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F組三国志 13 嶋大地 ブログトップ

F組三国志 13-1 [F組三国志 13 嶋大地]

えっと、この店の前で待ってれば良かったんだよな。
工場見学って…、梶田さんの会社ってどんな感じなんだろ。
今日は何人集まるのかな…。
おっと、着いたってメールを美咲さまに入れておくかな。

送信してっと。

淳一の家で演奏を聴いてからとか言ってたけど、チェロって言われてもぴんとこないもんな。
やっぱJポップだよ。
この新曲もなかなかいいぞ…。
おっと、音量上げすぎると耳、悪くするんだった、気をつけなきゃ…。

あっ、返信だ。

ふむ、淳一と亜美が早川さんの車でこっちへ向かってるのか、あの二人いつの間にか仲良くなってたな~。
舘内亜美、明るくてかわいくて、淳一いいよな~。
俺も彼女欲し~。

あっ、あの車かな?

「お待たせ、嶋くん。」
「こんにちは早川さん、えっと、俺、助手席で良いんですか?」
「良いも悪いも、後ろのお二人のじゃまをするようなお人なの? 嶋くんは。」
「はは、まいったなぁ~。」

「じゃあ行くわよ。」
「梶田さんの会社って遠いんですか?」
「そんなんでもないけど、駅やバス亭からは少し距離があるの。」
「それで車か…、でも早川さんってプロジェクトFのサブチーフでプロジェクト梶田とは違うんじゃないですか?」
「私は省吾リーダーの活動を記録していくって役目も担ってるの、だからリーダーには極力同行していたいって感じでね。」
「そっか、でも省吾さま乗ってませんね、この車に。」
「そ~なのよ~、美咲ちゃんたら、さっさと髙尾さんの車に乗り込んじゃってさ。
そしたら私の力ではどうにもなんないじゃない。」
「ははは、早川さんはお二人のじゃまをするようなお人じゃないですもんね。」
「ふふ、微妙にじゃましてるけど。」
「え~。」
「だって悔しいじゃない美咲ちゃんたら私たちのリーダーとアツアツでさ。」
「はは、でも省吾さまのことはリーダーって呼んでるんですね。」
「そうね、彼のことをどう呼ぶかは、私たち結構戸惑っているのよ。
私は、省吾さんとも呼んでるけどね。」
「はい?」
「リーダーに対して省吾くんじゃおかしいし、大学生が高一に対して省吾さんっていうのも、しっくりこないって人もいて…。
今のところ省吾リーダーという呼び方にしてるのは、リーダーが誰なのか他の人にも分かってもらうって意味合いもあるけどね。」
「なるほど、チームのメンバー、今日は大勢集まるんですか?」
「今日はそれほどでもないかな。
大学生メンバー四人と高校生七人ってとこ、リーダーや梶田さんを含めてね。
他のメンバーには、ある程度情報を整理してからって、効率を考えて、リーダーのお考えよ。
嶋くんや淳一くんはプロジェクトに対してすぐ反応してくれたから優先って感じかな。」
「うちも親が小さいながらも会社を経営していて、はは、跡取りとしての興味もあるんです。」
「そっか、じゃあ経営学部とか志望なのね。」
「いえ、工学部の電気、電子の関係かコンピューター関連への進学を考えています。
経営のことを勉強するのはもっと後でもいいみたいで。」
「そっか、高一でも、しっかりしてるのね。」
「そんなことないですよ。」
「はは、ご謙遜。」
「工場って親のとこしか見たことなかったんで、今日はちょっと楽しみです。」

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F組三国志 13-2 [F組三国志 13 嶋大地]

結構敷地広いな、この工場。
広いと作業とか楽なんだろうな…。

「早川さんたちも来たから今日のメンバー揃ったね。
みんな、こちらが、梶田社長。」
「梶田です、今日は来て下さってありがとうございます。
まずは工場内を案内させていただいて、その後、会議室で感想など聞かせていただけたらと思っています。
今日は休日ですから、稼動していませんが、機械の中には不用意に触れると怪我をする危険な物もありますので、くれぐれもご注意下さい。
それでは、こちらへどうぞ。」

へ~、色んな機械があるんだ、うちの機械とはずいぶん違うなぁ~。
特殊技術、特殊な機械か、やっぱり他社と違う物を作らないと、企業間の競争に勝てないんだろうな。
省吾さまも、大学生の人たちも熱心に梶田社長の話しを聞いてる…。
あっ、特殊な機械の応用か、確かに省吾さまの質問通り、特殊だと応用が利きにくくなるってことか。
コストパフォーマンス、うん、親父もよく口にする言葉だ。
稼働率…、この機械…、動いてない時間が長いってことかな?

