に問題のない古い曲を編曲してくれる人がいまして、楽譜は安価でダウンロード出来る様に、今は三曲だけですが増やして行きたいと。」
「どうせなら国境なき合唱団らしいオリジナルの曲を作って貰わない?」
「簡単ではないですよね?」
「国境なきと言うテーマと即席合唱団であることを考えたら難しい曲には出来ないでしょ、ヒットさせる必要は無く皆で歌いたくなる歌と言う条件で…、でも、まだ国境なき合唱団として歌ったことはないのよね?」
「はい、第一回目は十日後になりますので、オリジナル曲はその様子を見てからでも良いと思います。」
「十日後か…、日程的に難しいかもだけど、興味を持ちそうな人達に声を掛けてみようかな。」
「音楽家に知り合いがいるのですか?」
「音楽に携ってる人もいるけど色々ね、来られない人の為に映像を撮ってくれる?」
「勿論です。」
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近衛予備隊-304 [高校生バトル-73]

 国境なき合唱団一回目のミニ演奏会、即席合唱団員になったのは海外からの六か国十七名と近衛隊メンバーを合わせた五十名ほど。
 そこに女王陛下と大統領が加わることは何の発表もしなかったのだが、口コミで広まり充分過ぎるほどの観客が集まった。
 まずは国毎に自己紹介代わりのパフォーマンスから。
 各国の民謡や愛唱歌を歌ってくれる人だけでなくダンスを披露してくれる人も。
 事前に打ち合わせして有ったので、即席の割にはスムーズに進行。
 メインの合唱が思っていたより良かったのは、各パートに近衛隊のコーラス隊からパートを引っ張ってくれる人に入って貰ったから。
 楽譜をダウンロードし練習してから来てくれた観光客は彼らに合わせようとしてくれ即席ながらまとまりの有る合唱となった。
 観客達が我々の歌声をどう捉えたのかは、女王陛下が歌われる姿に感動しているだけかも知れず微妙だったが、即席合唱団の団員も観客も満足したことは間違いない。
 それは詩織さまも同じだった様で団員達を夕食会に招いた。

「スタッフの思い付きから始まった企画でどうなることかと思ってましたが、盛り上がって楽しかったです、皆さん有難う御座います。」
「気楽な夕食会ですので皆さん女王陛下がいらっしゃるからと言ってかしこまらないで下さい。」
「それを大統領閣下に言われてもね、私はジョンの妻でシャルロットです、皆さん今日の合唱は如何でしたか?」
「近衛隊の人が引っ張ってくれて歌い易かったです。」
「やはり引っ張ってくれる人がいないと即席合唱団は難しいと思いますか?」
「そう思います、私が参加している地元の合唱団は毎週練習をしているのですが、今日の演奏の足元にも及ばなくて、下手でも良いとの募集でしたが、足を引っ張ってしまったかと。」
「私は国境なき合唱団の可能性を考えると、それなりのレベルで対外的にアピールする部分と、歌唱力を度外視して『国境なき』を前面に出し合唱を楽しむと言う側面が有って良いと思います。
 ただ、今後の運営を考えると難しいかも知れません。」
「今後の運営について、何かお考えが有りますか?」
「今回は近衛隊の方に支えて頂いてですが、国を超えてホントに初対面の人達と合唱することが出来るのだと実感し、まだその感動から覚めていません。
 簡単なことだとは思っていませんが、国境なき合唱団が広がったら素敵だと思っています。
 でも、運営は大変なのでしょうね。」
「簡単ですよ、私の住むアビュニス王国では観光客向けのストリートピアノと、国境なき合唱団用のピアノ設置が決定しました。」
「えっ?」
「我らが王国の女王陛下がなさることです、記念すべき第一回のミニコンサートを経験して直ぐにゴーサインを出しました。」
「さすがに行動が早いですね、彼女はアビュニス王国のプリンセス シェリルです。」
「あっ、似てると思っていましたが、ご本人でしたか。」
「観光地なら国境なき合唱団の拠点にし易いです。」
「シャルロット、私も詩織に言われて動いたのだけど…。」
「失礼しました、紹介が遅れましたが遠江王国王家のプリンセス雅です。」
「いえ、紹介されるまでもなく、日本の紹介をして下さった時の歌声に魅了されましたよ。
 YouTubeだけでの活動とは言えプロの歌手は違います、最近は出演回数が減り残念ですが。」
「有難う、少し手を広げたのでミュージカルの撮影と時間が合わないのです。
 国境なき合唱団の発想を詩織から教えられて面白いと思いましてね、遠江王国内に拠点を作るだけでなく、日本各地の観光地に拠点を作れないか、検討する様に指示を出したのですよ。」
「どんな規模になるのですか?」
「拠点となる観光地にピアノを置く場所を確保、普段はストリートピアノとして運用、後は国境なき合唱団の運営スタッフ次第になるのかな。」
「あちこちに拠点が出来ても私は行けそうにないです…。」
「行く必要は無いのよ、あなたの所に拠点を作り、国境なき合唱団のメンバーを迎えいれる、そんなシステムに加わるだけのことなのだから。
 もっとも、魅力の無い街では歌いに来てくれないでしょうけどね。」
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近衛予備隊-305 [高校生バトル-73]