今度は原材料の納入から加工、製品の出荷の流れの確認か…。
ロスがないかの見直しってことかな。
はは、女の子たちに省吾さま、解説を付け加えてる。
そうだよな、俺は親の工場見てるから大体の流れは理解できるけど、美咲さまたちにはな。

えっ? ごみ置き場? 廃棄物も見学か…。
う~ん、そう言えばこの工場って、整理が行き届いてない気がする、雑然とした感じで。
はは、こんなに整理されてなかったら、仁さん、激怒だろうな。
ふ~ん、ごみの分別、普通はこんな感じなのかな…、あれっ?
ストレッチフィルムは…。

工場内の見学は終わりか…。

「みんな、ここからはみんなの感想とか聞かせてもらう時間なんだけど、梶田社長には、生意気な意見、的外れな発言が出ることを承知していただいてるからね。
みんなが思ったことを遠慮なく出してもらえたら、面白いアイデアにつながるかもしれないから。
ま、お茶とお菓子をいただきながらとしようか。」

今日は省吾さまが仕切るんだ、俺たち高校生組がいるから高山チーフは一歩下がったのかな?
え~っと、うん、ずいぶん生意気な発言になるけど…。

「おう、嶋、どうぞ、社長、嶋大地です。」
「ああ、よろしく。」
「よろしくお願いします、えっと、すごく生意気なことなんですけど…。」
「はは、その自覚があっての発言なら、私も心して受け止めるよ。」
「えっと~、やはり今は人が足りてない状態なんでしょうか?」
「そんなことはないっていうか…、むしろ、あまり気味で…、一気に社員を減らさなくはいけないのかもしれないけどね、でも、そうするときちんとした仕事を受注できなくなってしまうから、難しいところでね。」
「ということは、仕事中に手が空くこともあるのですか?」
「そうだね。」
「そんな時、社員の皆さんはどうしていらっしゃるんです?」
「休憩室でだべったりとか…。」
「掃除とか工場内の整理とかはされないのですか?」
「ああ…、そうだね…。」
「工場内の掃除、整理整頓をする時間は有るのですね?」
「うん…、ただ…、従業員の中のリーダー格が、やることやったら休憩って感じで…。」
「うちの親も小さいながら工場を経営しています。
家から近いのですが、工場は子どもの遊び場じゃないって父に言われてまして、小さい頃は、なかなか工場の中は見せてもらえませんでした。
でも、六年生になった頃、もう見学ぐらいは大丈夫だろうってことで許しが出まして。
機械が動くのを見るのが楽しかったので、それからは度々見学させてもらいに行くようになりました。
作業スケジュールに余裕のある日限定でしたが。
つまり、自分が見学させてもらえる様な日は、従業員の皆さんの手が空くことも有った訳です。
手が空くと、皆さん、暇つぶしなんだよ、とか言いながら工場内の掃除、整理整頓を始めるんです。
そんな時は、子ども心に、製造の仕事がない時ぐらいはゆっくりしたくないのかな、と思いつつも、手伝っていました。
現場の作業はさせてもらえませんから、例え掃除でも、大人のみなさんの仲間入りさせてもらえて嬉しかったんです。
作業中、従業員のみなさんから、色々な話を聞かせていただけましたし…。
そんな時、えっと、仁さんってみんなから呼ばれている現場責任者の人がですね、自分たちが働く場をきれいにすることは当たり前のことなんだって、話して下さって…。
綺麗な方が、みんな気持ち良く働けるからって、逆に整理整頓が良い届いていないと、作業効率が落ちたり、事故につながることもある、とても大切なことだからって、詳しく説明して下さいました。
例えば工場内の通路が交差する所に、物を不用意に置くと見通しが悪くなって事故の危険性が増すとか、物が通路にはみ出していると、フォークリフトがひっかけたり、人がつまづいたりするからとか。
今日工場を見学させていただいて、えっと、事故とか起こっていないのですか?」
「え~っと、はは、おはずかしい気分だ…、大きい事故は起きてないけど…、今考えると、私の至らなさが原因だったかもしれない事故は幾つか…。」
「大きい事故が起こる前に改善すべきことがかなりあるかもしれません。」
「そうかも…、指摘してくれてありがとう。
素直に頭を下げさせてもらうよ。」
「いえ、生意気言ってしまって…。」
「嶋が話してくれて助かったよ、梶田社長には耳が痛い生意気発言を話しやすくなったからね。」
「お、お願いします。」
「取引先や融資元との交渉の過程で、工場の見学って有りませんか?」
「そうだね、うちの機械を見ていただいたりとかで。」
「そんな時、取引先も金融機関の担当者も工場全体を見て値踏みをしているんです。
つまり、この工場に部品の製造を依頼をして大丈夫か、この会社に融資をして大丈夫か何てことは、特殊な機械を持ってるかどうかだけで判断している訳でないんです。
安心して取引関係を結べる会社かどうか、今日見学させていただいて、自分が取引を考える立場だったらかなり躊躇します。
自分の生意気発言は本やネットの情報が元ですが、嶋の話しは身近な体験によるもので核心をついていると思うんです。
なあ、嶋、後でこちらの本間さんと工場内の整理整頓のポイントをまとめてくれないかな。」
「おっけい。」
「社長、それを参考に工場内をきちんとしませんか?」
「ああ、了解したよ、私、自ら指示を出して…、う~ん、高校生に指摘される様な状態になってることに気付けなかった自分もはずかしいが、社員たちも何とかしないといけないな。」
「そうですね、色々検討しないといけないみたいですね。
本間さん、記録の方、そのあたりも含めてお願いします、梶田社長には失礼になるぐらい、写真もしっかり使って、ビフォアーの記録を残しておきたいですからね。」
「了解、リーダー。」