 観光客が気楽に立ち寄れる場所にピアノを置くことが出来、運営スタッフがいれば国境なき合唱団の活動拠点を増やすことは難しくないのだが…。

「問題は国境なき合唱団の趣旨を、どう理解して貰い広げて行くかなのよね。」
「詩織さまはどう考えておられるのですか?」
「旅先での国際交流に参加出来る人は限られますが、受け入れる側の体制が整っていれば様々な交流が出来ると思っています、国境を超えても合唱を通しての仲間がいるって素敵じゃないですか。」
「ですよね~、簡単なことだとは思えませんが。」
「ここは宮殿前広場を拠点にしますが、 シェリルの所はどこにするのです?」
「アビュニス王国記念公園を考えています。
 女王陛下の即位を記念して整備された公園ですが観光客に人気なのですよ。」
「宮殿に王国記念公園か…、遠江王国に候補地は多いのだけど、そこまで特別な場所ではなくて、まあ、数で勝負しますか。」
「雅、数で勝負って?」
「国境なき合唱団の趣旨を理解してくれていれば良いのだから、観光客だけでなく海外から働きに来てる人達が参加し易い環境を整えたいかな、国籍は偏るけど。」
「何時も多国籍でとは行かないですものね、活動のベースはその土地で暮らす人になって欲しいです。」
「モニターを置き回線を繋いで一緒に練習というのはどうかな、アビュニス王国での歌に宮殿前のメンバーが合わせて歌うとか。」
「そうね、同時に歌うと考えたら難しいけど、どちらかに合わせるのなら音声がズレていない映像を撮影することも出来る、気軽に海外旅行出来ない人でも『国境なき』を実感出来るかも。」
「まずは活動を国際社会に認知させる必要が有るのですが。」
「しばらくは今日みたいなミニ演奏会とネット回線を繋いでの合同練習だけでも、その模様を配信していれば、直ぐに広まりそうな気がします。」
「将来的には宮殿前での合唱に合わせ、各地で歌うイベントとかどうです?」
「アビュニス王国と遠江王国での準備が整ったら簡単に出来そう、その模様を配信すれば…、問題は曲でしょうか。」
「だな、世界各地の民謡を拾い集めるにしても、世界的にあまり知られていない曲では気軽に歌えない、やはりオリジナル曲が欲しいかな。」
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近衛予備隊-306 [高校生バトル-73]

「と言うことなのだけど、美紀、どう?」
「私が呼ばれた理由は分かったわ、国によって好みが違うだろうし、歌い易さを重視すると言う制約が有る、手探りで何曲か作曲してみて皆さんに判断して頂くしかないわね。
 詩織、歌いたい人が五割を合格ラインでどう?」
「三割で良いと思う、歌いたい人が歌えば良いのだから。
 お願い出来るのなら契約はそこの近衛と相談して欲しいのだけど。」
「オッケー、歌詞はどうする?」
「近衛隊のメンバーが作ったのが有るのだけど、歌い易い様に変えてくれて構わない、政治や宗教を感じさせる詩はNGでね。」
「女王陛下を讃える歌は?」
「恥ずかしいからやめて。」
「はは、でも嬉しいわ、社長になり企業グループのトップから女王さまになられた詩織さま、まさか直々に声を掛けて下さるとはね。
 国境なき合唱団の趣旨は分かり易いわ、ヒット曲を作れるとは思えないけど、合唱団の愛唱曲を目指してみるね。
 歌詞は英語だけで良いの?」
「先々は他の言語も意識したいけど、スタート時は英語で行くしかないでしょ。」
「詩織さま、敢えて言語を用いずスキャットのみと言うのは如何です?」
「あっ、そうね、面白いかも、美紀はどう思う?」
「確かにスキャットなら言葉の壁を感じさせないわね、う~ん…、色々試してみたいわ。」
「宮殿内に用意した美紀の部屋にはグランドピアノとパソコンを用意したからね、音楽ソフトは担当に言えば直ぐに指定のものをダウンロードしてくれるわ。
 ピアノは美紀が自身のYouTubeチャンネルで欲しいと話してたのにしたからね。」
「うっ、私を日本に帰らせないつもりとか?」
「YouTubeの撮影はうちのスタッフが手伝うから安心して良いわよ。」
「来るまでは暑いイメージが有って、実際飛行機を降りた時は暑いと感じたけど、ここは標高が高いからか快適、詩織がここ居付いたのが納得出来たわ、昔から暑いのも寒いのも苦手だと話してたものね。」
「詩織さまは、そんな理由で?」
「それだけでは無いわ、私の庭園が有ってくつろげるし宮殿の中なら自由でね。」
「遠江王国や日本ではそんな訳に行かないものね、宮殿は建てられた時の映像を見たことが有るのだけど、それよりかなり大きくなったよね。」
「ええ、大統領の執務室を増築、それに伴って大統領親衛隊とかの居住スペースを増やしたし、ガウディのサグラダ ファミリアみたいにずっと工事中なのよ。
 それによって雇用の場が確保され、名所として観光客が訪れる、今度は国境なき合唱団の結成を記念して大ホールの建設はどうかしら。」
「それだけの予算が有るのね。」
「無くても何とかする、この共和国には、まともな大ホールがなくてね、大統領が文化面の充実を考えてるから必要なのよ。」
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近衛予備隊-307 [高校生バトル-73]

 王宮前広場の国境なき合唱団、人々にそんなイメージを持って貰いたいと思っているのは、我が国発の文化として発信して行きたいからだ。
 その為にはアビュニス王国や遠江王国での活動が始まる前が勝負と考え、王宮前広場では毎日様々な企画を。
 国境なき合唱団主催としての催しは、その光景を撮影し編集、映像は毎日発信している。
 企画は皆で出し合っているのだが、簡単な歌遊びをしたり輪唱したり、ざっくり二つに分けて簡単な曲の二部合唱に挑戦したりも。
 自分も時間を作って積極的に参加している。
 大統領が遊んでいて良いのかと言われそうだが、一つの目標として音楽溢れる国にすると宣言してして有る。
 詩織の友人である美紀は、作曲中の曲から引用し歌遊びの形で観客に教え歌って貰っている。
 その反応を見ながら愛唱曲を完成させるのだとか。
 彼女が歌企画の合間に、一つの曲をボサノバ風やクラシック調などにアレンジして演奏してくれるのも好評で、国境なき合唱団の為に改装された王宮前広場は音楽で溢れている。

「美紀、さすがプロの音楽家は違うと感じるよ。」
「ピアニストの道は早めに諦め作曲を活動の中心にしたのだけどね。」
「ピアニストとして生きて行くのは難しいのですか?」
「かなりね、日本ではピアノを小さい頃から習い事として取り組む人が多いのだけど、コンクールで結果を出しクラシックのピアニストとして認められる人は極僅かなの。」
「我が国で少しばかりピアノを流行らせた所で職業としてのピアニストは無理なのですね。」
「それは別問題かな、クラッシックのピアニストとして大ホールに人を呼ぶのはハードルが高くても、ホテルのラウンジで演奏するとかの場が有ればね、音楽はクラシックだけでは無いし、結局需要が有るかどうかなのよ。」
「その辺りも検討して作曲の道へ?」
「遊びで作った曲が何故か受けてね、そこから話を持ち掛けられている内に本業になったと言う感じかな。
 ピアニストとしては才能ある人にかなわないと思い始めてた時期だったから迷いは無かったの。」
「音楽が盛んになったら、音楽家と言う職業も広がると思いますか?」
「そうね、直ぐに大勢とは行かなくても需要は増えると思うわ。
 近衛予備隊でマーチングバンドを結成したら、教える人が必要になったでしょ。
 子どもを中心に、楽器に取り組める環境を整えて行くことが出来たら良いわね。」
「やはりマーチングバンドのレベルを上げるには優秀な指導者が必要ですか?」
「ええ、マーチングバンドは指導者次第、まだ見つからないの?」
「国内にはいませんので、どうしても海外から、一番結び付きの強い日本人は英語での指導がネックになっています。」
「そっか、予算は?」
「お客さんに喜んで貰える程度にして貰えたら、収入に繋がると考えていますので、詩織さまとも相談してそれなりの額を用意しています。」
「でもね、今のレベルなら基礎を教えられさえすれば、指導者としての力量はまだそれ程必要としないと思うわ、まずはハイレベルな指導を受け止められるだけのレベルまで上げることが先。
 指導者として力量の高い人にお願いするのはそれからで良いのよ。
 その程度なら、大学の後輩でも、軍楽隊の人達よりはマシだから声を掛けてみようか?」
「そうですね、いきなり上手な演奏が出来る訳では有りませんものね。
 担当者と相談して頂けますか?」
「ええ、音楽大学を卒業しても思う様に音楽活動が出来てない人もいてね。
 そんな彼らにとっても、近衛予備隊マーチングバンドの指導に参加することはプラスになると思うの、住まいを用意してくれれば給料は安くて構わないけど、彼らが自分達のパフォーマンスで稼げる場が有ったら喜ぶでしょうね。」
「分かりました、人数は何人ぐらいになりますか?」
「う~ん、どうかな…、一度詩織と相談してみるわ。」
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近衛予備隊-308 [高校生バトル-73]