省吾さま、本気だ。
本気でこの会社を変えようとしているんだ。
そうだ、親父や仁さんにも話してみようかな。

「ねえ、嶋、他に気付いたことはないの?」
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F組三国志 13-3 [F組三国志 13 嶋大地]

「そうだね、えっと、まずストレッチフィルムのことかな。」
「えっ? 何? それ?」
「まあ…、簡単に言えば、原料や製品の輸送時に荷崩れを起こさないため固定するフィルムなんだけど、それが無造作に捨てられていてね。」
「どういうこと?」
「やはり、仁さんに教えてもらったことなんだけど、使用済みのストレッチフィルムはお金になるごみなんだ。」
「資源ごみってことかな?」
「そう、だからうちでは紙とかも剥がしてきちんと分別してる、そうしておくとリサイクル業者が引き取ってくれる単価も上がるらしい、うちはかなり忙しくて余裕がない時以外、ごみもきちんと分別して、資源ごみとして金にしてるんだ、もちろんダンボールとかもね。」
「なるほど。」
「で、もちろん工場の本業が優先だけど、いつも忙しい訳でもないから、余裕のある時に空いてるトラック使ってリサイクル業者のところへ持ち込んでいるんだ、きちんと分別して持ち込めば、それなりのお金をもらえるからね。
引き取りにきてもらうと、お金を払うことになるらしい。」
「ということはゴミの処理費用が安く済むってことなんだね。」
「ああ、で、うちの父は資源ごみを売って得たお金は全額、社員の福利厚生に当てているんだ。」
「あっ、それなら従業員のリサイクルに対する取り組み方も真面目なものになるね。」
「会社としても、ごみ処理の経費削減と福利厚生の充実ってことでプラスになっている。」
「ということは、この工場、かなり損してる?」
「鉄屑だって放置しておけばじゃまにしかならないけど、売れば金になるから。
作業工程で出る屑はリサイクルに回しているみたいだけど、それとは関係ない様な鉄屑とか結構見かけたからね。」
「嶋、ありがとう。
それから、みんなに相談、通常のリサイクルは嶋の指摘にそって改善していけると思うけど、それ以外に製造過程で出る材料の切れ端とかを使って、何か作れないか考えてもらえないかな。
それこそ、ばかげてるかも、とか、的外れかもと思うようなものでもね。
そのままでは、突飛な案でも、そこに違った案を組み合わせていくと、面白いアイディアとなる可能性もある。
原価の安い商品を増やせないかと思っていてね。」
「確かに廃棄物の置き場には、何かに使えそうな物もあったな。」
「でしょ、えっと、嶋には、もっと色々聞きたいけど、他の人の感想とかも聞いておきたい。
みんな、どうかな?」
「ここの部品って色んな形をしているんですね。」
「そうだね、すみれさん。」
「どんな形のものでも作れるんですか?」
「梶田社長、どうです?」
「ああ、平面的なものなら余程複雑でない限りどんな形のもできる、立体的なのは制約が増えるけど、それなりに作れるよ。
もっとも、うちの会社の特殊技術って訳でもないけどね。」
「じゃあ、自分でデザインしたものを金属で作ってもらうことも可能なんですか?」
「技術的には問題ないけど、一個だけだと高くつくからね。」
「梶田社長、お金を出せば作れるってことですね。」
「そうだけど。」
「大量生産ばかりが工場じゃないとも思うんです。
すみれさん、ありがとう、おぼろげに考えていたことがまとまってきたよ。」