 美紀は詩織や出身大学と相談、その結果特別研修と言う名目で若い指導者を受け入れることに。
 大学生や卒業生なのだが音楽大学での留学には特別な意味が有り、音楽を教えてくれる人のいない国では、そこに価値を見出したとしても留学とは呼びたくないそうだ。
 それなりに力は有っても音楽で生活して行けなかったり挫折を経験、それでも英語の得意な人が十名応募してくれた。
 住まいを無料で提供する代わりにマーチングバンドの指導をして貰い、彼らのパフォーマンスを発表する場として、ホテルのラウンジを使って貰う。
 ギャラに関しては客の反応を見てからとした。

「美紀、明日到着する研修生にはどんな話をすれば良いのです?」
「まずは難しく考えずに、子ども達の練習に参加して貰えば良いと思うわ。
 自然に子ども達と仲良くなって楽器を教える、そんな出会いが彼らには必要なのよ。」
「では我々は見守っているだけで良いのですね。」
「良いけど、大統領ってそんなに暇なの?」
「平和な国で任せられる部下がいますので。
 大統領から色々口出しされたら部下達も動きにくいです。」
「確かにジョンが国民から尊敬されてるのは凄く感じる、尊敬する人の為にも真面目に働こうって感じなのかしら?」
「どうですかね、自分は部下のことを信頼していますので。」
「なるほど、明日来る人の中には挫折を経験した人もいるのだけど、尊敬や信頼といった人間関係もここで学んで欲しいものだわ。」
「美紀は、前から彼らと交流が有ったのですか?」
「二人とはね、ただ、同期にも挫折してから立ち直れない人がいたりして、私もピアノ演奏に関しては挫折した訳で…。」
「演奏で名声を得るのは大変なのですね。」
「ええ、自分の演奏を人気有るトップ演奏家と冷静に比較分析出来れば良いのだけど、私の通ってた音楽大学は入学するのも大変なの。
 そこに入学出来た自分がコンクールで惨めな結果しか残せないと思ってしまうとね。」
「音楽家としての仕事に就けないのですか…。」
「妥協して音楽教室の先生や他の道に進む人もいるのよ。
 明日来る彼らも近衛予備隊の子達との交流を通して色々学び考えることでしょう。
 ホテルでの演奏は彼らにとって楽しみだと思うし。」
「難しい曲を演奏されても客は喜ばないのですが大丈夫でしょうか?」
「そうね、ホテルのラウンジで誰も喜ばない類の現代音楽を演奏するようなら直ぐに帰らせるわ。
 コンクールを目指して解釈の難しい曲ばかり演奏して来た人は、何の為の音楽なのかと言う根源から外れてしまう人もいてね。
 ホテルのお客さんにはリラックスして音楽を楽しんで欲しいし、マーチングバンドの子達には演奏を楽しんで欲しいでしょ。」
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近衛予備隊-309 [高校生バトル-73]