省吾さま、何か企んでる…。
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F組三国志 13-4 [F組三国志 13 嶋大地]

「みなさん、今日は、色々ありがとうございました。
早速、明日から工場内の整理に取り組ませていただきます。
この後、みなさんは?」
「リーダーたちはお買い物、黒川くんと舘内さんは黒川くんの家で夕食だったよね。」
「はい。」
「嶋くんは特に予定とかないの?」
「え、ええ。」
「良かったら、うちで晩御飯どう?」
「えっ?」
「原崎さんや高山チーフたちもいかがです?」
「自分たちはそれぞれ予定が有りまして。」
「嶋くんも、すみれも遊びに来て。」
「梨乃、良いの?」
「うん、帰りは、父さん送ってあげるんでしょ?」
「もちろんだ。」
「なら安心だね、嶋くんは?
嶋くんは、プロジェクト梶田の顧問として、これからも、省吾リーダーと同じように意見を出して欲しいから。」
「えっ、高山チーフ、さっき話してた顧問ってこと、決定なんですか?」
「もちろんだよ、俺たちにはない経験を持ってるから今後も色々教えて欲しいんだ。」
「う~ん…。」
「はは、ちゃんと家まで送っていって、家の方にも、今日のお礼やプロジェクトに参加していただくにあたってのご挨拶をさせて欲しいから、お願いします。」
「社長…、はい、分かりました、家に連絡しときます。」
「ありがとうございます。」

何かとんでもないことになってしまった気もするけど…。
親父の考え、うちの工場のことを伝えていけばいいのかな。
省吾さまと同じようには出来ないけど…。
まあ、自分にとっても勉強になることだと思う。
あっと、家に電話しとかなきゃ。

「さあどうぞ、今日はゆっくりしていってね。」
「はい、おじゃまします。」
「嶋くん、すみれ、私の部屋に案内するわ、父さん食事の時間までいいでしょ?」
「ああ。」

「梨乃んち広いのね。
わっ、素敵なお部屋ね、センスいいなぁ~。」
「はは、でも、もうほとんど他人の家みたいなことになっててね、父さんは先祖からの土地や建物だから、簡単にはあきらめたくないって言ってるけど、会社の危機を乗り越えられなかったら…。」
「そっか…。」
「大丈夫だよ、まだ間に合う、俺も親父たちとも相談して協力するから。」
「嶋くん、ありがとう。」
「省吾さまも…、ねえ、今日、みんなの感想とか一通り聞き終わってからの話しすごくなかった?」
「敷地内で有効利用されてない倉庫の活用、余剰人員を使ってのリスクの少ない事業展開、学生を巻き込んでのアイデアコンテスト…、聞いてて圧倒させられたな。」
「ほとんどが、今、無駄になってる部分の活用だから、例えうまくいかなかったとしても、マイナスにはなりにくいって、色々考えてるのよね。」
「うんさすが省吾さまだって思う、勉強ができても仕事の上では使えない人いくらでもいるって、うちの親父言ってたけど、彼が、大学生に指示を出したり、社長に話したりしてるとこ見てると、レベルが違うって思うよ。」
「そうよね、でも嶋くんの今日の話しもすごく参考になったわ。
私もこれからは会社内の掃除とか手伝おうって決めたの。
それと、プロジェクトの顧問になってくれてありがとうね。」
「はは、何か簡単に…、されてしまったって感じだけどね。」
「梨乃、私もチーム赤澤には登録させてもらってるから、手伝えることがあったら気軽に声、かけてね。」
「うん、ありがとう…。」

女の子二人と女の子の部屋で会話してるぞ、俺。
お~、何か幸せなな気分。
プロジェクト梶田のメンバーになったってことは梶田梨乃と話す機会も増えるのかな?
でも、梶田梨乃は高山チーフとかに色々教えてもらうってことだから…。
原崎すみれは…。
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F組三国志 13-5 [F組三国志 13 嶋大地]