 音楽大学関連の特別研修生達には到着早々、近衛予備隊マーチングバンドの自主練習を見て貰った。

「美紀、個人差は有るものの直ぐに子ども達と打ち解けてくれましたね。」
「取り敢えず練習してる曲を、お手本として演奏したのが効果的だったかな。
 子ども達に褒められて調子に乗ってる奴もいたけど、軍楽隊との差は歴然、子どもにとって良い刺激になったでしょう。
 トランペット奏者は自身の演奏に行き詰っている聞いていたのだけど、教えるのが上手でビックリしたわ、天才タイプじゃないから苦労して来たのかしら。」
「天才タイプの人もいるのですね。」
「演奏家には独特の感性で人を魅了する人がね、でも、教えることは苦手だったりするのよ。
 自分にとっては簡単なことを凡人に伝えるのが難しいみたいで。」
「スポーツで活躍した名選手が、必ずしも指導者として成功出来る訳ではないのと同じことですか。」
「そんな感じ、名演奏家で有りながら指導者としても優秀な人には尊敬の念しかないわ。」
「今後の指導はどうします?」
「今夜相談するつもりだけど、軍楽隊の人はどうするの?」
「皆さんの判断にお任せします。
 近衛予備隊マーチングバンドの指導から外れても、彼らは自分の仕事を持っていますので気にする必要は有りません、やり易いようにして下さい。」
「今日の感じだと、あの十名で充分だと思うし、指導方針が固まり練習のペースを掴めたらかなり暇になるかも、彼らに対して他の課題を与えることは出来ないかしら?」
「そうですね…、楽器演奏で彼らが国境なき合唱団に関われる曲ってどうです?」
「ジョンは王宮前広場を中心とした国境なき合唱団を目指したいのだったわね、もう直ぐアビュニス王国や遠江王国にも拠点が出来て王宮前広場のイメージが弱まって行くのだろうけど、そこに楽器を加わえることで王宮前広場への注目度を上げるってこと?」
「出来ますか?」
「他の合唱曲と差別化を図れるかな…、楽器が加わらなくても合唱曲として成り立つ形にしておけば良いのだから、彼らとも相談してみるわ。
 王宮前広場の企画もバリエーションを増やそうか。」
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近衛予備隊-310 [高校生バトル-73]

 美紀は国境なき合唱団の愛唱曲作りだけでなく、近衛予備隊マーチングバンドの指導に関しても積極的に動き続けていてくれる。

「美紀、マーチングバンドは観光客に見せられるレベルになると思います?」
「実力を度外視し演出だけで観光客に喜んで貰うのなら、もう可能でしょうね。」
「それは…。」
「成長途上の子って魅力的なのよ、指導体制が変わり上を目指して順調に成長してる子だけでは無く、戸惑い苦労してる子もいるでしょ。
 それを映像で公開して来たから…、宮殿前広場で今までの練習成果を大統領閣下に見て頂くイベントなんてどう?」
「日頃から見てはいますが…、彼らにとっての晴れ舞台を用意するのですね。」
「まずは下手なりに頑張っている姿を応援してくれる人達に見せることに意味が有るの。
 練習と本番は全然違うから、彼らには沢山の本番を経験して欲しいわ。」
「沢山の本番ですか?」
「本番の緊張感は百回練習しても味わうことは出来ないの。
 本番に慣れ過ぎて成長が鈍る子が出て来るかもだけど、観客により良い演奏を聴かせたいと思う子は本番で伸びるのよ。」
「それなら、日々、練習の仕上げとして店の前か宮殿前で演奏ってどうです?」
「良いけど移動が大変じゃないの?」
「う~ん…、確かに楽器も積んでのバス一台では無理ですね…。」
「でも、バスに乗れる人数だけで編成したグループをバンドの中のエリートクラスとしても良いわね。
 競い合う気持ちが無いと上達は遅い、小編成になるけどそれは全員の目標にもなるかな、こちらで選抜しながらエリートクラス入りの希望を聞いてみる?」
「エリートクラスに入ると負担が大きくなるのですよね。」
「その負担を負担と感じ無い子が伸びるのだけど、近衛予備隊としては難しいの?」
「難しくはないのですが、マーチングバンドで目立ってる子は職業実習でも実績を上げていましてね。
 誰よりも早く人に聞かせられるレベルまで上達したフルートの子は店の人気者でも有るのです。」
「文字通り、一芸に秀でる者は多芸に通ず、なのね。
 ジョンとしては彼女が店の仕事に精通するのと、フルートで人を魅了して行くのと、どっちが良いの?」
「どちらでも構いません、本人が充実した人生を歩んでくたらそれで良いのです。」
「もし本人が両方極めたいと欲張ったら?」
「カリキュラムの見直しを指示します、彼女が今必要だと感じてることを中心に学び、そうですね…、二十歳になってから学習しても問題の無いプログラムは後回しです。」
「そんな内容にも取り組んでると?」
「彼女は十四歳ですが大学で教えている内容にも興味が有るのです。
 今の店は遠江王国のスタッフが構築してくれたシステムで運用されていますが、今でも色々なことを詩織さまに頼らざるを得ないのが不満だと話してくれました。」
「成程、彼女がプロのフルート奏者を目指す必要は無いけど、大統領が望んでいる宮殿前広場を国境なき合唱団の中心地にする、と言うミッションなら頑張って協力してくれそうね。」
「多分大丈夫です、近衛予備隊の連中が作った称号が有りましてね。
 本当に頑張ってると皆が認めた女の子は、大統領の妹を名乗ることが許されるのです。
 彼女はその妹の中でも兄として自慢出来る子の一人ですから。」
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