「ねえ、今日、黒川くんと亜美ってさ。」
「うん、何か急に親密になりましたって雰囲気だったよね。
亜美の、淳一さんって呼ぶ時の表情ったら、もう、恋してますって感じでさ。」
「テストの打ち上げの時に、朋美の前で告って成立したばかりなのよね。」
「朋美もちょっとかわいそうだな。」
「うん、あこがれの哲平さんは、どうやら静さんにぞっこんみたいだし、淳一くん優しそうでいいなぁ~、なんて言ってたら、亜美に目の前で先越されて…、でも彼女はめげないわよ、きっと。
はは、性格的には林くんの方がお似合いじゃないのかしらね。」
「かも。」

「ね、嶋くんのタイプってどうなの?」
「えっ? タイプ?」
「好きな女の子のタイプ。」
「う~ん。」
「ロングかショートか?」
「えっ?」
「ロングヘアーの女の子かショートカットの女の子か、どちらがお好き?」
「えっ? そんなこと考えたことなかったけど…。
あっ、ロングヘアーの梶田さんと、ショートカットの原崎さん…。
そんなこと、ここで答えられる訳ないだろ。」
「ふふ、私のことはすみれって呼んでくれないかな、この前、ちさとも提案してたでしょ。」
「あ、ああ。」
「私のことは梨乃って。」
「あらっ、梨乃お嬢さまじゃなくてもいいの?」
「ちさとじゃないわよ。」
「ね、大地さんって呼んでもいいかな?」
「う~ん、そう呼ばれること、あまりないから、ちょっと照れくさいかも。」
「だめじゃ、ないのよね。」
「まあ…、ね。」

「あっ、母さんみたい。」
「梨乃、お食事にしましょ。」
「は~い。」

「嶋くん、今日はほんとにありがとう。」
「い、いえ、ずいぶん生意気なこと言ってしまって…。」
「はは、生意気なことを言われるだけ、私の脇が甘かったってことだよ。」
「そうよね、赤澤くんに嶋くん、高校一年生にすがらなきゃならないなんて、あなた、しっかりして下さいね。」
「ふふ、でも、母さん、省吾さまは高校一年のレベルじゃないのよ、大学生の人たちにも普通に指示出してるし。」
「学年トップだったのよね。」
「高校のテストの結果なんて彼の評価には関係ないんじゃないか、ね、嶋くん。」
「その通りです、自分たちとは、全然違う次元で物事を考えていると感じます。」
「そうなの…、嶋くん、今日工場見学してどうだった?」
「えっ、えっと…。」
「こらこら、嶋くんには今日色々教えてもらったってさっき話したろ。」
「どう、何とかなりそうかしら?」
「はい、省吾さまやチーム赤澤が動き始めましたから、後は時間との勝負ですか? 社長。」
「高山チーフからはあせってはいけないけど、のんびりしてる余裕はないって言われた。」
「そうですか。」
「でも、学生の夏休みを最大限に活用して、チーム赤澤を世に知らしめつつ、会社も再生しましょうって。」
「高山チーフも本気だ。」
「そう言えば、嶋くんのお宅も工場を経営していらっしゃるとか?」
「はい、機械部品を扱っています。」
「やはり、不況の影響って厳しいのかしら?」
「いえ、全く影響がない訳ではありませんが、父のリスク分散型経営が今のところはうまくいってるみたいです。」
「そっか…。」
「おいおい、そんな目で見るなよ。」
「はは、社長、大変ですね。」
「まあな、でもね嶋くん、娘の梨乃は優しい子だからね、母親とは似てないから安心してな。」
「と、父さん…。」
「あなた、嶋くんも困った顔なさってるでしょ。」
「はは、梨乃もぼんやりしてると、原崎さんにとられちゃうぞ。」
「も~、まだ、そんなんじゃないのに~。
ごめんね、嶋くん、すみれ。」
「う、うん。」

何やら話しが変な方向へ進んでしまった。
梨乃さんは、まだ、って言わなかったか、ということは…。
すみれさんは黙ったままだ…。
さっきは、大地さんって呼んでもいいかな? なんて言ってた。
この状況ってラッキーなのかやばいのか…。
二人のこと、良く知ってる訳じゃないし、二人とも嫌いな訳じゃない。
ロングかショートかって?
外見の問題じゃないだろ。
二人ともかわいいけど。
社長~、軽はずみな発言は控えて下さいよ~。
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